立ち退き交渉は弁護士への依頼がおすすめ|弁護士費用と内訳について解説
不動産オーナーの方で、様々な理由から賃貸物件の立ち退き交渉を行おうと考えている方は少なくないのではないでしょうか。立ち退き交渉をおこなう際、以下の問題点が発生しがちです。
- オーナーは一刻も早く進めたい。しかし、賃借人は生活の拠点を失うことになる。そのため、交渉が難航しやすい
- 借主から立退料を要求されたが、相場が分からないので適切な額を知りたい
- 本業があるため、立ち退き交渉にかけられる時間があまり無い
こうした問題点を解決するには、弁護士へ立ち退き交渉を依頼することが挙げられます。
弁護士へ立ち退き交渉を依頼すると、弁護士費用が心配になる方もおられるでしょう。
ここでは、立ち退き交渉を弁護士に依頼するメリットなどについて分かりやすく解説します。
立ち退き要求はどのような場合にできるのか
建物を所有するための土地、建物の賃貸借契約は、借地借家法と呼ばれる法律の適用を受けるため、貸主からの立ち退き要求がどのような場合にも行えるわけではありません。
立ち退き要求をできる場合について解説します。
賃借人に債務不履行がある場合
立ち退き要求をできる場合の一つ目のポイントは、賃借人に債務不履行がある場合、例えば、賃料滞納といった事情のあることが挙げられます。
このとき注意すべきは、債務不履行があればどのような場合でも、立ち退き、つまり賃貸借契約の解除による物件の明渡しが認められる訳ではありません。
賃貸借契約では、判例上、信頼関係破壊の法理という見解が用いられています。
信頼関係破壊の法理とは、単なる債務不履行に止まらない、賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊されるに至ったレベルの債務不履行が発生した場合に、債務不履行による解除を認めるというものです。
例えば、家賃滞納の場合、1ヶ月分の家賃滞納だけでは、信頼関係が破壊されたとは言い難く、債務不履行による解除は認められにくいです。
たいてい3ヶ月分以上の家賃滞納で債務不履行による解除を認めるものが多いです。
このように、賃貸借契約の当事者の信頼関係を破壊するに足りる債務不履行がある場合、賃貸人は、契約を解除して賃借人に物件の立ち退きを求めることが可能です。
賃貸人の都合で立ち退きを求める場合
もう一つが、賃貸人の都合で立ち退きを求める場合です。
このケースでのポイントは、賃貸人に、賃借人への立ち退きを求められる正当な事由が必要であるという事です。
物件の立ち退きは賃借人に大きな不利益を与えるため、どのような場合でも行えるものではなく、例えば建物老朽化による再築等、立ち退きを求める正当な事由が必要です。
この正当な事由を判断するに当たっては、立退料とその額も考慮対象となります。
そのため、賃貸人の都合で立ち退きを求める場合、原則として立退料が必要となることが多いです(但し、立退料さえ払えば賃借人を立ち退かせられる、というものではなく、立退料は、立ち退きを求められる正当な事由の一要素に過ぎないので、ご注意ください)。
立ち退き交渉を弁護士へ依頼するメリットや弁護士の選び方
立ち退き交渉を行うにあたっては、立ち退きを求められるケースか否か、立退料が適切か等、法律や過去の裁判例を押さえた対応が必要です。
しかし、このような対応を一般の方が行うのは困難なので、弁護士へ立ち退き交渉を依頼することが考えられます。
ここからは、立ち退き交渉を弁護士に依頼するメリット、弁護士の選び方を解説します。
メリット
立ち退き交渉を弁護士へ依頼するメリットには以下のものが挙げられます。
- 早期解決を期待できる
- 話し合いによる解決もできる
- 弁護士へ交渉を依頼することで、自分は本業などに集中できる
早期解決を期待できる点は、弁護士へ依頼する大きなメリットとして挙げられます。
賃貸人が賃借人に立ち退きを求める場合、賃借人には立ち退きをするインセンティブがないので、立ち退きに中々応じず、交渉が長期化しがちなためです。
また、賃貸人・賃借人で交渉しても、立退料の適切な額を決めることができず、交渉をまとめきれない場合もあります。
弁護士へ交渉を依頼した場合、弁護士は、一定の立退料の相場を把握していることや、裁判になった際の立ち退きが認められるかということの見込みをつけられるので、交渉段階から着地点を見据えた交渉を行うことができ、短期間での解決を期待できます。
弁護士の選び方
弁護士にも得意・不得意な分野があるため、立ち退きの交渉は不動産関係について実績のある弁護士を選ぶことが重要です。
- 債権回収、立ち退き交渉など不動産案件で実績ある弁護士を選ぶこと
- 専門書の監修に携わっていること
- 弁護士費用を明確に示してくれる弁護士であること
これらの点は、弁護士を選ぶうえで大切な検討事項の1つです。
費用が明確な弁護士を選ぶことで、当初の見込みよりも弁護士費用が高くなり、費用倒れとなる事態を避ける事ができます。
弁護士費用と立ち退き交渉をおこなう場合の相場
立ち退き交渉を弁護士に依頼した場合の費用と相場について解説します。
弁護士費用の内訳
弁護士費用は主に以下の費用で構成されます。
- 相談料
- 着手金
- 報酬
- 実費(印紙代等)
相談料は、依頼をするか否かに関わらず、法律相談をすることで発生します。
弁護士への依頼は相談を行ったうえでおこなわれるため、まずはどういった案件を依頼したいのか相談をすることが必要になります。
着手金は、弁護士が依頼された業務を開始するための費用として用いられることが多く、契約締結時に支払われることが多いです。
なお、相談料や着手金を無料とする事務所や、分割での支払いに応じている法律事務所もあります。
弁護士費用の詳しい内訳や支払方法は、相談時に法律事務所へ問い合わせましょう。
立ち退き交渉の場合の相場
弁護士の報酬は、現在自由化されています。
もっとも、多くの法律事務所は、以前に用いられていた報酬基準(弁護士旧報酬規程)を参考にして自分の報酬を決めています。
そのため、弁護士旧報酬規程が一つの目安となるでしょう。
弁護士旧報酬規程に従うと、弁護士の報酬は以下の様に計算されます。
報酬の種類 | 弁護士報酬の額 | |
着手金 | 事件の経済的な利益の額が 300 万円以下の場合:経済的利益の 8% 300 万円を超え 3000 万円以下の場合:5%+9 万円 3000 万円を超え 3億円以下の場合:3%+69 万円 3 億円を超える場合:2%+369 万円 ※3 ※着手金の最低額は 10 万円 | ① |
報酬金 | 事件の経済的な利益の額が 300 万円以下の場合:経済的利益の 16% 300 万円を超え 3000 万円以下の場合:10%+18 万円 3000 万円を超え 3 億円以下の場合:6%+138 万円 3 億円を超える場合:4%+738 万円 ※3 |
備考:① 特に定めのない限り,着手金は事件等の対象の経済的利益の額を,報酬金は委任事務処理により確保した経済的利益の額をそれぞれ基準として算定する。
※3 事件の内容により,30%の範囲内で増減額することができる。
例えば賃借人が請求した立退料を減額させた場合、その減額分を経済的利益とすることが多いです。
事案によって計算が異なるので、着手金・報酬金の「経済的利益」について弁護士へ事前に確認しましょう。
弁護士費用を抑える方法
弁護士費用を抑えたい方は、以下の方法を取ることも考えられます。
初回相談無料の事務所を選ぶ
弁護士費用の内、相談料を抑えるには、初回相談を無料で実施している法律事務所の利用が挙げられます。
相談料は、法律相談を行うことで発生するため、複数の事務所に相談した場合、相談料がその分だけ発生します。
複数の事務所で弁護士費用を比較したい場合、初回相談料無料をうたっている複数の法律事務所に相談を行って、費用を比較するのは一つのやり方です。
分割払い対応の事務所を選ぶ
弁護士費用は、一括払いを原則とする事務所が多いです。
ただし、法律事務所によっては分割払いに応じるところもあります。
こうした事務所を利用すると、一回ごとの支払額を無理のない金額にすることが可能です。
法テラスを利用する
弁護士費用をできる限り安く抑えたい、弁護士費用が支払えるか心配という方は、法テラスを利用する方法もあります。
法テラスとは、日本司法支援センターの略称です。
法テラスの利用には資力条件があって誰でも利用できるわけではないので、資力要件を公式サイトで確認しておきましょう。
法テラスを利用した場合、弁護士費用の分割払いが可能です。1回ごとの分割払いの額は、月額5,000円~10,000円の範囲で決めることができます。このように低価格の分割払いに対応しているので、利用者は、月々の支払いを抑えられます。
まとめ|立ち退き交渉は弁護士へ依頼を
立ち退き交渉は、賃貸人にとってはスムーズかつ早期に解決を図りたいですが、賃借人にとっては住居を失うこととなるため、交渉が難航し長期化する傾向にあります。
スムーズな立ち退き交渉、立退料の負担を必要最小限におさえるために、弁護士に立ち退き交渉を依頼しましょう。
弁護士へ依頼することで、ご本人は立ち退き交渉の手間から解放され、本業などに集中できるとともに、短期間での解決を期待できます。
まずは弁護士へ相談してみましょう。