不動産の再開発立ち退き依頼への対応策!都市計画や道路拡張の拒否など解説

不動産の再開発立ち退き依頼への対応策!都市計画や道路拡張の拒否など解説

再開発による立ち退き勧告を見たとき、不動産オーナーの方で収益状況も悪くなく、運営も上手くいっているのにわざわざ立ち退きに応じたくない、と悩まれる方もいらっしゃるでしょう。

しかし都市計画による再開発の場合、そうした戦いは徒労に終わる可能性が非常に高いです。なぜなら、手続きが進むことで行政が強制執行に乗り出すことが可能と法律で定められているからです。

ここでは、再開発における立ち退きで損をしないための対応策や立ち退き料の増額といった交渉方法などについて解説していきます。

この記事を監修した弁護士
三田村 智彦
三田村 智彦西谷・三田村法律事務所
京都府・大阪府・滋賀県を中心に、様々な事件の解決に取り組む弁護士。「依頼してよかった」と思っていただける弁護活動を常に目指している。

保有物件が再開発になった場合の対応は2パターン

持ち家や所有する物件のある土地が再開発の対象となったとき、立ち退きに同意する場合2つの対応方法があります。以下でそれぞれ解説していきます。

権利変換を行う

「権利変換」とは公共事業における市街地再開発事業において、予定地の土地や建物の権利者に対し、再開発後に完成したビルなどの敷地や床に対しての権利を与えることです。

簡単にいうと、今の土地や建物に関する権利を新しい物件の権利と交換するということです。

権利変換は再開発予定地の土地や建物のオーナーであり、かつ再開発に賛成していて、再開発後のビルなどへの入居を希望する方におすすめの方法といえます。

「保有する権利」と交換できる権利

権利変換はオーナーが所有している物件や土地の価値・位置・その他環境といった要素によって、再開発される物件への権利が変動します。おおまかには下記のとおりです。

保有する権利交換できる権利
・土地の所有権
・建物の所有権
・借地権のいずれか
再開発物件の床の一部及び敷地の一部を受け取れる権利
借家権再開発物件の床の一部に係る借家権を受け取れる権利
担保権(抵当権など)再開発前と同等の内容の権利(抵当権など)

資産額と交換できる権利の大きさ

権利変換によって得られる権利の大きさは、交換前の土地・物件の資産額によって決定します。資産額の評価方法・基準日は下記のとおりです。

  • 評価方法

1:再開発前の土地・物件
近くの土地や状況が似ている土地・物件の最新取引価格を参考値として算出します。

2:再開発後の土地・物件
再開発のために費やされた原価と近くの土地や状況が似ている土地・物件の取引価格などを参考値として算出。ただし時価より高額になる場合、時価相当額となります。

  • 評価基準日

事業計画の認可の公告があった日から31日目の評価額を基準日とします。

ただし、その後半年以内に権利変換が行われなかった場合、半年+31日後が基準日となります。

立退料を受け取る

立退料を受け取る場合、権利変換のように再開発後の物件に対する権利を貰うことはできません。

再開発予定地の土地や建物のオーナーであり、かつ再開発後のビルなどへの入居を希望しない方は、立退料を貰って権利を譲渡することになります。

しかし、交渉次第で立退料は異なるので、損をしないための方法は記事後半の解説をぜひ参考にされてください。

再開発の立ち退きは基本的に拒否ができない |その理由とは

持ち家や所有物件の土地が再開発予定地となってしまった時、多くの場合拒否し続けることは難しいとされています。再開発の拒否が難しい理由について、法的観点も交えて解説していきます。

理由|再開発は強制的に土地収用ができる可能性があるから

立ち退きを基本的に拒否できない理由は、再開発が都市計画法に基づくものである場合、手続きが進むと土地収用ができるようになるからです。

都市計画法には、都市計画を円滑に遂行するための制度として、土地の明渡しをしなければならないと定められています(都市再開発法第96条)。

そして、拒否があった場合には、行政の名において強制的に土地収用を行える行政代執行の制度を設けています(都市再開発法第98条)。

その代わりに、行政代執行においては補償金の提示といった一連の取り組みが必要とされています。

土地収用法とは

再開発の土地の取り扱いで重要な法律である「土地収用法」について簡単に解説していきます。

「土地収用法」には、公共事業による再開発で土地の権利者の90%が同意した場合、残りの10%が反対していたとしても強制的に土地を収用できると規定されています。

もし土地収用の手続きが進んでしまっても立ち退きに応じない場合、物件の取り壊しや行政代執行の対象となります。

このように、公共事業や土地の再開発事業はその活動自体が保護されている場合が多く、立ち退き拒否は徒労に終わる可能性のほうが高いのです。

行政代執行法とは

行政代執行とは、物件の所有者に代わり行政が適正管理をするために適切な処理を行うものです。

空家の解体やゴミ屋敷の撤去といった問題から、再開発における立ち退き拒否者まで、その対応範囲は幅広く設定されています。

立退料に納得できないなどの事情がある方は、弁護士に相談してしっかりと対応するように心がけましょう。

再開発で立ち退きする場合には立ち退き料が発生

再開発計画の予定地の借家人の立退料について基礎知識を解説していきます。

立ち退きの正当事由

立ち退きが法的に認められるには、借地借家法28条が定める「正当事由」が必要であるとされています。正当事由とは、建物の使用を必要とする事情や建物の利用状況・立退料など総合的に判断されます。

しかし、正当事由があるからといっても立ち退きを拒否されることもあるので、要求する側は立ち退き料を提示して交渉をすることになります。

立退料の相場は?

立退料に相場は特にありません。一般的には転居費用などの実費・そのまま物件を利用し続けられた時に得られたであろう経済的利益などから算出されます。賃貸の場合、おおむね半年分の家賃が提示されるケースが多いようです。

立退料の内訳は?

立退料に相場はありませんが、その金額には内訳がある場合もあります。一般的に支払われる立退料の内訳は下記のとおりです。

  • 転居費用(引っ越し業者の費用・敷金・礼金・仲介手数料など)
  • 保険の加入費用
  • 立ち退きによる迷惑料

都市計画補償金も忘れずに

都市計画の一部で行われる再開発が原因で立ち退きを求められている場合、「都市計画補償金」を受け取れる可能性があります。

方法については各自治体によって様々ですが、補償自体は都市再開発法97条により下記のように定められています。

【昭和四十四年法律第三十八号 都市再開発法 第四款 土地の明渡し 第九十七条】

施行者は、前条の規定による土地若しくは物件の引渡し又は物件の移転により同条第一項の土地の占有者及び物件に関し権利を有する者が通常受ける損失を補償しなければならない。

2 前項の規定による損失の補償額については、施行者と前条第一項の土地の占有者又は物件に関し権利を有する者とが協議しなければならない。

3 施行者は、前条第二項の明渡しの期限までに第一項の規定による補償額を支払わなければならない。この場合において、その期限までに前項の協議が成立していないときは、審査委員の過半数の同意を得、又は市街地再開発審査会の議決を経て定めた金額を支払わなければならないものとし、その議決については、第七十九条第二項後段の規定を準用する。

4 第二項の規定による協議が成立しないときは、施行者又は損失を受けた者は、収用委員会に土地収用法第九十四条第二項の規定による補償額の裁決を申請することができる。

5 第八十五条第二項及び第三項、第九十一条第二項及び第三項、第九十二条並びに第九十三条の規定は、第二項の規定による損失の補償について準用する。

引用記事:e-Gov|都市再開発法

都市計画補償金は、立退料の支払いを受けられないような場合に、収用委員会に対して申請します。

この金額は、毎年公官庁が発表する物価基準価格表をもとに算出されるので、立退料の交渉の基準を決めたい方や、納得できない立退料を提示された方は、積極的にこの制度を利用しましょう。

立ち退きで損をしない!再開発の立退料をアップさせる交渉術

不動産のオーナーの方や持ち家を保有している方、その他賃借している方が、立ち退きで損をしないための立退料をアップさせる交渉術をご紹介します。

立ち退く意思がないと主張

そもそも土地開発に賛成ですぐに立ち退いてくれるような方には、立退料を支払う必要はそこまで高くありません。そこでまずは、再開発による立ち退き勧告が届いたときに拒否する姿勢を明示しましょう。

ただし、9割以上の住民が退去したような状態で戦い続けても、行政代執行により損をするだけになる可能性があるので十分気を付けましょう。

立ち退きによる損失を主張する

保有する物件や持ち家を失うことによって生じる損失をしっかりと算出し、主張するようにしましょう。

弁護士への相談もおすすめ

再開発の立ち退きでは、周囲の状況をよく観察し、相手から譲歩を引き出す交渉力が求められます。

一般的な素人が開発組合やオーナーと対等に交渉していくのは難しいので、不動産トラブルに注力した弁護士に頼る方が良いでしょう。

再開発問題は弁護士に相談がおすすめ

再開発で立ち退きを求められたり、立ち退いてくれない住民がいたりして困っている場合、不動産問題に注力した弁護士に依頼しましょう。再開発問題で弁護士に頼るメリットを紹介していきます。

立退料の増額が狙える

そもそも立退料の計算式は法令でも確立されていないので、弁護士に依頼することで、判例などから増額を狙える場合もあるでしょう。

普段から示談交渉などでこうした問題を取り扱っている弁護士なら、立ち退きによる損失を説得的に説明し、提示された立退料からさらに増額を引き出してもらえる可能性が高まるでしょう。

交渉を任せられる

弁護士と契約を結ぶことで、法的な代理人として交渉の一切を弁護士に任せることができます。

立退料の交渉には、経済的損失の計算や土地価格計算のための情報収集といった地味で面倒かつ専門性の伴う作業がつきものです。

こうした面倒事を丸ごと専門家に任せられるので、精神的・肉体的負担を大幅に減らすことができます。

「正当な事由」への反論ができる

都市計画が承認されると、再開発は行政のプロジェクトとして動くことになります。しかし、弁護士に頼れば都市計画法の借家人の保護といった観点から、拒否できる可能性もゼロではありません。

場合によっては正当事由への反論も可能となり、再開発自体を白紙に戻せる可能性もあるでしょう。

訴訟まで任せられる

立退料にどうしても納得できない場合、弁護士に依頼すれば訴訟への対応も任せることができます。

借家人の立退料では経済的損失が大きく納得できないというような場合、その立証も必要になりますから、専門的に扱っている弁護士に相談してみましょう。

まとめ|「再開発」の進行具合をチェックし、いざとなったら弁護士に相談を

再開発は行政のプロジェクトとして進み、進捗具合によって強制執行があるなど、基本的に拒否することは難しい場合が多いです。

しかし、借家人の保護といった定めや補償金の存在もあるので、拒否の余地があったり立退料増額交渉も可能だったりと必ずしも失うだけではありません。

少しでも損失をカバーするために不動産問題に注力した弁護士を頼りましょう。

この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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