診療報酬ファクタリングで急な資金調達を実現するコツとおすすめサービス
診療報酬ファクタリングは、クリニックや病院の資金繰りに困ったときの手軽な資金調達方法として注目を集めています。
しかし、ファクタリングは日本ではまだなじみが薄いサービスなので、どのような仕組みで資金を調達できるのか分からず、二の足を踏んでいる方も多いでしょう。
そこで本記事では、診療報酬ファクタリングの基本的な仕組みやメリット、ファクタリング会社の選び方などを解説します。
おすすめの診療報酬ファクタリングサービスも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
診療報酬債権を買い取ってくれるファクタリングの仕組み
ファクタリングとは、債権をファクタリング会社に売却することで現金化する資金調達方法です。
このうち、クリニックや病院などの医療機関における診療報酬債権を扱うものを、診療報酬ファクタリングといいます。
診療報酬債権とは、医療機関から審査支払機関に対して請求する診療報酬です。
医療機関の窓口では一般的に、患者から自己負担額を受け取り、残りの診療報酬を支払機関に請求します。
診療報酬ファクタリングでは、この残りの診療報酬をファクタリング会社に売却し、支払機関からの受け取り前に現金化します。
通常よりも早期の現金化を実現でき、クリニックや病院の運営資金をスピーディー調達することが可能です。
診療報酬を活用した資金調達方法はさまざまありますが、そのなかでも手軽な方法として注目されています。
医療機関が診療報酬ファクタリングを利用する4つのメリット
診療報酬ファクタリングを活用すると、次の4つのメリットが期待できます。
- 診療報酬債権を早く現金化できる
- 借入ではないため負債が増えない
- ファクタリング手数料は経費になる
- 財務状況などが悪くても利用できる
それぞれのポイントについて、以下で詳しく解説します。
1.診療報酬債権を早く現金化できる
患者からの自己負担額を差し引いた診療報酬は通常、翌月の10日までに診療報酬明細書を支払機関へ提出します。
そして、実際に診療報酬が支払われるのは、請求の翌々月です。
一方、診療報酬ファクタリングなら支払機関からの支払いを待たず、任意のタイミングで現金化が可能です。
またファクタリングは、そのほかの資金調達方法と比べて、申し込みから現金化までのスピードが速い傾向があります。
診療報酬債権を売却するタイミングによっては、数十日単位で現金化を早めることもできるでしょう。
医療機関において、患者の自己負担額は1~3割です。
そのほか大部分を占める残りの診療報酬債権を早期に現金化すれば、クリニックや病院の運営資金として、より柔軟に活用できます。
2.借入ではないため負債が増えない
金融機関からの融資や借入とは異なり、診療報酬ファクタリングは負債ではなく、債権の売却として計上します。
バランスシート(賃借対照表)の負債が増えることがないので、経営評価にマイナスの影響を及ぼさないのがメリットです。
金融機関から融資や借入を受けるとなった場合にも、審査に不利に働くリスクがありません。
3.ファクタリング手数料は経費になる
ファクタリングを利用する際、ファクタリング会社に支払う手数料は経費として計上できます。
利益から差し引くことができるため、節税につながるでしょう。
手数料の設定方法はファクタリング会社によって異なりますが、おおむね以下の2つのパターンに分けられます。
- 基本手数料や登記費用などを個別に請求する
- 諸経費をまとめて請求する
いずれの場合も、基本的には「売掛債権売却損」で処理します。
ほかには、「割引料」や「雑損失」として処理することも可能です。
4.財務状況などが悪くても利用できる
金融機関の融資や借入では、病院やクリニックのキャッシュフローや経営状況などを審査されます。
そのため、財務状況が悪化している医療機関は審査に通りにくい傾向があります。
資金繰りに追われ、資金調達を急ぐ医療機関ほど、融資を受けたり借入をしたりすることは難しいのが現状です。
一方、ファクタリングで審査されるのは、利用者である医療機関ではなく、売掛先の信用力です。
診療報酬は国民健康保険料や社会保険料を財源に支払われるため、未回収のリスクはほとんどなく、一般的な企業と比べて信用力は高いといえるでしょう。
上記の理由から、キャッシュフローや経営状況が悪化している医療機関でも、ファクタリングなら問題なく資金調達をおこなえる可能性があります。
医療機関が診療報酬ファクタリングを利用する3つのデメリット
診療報酬ファクタリングにはさまざまなメリットがある一方で、次のようなデメリットもあります。
- 受け取れる報酬額が少なくなる
- 一度利用すると途中でやめにくい
- 利用条件が厳しいサービスもある
それぞれについて、以下で詳しく解説します。
1.受け取れる報酬額が少なくなる
ファクタリングでは、診療報酬債権の全額ではなく、ファクタリング会社への手数料を差し引いた金額が支払われます。
もともとの診療報酬よりも受け取れる金額が少なくなるため、資金計画を立てる際は十分注意しましょう。
2.一度利用すると途中でやめにくい
診療報酬ファクタリングは年単位での契約となるケースが多く、一度利用すると途中でやめにくいのがデメリットです。
また、十分な資金を確保できていない状態でファクタリングをやめてしまうと、資金ショートを起こす恐れがあります。
ファクタリングを途中でやめたい場合は、売上ではなく利益を増やすことを重視し、キャッシュフローをしっかりと改善しておきましょう。
3.利用条件が厳しいサービスもある
ファクタリング会社のなかには、月額診療報酬の下限金額を設定しているところもあります。
ほかにも一定の利用条件を設けているケースがあるため、利用を断られてしまう可能性はゼロではありません。
ファクタリングを利用する際は、利用規約をきちんと確認することが大切です。
診療報酬を買い取ってくれるファクタリング会社の選び方
ファクタリング会社を選ぶ際は、次の4つのポイントをチェックしましょう。
- 運営元が信頼できるかどうか
- 掛け目が低く手数料が安いかどうか
- 審査・入金スピードが速いかどうか
- 利用するまでの手間が少ないかどうか
それぞれのポイントについて、以下で詳しく解説します。
1.運営元が信頼できるかどうか
ファクタリングでは金銭のやりとりが発生するため、信頼性の高さは重視したいポイントです。
運営元の信頼性が高く実績豊富なサービスを選べば、安全かつスムーズに取引ができるでしょう。
なお、ファクタリング会社は主に銀行系・ノンバンク系・独立系の3種類に分けられます。
種類 | 運営元 |
銀行系ファクタリング会社 | メガバンクや都市銀行、地方銀行など |
ノンバンク系ファクタリング会社 | リース会社やクレジットカード会社など |
独立系ファクタリング会社 | 銀行や証券会社などに属さない、独立した企業 |
このうち、銀行系ファクタリングは信頼性の高い会社が多いとされています。
誰もが知る金融機関が運営しているケースも多く、初めての方も安心して利用できるでしょう。
一方、ノンバンク系ファクタリングは手数料が低い傾向があり、独立系ファクタリングは審査通過率が高い傾向があるなど、それぞれ異なる強みがあります。
2.掛け目が低く手数料が安いかどうか
ファクタリングにおける掛け目とは、債権の買取率のことです。
ファクタリングでは診療報酬債権を全額買い取ってもらえるわけではなく、額面金額に掛け目を乗じた額が買取金額となります。
たとえば、掛け目が80%のファクタリング会社に100万円分の診療報酬債権を売却すると、買取額は100万円×80%=80万円です。
ファクタリング会社によって流れは異なりますが、残りの金額は支払機関からの入金後に清算されます。
掛け目はファクタリング会社がそれぞれ独自に設定しているので、事前にしっかり確認しておきましょう。
また、手数料もチェックしたいポイントです。
手数料が安いファクタリング会社を選べば、手元に残る資金を増やすことができます。
なお手数料は、診療報酬債権の金額や売掛先の信用力にも左右されます。
3.審査・入金スピード速いかどうか
審査や入金の速さも、ファクタリング会社を選ぶうえで重要なポイントです。
スピーディーな現金化が可能なファクタリング会社なら、資金調達を急ぐ場面でも便利に活用できます。
なおファクタリングには、2社間方式と3社間方式という方法があります。
- 2社間方式:利用者とファクタリング会社の間で取引をおこなう
- 3社間方式:利用者とファクタリング会社に、売掛先を加えて取引をおこなう
3社間方式では売掛先への通知が必要となるため、2社間方式と比べると手続きに時間がかかる傾向があります。
診療報酬ファクタリングの場合は社保・国保への通知が必要なので、ほとんどの場合は3社間方式です。
入金までの目安としては、おおむね1〜2週間とみておくとよいでしょう。
4.利用するまでの手間が少ないかどうか
ファクタリング会社を選ぶ際は、手続きにかかる手間もチェックしましょう。
申し込みや契約の手間が少ないファクタリング会社なら、忙しいクリニック運営の合間を縫って利用できます。
また、オンラインサービスを提供しているファクタリング会社の場合、対面での面談や手続きは不要です。
パソコンやスマートフォンなどを利用して、空いた時間で手軽に申し込みができます。
診療報酬ファクタリングを利用してから入金されるまでの流れ
診療報酬ファクタリングの利用手順は、おおむね以下のとおりです。
- ファクタリング会社に問い合わせる
- ファクタリング会社と債権譲渡契約を締結する
- ファクタリング会社が社保・国保に通知をする
- ファクタリング会社から利用者にお金が振り込まれる
それぞれのステップについて、以下で詳しく解説します。
1.ファクタリング会社に問い合わせる
まずは、電話やメールなどでファクタリング会社に相談します。
このとき、サービスについて分からないことがあれば、なんでも気軽に質問しましょう。
疑問をあらかじめ解消しておけば、安心してサービスを利用できます。
2.ファクタリング会社と債権譲渡契約を締結する
サービス内容に納得できたら、ファクタリング会社と債権譲渡契約を締結します。
債権譲渡契約とはその名のとおり、債権を第三者に譲渡する際に結ぶ契約のことです。
この契約を結ぶことで、医療機関が社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険団体連合会に対して保有していた診療報酬債権をファクタリング会社に譲渡します。
3.ファクタリング会社が社保・国保に通知をする
診療報酬ファクタリングは、売掛先を含めた3社間方式でおこなわれるのが一般的です。
社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険団体連合会に対して、債権が譲渡されたことをファクタリング会社と医療機関の連名で通知します。
4.ファクタリング会社から利用者にお金が振り込まれる
手続きが完了すると、ファクタリング会社から医療機関に対して、買取金額から手数料を差し引いた金額が振り込まれます。
おすすめ診療報酬ファクタリングサービス5選
ここからは、おすすめの診療報酬ファクタリングサービスを紹介します。
それぞれの特徴や手数料なども紹介しているので、診療報酬ファクタリングの利用を検討している方はぜひ参考にしてください。
1.三菱HCキャピタル「診療報酬債権ファクタリング」
三菱UFJリースと日立キャピタルが経営統合して発足した、三菱HCキャピタル株式会社が運営するファクタリングサービスです。
ともに業界大手の2社が経営統合した会社が運営しているため、信頼性は十分です。
また、高い資金調達力を活かし、月額0.2%~という業界最低水準の手数料でサービスを提供しています。
申し込みから契約まで、原則非対面でおこなえるのもポイントです。
掛け目 | 80% |
手数料 | 0.2%~ |
買取金額 | 数百万~数億円まで |
入金時期 | 最短5営業日 |
営業時間 | 平日9時00分~17時00分 |
運営会社 | 三菱HCキャピタル株式会社 |
2.三田証券「ファクタリング」
三田証券株式会社が運営するファクタリングサービスは、最大95%という高い買取率が魅力です。
入金も最短1週間で完了するため、より多くの資金をスピーディーに調達できます。
また、支払期間への請求分だけでなく、未請求分のファクタリングに対応しているのも特徴です。
請求分と未請求分と合わせて最大2ヵ月分の診療報酬を売却できるため、柔軟な資金調達が実現可能でしょう。
ファクタリング取引のある医療機関を対象に、診療報酬債権の2ヵ月分相当額を上限とした融資サービスもおこなっています。
掛け目 | 85~95% |
手数料 | 当初事務手数料:33万円(税込み)~ 月次事務手数料:0.4%~ |
買取金額 | 要問い合わせ |
入金時期 | 最短1週間 |
営業時間 | 平日8時00分~17時00分 |
運営会社 | 三田証券株式会社 |
3.アクリーティブ「診療報酬ファクタリング」
芙蓉総合リース株式会社の子会社である、アクリーティブ株式会社が運営するファクタリングサービスです。
買取金額に下限・上限がないため少額から高額まで柔軟に対応可能で、開業間もないクリニックも利用しやすいでしょう。
20床以上の有床施設であれば、3ヵ月分相当の買い取りにも対応しています。
豊富な知見とノウハウを持つ医療・介護分野専任スタッフが在籍しており、資金繰りに関する提案やアドバイスを受けることも可能です。
掛け目 | 80~95% |
手数料 | 月々0.25%(年率換算3.0%)~ |
買取金額 | 制限なし |
入金時期 | 最短1~2週間 |
営業時間 | 平日9時00分~18時00分 |
運営会社 | アクリーティブ株式会社 |
4.D&Mカンパニー「診療・介護報酬債権ファクタリング」
株式会社D&Mカンパニーでは、医療機関の再生支援と成長支援に主眼を置き、将来発生する債権も含めて柔軟なファクタリングサービスを提供しています。
営業・審査スタッフは金融機関出身者のみで構成されており、金融のプロフェッショナルによる的確なアドバイスを受けることが可能です。
経営実態を踏まえたサポートを期待できるので、キャッシュフローの改善に向けた頼れるパートナーとなるでしょう。
掛け目 | 80% |
手数料 | 0.5%~ |
買取金額 | 100万円以上 |
入金時期 | 2週間程度 |
営業時間 | 平日8時45分~17時45分 |
運営会社 | 株式会社D&Mカンパニー |
5.ビートレーディング「ファクタリング」
ビートレーディングは、企業の売掛債権から診療報酬債権、介護報酬債権まで幅広い債権に対応するファクタリング専門サービスです。
スピーディーな対応が魅力で、最短翌日での現金化を実現できます。
また、98%以上という高い掛け目もポイントです。
必要書類の提出から最短30分以内で買取額を提示してもらえるので、まずは気軽に相談してみましょう。
掛け目 | 98%以上 |
手数料 | 2~9%(3社間方式の場合) |
買取金額 | 3万円から7億円まで(買取実績) |
入金時期 | 最短翌日 |
営業時間 | 平日9時00分~18時00分 |
運営会社 | 株式会社ビートレーディング |
診療報酬ファクタリングとほかの資金調達手段の比較
ここからは、診療報酬ファクタリングとそのほかの資金調達方法の違いについて解説します。
1.銀行融資との違い
銀行融資は経理処理上、借入として扱われるため、バランスシートの負債が増加してしまいます。
一方、ファクタリングは借入ではなく、あくまで債権の売却です。
そのため、ファクタリングを利用しても負債が増加することはなく、信用力にマイナスの影響を受けずに済みます。
また、銀行融資では利用者に対して厳しい審査がおこなわれますが、ファクタリングでは売掛先の信用力を審査されるので、赤字決算でも利用しやすいのがメリットです。
2.診療報酬担保ローンとの違い
診療報酬担保ローンとは、診療報酬を担保とした医療機関向けのローン商品です。
一度に多額の借入が可能ですが、あくまでローンなので、借りているお金は毎月返済する必要があります。
一方、診療報酬ファクタリングは債権を売却してお金を得る仕組みなので、返済が発生することはありません。
返済計画を立てる必要がないため、調達後の資金繰りがしやすいというメリットがあります。
3.メディカルリースバックとの違い
メディカルリースバックとは、医療機器をリース会社に売却し、リース商品として利用し続けるサービスです。
保有する医療機器を現金化してまとまった資金を得つつ、売却後もリース商品としてそのまま使い続けられます。
ただし、メディカルリースバックでは医療機器のリース契約を結ぶ必要があるため、月々のリース料金というランニングコストが発生します。
また、医療機器の整備状況や耐用年数によっては売却できない可能性もあるでしょう。
一方で診療報酬ファクタリングなら、診療報酬さえあれば基本的には問題なく売却を依頼できます。
さいごに|医療機関の資金繰りに困ったらファクタリングを検討しよう
医療機関の資金調達には、診療報酬ファクタリングがおすすめです。
診療報酬債権をファクタリング会社に売却することで、通常よりも早期の現金化を実現できます。
融資や借入とは異なり負債として扱われないため、バランスシートに悪影響を及ぼさないのもメリット豊富で信頼できるファクタリングサービスを選び、資金繰りの改善を目指しましょう。