ファクタリングの取り立ての恐怖!知っておくべき法律と3つの対処法
ファクタリングは、売掛金を早期資金化できる資金調達手段として近年注目されています。
ファクタリングの利用者は、ファクタリング会社に対し、期日までに回収した売掛債権を支払わなければなりません。
しかし、支払いが遅延したり、支払いを拒否したりすると、ファクタリング会社はさまざまな方法を駆使して取り立てをおこないます。
取り立て方法は業者によって異なるものの、利用するファクタリングが悪徳業者の場合は厳しく取り立てられる恐れがあり、注意が必要です。
本記事では、ファクタリング会社の取り立てについての基礎知識をはじめ、ファクタリング会社に取り立てられるパターンや取り立ての基本的な流れを詳しく解説します。
記事の後半には、悪質業者と契約した際の取り立ての例や対処法についても触れるため、これからファクタリング会社の利用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
ファクタリング会社の取り立てに関する基礎知識
ファクタリング会社に対する支払いを滞納した場合の取り立ては、クレジットカード会社や消費者金融のような金融業者とは異なります。
ここでは、ファクタリング会社による取り立てを正しく理解するための基礎知識を解説します。
ファクタリング会社と金融業者の取り立てが、法的にどのように異なるかを把握していきましょう。
ファクタリング会社には貸金業法は適用されない
ファクタリングとは、事業者が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却する資金調達方法です。
売掛先からの入金を待たずに早期現金化できるとあって、資金繰りの改善が見込めます。
また、金融機関からの借り入れよりも審査通過率が高く、資金調達しやすいのも大きな特徴です。
このようにファクタリングサービスは、法人をはじめ、個人事業主やフリーランスなど、さまざまな事業形態の方から利用されています。
ファクタリング会社は、売掛債権の売買契約を締結するのに対し、クレジットカード会社や消費者金融のような貸金業者は、貸金契約を締結するため、貸金業法が適用されます。
貸金業法とは、クレジットカード会社や消費者金融のような貸金業者に対して制定された法律で、借入額や金利の上限を設定することで債務者を保護する役割があります。
貸金業法では、次のような取り立てを禁止しています。
- 早朝深夜に取り立てる
- 勤務先に連絡をしたり、直接押しかけたりして取り立てる
- 家族や親族に対して督促する
- 債務者が弁護士や司法書士に依頼しているにもかかわらず、債務者本人に連絡する など
銀行をはじめ、クレジットカード会社や消費者金融などから借り入れする場合、上記のような取り立てを受けることはありません。
一方、ファクタリング会社の場合は、貸金契約ではなく売掛債権の売買契約のため、貸金業法が適用されません。
つまり、ファクタリング会社は取り立てについて法的な規制を受けないことから、貸金業者と比較して取り立て方法が厳しくなる恐れがあります。
法律上の「自力救済禁止の原則」は適用される
ファクタリングは、貸金業法は適用とならないものの、民法によって定められている「自力救済禁止の原則」が適用されます。
自力救済とは、なんらかの権利を侵害された者が、司法手続きによらず自力で自らの権利回復を果たすことをいい、民法では原則として禁止されています。
つまり、ファクタリング会社が売掛金を回収できない状態であったとしても、債務者から金品を無理やり奪う行為が禁止されているのです。
万が一、ファクタリング会社が執拗(しつよう)な取り立てをして債務者の金品を奪った場合は、民事上、刑法上の両面で罪に問われる可能性があります。
ファクタリング会社に取り立てされる2つのパターン
ファクタリング会社に返済できなくなってしまうパターンとして、次の2つのケースが挙げられます。
- 利用者が代金を使い込んでしまった場合
- 売掛先が利用者に代金を支払っていない場合
それぞれについて詳しく解説しましょう。
1.利用者が代金を使い込んでしまった場合
ファクタリング会社に返済できないケースとして、売掛金を別の用途で使い込んでしまうことが挙げられます。
売掛先から売掛金の入金があった時点で自社の事業資金に充ててしまい、その結果返済できなくなるパターンが多く見受けられます。
回収した売掛金を利用者が使い込んでしまうケースは、ファクタリング会社と利用者のみで契約を締結する2社間ファクタリングで起こりうるトラブルです。
3社間ファクタリングの場合は、売掛先からファクタリング会社に直接売掛金が支払われるため、このようなパターンに陥りません。
手元の資金が十分でないという理由で、売掛金を別の用途で使うことのないように注意しましょう。
2.売掛先が利用者に代金を支払っていない場合
ファクタリング会社に返済できない理由として、売掛先から支払われていないケースが考えられます。
売掛先から入金されない理由として、売掛先の経営不振や倒産などが挙げられます。
期日になっても売掛先から入金がないと、ファクタリング会社に払うべき資金を工面できません。
しかし、償還請求権のない一般的なファクタリング契約であれば、利用者に対して売掛金の返済義務が課されません。
償還請求権とは、売掛先の業績悪化や倒産などで売掛金の回収ができなくなった際に、ファクタリング利用者に未払金を請求できる権利のことです。
つまり、ファクタリング会社と償還請求権のない契約を締結していれば、売掛金の返済を求められることはありません。
ただし、償還請求権ありのファクタリング契約を締結しようとする業者は、悪徳業者の恐れがあります。
契約内容に「償還請求権あり」と記載されている場合は、十分注意しましょう。
一般的なファクタリング会社による取り立ての流れ
ファクタリングには貸金業法が適用されないため、取り立てについての規制がありません。
ただし、信頼できるファクタリング会社であれば、貸金業法に違反するような取り立てはおこなわれないと考えて問題ないでしょう。
ファクタリング会社による一般的な取り立ての流れは、以下のとおりです。
- 電話や手紙で催促される
- 法的手続きに移行される
- 強制執行がおこなわれる
取り立て方法の詳しい内容を解説します。
1.電話や手紙で催促される
ファクタリング会社は、売掛金の支払期日までに入金されない場合、利用者や売掛先に対して売掛金を支払うよう促します。
支払いが滞る原因の一つとして、売掛先から支払われないことが挙げられるでしょう。
この場合、ファクタリング会社は売掛先に対して債権譲渡通知を送付し、直接取り立てをおこないます。
一方で、すでに売掛先が利用者に対して支払いが完了していると判明した場合は、利用者が取り立ての対象となります。
利用者はファクタリング会社に対して入金する義務を怠っている、つまり債務不履行とみなされ、任意の支払いを求められるのです。
電話やメール、郵便などで入金を促すのが一般的ですが、場合によっては事務所やオフィスに直接出向いて催促するケースも考えられるでしょう。
ファクタリング会社のなかには、内容証明郵便で督促状を送付するケースもあります。
2.法的手続きに移行される
電話やメール、手紙による任意の支払い要求をしたにもかかわらず、利用者からの入金が確認されない場合は、法的手続きに移行されます。
ファクタリング会社は、裁判所で支払督促や訴訟の手続きを執りおこない、取り立てを継続していくのです。
支払督促とは、債権者(ファクタリング会社)からの申し立てに基づいて、簡易裁判所が債務者(利用者)に対して金銭の支払いを命じる制度です。
支払督促を受けてから2週間以内に利用者からの異議申し立てがあった場合は、訴訟に発展していきます。
3.強制執行がおこなわれる
支払督促や訴訟によって裁判所による判決が出ているにもかかわらず、利用者が支払いを拒否する場合は、強制執行がおこなわれます。
強制執行とは、債務者の財産を裁判所が取り押さえ、滞納分の返済に充てる手続きのことです。
差し押さえの対象となる財産は、次のとおりです。
- 銀行口座の預金
- 現金
- 有価証券
- 不動産
- 保険
- 車 など
強制執行が実行されてしまうと、ファクタリング利用者は事業継続が困難となるだけでなく、社会的な信用も失ってしまいます。
支払期限を守ることは、ファクタリングを利用する際の絶対条件となるため、十分注意しましょう。
ファクタリング会社におこなわれる可能性がある厳しい取り立て
ファクタリング会社が実際におこなう可能性のある、厳しい取り立てについて詳しく解説します。
1.早朝や深夜に電話をかける
悪質なファクタリング会社の場合、売掛金を回収するために早朝や深夜など、時間を問わず電話をかけてくるケースが考えられます。
貸金業法において、午後9時から午前8時までの時間帯に連絡を入れる行為は禁止されており、違反した場合は2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。
しかし、ファクタリングは貸金業法が適用されないことから、早朝や深夜などに何度も電話をかけてくる恐れがあると覚えておきましょう。
2.勤務先などに電話をかける
指定した電話番号以外の場所に電話をかけるケースも考えられます。
オフィスや事務所だけでなく、自宅や家族、親族の携帯電話にまで電話するケースもあるのです。
債務者が連絡先として指定した電話番号でない連絡先に執拗に電話をしたり、支払いを催促したりするのは、まさしく悪徳業者の手口といえるでしょう。
2.返済が遅れたことをバラされる
貸金業法において、張り紙や看板、手紙などを駆使して、債務者の借金や私生活を周囲に知らせる行為も禁止されています。
また、債務者の個人情報を第三者に漏らす行為はプライバシーの侵害にあたり、名誉毀損となる恐れもあるでしょう。
しかし悪質なファクタリング会社は、利用者の支払いが完了するまで執拗に嫌がらせ行為を続ける傾向にあります。
売掛金の返済が滞っている事実を周囲に知られると、社会的な信用を失ってしまうかもしれません。
4.家族や勤務先に返済するよう迫る
悪質なファクタリング会社の場合、契約時に伝えていた家族や親族、そして勤務先に対して返済するよう迫るケースも考えられます。
なかには自宅や親族の家まで押しかけたり、警察や弁護士に相談しないよう脅迫したりなど、利用者を精神的に追い詰める場合もあるようです。
ファクタリング会社から厳しい取り立てをされた場合の対処法
ファクタリング会社から厳しい取り立てをされた場合は、公的機関や弁護士に相談するのがおすすめです。
1.警察に相談・通報する
悪質なファクタリング会社から厳しい取り立てを受けた場合は、まず警察に相談してください。
被害に遭って悩んでいる場合は、まず警察の相談窓口「#9110」がおすすめです。
無料で相談が可能なため、気軽に利用できるでしょう。
ただし、警察に相談しても、ファクタリング会社とのトラブルは民事事件として扱われ、解決するまでに相当な時間と手間がかかります。
また、被害届を出す場合は、被害に遭ったことの証拠や加害者に関する情報を提供しなければなりません。
そのため、警察に相談しても、積極的に捜査してくれる可能性は低いと理解しておきましょう。
2.消費者ホットラインに相談する
警察以外で悪質な取り立てによる被害に関する相談場所として、消費者生活センターが運営する「消費者ホットライン(#188)」も検討してください。
専門知識を持った相談員がアドバイスしてくれるので、悪質な取り立てに困っている場合はもちろん、契約していないタイミングで事前に相談もできます。
ただし、消費者ホットラインには捜査権限がないため、問題そのものを根本的に解決するのは難しいといえるでしょう。
今後の起こすべき行動や、解決方法に対するアドバイスをもらう目的で利用するのがおすすめです。
3.ファクタリングトラブルが得意な弁護士に相談する
警察や消費者センターなどの公的機関は、無料で相談できるものの、トラブルの根本的な解決を図ることは難しいというデメリットがあります。
悪質な取り立てによるトラブルの解消を目指す場合は、ファクタリングのトラブルに精通する弁護士に相談してみてください。
悪質業者であれば、弁護士の介入はとても効果的です。
早いタイミングで弁護士に相談して、早期解決を図っていきましょう。
ただし、弁護士に相談・依頼すると費用が発生するため、資金繰りの厳しい事業者にとって経済的に大きなダメージとなる恐れもあります。
問題解決に向けた資金の準備が必要と覚えておきましょう。
さいごに|適切に支払いをすれば取り立ての心配はない!
売掛債権の売買契約であるファクタリングは、貸金業法が適用とならないものの、優良な業者であれば、貸金業法の規定にのっとって取り立てを実施しているケースも多くあります。
もちろん、期限までに適切に支払えば、取り立てられる心配はありません。
悪質な取り立てを受けている場合は、警察や消費者センター、そしてファクタリングのトラブルを得意とする弁護士に相談しながら、ファクタリング会社の乗り換えを検討しましょう。