成年後見を弁護士に依頼するメリット|費用の目安や基本的な流れも解説

成年後見を弁護士に依頼するメリット|費用の目安や基本的な流れも解説

家族が認知症などで自己判断ができない場合、本人に代わって財産を管理する成年後見人を選任することができます。

主に後見人として認められるのは、親族や弁護士、司法書士、社会福祉士などです。

実際には親族以外でも成年後見人候補者として挙げることはできますが、成年後見人を選ぶのは家庭裁判所であるため、親族以外の士業でない場合、認められるケースはほとんどありません。

本記事では、弁護士を成年後見人とした場合のメリットやデメリット、費用などについて解説します。

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当社在籍弁護士(株式会社アシロ)
この記事は、株式会社アシロの「法律相談ナビ編集部」が執筆、社内弁護士が監修しました。

成年後見人として弁護士を選んだほうがよいケース

成年後見人として弁護士を選んだほうがよいケースとして挙げられるのは、次の5つです。

  1. 法律的な知識が必要
  2. 親族間に紛争がある
  3. 虐待などの可能性がある
  4. 信頼できる親族がいない
  5. 就任希望者がいない
  6. 財産の管理が難しい

自己判断が難しい被後見人の権利と財産を守るためには、適切な成年後見人を選択する必要があります。

弁護士を選ぶべきケースについて、以下で詳しく確認していきましょう。

法的知識が必要

法的知識を必要とする場合は、弁護士を成年後見人に選任すべきといえます。

成年後見人は、被後見人の財産を管理し、生活や健康管理に関する決定をおこなう必要があります。

親族を後見人に選任した場合、契約の締結や解除、相続権の行使などの問題を適切に理解し、最良の決定をするのは困難である可能性が高いでしょう。

弁護士であれば、法律の専門家として広範囲な法律知識を有しているため、被後見人の利益を最大化する行動やアドバイスができます。

親族間に紛争がある

親族間に紛争がある場合に親族の中から後見人を選任すると、被相続人の財産をめぐって大きなトラブルに発展する可能性があります。

こうした状況では、感情的な対立を避けるために弁護士を成年後見人に選任するのが望ましいでしょう。

弁護士は親族間の争いに関しても専門家の立場から判断ができるため、被相続人の財産を適切に保護できるでしょう。

虐待などの可能性がある

被後見人が親族から虐待を受けている、またはその危険性がある場合、親族を成年後見人とするのは避けるべきです。

身体的虐待や心理的虐待だけでなく、本人の合意なしに財産を使用・制限する行為や、必要な介護サービスの利用を妨げる行為も虐待とみなされます。

このようなケースでは、虐待の防止と被後見人の保護を最優先に考え、第三者である弁護士を成年後見人に選任したほうがよいでしょう。

信頼できる親族・就任希望者がいない

信頼できる親族やそのほかの就任希望者がいない場合は、弁護士を成年後見人に任命するのが最善策となるでしょう。

無理に親族を成年後見人とした場合、予期せぬトラブルにつながる可能性があります。

成年後見人の選定において、その人物が信頼できるかどうか、財産を適切に管理する能力は非常に重要な要素となります。

弁護士は職業上、法律を遵守し誠実さを重視しているため、被後見人の権利を保護する成年後見人として適しているといえるでしょう。

財産の管理が難しい

被後見人が管理の難しい財産を持っている場合、専門的な知識と経験を必要とするため、弁護士を成年後見人に選ぶのが望ましいでしょう。

管理が難しい財産の一例としては、複数の不動産や大量の株式、海外の資産などが挙げられます。

また、被後見人が事業主であったり、破産や倒産の危機に瀕した状況にあったりする場合、法的知識のない親族が対処するのは難しいケースが多いでしょう。

弁護士を後見人として選任することで、複雑な状況下でも被後見人の財産を適切に管理し、最適な解決策を提供してくれます。

弁護士を成年後見人に選任するメリット

弁護士を成年後見人に選任するメリットは、次のとおりです。

  • 煩雑な事務作業を任せられる
  • 法的観点で公正な財産管理ができる
  • 法的観点のトラブルに対応できる
  • 問題のある契約を取り消しできる可能性がある
  • 相続に関する相談もできる

成年後見人に親族やほかの士業を選任するのも選択肢の一つですが、弁護士に依頼することで多くのメリットを得られます。

それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。

煩雑な事務作業を任せられる

成年後見人に関わる煩雑な事務作業を一任できるのは、弁護士を選任するうえで大きなメリットです。

成年後見人の役割には単なる財産管理だけではなく、家庭裁判所への定期報告や介護サービスの利用契約管理、税金や保険料の管理などの事務作業も含まれます。

これらの作業には手間がかかり、適切に処理するためには専門的な知識も必要です。

弁護士は、それらの重要かつ煩雑な業務を一手に引き受けてくれるため、親族の負担を大幅に軽減できるでしょう。

法的観点で公正な財産管理ができる

法的観点から公正な財産管理が可能な点も、弁護士を成年後見人に選任するメリットです。

親族の中から成年後見人を選任すると、親族同士の利害関係や感情的な問題が混入しやすく、適切な財産管理が困難になる可能性があります。

しかし、専門家である弁護士に依頼すれば公正な財産管理が期待できるでしょう。

また、弁護士は法律の専門家であるため、高度な法律知識に基づいた財産管理が可能です。

法的観点からトラブルに対応できる

弁護士は法律問題を扱う専門家であり、あらゆる法的トラブルに対応できるのも強みです。

被後見人が法的なトラブルに巻き込まれた場合にも、弁護士は解決に向けて迅速に行動してくれます。

財産管理で発生しうるトラブルとしては、契約上の問題や財産侵害、遺産分割に関する争いなどが挙げられます。

これらは法律知識のない一般の人にとっては難しい問題となるため、弁護士の知識と経験が大いに役立つでしょう。

問題のある契約を取り消しできる可能性がある

被後見人の判断能力低下によって締結された問題のある契約が見つかった場合、成年後見人が取り消しできる可能性があります。

しかし、中には業者に言いくるめられるなど、法的理論で対抗できないケースも考えられます。

このようなケースの場合、弁護士であれば適切に契約を取り消しできる可能性があり、被後見人の利益を保護できるでしょう。

このことからも、法的なトラブルが起こりうると考えられる場合には、成年後見人として弁護士を選任することをおすすめします。

相続の相談もできる

成年後見人として選任された弁護士には、被後見人が存命中の後見業務だけではなく、その後の相続問題についても相談することができます。

弁護士は相続法を含む広範囲な法律知識を有しているため、遺言書の作成や相続人同士の紛争解決など、さまざまな相続問題に対応可能です。

また、後見業務を担当していた弁護士であれば被後見人の財産状況も把握しているため、相続問題の事前準備や対策をスムーズに開始できます。

これは被後見人だけでなく、親族にとっても大きなメリットといえるでしょう。

弁護士を成年後見人に選任するデメリット

弁護士を成年後見人に選任するデメリットとして挙げられるのは、以下の2つです。

  • 報酬が発生する
  • トラブルに発展する可能性がある

弁護士を選任するメリットは多いものの、デメリットもあるため、しっかり把握したうえで検討する必要があります。

それぞれのデメリットについて、詳しく見ていきましょう。

報酬が発生する

弁護士を成年後見人に選任すると、その業務に対して報酬が発生します。

報酬は通常、被後見人である本人の財産から支払われるため、財産状況によっては報酬の支払いが負担となる可能性もあるでしょう。

また、成年後見人報酬は継続的に支払う必要があるため、期間が長くなるほど、結果的に費用負担も大きくなる傾向にあります。

後見人制度を利用するとどのくらい費用がかかるのかは、事前に確認しておくようにしましょう。

トラブルに発展する可能性がある

成年後見人に選任した弁護士による不適切な行為で、トラブルになる可能性も否定できません。

たとえば、後見人である弁護士が被後見人の財産管理を怠ったり、着服したりするケースが考えられます。

実際に、成年後見人に選任された弁護士が立場を悪用し、管理していた被後見人の口座から現金を横領したという事例もありました。

【参考】成年被後見人らの財産、7200万円横領の罪 元弁護士を在宅起訴


このような悪質な事例は極めて稀ですが、弁護士を選任する際は十分な検討と警戒が必要です。

また、弁護士選任の際は、弁護士団体に所属しているか、過去に問題行為がないかなどを確認しましょう。

成年後見人に適切な弁護士の選び方

成年後見人に適切な弁護士を選ぶためには、次の内容をチェックしましょう。

  • 信頼関係を築きやすい
  • 費用が明確
  • 付き合いの長い弁護士

これらの条件を満たす弁護士であれば、成年後見人にふさわしい人材である可能性が高いです。

具体的な選び方について、以下で一つずつ解説していきます。

信頼関係を築きやすい

弁護士を成年後見人に選任する最大のポイントは、信頼関係を築けるか否かです。

成年後見人には被後見人の財産管理を任せる関係上、弁護士と被後見人、またその親族との間には、深い信頼関係が必要となります。

そのため、弁護士との初回面談や数回にわたる会談を通じて、人柄や専門性をしっかりと確認し、信頼できるかを判断しましょう。

とくに、弁護士の親身な態度や対応力は、後見業務を円滑に進行させるための重要な要素となります。

費用が明確

弁護士を成年後見人として選任する際には、支払うべき報酬が明確である必要があります。

費用の説明をしないまま契約をすすめてくるような弁護士は、成年後見人にふさわしいとはいえません。

成年後見人としての業務に要する費用や、具体的な報酬額は、契約を結ぶ初期段階で明確にすべきです。

必要となる費用の計算方法も含めて丁寧に提示してくれる弁護士を選ぶと、安心して後見業務を任せられるでしょう。

付き合いの長い弁護士

付き合いの長い弁護士を選ぶのも、成年後見人の選任方法としておすすめです。

長期間の関わりがあると、弁護士の人柄や業務スタイルをすでに理解し、信頼関係を築けているケースも多いでしょう。

過去に法律相談をした経験があったり、問題解決を依頼したりしている弁護士がいれば、その弁護士を成年後見人に選任するのも一つの手段といえます。

成年後見人の業務は長期にわたるため、信頼のおける弁護士への依頼を検討しましょう。

弁護士を成年後見人にする際の費用

弁護士を成年後見人にする際の費用について、次の項目別に紹介します。

  • 成年後見等申立代理手数料
  • 成年後見人報酬の目安

成年後見人に支払う費用は、基本的に被後見人である本人が負担する必要があります。

ここで紹介する金額はあくまでも目安となるため、実際に依頼する弁護士へ事前に確認するようにしましょう。

成年後見等申立代理手数料

成年後見等申立代理手数料は、弁護士が後見の申し立てを代理する際に発生する費用です。

相場は約20万円〜30万円程度とされていますが、具体的な金額は弁護士により異なります。

また、弁護士に支払う代理手数料とは別に、家庭裁判所に申し立てをおこなう際の実費も発生します。

収入印紙代3,400円~4,200円
送達・送付費用3,270円~4,210円
登記されていないことの証明書発行手数料300円
医師の鑑定費用
※裁判所が必要と判断した場合のみ
10万円~20万円

上記は東京家庭裁判所の費用目安であり、東京以外の家庭裁判所では異なる可能性があるため注意してください。

ほかにも必要書類の準備費用として、医師の診断書の作成費用や、住民票・戸籍抄本発行手数料なども発生します。

診断書の作成費用は受診した医療機関、住民票と戸籍抄本の発行手数料は申請先の自治体窓口で確認しましょう。

【参考】申立てにかかる費用・後見人等の報酬について|裁判所

成年後見人報酬の目安

成年後見人報酬の目安は、以下のとおりです。

管理財産額成年後見人報酬の目安
1,000万円以下月額2万円
1,000万円超え5,000万円以下月額3万円~4万円
5,000万円超え月額5万円~6万円

成年後見人報酬は、成年後見人としての業務遂行に対して支払う報酬で、申し立て後の審判で決定されるのが一般的です。

被後見人が管理している財産額が大きいほど後見業務が複雑化するため、財産の金額に応じて月額の報酬目安が異なります。

弁護士を成年後見人に選任する際の流れ

弁護士を成年後見人に選任する際は、基本的に以下の流れで進めます。

  • 家庭裁判所に弁護士を後見人にすることを伝える
  • 家庭裁判所の調査官が面談や調査をおこなう
  • 家庭裁判所が後見人になる人の能力を確認する
  • 家庭裁判所が成年後見人の最終選任をおこなう

一連の手続きを理解しておくことで、手続きをスムーズに進めやすくなるでしょう。

次に、各プロセスについて詳細を解説していきます。

家庭裁判所に弁護士を後見人にすることを伝える

まず、家庭裁判所に弁護士を後見人にする旨を伝えます。

本人または本人の四親等以内の親族が、申立人として手続きをおこなうのが一般的です。

手続きに必要な書類には、以下のようなものがあります。

  • 申立書類(申立書、申立事情説明書、財産目録、親族関係図 など)
  • 本人情報シート
  • 主治医の診断書
  • 本人の戸籍謄本
  • 住民票または戸籍附票
  • 成年後見等の登記がされていない証明書
  • 本人の健康状態に関する資料
  • 本人の財産や収支に関する資料

必要書類は各家庭裁判所によって異なる場合があるため、事前に管轄の家庭裁判所のホームページから確認しておくようにしましょう。

【参考】成年後見・保佐・補助申し立ての手引|裁判所

家庭裁判所の調査官が面談や調査をおこなう

家庭裁判所に申し立てがおこなわれると、家庭裁判所の調査官が提出された書類の調査を始めます。

また、本人や申立人・後見人候補者との面談を実施し、申立書類の事実確認や申し立ての理由、本人の病状などを確認します。

家庭裁判所や時期によっては面接日の予約がすぐに取れない可能性もあるため、書類準備ができた時点で早めに予約を取っておきましょう。

なお、面談は原則として家庭裁判所内でおこなわれますが、本人が入院中などで出向けない状況であれば、調査官が入院先に訪問して面談するケースもあります。

家庭裁判所が後見人になる人の能力を確認する

家庭裁判所による審理では、成年後見人に就任する人の能力も確認されます。

申立人も含めた面接で確認する情報のほか、後見人としてふさわしい人物であるかどうか、適切に後見業務を遂行できるかが総合的に判断されます。

面接実施後には、裁判官の判断によって親族への意向照会や医師による鑑定依頼が実施される可能性もあるでしょう。

これらの工程を経てから、家庭裁判所による最終的な成年後見人の選任へ進みます。

家庭裁判所が成年後見人の最終選任をおこなう

さまざまな調査の結果をもとに、家庭裁判所が成年後見人の最終選任をおこないます。

後見人候補者を立てていたとしても、必ずしも候補者がそのまま成年後見人として選任されるとは限りません。

家庭裁判所の判断によっては、別の成年後見人が選任される可能性もあります。

ここで選任された成年後見人によって、本人の財産調査や財産目録の作成といった後見業務が開始されます。

まとめ|成年後見人はまず弁護士に相談してみましょう

成年後見人を選任する際は、財産管理や法的なトラブルを防ぐ観点から、弁護士に依頼するのがおすすめです。

法律の専門家である弁護士には、公正な財産管理や法的問題を解決する能力があります。信頼できる弁護士を選ぶことで、負担が大きくなりやすい後見業務を安心して任せられるでしょう。

後見人問題で悩んだら、まずは一度弁護士に相談してみてください。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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