成年後見人を弁護士に依頼するメリット・デメリット|費用や依頼の流れ、よくあるトラブルを解説

成年後見人を弁護士に依頼するメリット・デメリット|費用や依頼の流れ、よくあるトラブルを解説

成年後見人とは、認知症、知的障害、精神障害などにより判断能力が欠けた方(成年被後見人)に代わり、その被後見人のために財産の管理や必要な契約などをおこなう方のことを指します。

成年後見人には、配偶者や子どもなどを選ぶこともできますが、事務負担が大きいことによる職務怠慢や、横領や着服といったトラブルの不安が残ります。

そのため、信頼性や専門性を重視するなら、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門家に依頼するのがおすすめです。

この記事では、弁護士を成年後見人に選任するメリットやデメリットを解説します。

また、適切な弁護士の選び方やトラブルの例なども紹介します。成年後見人を誰にするか迷っている方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

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この記事を監修した弁護士
野条 健人
野条 健人弁護士(弁護士法人かがりび綜合法律事務所)
かがりび綜合法律事務所は、お一人おひとりの悩みに最後まで寄り添いながら問題解決に取り組んでおります。お気軽にご相談ください。

成年後見人とは?役割やなれる方は?

成年後見人とは、認知症や精神障害などによって、判断能力が欠けた方(成年被後見人)のサポートをおこなう方を指します。

成年後見人の主な仕事内容には、財産管理、身上看護、職務内容の報告の3つがあります。

  • 財産管理:財産状況を確認するために財産目録を作るなど被後見人の財産を管理すること
  • 身上監護:被後見人の生活を維持するのに必要な仕事や療養看護などに関する契約を締結すること
  • 職務内容の報告:家庭裁判所に対して必要な報告をおこなうこと(実務上は毎年1回程度)

成年後見人になるための資格

成年後見人になるための特別な資格は不要です。

ただし、以下の欠格事由に該当する方は成年後見人になれません。

【成年後見人の欠格事由】

  • 未成年者
  • 成年後見人、保佐人、補助人などを解任されたことがある方
  • 破産者で復権していない方
  • 本人と訴訟をしている、または過去に訴訟をした方
  • 本人と訴訟をしている、または過去に訴訟をした方の配偶者、親、子ども
  • 行方不明者

実際に成年後見人に選ばれている方

成年後見人には配偶者、親、子どもといった親族よりも、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門家のほうが多く選任されています。

実際、最高裁判所の「成年後見関係事件の概況」によると、2022年(令和4年)1月~12月の選任状況は以下のとおりとなっています。

【成年後見人に選ばれている方の内訳】

親族7,560件
親族以外32,004件
うち弁護士:8,682件
司法書士:11,764件
社会福祉士:5,849件
市民後見人:271件
合計39,564件

成年後見人を弁護士に依頼するメリット

成年後見人を弁護士に依頼するメリットを紹介します。

契約や事務手続きを全て任せられる

成年後見人制度を利用するには、家庭裁判所への後見開始の審判の申し立てが必要です。申し立てには申立書、申立事情説明書、親族関係図、財産目録など、多くの書類を準備しなければなりません。

また、成年後見人として選定されたあとには、賃貸・医療・介護などに関する契約手続きや、家庭裁判所への報告なども必要になります。

成年後見人を弁護士に依頼することで、申し立ての手続きやそのあとの事務手続きなどを全て対応してもらうことが可能です。

これにより親族の時間的・精神的な負担が大きく軽減されるでしょう。

成年後見人の役割を公正におこなってもらえる

成年後見人は、被後見人の財産の管理をおこなうため、親族が成年後見人になった場合は親族同士の対立が生まれる可能性があります。

第三者である弁護士が成年後見人になることで、常に公正な立場で仕事おこなってくれます。

法律や契約のトラブルに対応してもらえる

判断能力が落ちると、法律トラブルに巻き込まれたり、誤った契約をしてしまったりする可能性があります。

そのような場合には、成年後見人は取消権などを行使して、契約を取り消すなどの対応が必要になります。

弁護士が成年後見人になった場合、たとえ被後見人が法律や契約のトラブルに巻き込まれたとしても、正しく権利を行使してくれます。

その結果、被後見人の財産などを守れたり、適切な契約を締結できたりします。

家族が遠方に住んでいても対応してもらえる

親族が遠方に住んでいる場合、被後見人に対して十分なサポートができないことがあります。

このような場合に、被後見人の居住地に近い弁護士を成年後見人に選ぶのがおすすめです。

成年後見人が被後見人の近くにいる弁護士なら、本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら適切なサポートをしてくれるでしょう。

相続についての相談や依頼ができる

被後見人が亡くなった場合、遺産相続の手続きが必要になります。

弁護士が成年後見人の場合、その遺産相続についての相談・依頼ができるケースが多いです。

亡くなった方の遺産状況や遺族の構成についても把握しているので相談がしやすく、依頼するときも話が早いでしょう。

成年後見人を弁護士に依頼するデメリット

続いて、成年後見人を弁護士に依頼するデメリットを紹介します。

毎月2万〜6万円程度の報酬が必要になる

弁護士に限らず、基本的には成年後見人には報酬を支払う必要があります。

報酬額は、後見人や被後見人の資力、管理する財産の金額などをもとに家庭裁判所によって決定されます。

成年後見人の報酬の目安は、以下の通りです。

財産額報酬(月額)
1,000万円以下2万円
1,000万円超
5,000万円以下
3万〜4万円
5,000万円超5万〜6万円

【参考】成年後見人等の報酬額のめやす|東京家庭裁判所・東京家庭裁判所立川支部

また、弁護士に成年後見人の申し立て手続きをおこなってもらう場合、弁護士費用も必要になります。

費用は弁護士事務所によって異なりますが、数万円~数十万円程度が相場です。

立場を悪用され、横領などのトラブルが発生する可能性がある

成年後見人は、被後見人の財産を管理できる立場にあるため、着服や横領などのリスクがあります。

事実、過去には成年後見人となった弁護士が、被後見人の財産を着服・横領したという残念な事件もありました。

熊本県弁護士会所属の弁護士が、成年後見人などとして管理していた口座から現金を引き出して不正流用した疑いがある問題で、県弁護士会は25日、平田秀規弁護士を業務上横領容疑で熊本地検に刑事告発したと発表した。調査により、被害は計11件、約2億4千万円にのぼる可能性があることが判明したという。
引用元:弁護士が2億円超を不正流用か 依頼人への賠償金など「ほぼ競馬に」:朝日新聞デジタル

成年後見人に選任される弁護士のほとんどは、信頼することができます。

しかし、着服や横領などの一定のリスクはあるため、事前に依頼したい弁護士のWebサイトでこれまでの経験・実績を確認したり、「弁護士懲戒処分検索センター」で弁護士の懲戒履歴の有無を調べたりして、信頼できる弁護士に依頼するのがよいでしょう。

成年後見人に弁護士を選ぶべきケースは?

誰が成年後見人になるのが適しているのかは、家庭や親族の状況などによって異なります。ここでは、成年後見人に弁護士を選任するほうがよいケースを紹介します。

将来的な相続に向けて親族間で揉めている場合

相続人同士が不仲・疎遠な場合や、すでに相続人同士で相続の話し合いをしている場合などは、弁護士に依頼するのがおすすめです。

このような状況において、相続人のひとりが成年後見人になると、被後見人(被相続人)の財産が使い込まれてしまうリスクがあります。

また、ほかの相続人から疑いの目を向けられてしまい、遺産分割に関する話し合いがさらに難航してしまう可能性も考えられます。

第三者である弁護士を成年後見人にすることで、このようなリスクや相続トラブルを防げるでしょう。

財産管理や身上監護に複雑な手続きが必要な場合

高額な財産を所有している場合や、土地・建物・株式のようにさまざまな種類の財産を所有している場合など、財産を管理する手続きが複雑なケースでは、弁護士に依頼したほうがよいでしょう。

また、病状が重くて医療機関や介護施設などとのやり取りが多いケースも、親族の負担を軽減するために、弁護士に依頼することをおすすめします。

成年後見人が必要な家族が遠方に住んでいる場合

遠方に住んでいる親族が成年後見人になった場合、サポートをするために多くの手間と労力をかけなければいけません。

一方で、被後見人の近くにいる弁護士に成年後見人を依頼すれば、親族の負担は大幅に軽減されます。

また、被後見人も、成年後見人である弁護士から十分なサポートを受けられるようになります。

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成年後見人に弁護士を依頼する方法

成年後見人に弁護士を依頼したい場合、まずは弁護士を探す必要があります。その後、裁判所への後見開始の審判の申し立てをおこないます。

以下では、成年後見人に弁護士を依頼する方法・手順を解説します。

①弁護士を選ぶ

まずは弁護士を選びます。大切な家族の生活や財産などについて依頼するため、なるべく信頼できる弁護士に依頼するのがよいでしょう。別件でかかわりのある弁護士に相談してみるのもおすすめです。

弁護士に心当たりがない場合は、成年後見制度が得意な弁護士事務所や、地域の弁護士会の法律相談センターなどに相談してみるのがよいでしょう。

相談するなかで、ていねいに説明をしてくれたり親身に話を聞いてくれたりと、信頼できる弁護士に出会える可能性があります。

②弁護士を成年後見人の候補者として後見開始の申し立てをおこなう

成年後見人制度を利用するためには、後見開始の審判の申し立てが必要になります。その際、弁護士を成年後見人の候補者にすることが可能です。

なお、誰を成年後見人にするかは家庭裁判所が決めるため、必ずしも候補者となった弁護士が成年後見人に選任されるわけではありません。

まとめ|成年後見制度を利用する際は弁護士へ相談を

成年後見人とは、認知症、知的障害、精神障害などを理由に判断能力が欠けた方の生活や財産管理をサポートする役割の人のことをいいます。

成年後見人になるために特別な資格は不要ですが、複雑な手続きが発生したり、法的な知識が必要になったりするケースも多いため、成年後見制度が得意な弁護士に依頼するのがおすすめです。

まずは「ベンナビ相続」で弁護士を探して、成年後見制度について相談してみましょう。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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