遺留分侵害額請求権で相続財産を取り戻す方法|時効や調停・訴訟の流れを解説

遺留分侵害額請求権で相続財産を取り戻す方法|時効や調停・訴訟の流れを解説
目次
  1. 遺留分侵害額請求権の定義|遺留分と時効の基礎知識
    1. 遺留分侵害額請求権とは?侵害者に金銭の支払いを請求できる権利のこと
    2. 各相続人がもつ遺留分の割合|相続人の兄弟姉妹には遺留分は認められない
    3. 遺留分侵害額請求権の2つの時効
  2. 遺留分侵害額請求権を行使する際の流れ|5つのステップ
    1. 1.請求する遺留分侵害額を計算する
    2. 2.侵害者に対して内容証明郵便を送る
    3. 3.侵害者との話し合いで解決を目指す
    4. 4.遺留分侵害額請求調停を申し立てる
    5. 5.遺留分侵害額請求訴訟を提起する
  3. 遺留分侵害額請求権を行使する際の内容証明郵便の作り方
    1. 内容証明郵便に書く内容
    2. 内容証明郵便の書式ルール
    3. 内容証明郵便にかかる費用
  4. 遺留分侵害額の請求調停を申し立てるための書類と費用
    1. 調停の申し立てに必要な書類
    2. 調停の申し立てにかかる費用
  5. 遺留分侵害額請求訴訟を提起するための書類と費用
    1. 訴訟を提起するのに必要な書類
    2. 訴訟を提起するのにかかる費用
  6. 遺留分侵害額請求を成功させるための4つのポイント
    1. できる限り早く遺留分侵害額請求をおこなう
    2. 譲歩できる内容などをあらかじめ決めておく
    3. 遺留分侵害の事実を証明できる証拠を確保する
    4. 遺留分侵害額請求が得意な弁護士に相談・依頼する
  7. 遺留分侵害額請求があった場合は相続税に注意しよう
    1. 権利者|取得した金額に応じた相続税を納付する必要がある
    2. 侵害者|更生請求をすることで相続税の還付を受けられる
  8. 遺留分侵害額請求権に関するよくある質問
    1. Q.遺留分侵害額請求は自力でおこなうことができるか?
    2. Q.遺留分侵害額請求の対象となる財産に順序はあるのか?
    3. Q.民法改正前にあった遺留分減殺請求権とは何が違うのか?
    4. Q.遺留分侵害額請求をされた場合はどのように対処すべきか?
  9. さいごに|遺留分侵害額請求をするなら弁護士に相談を!

遺言内容に納得できないため、遺留分侵害額請求を検討しているという方も多いのではないでしょうか。

法律で保障された、最低限度の相続分は確保したいと考えるのは当然です。

ただし、遺留分侵害額請求権に関しては注意点も多くあります。

また、自分自身で調べていても、遺留分侵害額請求権についてわからない方も少なくないでしょう。

できる限り少ない負担で遺留分侵害額請求をおこなうためにも、早い段階で弁護士に相談するのがおすすめです。

本記事では、遺留分侵害額請求権の基礎知識、遺留分侵害額請求を成功させるためのポイントについて解説します。

【注目】遺留分侵害額請求でお悩みの方へ

不公平な相続に対して遺留分侵害額請求をしようと考えていても、方法がわからずに悩んでいませんか。

結論からいうと、遺留分侵害額請求をしたいなら、一度弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットを得ることができます。

  • 自分の遺留分を正しく算出してもらえる
  • 遺留分侵害額請求をする際のポイントを教えてもらえる
  • 依頼した場合、遺留分侵害額請求を全て任せることができる

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この記事を監修した弁護士
関口 英紀弁護士(川崎相続遺言法律事務所)
遺産分割など揉めやすい問題の交渉、調停、訴訟から、生前の相続対策として遺言や家族信託の活用についてまで幅広く対応。相談者の事情に合わせたオーダーメイドの解決を目指しており、多くの実績がある(※本コラムにおける、法理論に関する部分のみを監修)。

遺留分侵害額請求権の定義|遺留分と時効の基礎知識

遺留分とは、法律で定められた相続人が最低限受け取るべき財産の割合のことです。

遺留分を守るために、遺言で遺留分を下回る財産しか相続させないことは、法律上認められていません。

しかし実際には、遺言や贈与などによって遺留分が不足する場合があります

ここでは、遺留分侵害額請求権の基礎知識をそれぞれ解説します。

遺留分侵害額請求権とは?侵害者に金銭の支払いを請求できる権利のこと

遺留分侵害額請求権とは、遺留分権利者が生前贈与や遺言などによって遺留分を不当に減らされた場合に、その減らされた額を請求することができる権利のことです。

民法第1046条に基づいて、この権利を行使することができます。

(遺留分侵害額の請求)
第千四十六条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
2 遺留分侵害額は、第千四十二条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。
一 遺留分権利者が受けた遺贈又は第九百三条第一項に規定する贈与の価額
二 第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額
三 被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額

引用元:民法 | e-Gov法令検索

遺留分権利者とは、配偶者や子ども、直系尊属など、相続人のうち一定の親族のことです。

遺留分侵害額請求権は、遺留分を侵害している受贈者や受遺者に対してのみ行使できます

各相続人がもつ遺留分の割合|相続人の兄弟姉妹には遺留分は認められない

遺留分の額は、相続人の数や関係によって法律で定められています。

相続人総体的遺留分相続人ごとの個別遺留分
配偶者父母兄弟姉妹
配偶者のみ1/21/2×××
配偶者と子1/21/41/4××
配偶者と父母1/22/6×1/6×
配偶者と兄弟姉妹1/21/2×××
子のみ1/2×1/2××
父母のみ1/3××1/3×
兄弟姉妹のみなし××××

たとえば、配偶者と2人の子どもがいる場合、配偶者は遺産の4分の1、子どもはそれぞれ8分の1を遺留分として受け取ることができます。

もし子どもが3人以上いる場合でも、配偶者の遺留分は4分の1のままですが、子どもたちの遺留分は全体の4分の1を等しくわけることになります。

(遺留分の帰属及びその割合)
第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。

引用元:民法 | e-Gov法令検索

遺留分侵害額請求権の2つの時効

遺留分侵害額請求権は、無制限に行使できるわけではありません。

遺留分侵害額請求権には時効があります

時効とは、一定期間の間に権利を行使しないと、その権利が消滅する制度です。

遺留分侵害額請求権の時効には、消滅時効除斥期間の2種類があります。

消滅時効とは、相続開始及び遺留分を侵害している遺贈や贈与があることを知ったときから1年以内に請求しないと、その権利が消滅するというものです。

一方、除斥期間とは、相続開始から10年が経過した時点で遺留分侵害額請求権が消滅するというものです。

したがって、遺留分侵害額請求権を行使する場合は、これらの時効に注意しなければなりません。

(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
第千四十八条 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

引用元:民法 | e-Gov法令検索

遺留分の侵害を知ったときから1年(消滅時効)

遺留分侵害額請求権は、消滅時効の影響を受けます。

消滅時効とは、権利者が一定期間にわたって権利を行使しなかった場合に、その権利が失われる制度のことです。

遺留分侵害額請求権の消滅時効は、遺留分の侵害を知った日から1年間です。

この期間が経過すると、侵害者は時効の援用を主張できます。

時効の援用とは、消滅時効が完成したことを理由に権利者の請求を拒否することです。

したがって、遺留分侵害額請求権を行使する場合は、消滅時効の期間に注意する必要があります。

相続開始のときから10年(除斥期間)

相続が開始されてから10年が経過すると、遺留分侵害額請求権は除斥されます。

除斥とは、権利者が一定期間権利を行使しなかったことにより、権利が自動的に消滅することをいいます。

除斥期間は消滅時効と似ていますが、時効の更新や援用などの要素は関係ありません。

遺留分侵害額請求権を行使する際の流れ|5つのステップ

遺留分侵害額請求をおこなうためには、まず相続人や受贈者に対して、遺留分侵害額請求権の行使を通知しなければなりません。

その後、話し合いや調停、裁判などで侵害された遺留分の額を確定し、支払いを求めます。

ここでは、遺留分侵害額請求権を行使するステップ5つをそれぞれ解説します。

1.請求する遺留分侵害額を計算する

まず、遺留分の割合に基づいて請求する遺留分侵害額を計算しなければなりません。

実際に、遺留分の具体的な計算例を紹介します。

こちらでは、

  • 遺産総額5,000万円
  • 相続人は配偶者と子ども2人

の条件で計算します。

今回の場合、遺留分の割合は、

  • 配偶者:1/4
  • 子ども2人:各1/8(1/4×1/2)

となります。

これらの割合を基に、遺留分を算出すると、

  • 配偶者:5,000万円×1/4=1,250万円
  • 子ども2人:5,000万円×1/8=625万円ずつ

となります。

2.侵害者に対して内容証明郵便を送る

遺留分侵害額請求権の通知は、内容証明郵便などの書面でおこなうのが望ましいでしょう。

なぜなら、内容証明郵便は通知した日付や内容を証明する効力があるからです。

遺留分侵害額請求権には、先ほどのべた1年の消滅時効があります。

時効を防止するためには、書面で通知をして、証拠を残す必要があります。

したがって、遺留分侵害額請求権を行使する場合は、内容証明郵便で通知することをおすすめします。

3.侵害者との話し合いで解決を目指す

遺留分侵害額請求権の行使を通知した場合、遺留分の侵害者と遺留分侵害について協議し、支払いを得なければなりません。

協議の結果、遺留分侵害額の支払いについて合意に達したら、その内容を和解書や合意書に記載します。

4.遺留分侵害額請求調停を申し立てる

遺留分侵害額請求調停は、遺留分侵害額を請求する相続人が、遺留分を侵害した者から支払いを得られない場合で、当事者間で話し合いができないときに利用できる制度です。

調停の申し立ては、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所でおこないます。

調停では、裁判官や調停委員が中立的な立場から双方の主張や事情を聞き、話し合いでの解決を目指します

調停で合意に至れば、調停調書という法的効力のある文書が作成されます。

5.遺留分侵害額請求訴訟を提起する

遺留分権利者が調停で解決できなかった場合、相続人の住んでいる地域の裁判所に遺留分侵害額請求訴訟を起こすことができます

裁判所は訴状を受け付けて、遺留分侵害額請求が認められるか、審理します。

裁判所が請求を認める判決を下せば、遺留分侵害者は判決に従って侵害額を支払わなければなりません。

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遺留分侵害額請求権を行使する際の内容証明郵便の作り方

遺留分侵害額請求権を行使する場合、通常は日本郵便の内容証明郵便を利用します。

内容証明郵便は、相手に送った内容が何であるかを証明することができる郵便サービスです。

内容証明郵便に書くべきことには特に決まりはありませんが、書式にはルールがありますので、間違えないように注意しましょう。

ここでは、遺留分侵害額請求権を行使する際の内容証明郵便の作り方をそれぞれ解説します。

内容証明郵便に書く内容

内容証明郵便に書く内容は、以下のとおりです。

  • 日付
  • 侵害者の住所と氏名
  • 権利者の住所と氏名
  • 被相続人の氏名
  • 権利を侵害している遺産内容
  • 遺留分侵害額請求を行使する意思表示
  • 請求金額、支払い期限、支払い方法

遺産の全体金額や遺留分の割合、遺留分侵害額などが不明な場合は、遺留分侵害額請求の権利を行使するという旨を伝えるだけで十分です。

具体的な遺留分侵害割合や請求金額などがわからない場合は、記入する必要はありません。

もし請求内容に誤りがあれば、あとから訂正するのは困難で、不利益を被るおそれがあるので注意が必要です。

内容証明郵便の書式ルール

内容証明郵便を作成する際は、以下の書式ルールを守らなければなりません。

種類字数・行数制限
縦書き・1行20字以内、1枚26行以内
横書き・1行20字以内、1枚26行以内
・1行13字以内、1枚40行以内
・1行26字以内、1枚20行以内

ほかにも、謄本の字数の計算方法、文字・記号の訂正方法、2枚以上にわたる場合の契印などに関するルールも設けられています。

内容証明郵便(謄本)は、集配郵便局および支社が指定した郵便局に限って差し出すことができます。

また、インターネットからも申し込み可能です。

詳しくは、日本郵便のホームページを参照してください。

【参考元】内容証明|日本郵便株式会社

内容証明郵便にかかる費用

内容証明郵便を利用するには、基本料金に加えて、一般書留と内容証明のそれぞれの加算料金が必要です。

基本料金は重量やサイズによって異なります。

種類料金
基本料金定形郵便物25gまで:84円、50gまで:94円
定形外郵便物(規格内)50gまで:120円、100gまで:140円、150gまで:210円、250gまで:250円
定形外郵便物(規格外)50gまで:200円、100gまで:220円、150gまで:300円、250gまで:350円
一般書留の加算料金損害要償金額が10万円まで:435円(以降5万円ごとに21円増)
内容証明の加算料金1枚:440円、2枚:700円、3枚:960円、4枚:1,220円、5枚:1,480円
その他速達
250gまで:260円
配達証明
差出時:320円、差出後:440円

また、速達や配達証明などのオプションを利用する場合は、その分の料金も必要になります。

オプションを利用すると、郵便物の到着が早くなったり、配達がなされたことを証明することができたりします。

遺留分侵害額の請求調停を申し立てるための書類と費用

遺留分侵害額の請求調停をおこなう場合、相手方の住所地にある家庭裁判所に申立書や必要な書類を提出しなければなりません。

申立書には、遺留分侵害額の算定方法や請求額の根拠などを明記する必要があります。

また、相続人の氏名や住所、相続財産の内容なども添付する必要があります。

ここでは、遺留分侵害額の請求調停を申し立てるための書類と費用についてそれぞれ解説します。

調停の申し立てに必要な書類

調停の申し立てに必要な書類は、以下のとおりです。

  • 遺留分侵害額の請求調停の申立書とその写し(相手方の人数分の通数)
  • 被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺言書写しまたは遺言書の検認調書謄本の写し
  • 遺産に関する証明書(不動産であれば不動産登記事項証明書や固定資産評価証明書など)
  • 被相続人の子どもが死亡している場合は、その方の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
  • 被相続人に父母が含まれて一方が亡くなっている場合は、その方の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)

なお、申立書については裁判所のWebサイトよりダウンロードできます。

こちらのページには書式の記載例もあるため、ご自身で作成する際は参考にするとよいでしょう。

【参考元】遺留分侵害額の請求調停の申立書|裁判所

調停の申し立てにかかる費用

調停の申し立てには、以下のような費用が発生します。

  • 1,200円分の収入印紙
  • 連絡用の郵便切手

遺留分侵害額請求訴訟を提起するための書類と費用

遺留分侵害額請求の調停が不成立になった場合、請求者は遺留分侵害額請求訴訟を提起することができます。

この場合、原告の住所地又は被告の住所地又は被相続人の最終居住地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所に訴状を提出しなければなりません。

訴訟を提起するのに必要な書類

訴訟を提起するのに必要な書類は、以下のとおりです。

  • 訴状
  • 遺留分侵害額の請求として送付した内容証明郵便などの証拠
  • 遺言書の写し
  • 被相続人および相続人全員分の戸籍謄本
  • 相続財産の目録
  • 残高証明書などの証拠

訴状の書き方は、裁判所のホームページにも記載されていますが、専門家でないと作成するのは難しいです。

そのため、訴訟を提起する場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。

訴訟を提起するのにかかる費用

訴訟を提起する際には、主に以下のような費用がかかります。

  • 裁判所手数料
  • 郵便切手代

請求金額によって異なるため、詳しくは下記の参考資料をご確認ください。

【参考元】
手数料額早見表 | 裁判所
郵便切手一覧表 (東京簡易裁判所)| 裁判所

遺留分侵害額請求を成功させるための4つのポイント

遺留分侵害額請求手続きは複雑なため、弁護士の協力を求めるのがよいでしょう。

しかし、弁護士に頼むだけで問題が解決するとは限りません。

ご自身の状況や希望に合わせて、手続きを進めていくことが大切になります。

ここでは、遺留分侵害額請求を成功させるためのポイント4つをそれぞれ解説します。

できる限り早く遺留分侵害額請求をおこなう

遺留分侵害額請求のポイントは、遺産の動向に目を光らせることです。

相続財産を取得した相続人が、相続した財産を売却したり贈与したりした場合、遺留分侵害額請求をしても取り戻せる財産が減少してしまいます。

そのため、遺留分侵害額請求をおこなう場合は、できるだけ早く請求をすることが肝心です。

遺留分侵害額請求をするためには、相続財産の調査や証拠の収集なども必要になります。

これらの作業には時間がかかる場合がありますので、遅れないようにしましょう。

譲歩できる内容などをあらかじめ決めておく

遺留分侵害額の請求調停をする場合は、調停委員が間に入りますが、話し合いによる解決になります。

当事者間で合意が成立しなければ、調停は不成立となります。

ですから、申立人や相手方のどちらかが妥協しない限り、調停が成功する見込みはありません。

相手方の譲歩を期待するのもひとつの方法ですが、早期に解決するためにはご自身も歩み寄る必要があります

双方が妥協しない場合は、訴訟に移行する可能性が高くなります。

訴訟は弁護士費用や時間がかかりますし、遺留分侵害額以外にも損失が出るかもしれません。

そのため、費用や時間を考慮して調停に臨むようにしましょう。

遺留分侵害の事実を証明できる証拠を確保する

遺留分侵害額を成功させるためには、相手方に対して、遺留分の計算方法とその根拠を明確に示すことが必要です。

相手方が支払いに応じない場合は、調停や裁判の手続きを進めることができますが、その際には遺留分の請求に関する事実や証拠をしっかりと整理しておかなければなりません。

遺留分の調停や裁判では、相手方の主張に対抗するために、論理的で説得力のある主張を展開することが求められます。

そのため、遺留分を請求する前から、証拠を収集し、主張の根拠を明らかにしておくことが望ましいでしょう。

遺留分侵害額請求が得意な弁護士に相談・依頼する

弁護士に相談・依頼することで、時効を防ぎ、適切に請求することができます

遺留分侵害額請求には1年の時効がありますが、弁護士に依頼すれば適切な内容証明郵便を送ってその後の請求をうまく進めることができます。

また、遺留分侵害額請求は相続人間での感情的な対立を招くことが多くあります。

弁護士に依頼すれば、依頼者のためにもっとも有利で効果的な方法で請求を進めることができます。

調停や訴訟にも備えられて、早めに行動することができます。

遺留分が得意な弁護士を見つけたい場合は、「ベンナビ相続」がおすすめです。

遺留分問題は、相続人間の紛争の原因となることが多く、解決するには専門的な知識と経験が必要になります。

ベンナビ相続では、全国各地の遺留分問題に強い弁護士を紹介しています。

無料相談や電話相談も可能な法律事務所もありますので、遠方に住んでいる場合でも安心して利用できます。

ベンナビ相続で、遺留分問題の解決に向けて一歩を踏み出しましょう。

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遺留分侵害額請求があった場合は相続税に注意しよう

遺留分侵害額は相続財産の一部とみなされるため、相続税の対象になります。

遺留分侵害額請求をおこなって金銭を受け取った場合、その金額が相続財産に加算されます(遺産の価額が基礎控除を超える場合)。

相続税の申告は、相続開始から10ヵ月以内におこなわなければなりません。

遅れて申告した場合、「相続税の期限後申告書」を提出し、速やかに相続税を支払う必要があります。

遺留分侵害額を支払った側は、支払った金額が相続財産から差し引かれるため相続税が減少します。

もし以前に納めた相続税が多すぎると判断されたら、更正請求をして相続税の返還を求めることができるでしょう。

権利者|取得した金額に応じた相続税を納付する必要がある

遺留分侵害額に対しては、相続税法上の遺産とみなされるため、相続税が課せられます。

したがって、遺留分侵害額を受け取ることになった遺留分権利者は、相続税の納付義務を負うことになります。

また、すでに相続税を納付していた場合でも、遺留分侵害額の分だけ相続税の納付額が増加する可能性があるでしょう。

さらに、遺留分の計算は、相続税申告の期限内におこなうのが望ましいです。

そうすることで、遺留分精算後の財産受け取り金額に基づいて、遺留分権利者と遺留分義務者がそれぞれ正しい相続税を申告できます。

侵害者|更生請求をすることで相続税の還付を受けられる

遺留分を支払うと、相続した財産の価値が減少します。

その結果、相続税の納税義務が過大になる可能性があります。

この場合、更正の請求をおこなって相続税の還付を受けることが可能です。

ただし、更正の請求には和解成立日から4ヵ月以内という期限があるので注意しましょう。

相続税の更正の請求は専門的な知識や手続きが必要な場合が多く、ご自身でおこなうのは困難です。

遺留分侵害額を支払ったことで相続税額に変動がある場合には、相続税に詳しい税理士に相談することをおすすめします。

遺留分侵害額請求権に関するよくある質問

遺留分侵害額請求権については、事前に把握しておいたほうがよい項目がいくつかあります。

ここでは、遺留分侵害額請求権に関してよくある以下の質問について解説します。

Q.遺留分侵害額請求は自力でおこなうことができるか?

遺留分侵害額請求は自力でおこなうこともできますが、弁護士に依頼することをおすすめします。

遺留分侵害が明らかな場合、法律の知識があれば手続きはそれほど複雑ではありません。

しかし、法律に不慣れな人が仕事や生活と並行してこのような問題に対処するのは、大変なストレスになります。

手続きの期限を守るのも難しいため、一般的には弁護士などの専門家に依頼すると、安心して任せることができるでしょう。

Q.遺留分侵害額請求の対象となる財産に順序はあるのか?

遺留分侵害額の負担に関しては、民法が対象と順序を定めています

遺留分侵害額請求に応じて金銭を支払う義務は、上位の遺贈・贈与を受けた人から始まります(民法第1047条第1項)。

(受遺者又は受贈者の負担額)
第千四十七条 受遺者又は受贈者は、次の各号の定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から第千四十二条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する。
一 受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。
二 受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
三 受贈者が複数あるとき(前号に規定する場合を除く。)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する。

引用元:民法 | e-Gov法令検索

Q.民法改正前にあった遺留分減殺請求権とは何が違うのか?

遺留分侵害額請求権は、相続法の改正によって新たに設けられた権利です。

この権利は、遺留分を侵害する贈与や遺贈があった場合に、その金額に相当する金銭を侵害者から請求できるというものです。

以前は遺留分減殺請求権という権利がありましたが、これは財産そのものの返還を求めるもので、不動産の共有化や事業継承の妨げになるという欠点がありました。

そこで、2019年に施行された改正法では遺留分減殺請求権は廃止され、遺留分侵害額請求権に置き換えられたのです。

Q.遺留分侵害額請求をされた場合はどのように対処すべきか?

遺留分侵害額請求をされて支払いを求められた場合には、時効の有無や遺留分侵害額の計算方法など、以下の点を確認することが重要です。

  • 本当に相手は遺留分権利者なのか
  • 遺留分侵害額請求権に時効は成立していないか
  • 相手方の遺留分の算定が正しいかどうか
  • 特別受益にあたる生前贈与を相手方が受けているかどうか

話し合いや交渉ができる相手方の場合には、まずは任意交渉による解決を図ることが望ましいでしょう。

その際、メモや音声などで記録を残すことで、あとから内容を確認することができます。

この時点で双方の折り合いがついた場合には、あとから相手方に追加請求をされないよう、合意した内容を双方で確認し、合意書の取り交わしをするのが重要です。

しかし、話し合いでの解決ができない場合には、家庭裁判所による調停や訴訟に移行します。

調停、訴訟の順に手続が踏むことが一般的ですが、中にはいきなり訴訟に発展することもあります。

1日でも早い解決を望むのであれば、相手方から調停の申し立てをされたら、調停期日への出頭をしたほうが賢明といえます。

遺留分減殺請求されているにもかかわらず無視し続けていると、遅延損害金の支払義務が生じる場合もあり、裁判を起こされるだけでなく、裁判の対応とともに財産の差し押さえなどの強制執行を受けるおそれがあるので注意しましょう。

さいごに|遺留分侵害額請求をするなら弁護士に相談を!

遺留分侵害額請求は、相続人同士で思わぬトラブルに発展する可能性があります。

遺留分侵害額請求については時効もあるので、遅れてしまうと請求ができなくなるおそれもあります。

そのため、遺留分侵害額請求をおこなう可能性が出てきた段階で弁護士に相談することをおすすめします。

そして、弁護士を探す方法のひとつに「ベンナビ相続」の活用があります。

ベンナビ相続は、相続問題を解決するために、専門的な知識と経験をもつ弁護士を紹介するポータルサイトです。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
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