労働問題
【労働者向け】退職勧奨とは?退職を促されたときの流れと判断するときのポイント
2024.04.30
上司などによるパワハラは、時にうつ病などの精神障害を発症する原因になり得ます。
パワハラに起因する精神障害によって出勤できなくなり、辛い日々を過ごしている方もいらっしゃることでしょう。
パワハラによって精神障害を患ったときは、労働基準監督署に対して労災保険給付を請求できます。
該当する労災保険給付の種類や手続きを確認して、漏れなく請求をおこないましょう。
また、労災保険給付の請求と併せて、会社に対する損害賠償請求もご検討ください。
本記事では、パワハラによるうつ病などの精神障害の労災認定の可否、および労災保険給付の種類や手続きなどについて解説します。
職場でパワハラを受けて辛い思いをしている方は、本記事を参考にしてください。
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職場でパワハラを受けると、うつ病などの精神障害を発症するケースがあります。
パワハラに起因する精神障害は、労災認定の対象となることがあります。
具体的には、以下の要件をすべて満たす場合には、パワハラに起因する精神障害について労災認定を受けることができます。
労災認定の対象となるパワハラのパターンとしては、以下の例が挙げられます。
上司から暴行等の身体的攻撃を受け、その程度が以下のように過度である場合には、労働者に対する心理的負荷が強度であると判断され、精神障害が労災認定の対象となる可能性が高いと考えられます。
上司から以下のような精神的攻撃を繰り返し受けた場合には、労働者に対する心理的負荷が強度であると判断され、精神障害が労災認定の対象となる可能性が高いと考えられます。
パワハラは、上司によっておこなわれるものに限りません。
集団で個人に対して嫌がらせをするようなケースも、パワハラに該当します。
たとえば同僚や部下など複数人が結託して、労働者に対して上記に挙げたような身体的攻撃や精神的攻撃をした場合には、労働者に対する心理的負荷が強度であると判断され、精神障害が労災認定の対象となる可能性が高いと考えられます。
上司や結託した複数人の同僚・部下などによるパワハラであっても、労働者に対する心理的負荷が中程度以下である場合には、それだけでは精神障害が労災認定の対象になりません。
たとえば治療を要さない程度の暴行による身体的攻撃、または精神的攻撃が上司等によっておこなわれたものの、その行為が反復・継続していなければ、労働者に対する心理的負荷の程度は中程度にとどまると解されます。
しかし労働者に対する心理的負荷が中程度であっても、労働者からパワハラの相談を受けた会社が適切に対応せず改善がなされなければ、労働者にはさらなる心理的負荷がかかります。
この場合、労働者に対する心理的負荷が強度であると判断され、精神障害が労災認定の対象となる可能性が高いと考えられます。
上司等からパワハラを受け、その後に精神障害を発症したとしても、以下のケースにおいては労災認定を受けることができません。
精神障害の労災認定を受けるためには、労働者に対する心理的負荷が強度であると認められる必要があります。
心理的負荷の程度が弱いか、または中程度にとどまる場合には、精神障害について労災認定を受けることができません。
上司等による暴行などの身体的攻撃については、それが治療を要する程度に至っておらず、かつ反復・継続していなければ、労働者に対する心理的負荷は中程度以下にとどまると解されています。
上司等による精神的攻撃については、それが反復・継続していなければ、労働者に対する心理的負荷は中程度以下にとどまると解されています。
ただし前述のとおり、パワハラ行為自体による心理的負荷が中程度であっても、相談を受けた会社が適切に対応・改善しなかった場合には、心理的負荷が強度であると評価されることがあります。
労災認定の対象となる精神障害は、業務上の原因によって発症したものに限られます。
業務外の原因で発症した精神障害については、労災認定を受けることができません。
うつ病などの精神障害は、必ずしもパワハラなどの業務上の原因によってのみ発症するとは限りません。
それ以外にも、プライベートなど業務以外の場面で生じた心理的負荷によって発症するケースや、労働者本人の個体側要因によって発症するケースがあります。
これらのケースにおいては、精神障害について労災認定を受けられないことに注意が必要です。
対象疾病の発病前おおむね6か月間において、業務以外の以下の出来事が発生した場合には、労働者に対する心理的負荷が強度と判断されます。
心理的負荷が強度と判断される業務以外の出来事 |
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上記の出来事のいずれかが認められる場合には、その出来事の内容等を詳細に調査し、精神障害の発病原因であると判断することの医学的な妥当性が慎重に検討されます。
その上で、業務外の出来事による発病と認められた場合には、精神障害について労災認定を受けることができません。
これに対して、業務外において心理的負荷が中程度以下と判断される出来事の発生しか認められない場合は、原則としてその出来事が発病原因であるとは判断されません。
この場合、業務上の心理的負荷が強度であると認められれば、精神障害について労災認定を受けることができます。
心理的負荷が中程度以下と判断される業務以外の出来事 |
<中程度>
<弱い>
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「個体側要因」とは、個人に内在している脆弱性・反応性を意味します。
精神障害に関する個体側要因に当たるのは、既往の精神障害や現在治療中の精神障害、またはアルコール依存状況などです。
パワハラを受けた労働者につき、これらの個体側要因が存在することが明らかな場合には、労災認定の審査においてその内容等が調査の対象になります。
既往の精神障害が再発したもの、または現在治療中の精神障害については、業務外の原因によるものであるため労災認定の対象になりません。
業務による強い心理的負荷が認められる一方で、重度のアルコール依存状況がある等の顕著な個体側要因が認められる場合には、どちらが発病の主因であるかについて医学的な妥当性が慎重に検討されます。
その結果、個体側要因が発病の主要因であると判断された場合には、精神障害について労災認定を受けることができません。
パワハラに起因する精神障害が労災認定の要件を満たす場合には、主に以下の労災保険給付を受けることができます。
「療養補償等給付」は、労災に当たるケガや病気の治療に関する給付です。
「療養の給付」と「療養の費用の支給」の2種類があります。
労災病院または労災保険指定医療機関では、労災に当たるケガや病気の治療を無償で受けることができます(=療養の給付)。
労災保険指定医療機関は、厚生労働省のウェブサイト上で検索可能です。
その他の医療機関では、労災の当たるケガや病気の治療を受ける際には、いったん治療費全額を自己負担する必要があります。
健康保険は適用できません。
この場合、労働基準監督署に請求すれば、支払った治療費全額の償還を受けることができます(=療養の費用の支給)。
「休業補償等給付」は、労災に当たるケガや病気の治療等のために仕事を休んだ場合に、得られなかった収入を補填するためにおこなわれる給付です。
給付基礎日額(原則として労働基準法上の平均賃金)の80%相当額が支給されます。
「障害補償等給付」は、労災に当たるケガや病気が完治せず後遺症が残った場合に、その内容や程度によって認定される障害等級に応じておこなわれる給付です。
障害等級1級から7級までの後遺症が残った場合は年金と一時金、8級から14級までの後遺症が残った場合は一時金を受給できます。
具体的な受給額は、障害等級および被災前の所得水準に応じて決まります。
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労災保険給付のうち、療養の給付については労災病院または労災保険指定医療機関の窓口で、その他の給付については事業場の所在地を管轄する労働基準監督署で請求手続きをおこないます。
給付の種類 | 提出資料 | 提出先 |
療養補償等給付(療養の給付) | ・療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付請求書(様式第5号) | 労災病院または労災保険指定医療機関の窓口 |
療養補償等給付(療養の費用の支給) | ・療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の費用請求書(様式第7号) ・支払った費用が分かる領収書等 | 事業場の所在地を管轄する労働基準監督署 |
休業補償等給付 | ・休業補償給付・複数事業労働者休業給付支給請求書(様式第8号) ※同一の事由によって、障害厚生年金、障害基礎年金等の支給を受けている場合は、その支給額を証明する書類の添付が必要 | 事業場の所在地を管轄する労働基準監督署 |
傷害補償等給付 | ・障害補償給付・複数事業労働者障害給付支給請求書(様式第10号) ・レントゲン写真等の資料(必要な場合) ※同一の事由によって、障害厚生年金、障害基礎年金等の支給を受けている場合は、その支給額を証明する書類の添付が必要 | 事業場の所在地を管轄する労働基準監督署 |
パワハラによってうつ病などの精神障害を発症した場合には、労災保険給付の請求と併せて、会社に対する損害賠償請求もおこなうことができます。
労災保険給付は、被災労働者の損害全額を補填するものではありません。
逸失利益については一部しか補填されず、慰謝料は補償の対象外とされています。
労災保険給付によって補償されない損害については、会社に対して損害賠償を請求可能です。
労災保険給付と損害賠償を併せて請求することにより、パワハラによる労災について十分な補償を受けることができます。
社内におけるパワハラを防止することも、会社が労働者に対して負う安全配慮義務の一環です。 |
パワハラに関する損害賠償請求は、主に会社との和解交渉・労働審判・訴訟によっておこないます。
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損害賠償請求の各手続きについては、弁護士を代理人として対応するのが安心です。
弁護士が法的な根拠に基づく請求・主張をおこなうことで、パワハラ被害に関する適正な損害賠償を受けられる可能性が高まります。
また、対応の労力が大幅に軽減される点や、会社と直接やり取りする精神的な負担が軽減される点も大きなメリットです。
職場でパワハラを受けて精神障害を発症してしまったら、労災保険給付の請求(労災認定の申請)をおこないましょう。
ただし、それだけでは慰謝料などを回収できないため、会社に対する損害賠償請求も併せて検討しましょう。
パワハラに関する損害賠償請求をおこなう際には、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
弁護士を代理人として対応することで、労力や精神的負担が軽減されるとともに、適正額の損害賠償を受けられる可能性が高まります。
「ベンナビ労働問題」には、パワハラを含む労働問題への対応を得意とする弁護士が多数登録されています。
地域や相談内容に応じて、スムーズに弁護士を検索可能です。
パワハラの被害にお悩みの方は、「ベンナビ労働問題」を通じてお早めに弁護士へご相談ください。
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