弁護士が広告で失敗しないために覚えておくべきこと | 広告ルールと注意点を徹底解説

弁護士が広告で失敗しないために覚えておくべきこと | 広告ルールと注意点を徹底解説
  • 「弁護士の広告規制を正しく理解しておきたい」
  • 「弁護士・法律事務所が広告を出す際のポイントや注意点を知りたい」

ホームページやSNS、Web広告での集客を検討しているものの、規制に関する十分な知識がなく、行動に移せていない方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、弁護士が広告をする際に知っておくべきルールや注意点を詳しく解説します。

各種広告ルールに違反した場合の罰則などもあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

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弁護士に限らず全ての事業者が守らなければならない広告ルール

はじめに、弁護士に限らず全ての事業者が守らなければならない広告ルールを紹介します。

主に3つのルールがあるので、それぞれのポイントをしっかりと押さえておきましょう。

1.優良誤認表示をしてはいけない

広告を出すときは、優良誤認表示にあたらないかどうかを確認しておくことが大切です。

優良誤認表示とは、実際のもの、または、競合他社のものよりも著しく優良であると誤認させる可能性がある表示を指します。

消費者の合理的な選択を阻害する可能性があるため、景品表示法で禁止されていることを覚えておきましょう。

たとえば、実際には予約してから相談できるまでに数日かかることがほとんどであるにもかかわらず、「即日相談可能」などと掲載することは優良誤認表示にあたる可能性があります。

なお、故意かどうかに関係なく、誤って優良誤認表示をおこなってしまった場合でも、景品表示法違反となる点に注意してください。

2.有利誤認表示をしてはいけない

有利誤認表示をしないことも、全ての事業者が守らなければならない広告ルールのひとつです。

有利誤認表示とは、価格やサービス内容などを実際のものや競合他社のものよりもお得であると誤認させる表示を指します。

たとえば、1万円で販売している実態がないにもかかわらず「通常1万円のところ5,000円で受付中」などと表示するケースが典型的な例です。

また、他社が提供している類似サービスの価格を比較対象として表示する行為も、比較対象の価格に根拠がない場合などは有利誤認表示にあたる可能性があります。

有利誤認表示は景品表示法によって規制されており、実際に違反した事業者が処分されている事例も少なくありません

3.著作権侵害をしてはいけない

広告を出す際は、著作権侵害にも十分注意しておかなければなりません。

ほかのWebサイトなどで使用されている画像や文章などは著作物として保護されているケースがあるため、無断で使用すると著作権法に違反する可能性があります。

どうしても他者の著作物を使用したい場合は、著作権者と契約を結びましょう。

クレジット表記だけで済ませているケースもありますが、それだけでは著作権者の許諾を得たことにはなりません。

「弁護士等の業務広告に関する規程」で禁止されている広告ルール

日本弁護士連合会では、「弁護士等の業務広告に関する規程」で広告ルールを規定しています。

余計なトラブルを起こさないためにも、禁止されている広告ルールをあらかじめ把握しておくことが大切です。

1.規定で禁止されている7つの広告

「弁護士等の業務広告に関する規程」で禁止されている広告の種類は以下の7つです。

  • 事実に合致していない広告
  • 誤導または誤認の恐れのある広告
  • 誇大または過度な期待を抱かせる広告
  • 困惑させたり、過度に不安を煽ったりする広告
  • 特定の弁護士や弁護士法人などと比較をした広告
  • 法令や日弁連・所属弁護士会の会則などに違反する広告
  • 弁護士等の品位または信用を損なう恐れのある広告

事実に合致していない広告

まず、事実に合致していない広告をおこなうことは規定で禁止されています。

弁護士に対する信用が失墜したり、閲覧者の誤解を招いたりするおそれがあるためです。

たとえば、「必ず勝訴できます」といった広告は、事実に合致していない広告といえるでしょう。

裁判で100%勝てる保証などないため、閲覧者に誤った情報を提供していることになってしまいます。

そのほか、経歴を詐称したり、架空の推薦文を掲載したりすることも禁止された行為です。

広告を出す際は、あくまでも事実に基づく情報だけを用いるようにしてください。

誤導または誤認の恐れのある広告

誤導または誤認のおそれがある広告も禁止されています。

たとえば、「日本で一番優秀な弁護士が対応します」「割安な料金で依頼を引き受けます」といった広告は控えたほうがよいでしょう。

「日本一優秀」とはどのような根拠にもとづいて主張しているのか、明確な基準が示されていなければ閲覧者に誤解を与えることになります。

また割安といったように、弁護士報酬に関して曖昧で正確とはいえない表現も閲覧者を誤解させるので避けなくてはなりません。

誇大または過度な期待を抱かせる広告

誇大または過度な期待を抱かせる広告も、規定違反となる可能性があります。

たとえば、「どんなトラブルでも必ず解決します」「裁判では絶対に負けません」といった広告などが挙げられるでしょう。

どちらも100%保証できる事柄ではないにもかかわらず、言い切っている点に問題があります。

閲覧者に現実とは異なる期待をもたせることのないように、有利な結果を保証するような表現は決して使用しないようにしてください。

困惑させたり、過度に不安を煽ったりする広告

閲覧者を困惑させたり、過度に不安をあおったりする広告をおこなうことも禁止されています。

閲覧者が依頼先を検討するうえで、冷静な判断ができなくなるおそれがあるためです。

具体的には、「今すぐ弁護士に依頼しないと手遅れになります」などと謳った広告が典型的な例といえるでしょう。

不安を煽って行動させるマーケティング手法はよく目にするものですが、弁護士の広告では禁止されているので、意識しておくことが大切です。

特定の弁護士や弁護士法人などと比較をした広告

特定の弁護士や弁護士法人などと比較して、自分や自分の事務所にメリットがあるとする項目は禁止されています。

たとえば、「〇〇法律事務所よりも安く、スピーディーに解決します」などといった広告を掲載するのは避けなくてはなりません。

法令や日弁連・所属弁護士会の会則などに違反する広告

法令や日弁連・所属弁護士会の会則などに違反する広告も当然禁止されています。

景品表示法や日本弁護士連合会会則をはじめとした広告ルールは正しく理解したうえで、広告内容を検討するようにしてください。

弁護士等の品位または信用を損なう恐れのある広告

弁護士の品位または信用を損なうおそれのある広告も規定で禁止されています。

弁護士は社会的信用のもとに成り立つ職業であるため、一部の弁護士が品位や信用を損なうような広告をおこなっただけでも、弁護士業界全体に悪影響を及ぼしかねません。

具体的には、「法の目をかいくぐる方法を伝授します」「弁護士を頼らないと人生が終わります」などといった広告が挙げられます。

広告を打つ際には閲覧者の目線に立って、脱法行為を助長したり、低俗で不快感を与えたりするような内容になっていないかを十分確認しておきましょう。

2.規定で禁止されている4つの広告事項

次に、規定で禁止されている広告事項について解説します。

広告に掲載してはならない内容が具体的に4つ挙げられているので、詳しく見ていきましょう。

勝訴率に関する情報

訴訟の勝訴率を広告表示することは禁止されています。勝訴率は弁護士の力量だけでなく、トラブルの内容や難易度、証拠などによって変動するものです。

そのため、「当事務所の勝訴率は95%」などと一律の数字で表現することはできません

場合によっては、閲覧者に現実とは異なる過度な期待を抱かせることになってしまいます。

顧問先や依頼者に関する情報

顧問先や依頼者に関する情報も、原則として広告に掲載してはいけません。

顧客のプライバシーを守り、弁護士の信用を保持するためです。

ただし、相手方の同意を得たうえで掲載するのであれば、基本的に問題ないとされています。

受任中の事件に関する情報

受任中の事件に関する情報を広告に掲載することも、基本的には認められません。

広告が不特定多数の目にさらされることで、依頼者が特定されてしまうおそれがあります。

注目度の高い事件を広告に利用すれば、確かに大きな宣伝効果を期待できますが、顧客のプライバシーや弁護士の倫理規範を守ることを徹底しなくてはなりません

過去に受任・関与した事件に関する情報

規定で禁止されている広告事項のひとつが、過去に受任・関与した事件に関する情報です。

たとえ正しい情報を掲載したとしても、事件が掘り起こされることで関与していた人物が不利益を被る可能性も否定できません

ただし、相手方の同意がある場合や事件の情報が一般に知られている場合などは、例外的に広告に掲載できる場合があります。

3.規定で禁止されている2つの広告手段

ここでは、「弁護士等の業務広告に関する規程」で禁止されている2つの広告手段について詳しく解説します。

面識のない人に対する訪問や電話などによる広告

「弁護士等の業務広告に関する規程」では、面識のない人に対し、訪問や電話などによって広告することが禁止されています。

弁護士から直接的な勧誘を受けた人が、望んでいないにもかかわらず言われるがまま依頼してしまう事態を防ぐためです。

ただし、相手からの希望があった場合や所属弁護士会から公益上の必要性を認められた場合は、例外的に上記の広告手段が認められることも覚えておきましょう。

特定の事件について面識のない人に対する郵便などによる広告

特定の事件の当事者・利害関係者のうち、面識のない人物に対して、郵便などで広告することも規定で禁止されています。

相手に直接到達する方法で勧誘することが禁止されているので、メールやSNSのメッセージなども規制の対象です。

たとえば、SNSなどで交通事故被害にあった人を探して、メッセージを送るような広告手段は控えたほうがよいでしょう。

ただし、公益上の必要性があるとして所属弁護士会に認められた場合は例外です。

4.規定で禁止されているその他の事項

「弁護士等の業務広告に関する規程」では、上述したもののほかにも禁止事項が定められています。

ここでは、特に注意しておくべき2つの禁止事項について、詳しく見ていきましょう。

広告の対象者に対して利益の供与をおこなうこと

広告の対象者に対して利益の供与をおこなうことは、規定違反となる可能性があります。

有価物を提供して仕事を受けようとする不必要な争いが生じ、弁護士の品位が損なわれてしまうおそれがあるためです。

たとえば、依頼を獲得するために割引券やギフト券などを提供する行為が挙げられます。

状況次第では、ポケットティッシュやテレホンカードを提供することも「利益の供与」にあたるかもしれません。

なお、名刺を交換したり、挨拶状を送付したりすることは社会的儀礼の範囲内とされるため、規定違反にはならない可能性が高いといえます。

広告規定に違反している第三者に対して利益の供与をおこなうこと

弁護士が広告規定に違反している第三者に対して、利益の供与をおこなうことも認められません。

たとえば、広告代理店に依頼して、規定違反が明らかな宣伝活動をおこなわせる行為などが該当します。

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弁護士・法律事務所が特に気をつけるべき広告の3つのポイント

弁護士・法律事務所が広告をおこなう際、特に気をつけるべきポイントは以下の3つです。

  • 氏名と所属弁護士会は必ず表示する
  • 「○○を専門とする弁護士」などの表示はしない
  • 原則として事例の紹介はできない

あとで余計なトラブルが起きないように、一つひとつのポイントをしっかりと押さえておきましょう。

1.氏名と所属弁護士会は必ず表示する

弁護士が広告を出す場合は、氏名と所属弁護士会名を必ず表示しなくてはなりません。

弁護士法人の場合は、法人名、主たる法律事務所または広告に関連する法律事務所の名称、所属弁護士会名を表示する必要があります

複数の弁護士会に所属している場合は、主たる法律事務所が所在する地域の弁護士会名を記載すれば問題ありません。

2.「○○を専門とする弁護士」などの表示はしない

広告の中で、「○○を専門とする弁護士」など、専門性をうたう表示も控えたほうがよいでしょう。

「専門」といえる経験・能力の程度には客観的な基準がないにもかかわらず、弁護士が安易に専門性を主張してしまうと、閲覧者に過度な期待を抱かせてしまう可能性があります。

そのため、実績が多い分野などをアピールしたい場合は、「得意な分野」「関心のある分野」などの表現を用いるとよいです。

3.原則として事例の紹介はできない

弁護士・法律事務所の広告では、原則として事例の紹介はできません。

ただし、依頼者から書面で同意を得られた場合や、依頼者が特定されず、かつ、依頼者の利益が損なわれない場合には例外的に掲載することが可能です。

とはいえ、依頼者のプライバシーに大きくかかわることなので、過去の事例を取り上げるかどうかは慎重に判断することをおすすめします。

弁護士・法律事務所が広告ルールに違反した場合の罰則

上述したような広告ルールに違反した場合、弁護士はどのような罰則を受けるのでしょうか。

ここでは、それぞれの広告ルールに定められた罰則について解説します。

景品表示法違反|措置命令など

景品表示法に違反する行為をおこなった場合は、措置命令などの罰則が科されます。

措置命令とは、閲覧者に誤認を与える広告表示や景品提供の停止と、再発防止策の策定、今後同様の違反をおこなわないことを命じるものです。

措置命令自体に金銭的なペナルティはありませんが、事業者や措置の内容が公表されるため、信用の失墜につながるおそれがあります。

また、優良誤認表示や有利誤認表示に関しては、課徴金納付命令の対象です。

不当な広告をおこなった対象期間における売上額のうち、3%を課徴金として納付することを命じられます。

著作権法違反|罰金刑、懲役刑

著作権法に違反した広告をおこない、権利者から告訴された場合は、罰金刑や懲役刑によって処罰されます。

著作権法違反における刑事罰は、「10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金」です。

また、刑事罰だけではなく、損害賠償請求や名誉回復措置などの民事上の請求を受ける可能性もあります。

広告規定違反|中止命令や公表措置など

弁護士会の広告規定に違反した場合は、違反広告の中止命令や公表措置などの制裁を受けることがあります。

まず、弁護士会が違反広告の調査結果をもとに中止を命じ、弁護士が従わなかった場合に、中止命令がおこなわれた事実や理由などを公表するケースが一般的です。

また、違反した内容によっては、以下の懲戒処分が下される可能性もあります。

  • 戒告
  • 最長2年間の業務停止
  • 退会命令
  • 除名

まれな例ですが、広告規定に違反する行為が詐欺罪にあたり、10年以下の懲役が科せられるケースもあります。

そのため、広告活動に着手する際は各種ルールを正しく理解したうえで、慎重に進めることが何よりも重要です。

弁護士がWebサイト運用やWeb広告をおこなう際の注意点

最後に、弁護士がWebサイト運用やWeb広告をおこなう際の注意点を解説します。

SEOスパムは絶対におこなわない

Webサイト運用やWeb広告をおこなう場合、SEOスパムは絶対におこなわないようにしましょう。

SEOスパムとは、検索エンジンの上位表示を目的として、検索エンジンが不正とみなす行為をおこなうことです。たとえば、以下のような行為はSEOスパムに該当します。

  • ほかのコンテンツを無断で複製する
  • 隠しリンクや隠しキーワードを入れる
  • 特定のキーワードを不自然に詰め込む
  • 自動生成のコンテンツをそのまま使用する
  • Webサイト間で大量の相互リンクを貼る

SEOスパムに該当すると判断された場合は、検索順位が下がったり、検索結果に表示されなくなったりします

知らないうちに、検索エンジンからSEOスパムだと判断されることもあるので、WebサイトやWeb広告の知識がない場合は、まず専門業者に相談してみるのがよいでしょう。

広告ポリシーに違反しないようにする

Web広告を利用する場合は、配信元の広告ポリシーに違反しないようにしなくてはなりません。

たとえば、Google広告(リスティング広告)を利用する場合の主な審査基準は以下のとおりです。

  • 広告のキーワードと広告文に関連性があるか
  • 誇大な表現を使っていないか
  • 広告のリンク先となっているページは適切か(広告文と関連性があるかなど)
  • 入稿規定(利用可能な文字など)に従っているか

広告ポリシーは利用する検索エンジンによっても異なるため、利用規約などで事前に確認しておくことが重要です。

さいごに|ルールを守って正しく弁護士・法律事務所の広告をしよう

弁護士が広告を使い集客をおこなう際は、各種法律や「弁護士等の業務広告に関する規程」を正しく理解し、違反することのないよう徹底することが大切です。

ルールに違反する広告を出してしまうと、懲役や罰金が科せられたり、業務停止命令が下されたりします。

違反した内容次第では、今後弁護士として活動できなくなる可能性も否定できません

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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