相続放棄
法テラスで相続放棄をする費用は?| 法テラスに依頼するデメリットも解説
2024.10.08
「親が大きな借金を残して亡くなったが、相続放棄をするべきだろうか」
「自分で相続放棄の手続きができるか不安だ」
相続放棄とは、遺産相続の権利や義務の一切を放棄することです。
被相続人が大きな借金を残して亡くなった場合などは相続放棄を検討しますが、「本当に相続放棄をするべきか」判断に迷う方もいます。
また相続放棄の手続きには注意点が少なくないので、自分でできるか不安になる方も多いでしょう。
本記事では、相続放棄の手続きを検討するべきケースや相続放棄のやり方、相続放棄の手続きを自力でおこなうのと弁護士に依頼する場合の比較について解説しています。
本記事を読めば相続放棄をするべきか否か、自分で相続放棄の手続きができるか、相続放棄の手続き方法について理解できます。
相続放棄の手続きは自分でおこなうこともできますが、手続き期限までに必要書類を揃える必要があるため、手間と時間がかかります。
相続放棄の手続きを楽に済ませたいなら、弁護士へ相談・依頼することをおすすめします。
弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットを得ることができます。
ベンナビ相続では、相続放棄を得意とする弁護士を地域別で検索することができます。
無料相談はもちろん、電話で相談が可能な弁護士も多数掲載していますので、まずはお気軽にご相談ください。
相続放棄の手続きを検討すべき3つのケースは次のとおりです。
プラスの財産より借金などマイナスの財産が多い場合は、相続放棄の手続きを検討すべきです。
相続が確定すると預金や不動産のようなプラスの財産だけでなく、借金のようなマイナスの財産も相続することになります。
つまり、被相続人が抱えていた借金やローンの未払いなどの負債も、相続人が支払うことになるわけです。
そのため、相続放棄をする前に、相続財産を正確に評価して、プラスの財産とマイナスの財産どちらが多いか見極める必要があります。
相続争いの精神的ストレスを避けたい場合にも、相続放棄の手続きは有効な選択肢です。
相続は家族間の感情や過去の経緯などが絡み合い、ときには長期にわたる争いに発展することもあります。
平穏な家族関係の維持を優先したい場合、相続放棄をして相続争いを避けるのもひとつの手です。
相続するより、遺産分割手続きの負担を避けたい場合も、相続放棄を検討するとよいでしょう。
遺産分割手続きは以下にあげるような要因により、相続人にとって大きな負担がかかることがあります。
仮に遺産分割協議で揉めて裁判に発展した場合、解決まで数年かかることもあります。
遺産を相続するより、遺産分割協議の負担を避けたいのであれば、相続放棄もひとつの選択肢になるでしょう。
相続放棄を自力でおこなえば費用を節約できるなどのメリットがある反面、複雑な手続きでトラブルが生じるなどのデメリットもあります。
一方で弁護士に依頼すれば、手続きをスムーズにすすめられるようになる反面、コストがかかるのは否めません。
このように、相続放棄を自力でおこなうにしろ、弁護士に依頼するにしろさまざまなメリット・デメリットがあるのです。
以下の表で、実際にどのようなメリット・デメリットがあるかチェックしてみましょう。
【相続放棄を自力でする場合と弁護士に依頼する場合のメリット・デメリット】
メリット | デメリット | |
自力でおこなう場合 | ・弁護士費用を節約できる ・自分のペースで手続きを進められる ・全ての手続きを自身で把握できる ・シンプルなケースなら迅速に手続きが完了する | ・法的知識が不足していると手続きに不備が生じる ・相続放棄が最適な選択肢でなくても、気付けないことがある ・時間と労力がかかる ・複雑なケースへの対応が難しい ・間違った手続きをおこなうとトラブルになる可能性がある |
弁護士に依頼する場合 | ・専門家のアドバイスやサポートを受けられる ・相続放棄がベストな選択肢かアドバイスしてもらえる ・複雑なケースでも適切な手続きがおこなえる ・相続人同士の対立や問題が発生した際の対応がスムーズになる ・必要な書類の作成や提出を代行してもらえる | ・弁護士への相談料や手数料が発生する |
前項で述べたメリット・デメリットをふまえ、自力で相続放棄をすることをおすすめするケースは以下のとおりです。
前項のメリット・デメリットをふまえ、弁護士に依頼して相続放棄をするのがおすすめのケースは次のとおりです。
自力で相続放棄をする場合、手続きの流れは以下のとおりです。
まずは、相続財産調査をおこないます。
被相続人が残したプラスの財産と、マイナスの財産を正確に把握することが目的です。
相続人の銀行の預金残高、不動産、株式、保険金、車や宝石などの財産の存在と詳細をリストアップします。
財産の評価額や市場価格を調査して、総資産の大まかな金額を算出しましょう。
次に、相続人の借金やローンなどなどマイナスの財産についての情報を集め、総額を計算します。
相続財産調査を通じてプラスの財産とマイナスの財産との差額を明確にし、相続放棄を進めるべきかどうかの判断材料にしましょう。
マイナスの財産の方が多い場合や複雑で多岐に渡る資産が明らかになった場合は、その後の手続きにおいて十分な注意が必要になります。
相続人の財産や負債が判明したら、相続放棄が適しているかを検討しましょう。
相続放棄は負債が相続財産の価値を上回る場合や、相続に関する手続きやリスクを完全に避けたい場合に向いています。
ただし、相続放棄は一度おこなうと取り消すことができません。
預金や資産などのプラスの財産と借金などのマイナスの財産を確認し、相続放棄するか慎重に考える必要があります。
特に、相続財産のなかでどうしても相続したい財産があるときは、相続放棄すべきかよく検討しなくてはなりません。
相続手続きには3つの種類があるので、状況や相続財産にあわせて選択しましょう。
【相続手続きの3つの種類】
相続放棄をすることが決まったら、相続放棄に必要な書類を集めましょう。
書類は相続人の立場によって異なります。
なお審理のために追加で別の書類が必要となった場合、ここであげた以外の書類を提出するよう求められることがあります。
被相続人の配偶者が手続きする際の必要書類は次のとおりです。
第一順位相続人が手続きする際の必要書類は次のとおりです。
第二順位相続人が手続きする際の必要書類は次のとおりです。
第三順位相続人が手続きする際の必要書類は次のとおりです。
相続放棄をおこなうためには、申述書の作成が必須です。
申述書は相続放棄の意志を明確に示す公式な書類であり、正確に記載する必要があります。
記載ミスや不足があると申述書が受け付けられない場合もあるため、記入例を参考にして正確に記載しましょう。記入例は、裁判所の以下公式サイトURLからダウンロードできます。
【参考】
相続の放棄の申述書(成人)|裁判所
相続の放棄の申述書(未成年者)|裁判所
被相続人にとって最後の住所地を管轄する家庭裁判所で、相続放棄の申述をおこないます。
裁判所の管轄地域については、以下裁判所の公式サイトで確認が可能です。
【参考】裁判所の管轄区域 | 裁判所
また申述の際は、相続放棄の申述書をはじめとした必要書類に加え、800円の収入印紙と郵便切手を提出してください。
必要な郵便切手の種類や金額は家庭裁判所によって異なるので、事前に確認しましょう。
家庭裁判所が遠方にある場合などは、郵送での手続き・書類提出も可能です。
裁判所から届いた回答書に必要事項を記入し、返送しましょう。
通常、申し立てから約1週間~10日で、「照会書」とともに「回答書」が届きます。
照会書には申立書の内容や相続放棄の意思を再確認する内容が記載されています。一方、回答書には照会書の確認に対する返答を記述します。
回答書の返送期日は通常、10日前後です。
期日に遅れてしまうと手続きが停止される可能性があります。万が一期日に間に合わない場合は照会書記載の担当部署や書記官へ速やかに連絡をとりましょう。
回答書の返送が完了してから10日程度で、裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が送られてきます。
通知書を受け取った時点で、相続放棄の手続きは正式に完了します。
受理通知書は相続放棄後にも必要になる可能性があるため、大切に保管しておきましょう。
相続放棄の申述書は、手続き上重要な書類です。
相続放棄の手続きをすすめるためには、正確に記入しなくてはなりません。
申述書に記載すべき内容は作成日と提出先の家庭裁判所名の記述、そして申述人となる「相続放棄したい人」の署名および押印です。
使用する印鑑は、認印でも問題ありません。
続いて、申述人の情報として本籍地、現住所、氏名、生年月日、日中に連絡が取れる電話番号、そして被相続人との関係を詳細に記入しましょう。
申述人が未成年の場合は、法定代理人について記入する欄も存在します。
被相続人の情報には本籍、最後の住所、氏名、死亡年月日を記載します。
「相続の開始を知った日」の部分は、相続放棄の期限とも関連しているため重要です。
「放棄の理由」は選択式であるため、一番近い理由を選びましょう。
最後に「相続財産の概略」に、現在把握している相続財産の内容、たとえば土地や建物、現金、有価証券などを記入します。
負債に関する情報もここに記載しましょう。
申述書に必要な情報を正確に記入することで、相続放棄の手続きが円滑に進められます。
不明点や疑問点がある場合は、弁護士への相談を検討しましょう。
以下に記入例を記載するので、あわせて参考にしてください。
相続放棄が受理されたあとにおこなう必要がある手続きは次のとおりです。
相続放棄が正式に受理された事実を証明する「相続放棄申述受理証明書」を入手しましょう。
相続放棄申述受理証明書は、相続放棄をおこなった家庭裁判所で必要な手続きをすることで入手できます。
この証明書は、今後の相続の手続きや関係者への説明の際に必要になる書類です。
たとえば、銀行や証券会社に相続放棄を証明する際に、証明書の提示が求められることがあります。
そのため、証明書は早めに裁判所から取得し、大切に保管しておくとよいでしょう。
遺産放棄手続き後は、債権者やほかの相続人に連絡し相続放棄をした旨を伝えましょう。
相続放棄をおこなうと財産の権利や義務がほかの相続人に移行します。そのため債権者やほかの相続人へ相続放棄の旨を通知すると良いでしょう。
とくに、債権者から請求がある場合には、通知は、債務に関するトラブルを回避するためにもなります。
また、ほかの相続人が相続権移行の事実を知らないと、意図せず単純承認が成立してしまうなどのリスクがあります。
たとえばその相続人が、「知らず知らず被相続人の膨大な借金を引き継ぐことになった」といったトラブルが生じてしまうことがあるのです。
その結果、せっかく相続放棄をしたのに別の相続トラブルに巻き込まれてしまう可能性が生じるので十分に注意してください。
相続放棄が受理されたあとも、現に占有している不動産については管理する必要があります。
民法第940条には相続放棄をした者が相続放棄時に相続財産に属する財産を「現に占有」している場合、相続人や相続財産の清算人に対して引き渡すまで、その財産を保存する義務がある旨が定められています。
「現に占有」とは、事実上、その財産を支配や管理している状態を指します。
たとえば、遠く離れた場所にある実家を相続放棄した場合、実際にその場所に住んでいない相続人であれば管理義務を負いません。
「現に占有」している者が管理義務を怠った場合、さまざまなリスクが伴います。
たとえば管理を怠って放置された家が台風などの災害で倒壊したとしましょう。その際、落下した建物の建材などによって通行人が負傷すれば損害賠償義務を負う可能性があるのです。
そのため不動産の管理義務を負っている場合は、適切に管理する必要があります。
相続放棄をする場合は、相続財産管理人選任の申し立てが必要になる可能性があります。
相続財産管理人とは、相続人が不在の場合や相続人の全員が相続放棄をした場合に、相続人に代わり財産の管理をする方です。
相続人全員が相続放棄をした場合などでも、被相続人が残した債務の返済や不動産の管理は誰かがしなくてはなりません。
相続財産管理人は、相続人に代わってその役割を担うのです。
空き家など相続人に管理責任がある遺産については、相続人が相続放棄をしてもその管理責任がすぐになくなるわけではありません。
相続財産管理人が引き継ぐまで、相続人が管理責任を負うことになります。
この管理責任から解放されるためには、相続財産管理人をなるべく早く選任する必要があるのです。
相続放棄をしたものの、相続財産の管理責任が残る相続人は、相続財産管理人選任の申し立てができます。
相続財産管理人は、家庭裁判所が選任します。家庭裁判所は利害関係の有無や相続財産の内容にもとづいて、相続財産管理人を選びます。
弁護士・司法書士など、専門家が相続財産管理人として選ばれることが通常です。
相続放棄をしても、被相続人が残した生命保険や未支給の年金については受け取れる場合があります。
具体的には、相続放棄をしても以下に関しては受け取ることが可能です。
これらを受け取るためには、それぞれ手続きが必要です。
相続放棄をする前に知っておくべき注意点は次の4つです。
相続放棄を考えている方は、相続財産をなにがしかの方法で処分してはいけません。
相続財産を処分すると単純承認をしたとみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があるのです。
単純承認は「相続財産を全て相続すること」ですが、民法第921条には単純承認が認定される事由の1つとして「処分行為」をあげています。
処分行為とは、財産の状況や性質を変更したり、財産権を変動させたりする行為です。具体的には、以下のような行為が該当します。
【相続放棄をする方がやってはいけないこと】
相続放棄は熟慮期間中におこなう必要があります。
熟慮期間とは、「相続の開始を知ってから3ヵ月以内」(民法915条1項)です。
熟慮期間内に相続放棄などの手続きをしないと、単純承認をしたことになり相続財産を全て受け継ぐことになります。
ただし、熟慮期間中に相続放棄の判断や手続きが難しいのであれば、家庭裁判所にこの期間を延長してもらえる場合があります。
財産調査に時間がかかっているなどで、熟慮期間中に相続放棄の判断ができそうにないときは、なるべく早く熟慮期間の延長を申請しましょう。
申請には申立書や被相続人の住民票除票、関係を証明する資料などが必要です。
相続放棄の申述が受理されると、撤回ができないので注意しましょう。
あとから「考えが変わった」や「事情が変わった」などの理由で撤回を求めることはできません。
相続放棄は相続に関する借金や責任を回避するための有効な手段である一方、相続財産の価値を十分に考慮せずに決定すると後悔する可能性もあります。
そのため財産の価値や負債額を十分に理解したうえで、相続放棄をするか熟慮することが重要です。
被相続人の生前には、法的に相続放棄の契約や合意をすることはできません。
被相続人が生前に相続人に対して「今後の相続を放棄する」などの内容の契約や念書を作成させても、法的には無効になります。
相続放棄は相続に関する借金や負債を回避するための有効な手段である一方、撤回ができないため慎重に検討しなくてはなりません。
相続財産や相続人の考えによっては、相続放棄をするのが適切でないケースも多いです。
相続放棄をするべきか少しでも迷ったときは、一度弁護士に相談することをおすすめします。
相続問題を得意とする弁護士であれば、相続人の状況や希望を考慮して、最適なアドバイスをしてくれるでしょう。
相続放棄をすることで、ほかの相続人と軋轢が生まれそうな場合などは、弁護士に依頼すれば代理で交渉してもらうことも可能です。
遺産相続を弁護士にサポートしてもらうことで、円満かつスムーズに手続きをすすめられるようになるでしょう。
弁護士を探す際は、全国の弁護士を検索できるポータルサイト「ベンナビ相続」の利用をおすすめします。
ベンナビ相続には相続問題に注力する弁護士が多数登録されており、無料相談可否などの条件で希望にあう弁護士を簡単に検索可能です。
相続放棄の判断や手続きに失敗すると、あとで取り返しがつきません。
弁護士に相談して適切に手続きをすすめるとよいでしょう。