相続放棄
法テラスで相続放棄をする費用は?| 法テラスに依頼するデメリットも解説
2024.10.08
親が亡くなってしまった際に、財産よりも借金が多く残っていることが発覚するケースがあります。
そのときは、相続人同士で話し合い、全員が相続放棄することに同意することもあるでしょう。
しかし、遺産の中にローンがまだ残っている家があり、相続人全員が相続放棄をした場合に、この不動産はどうなるのか。
また、相続放棄したとしても管理義務が発生するのか詳しく知りたいという方もいると思います。
本記事では、相続放棄後の適切な家の管理の重要性について探っていきます。
家の相続放棄を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
これまでの民法では、相続放棄にともなう管理義務が発生する条件があいまいな点がありましたが、2023年4月の民法改正によって、管理義務に対する考え方が明確になりました。
(相続の放棄をした者による管理)
第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
引用元:民法|e-Gov法令検索
「その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているとき」という一文が追加されたことで、どのような状況で管理義務が発生するのかが確かになりました。
つまり、「現に占有している場合」に該当しないのであれば、管理義務は発生しないことになります。
しかし、民法改正によって相続放棄後の不動産は「管理義務」から「保存義務」に変更されたものの、適切に管理しなければならないという点は変わりません。
保存義務には財産の保管や保険の加入、必要な修繕や維持管理の責任が含まれ、相続人は相続財産を適切に管理し、傷や損害を与えないように努める必要があります。
民法の改正によって、「現に占有している場合」でなければ、相続放棄した相続人に管理義務が発生することはありません。
しかし、だからといって空き家のまま放置することは得策とはいえません。
ここでは、相続放棄したあとに家を適切に管理しないとどうなるかを解説します。
相続放棄した相続人は、後順位の相続人もしくは相続財産清算人に引き渡すまでは、家を引き渡すまで自主的に管理しなければなりません。
もし相続放棄後に放置したことで家の状態が悪化し、近隣住民に迷惑や損害を与えた場合、損害賠償を求められる可能性があります。
たとえば、草木の伸び放題や建物の傷みが周囲に影響を与えることが考えられるでしょう。
そのため、周囲に迷惑をかけない程度の配慮が必要となります。
相続放棄をしたあとでも、相続放棄が無効とされる場合があります。
これは、家の放置や管理怠慢が法的な問題を引き起こす可能性があるためです。
裁判所は、相続放棄をした者が放棄に伴う責任を果たしていない場合、放棄が無効であると判断することがあります。
そのため、適切な家の管理は、相続放棄後でも重要です。
家の状態を定期的に確認し、必要な手入れや修繕をおこなうことで、損害賠償や法的トラブルを防ぐことができます。
また、家族や専門家の支援を受けながら、適切な対応策を検討しましょう。
相続放棄をしても、家の管理義務を免れることはできない場合があります。
しかし、以下の方法を適用することで、管理義務をほかの人に引き継いだり、家庭裁判所に相続財産清算人を申し立てたりすることができます。
相続放棄した場合でも、ほかの相続人に家の管理義務を引き継いでもらうことができます。
相続人間で合意を形成し、誰が家の管理責任を負うのかを明確にする必要があるでしょう。
ただし、相続人全員が同意しなければなりません。
家庭裁判所に相続財産清算人を申し立てることで、家の管理責任を専門の人に委ねられます。
相続財産清算人は、相続人の代理人として遺産の整理・分割をおこないます。
申立書や被相続人の戸籍謄本、財産に関する資料などが必要な場合があるでしょう。
相続財産の適切な管理には、相続財産清算人の選任が必要です。
選任するためには、次の必要書類を家庭裁判所に提出する必要があります。
相続財産の適切な管理のためには、相続財産清算人を選任する必要があります。
家庭裁判所に選任を申し立てる際には、以下の必要書類を提出する必要があります。
相続財産清算人を選任する際の、費用の目安は以下のとおりです。
収入印紙 | 800円 |
郵便切手代 | 数千円程度(回数などに応じて変動する) |
官報公告料 | 5,075円 |
予納金 | 20万円~100万円程度 |
相続財産清算人の候補者を立てる場合は、家庭裁判所にその旨を申し立てます。
なお、候補者は財産の適切な管理能力や信頼性をもつ人物を選ぶことが重要です。
相続財産の適切な処理と責任の遂行には、適格な相続財産清算人の選任が欠かせません。
必要な書類を準備し、費用についても注意しながら手続きを進めましょう。
相続放棄を検討している場合、以下の重要なポイントを再度考慮することが大切です。
相続放棄をする前に、家を残すことが重要なのか再評価しましょう。
将来的に利用したり、家族に受け継がせたりすることが可能なのかを改めて検討します。
たとえば、将来的にご自身や家族がその家に住む必要性がない場合や、維持費や税金などで負担が大きくなる場合は、相続放棄の選択肢を検討することもあるでしょう。
また、相続財産には借金やローンが残っていることがあります。
相続放棄する前に、相続財産の債務状況を確認しましょう。
万が一、債務が大きく返済が困難な場合、相続放棄を考えることが適切な選択肢となる場合があります。
しかし、債務が少なく返済可能な場合は、相続財産の価値や将来的な利益を考慮したうえで判断する必要があるでしょう。
相続財産には、ほかの相続人が存在する場合もあります。
そのため、相続放棄をする前に、ほかの相続人との話し合いや協議が重要です。
ほかの相続人が相続財産を受け継ぎたいと考えている場合、相続放棄することで彼らに負担がかかる可能性があります。
公平な取引や話し合いを通じて、最善の解決策を見つけることが重要です。
相続放棄する前に、家を売却またはほかの方法で活用する可能性を考えてみましょう。
たとえば、家を売却して現金化することで、借金の返済やほかの投資に充てることもできます。
また、家を賃貸物件として活用することで、収入を得ることも可能です。
相続放棄の前に、これらの選択肢をよく検討し、将来の状況やご自身のニーズに合った最善の選択をしましょう。
相続放棄した家の管理責任について、下記の質問がよく見受けられます。
それぞれ回答していきましょう。
家を相続放棄するかどうかを決める際の基準は個人によって異なりますが、以下のポイントを考慮するとよいでしょう。
相続人全員が相続放棄した場合、その家は「無主物」となります。
無主物とは、所有者のいない財産のことであり、国や地方自治体によって処理されることが一般的です。
処理の方法は地域や法律によって異なります。
たとえば、公売や競売にかけられたり、国や地方自治体が管理し、将来的に利用されたりする可能性もあります。
家の相続放棄に悩んだ場合は、専門家のアドバイスを受けることが重要です。
まずは、相続問題に注力している弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。
専門家は法的な知識を持ち、個別の状況に合わせて最適なアドバイスをしてくれます。
家族や親しい人にも相談することも大切ですが、法的な手続きやリスクを正確に把握するためには専門家の意見を参考にすることが重要です。
相続放棄は重大な決断のため、ご自身の状況や将来の計画を考慮し、専門家の助言を受けながら慎重に判断することをおすすめします。
家を相続するかどうかは、人生における大きな決断のひとつです。
家の相続には法的な手続きやリスクが伴うため、専門的な知識をもつ弁護士に相談を依頼するのをおすすめします。
弁護士は、法的な観点から家族や財産に関するトラブルを未然に防ぐため、アドバイスや手続きのサポートをおこなってくれます。
家を相続すべきか悩んだ方は、専門家の意見を聞きながら、ご自身の状況や将来の計画を考慮して最善の選択をしましょう。