相続放棄
法テラスで相続放棄をする費用は?| 法テラスに依頼するデメリットも解説
2024.10.08
被相続人に借金などの負債がある場合、相続人は相続放棄も検討しなくてはなりません。
ただ相続放棄には期限があり、期限内に必要な手続きを完了できないと、借金を含め財産を相続することになります。
その一方で、遺産相続するべきか判断するのに時間がかかってしまうことも少なくありません。
本記事では、相続放棄の期限はどうなっているかや期限内に手続きができない場合のリスク、期限の伸長が認められるケースや手続き方法について解説しました。
本記事を読めば、どのように相続放棄の判断や手続きを進めるべきか理解できます。
相続放棄の期限が迫っている、または過ぎてしまったときにどう対処するべきかわからずに悩んでいませんか。
結論からいうと、相続放棄やその期間延長には法的手続きが必要になるため、一度弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットを得ることができます。
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相続放棄ができる期間は、「相続の開始」を知ったときから3ヵ月間です。「相続の開始」とは、原則として被相続人が亡くなった時点を指します。
この期間は「熟慮期間」とも呼ばれ、民法の第925条にも明記されています。
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
相続放棄をする場合は、熟慮期間内に適切な手続きをする必要があります。
相続放棄の手続きをおこなわずに熟慮期間を過ぎると、「単純承認」が成立する可能性があります。
単純承認とは、被相続人の財産を借金も含めて全て相続するということです。
民法第921条には相続人が熟慮期間内に相続の放棄をしなかったときは、単純承認をしたものとみなされる旨が定められています。
相続放棄の熟慮期間を過ぎ、単純承認が成立してしまうデメリットは以下のとおりです。
単純承認が成立すると、被相続人が抱えていた債務に関しても相続人に受け継がれるため、多額の借金を背負うリスクがあります。
そのため、被相続人の負債を知らないままに熟慮期間が経過してしまうと、あとから多額の借金を知って経済的な困難に直面する可能性があるわけです。
単純承認が成立した場合、相続人間での意見の対立に巻き込まれる可能性が高まります。
たとえば、被相続人が遺言を残していない場合や遺言の内容が明確でない場合、相続人間での意見の食い違いが起きやすくなるのです。
熟慮期間が過ぎていきなり相続が発生してしまうと、相続人同志のトラブルに対応できなくなる可能性があります。
単純承認が成立すると、複雑で手間のかかる相続手続きをおこなう義務を負うことになります。
相続手続きには被相続人の財産の調査、債権者との交渉、遺産分割協議など、多くの手続きが含まれるため、時間やコストもかかるでしょう。
遺産の内容が複雑な場合は不動産の名義変更、預金の引き継ぎなど、相続人や関係者にとって負担になる作業がさらに多くなります。
熟慮期間の3ヵ月を超えても、特定の状況下では相続放棄が認められることがあります。
実際に判例では、熟慮期間を過ぎても相続放棄が認められた例があります。
熟慮期間を過ぎても相続放棄ができるかどうかの判断基準は次のとおりです。
まずは、相続人が相続財産は存在しないと真に信じていることです。
相続人が相続財産の存在を知らない場合は、相続放棄の判断を難しくする要因として認められます。
相続財産がまったく存在しないと信じるのに、相当な理由があるかどうかも重要です。
たとえば、生前の被相続人とまったく交流がなかったために相続財産の実態を知らなかった場合や、財産調査をしても債務の存在が明らかにならなかった場合などは、相当な理由として認められる要因となり得るでしょう。
3ヵ月間の熟慮期間を過ぎてしまったものの、相続放棄が認められた事例として以下があげられます。
親子間の連絡が途絶え債務の存在をまったく知らなかった場合に、熟慮期間後の相続放棄が認められた判例があります。
相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となつた事実を知つた時から三か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかつたのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、民法九一五条一項所定の期間は、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当である。
被相続人Aはギャンブルに熱中して生活を疎かにしていたため、妻や子との関係が断たれ、12年~13年の間、連絡を取っていませんでした。
Aの死亡後、相続人は相続財産がないと信じて手続きをせずにいましたが、11ヵ月後に保証債務の履行を求める通知が届き、債務の事実を知りました。
この事例では、最高裁は「相続人が相続開始の原因となった事実を知った場合でも、3ヵ月以内に相続放棄しなかったのは、被相続人にまったく相続財産がないと信じたためであり、その信念には相当な理由があった」と判断を示しています。
ほかの相続人が全て相続したあとに多額の借金が見つかった場合、熟慮期間後の相続放棄が認められる事例がありました。
被相続人Aは死亡したあと、長男BがAの所有する不動産を含む相続財産を全て相続するとの決定がなされました。
AはBのC信用金庫に対する債務の連帯保証人となっていましたが、この事実は長女X1と二女X2には知らされていませんでした。
この事例では、裁判所が、X1とX2がC信用金庫への保証債務の存在を知った日を熟慮期間の起算日として認定しています。
相続中に相続人が亡くなり代襲相続が生じた場合に、熟慮期間後の相続放棄が認められる事例がありました。
被相続人Aの死後、妻と子が3ヵ月以内に相続放棄をおこない、結果としてAの兄弟6名が相続人となりました。
しかし、Aの兄弟の1人であるBは相続手続きをする前に死亡しました。
Bの子であるXは、G銀行からの債権譲渡を受けたYからの通知により、自身がBを通じてAの相続人となっていることをはじめて知りました。
この事例では最高裁は再転相続人であるXは、BからAの相続人としての地位を自己が承継した事実を知った時点から熟慮期間が起算されることを認定しています。
相続放棄の期限が迫っているときの対処法は次のとおりです。
遺産を相続しないと決めているのであれば、相続放棄の期限が迫っている場合、今すぐ相続放棄の手続きをしましょう。
相続放棄の手続きをする場合、被相続人にとって最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、以下の必要書類を提出します。
相続放棄申述書については、提出先の家庭裁判所がひな形を公開しているので参照するとよいでしょう。
一例として、東京家庭裁判所では以下URLで申述書(申請書)のひな形と記載例を公開しているので、よろしければ参考にしてください。
【参考】その他 | 裁判所
書類をそろえるのに時間がかかっている場合などは、相続放棄申述書だけでも期限内に提出しましょう。
そのうえで、ほかの書類を準備するのに時間がかかっていることを裁判所に申し出てください。
相続放棄申述書さえ提出されていれば、熟慮期間内に手続きされたものとして認められます。
遺産を相続するか迷っている場合は、相続放棄の伸長の手続きをおこなう方法もあります。
伸長手続きが認められるケースや必要な書類、手続きの費用について解説します。
相続放棄期限(熟慮期間)の伸長手続きが認められるケースは次の3つです。
相続財産の調査は各債権者への問い合わせなど、多くの手続きが含まれます。
とくに、相続財産が海外にあるなど、具体的な債務の把握に時間がかかる場合、伸長手続きが認められる可能性があるのです。
また、相続人の所在や連絡先が不明な場合も、熟慮期間の伸長が認められることがあります。
たとえば兄弟と疎遠で、居場所が分からない場合もないとはいえません。
仮に自分が相続放棄をすると、次の相続人に相続権が移ることから、その相続人に連絡をとる必要があります。
そのため相続人の所在を調べるために、熟慮期間の伸長が認められる可能性があるわけです。
さらに被相続人と疎遠で、自分自身が相続人であることを知るのが遅れた場合も、熟慮期間の伸長が認められる可能性があります。
熟慮期間の伸長を申し立てる際には、被相続人と申立人の関係性に応じて必要な書類が異なります。
伸長手続きに必ず提出が求められる共通の書類は次のとおりです。
被相続人と申立人との関係によって必要になる追加書類もあるので、家庭裁判所の公式ホームページなどで確認しておきましょう。
伸長手続きの費用は次のとおりです。
連絡用の郵便切手については、手続き先の家庭裁判所に確認しましょう。
相続放棄をするべきか判断できない場合や、相続放棄の手続きに不安がある場合などは、相続問題の対応が得意な弁護士に相談することを強くおすすめします。
相続放棄すべきかどうかの判断は相続財産や債務の状況など、多岐にわたる要素を考慮しなければなりません。
相続放棄の期限が迫っている場合は、焦りや不安も相まって手続きにミスが生まれてしまうこともあるでしょう。
そういった際に弁護士へ相談すれば、どうすればよいかや手続き方法など有効なアドバイスをしてもらえるでしょう。
弁護士へ対応を依頼して、必要な調査や手続きを代行してもらうことも可能です。
相続放棄する方が知っておくべき熟慮期間以外の2つの注意点は次のとおりです。
相続放棄前には相続財産を処分しないようにしましょう。
相続財産を処分すると、「単純承認をした」と判断されてしまう可能性があります。
たとえば、被相続人が住んでいた賃貸アパートの遺品を処分した場合、相続の意思があるとみなされ単純承認が成立する可能性があるのです。
遺品を持ち帰る行為や老朽化した実家を取り壊す行為も、相続を承認したと解釈される場合があるので注意が必要です。
相続放棄後に、相続財産を隠したり消費したりしてはいけません。
相続放棄をしたにも関わらず、そのような行為をすれば債権者などの信頼を裏切ったことになります。
その結果、相続放棄の手続きにより保護されなくなり、単純承認が成立することになるのです。
本項では、相続放棄の期間に関するよくある質問をまとめました。
上申書は熟慮期間内に相続放棄がおこなえなかった相続人が、事情を具体的に記述し裁判所に説明するためのものです。
熟慮期間経過後に相続放棄を申述する場合、なぜ期間内に手続きをおこなえなかったのかに関しての理由を上申書に記載し、裁判所に提出する必要があります。
上申書を通じて、裁判所は例外的に相続放棄を認めるか検討するのです。
「相続の開始を知った日」を証明するためには、被相続人の死亡を知らせた親族から手紙やメールなどが有効な資料になります。
さらに、被相続人との生前の関係性に関する状況、たとえば長い間交流がなかった経緯、葬式への不出席などの事情もあわせて説明すると、証明により信憑性をもたせられるでしょう。
しかし、どのような文書が適切な証明材料になるかは、具体的な事案や状況により異なります。
弁護士に相談して、どのように証明すればよいかアドバイスをもらうのがおすすめです。
郵送で相続放棄の手続きをする場合、相続放棄申述書などの書類が相続放棄の期限内に裁判所が受理している必要があります。
仮に消印が相続放棄の期限内でも、天候の影響や郵便事故など予期せぬ事情によって、到着が遅れてしまう可能性もないとはいえません。
そのため余裕をもって書類を郵送するか、間に合うか不安な場合は裁判所へ持参して窓口に直接提出することをおすすめします。
相続放棄には熟慮期間が存在します。
期限が迫っている状況下で、多岐に渡る複雑な手続きをおこなうことは難しいでしょう。
手続きができずに期限を過ぎてしまうと、場合によっては大きな損失を被る可能性もあります。
リスクを最小限に抑えるためにも相続放棄の期限が迫っている場合は、相続問題を得意とする弁護士へ相談するのがおすすめです。
弁護士は相続問題に関する法律知識や経験にもとづき、個々の状況に応じた最適なアドバイスを提供してくれます。
時間がないからといって焦ることなく、弁護士の力を借りて適切な相続の手続きをおこないましょう。
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