後遺障害認定の手続き・注意点|弁護士ができるサポートについても解説

後遺障害認定の手続き・注意点|弁護士ができるサポートについても解説
この記事を監修した弁護士
阿部 由羅
阿部 由羅弁護士(ゆら総合法律事務所)
ゆら総合法律事務所の代表弁護士。不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。

後遺障害認定の手続きは、被害者が受け取れる後遺障害慰謝料・逸失利益の金額を大きく左右します。

そのため、きちんと準備を整えて申請を行うことが重要です。

後遺障害認定の申請は、弁護士に依頼すれば、スムーズかつ万全に進めることができます。

正当な賠償を受けたい方、ご自身だけで申請するのが難しいと考えている方は、ぜひ弁護士にご依頼ください。

この記事では、後遺障害認定を申請する方法・流れや注意点、さらに弁護士に依頼するメリットなどを解説します。

後遺障害申請

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後遺障害認定が重要である理由

交通事故の治療後に後遺症が残った場合、適正な後遺障害等級の認定を受けることがきわめて重要になります。

認定される後遺障害等級によって、「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」の金額が大きく変動し、トータルでの補償額にかなりの差がでるためです。

等級によって後遺障害慰謝料の金額が大きく変わる

「後遺障害慰謝料」とは、交通事故により後遺症が残ってしまったことに伴い、被害者が受ける精神的な苦痛に対する賠償金を意味します。

後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害等級によって、以下のとおり目安が決まっています(弁護士基準)。

後遺障害等級 弁護士基準
1級(要介護含む) 2,800万円
2級(要介護含む) 2,370万円
3級 1,990万円
4級 1,670万円
5級 1,400万円
6級 1,180万円
7級 1,000万円
8級 830万円
9級 690万円
10級 550万円
11級 420万円
12級 290万円
13級 180万円
14級 110万円

上記の表からわかるように、後遺障害慰謝料の金額は、かなり高額に上ることが多いです。

等級が1つ異なるだけでも、数十万円~数百万円の違いが生じるため、適正な後遺障害等級の認定を受けることが大切になります。

逸失利益の金額にも後遺障害等級が大きく影響する

後遺障害等級によって大きく影響される、もう一つの損害項目が「逸失利益」です。

「逸失利益」とは、交通事故の後遺症によって労働能力の全部または一部が失われた場合に、将来得られるはずだった収入を意味します。

逸失利益の金額は、以下の計算式によって算定されます。

逸失利益=1年当たりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

※1年当たりの基礎収入は、基本的に事故前の年収の実額がベースとなります。
専業主婦の方も、賃金センサスの平均データをベースとして、逸失利益を請求することが可能です。
※労働能力喪失期間とライプニッツ係数については、以下の係数表を参照

参考:就労可能年数とライプニッツ係数表|国土交通省
※軽微な後遺障害については、係数表記載のものよりも、労働能力喪失期間が短縮されることがあります。

上記の計算式のうち「労働能力喪失率」が、後遺障害等級によって影響される部分です。

労働能力喪失率については、後遺障害等級に応じて、以下のとおり目安が存在します。

後遺障害等級 労働能力喪失率
1級 100%
2級 100%
3級 100%
4級 92%
5級 79%
6級 67%
7級 56%
8級 45%
9級 33%
10級 27%
11級 20%
12級 14%
13級 9%
14級 5%

上記の計算式のとおり、逸失利益の金額は、労働能力喪失率に比例します。

後遺障害等級が1つ違えば、数十万円~数百万円(人によっては数千万円)の違いが生じることになりますので、やはり適正な後遺障害等級の認定を受けることが重要です。

後遺障害等級が認定される後遺症の内容は?

後遺障害等級は、後遺症の部位や症状の内容・重さなどに応じて認定されます。

各後遺障害等級に対応する後遺症の内容は、国土交通省が公開している「後遺障害等級表」にまとめられています。

参考:後遺障害等級表|国土交通省

後遺障害認定はどのように申請する?2つの申請方法について

後遺障害等級認定を申請する方法には、「事前認定」と「被害者請求」の2つがあります。

「事前認定」による申請

「事前認定」は、加害者側の任意保険会社に、後遺障害等級認定の申請を任せる方法です。

被害者が自ら申請作業を行う必要がないため、手間と時間がかからないメリットがあります。

ただし後述するように、被害者主導で申請の手続きを進められない点はデメリットでしょう。

「被害者請求」による申請

「被害者請求」は、交通事故の被害者が自ら、後遺障害等級認定の申請を行う方法です。

次の項目で解説するように、適正な後遺障害等級の認定を受けるためには、被害者請求によって申請を行うことがお勧めの方法になります。

後遺障害認定の申請は「被害者請求」がお勧め|被害者請求のメリットとは?

後遺障害等級認定の申請は、以下の理由から、被害者が自ら申請を行う「被害者請求」によることが推奨されます。

被害者に有利な資料を提出・追完できる

被害者請求の場合、被害者が自ら窓口となって、自賠責保険会社と書類のやり取りを行います。

一見面倒のようですが、被害者が主導して、適正な等級の認定を受けられるように書類を整えられる点はメリットです。

また、もし自賠責保険会社から書類の追完を求められた場合にも、被害者自ら機動的に対応することができます。

これに対して事前認定の場合は、加害者側の任意保険会社には、等級認定の申請を積極的にサポートするだけのインセンティブがありません。

加害者側の任意保険会社は、あくまでも賠償金(保険金)を支払う側なので、被害者に高い後遺障害等級が認められてしまうと、むしろ損になるからです。

上記を比較すると、積極的なサポートを期待できない事前認定よりも、被害者自ら書類を整えて提出できる被害者請求のメリットが大きいといえるでしょう。

等級に応じた保険金を早期に受領できる

被害者請求の場合、自賠責保険から支払われる分の保険金は、その都度先払いを受けることができます。

これに対して事前認定の場合は、保険金は一括払いが原則となりますので、先払いを受けることはできません。

交通事故によるケガの治療中は、治療費などで資金が入り用になります。

手元資金の不安を解消するためにも、被害者請求の方法により申請を行うことは有効です。

被害者請求による後遺障害認定申請の流れ

「被害者請求」により、被害者が自ら後遺障害等級認定の申請を行う場合の流れは、大まかに以下のとおりです。

医師から症状固定の診断を受ける

後遺障害等級認定の申請は、医師による「症状固定」の診断を受けた後に行います。

「症状固定」とは、これ以上ケガの治療を続けても、症状が改善する見込みがないと医学的に判断された状態をいいます。

症状固定の診断が行われると、後遺症の内容が確定したことになるので、それ以降後遺障害等級認定の申請を行うことができるのです。

なお、加害者側の任意保険会社から「そろそろ症状固定にしませんか」と促されるケースがあります。

加害者側の任意保険会社の目的は、ケガの治療費を打ち切ることなどにあるため、このような催促を受け入れてはいけません。

「症状固定は医師の診断によるべき」ということを明確に伝え、安易に症状固定に応じないようにしましょう。

申請の必要書類を準備・提出する

医師から症状固定の診断を受けたら、後遺障害等級認定に必要な書類を準備しましょう。

具体的に必要となる主な書類は、以下のとおりです。

書類の提出先は、加害者が加入している自賠責保険の保険会社になります。

なお上記以外にも、症状の内容などによっては、追加で書類の提出を求められる場合があります。

被害者にとって有利な書類を追完できることは、被害者請求の大きなメリットです。

多少面倒かもしれませんが、適宜弁護士に相談しながら、必要な書類を集めて提出しましょう。

損害保険料率算出機構による審査が行われる

自賠責保険会社は、申請書類を受領した後、各書類を損害保険料率算出機構に送付します。

参考:損害保険料率算出機構HP

損害保険料率算出機構は、認定基準に基づき、公正・中立な立場から後遺障害等級に関する審査・判断を行います。

提出された書類だけでは、認定すべき等級の判断が難しい場合には、必要に応じて以下の調査が行われます。

  1. 事故当事者に対する事故状況の照会
  2. 事故現場等での事故状況・周辺状況の把握
  3. 医療機関に対する被害者の治療状況の確認

審査にかかる期間は、おおむね1か月~2か月程度です。

後遺障害認定の結果が被害者に通知される

損害保険料率算出機構による審査結果は、自賠責保険会社を通じて被害者に通知されます。

認定された後遺障害等級に異議がなければ、自賠責保険会社および任意保険会社に対して、等級に応じた後遺障害慰謝料・逸失利益を請求できるようになります。

不服の場合は異議申立てが可能

認定された後遺障害等級に不満がある場合は、以下の3つの方法による異議申立てが認められています。

①自賠責保険会社に対する異議申立て

以下の内容を記載した異議申立書を、自賠責保険会社に提出しましょう。

(1)異議申立ての趣旨
認定されるべきと考える後遺障害等級を記載します。

(2)異議申立ての理由
なぜ異議申立ての趣旨記載の等級が認定されるべきなのかを、認定要件に沿って説得的に記載します。

②自賠責保険・共済紛争処理機構の紛争処理制度

第三者である弁護士・医師・学識経験者で構成される紛争処理委員が審査を行うため、より客観的・中立的な審査が期待できます。

参考:紛争処理制度の概要|自賠責保険・共済紛争処理機構

③損害賠償請求訴訟

さらに最終的には、加害者(+保険会社)に対して損害賠償請求訴訟を提起して、裁判所に後遺障害等級の認定を求めることも可能です。

いずれの方法による場合でも、異議申立てを行う場合には、等級認定を覆せるための論拠を整えて臨むことが必要です。

後遺障害等級の認定基準を踏まえて、異議申立てに向けた適切な準備を整えるためには、弁護士へのご相談をお勧めいたします。

適正な後遺障害認定を受けるための注意点は?

適正な後遺障害等級の認定を受けるには、とにかく書類をきちんと揃えて提出することが大切です。

もっとも重要になる「後遺障害診断書」はもちろんのこと、それ以外の書類についても、自賠責保険会社の指示に従ってタイムリーに準備・提出を行いましょう。

後遺障害診断書の内容が重要|医師と適切なコミュニケーションを

後遺障害等級認定の申請において、最重視される書面は、医師が作成する「後遺障害診断書」です。

後遺障害診断書には、被害者に残った後遺症の具体的な症状が記載されているため、等級認定の際のもっとも重要な資料となります。

逆に言えば、等級認定の要件に従った記載が後遺障害診断書の中に存在しないと、適正な後遺障害等級の認定を受けられなくなってしまう可能性があるのです。

後遺障害診断書は医師が作成しますが、適宜弁護士のチェックを受けて、適正な等級認定に繋がりやすい内容に仕上がってから提出しましょう。

追加書類の提出依頼には誠実に対応する

自賠責保険会社から追加書類の提出を求められた場合には、要請に従って速やかに書類を提出しましょう。

書類の追加提出が求められるのは、等級認定に必要な情報が不足しているからにほかなりません。

つまり、そのままの状態では、適正な後遺障害等級が認定されない可能性が高いということです。

被害者に有利な等級認定を受けるためにも、書類のタイムリーな提出などを通じて、審査に最大限協力することが大切になります。

後遺障害認定を弁護士に依頼するメリット

交通事故によるケガの治療後に後遺症が残り、後遺障害等級認定の申請を行う場合には、事前に弁護士に相談することをお勧めいたします。

弁護士に相談することで、以下のメリットを享受でき、スムーズに適正な金額の賠償金(保険金)を受け取れる可能性が高まります。

医師と連携して申請準備を整えられる

前述のとおり、後遺障害等級認定の申請を行うに当たっては、後遺障害診断書の記載がきわめて重要な意味を持ちます。

医師は医学的な観点から後遺障害診断書を作成しますが、等級認定においてプラスに働かせるためには、「認定基準に沿った記載になっているか」という観点からのチェックも必要です。

弁護士は、適宜医師とコミュニケーションをとりながら、申請に必要な書類の準備を整えます。

必要に応じて、後遺障害診断書の記載を調整してもらえるように、医師に依頼することも可能です。

医師と弁護士の連携によって、後遺障害診断書を含めた提出書類を周到に準備することができ、ひいては適正な後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高まるでしょう。

準備や自賠責保険会社とのやり取りを一任できる

被害者請求のデメリットとして、書類の準備や自賠責保険会社とのやり取りを自分で行わなければならず、手間がかかる点が挙げられます。

しかし、弁護士に依頼することで、このデメリットはほぼ解消することが可能です。

弁護士は、申請に必要な書類の準備の大部分と、自賠責保険会社とのやり取りの一切を代行します。

そのため、被害者本人の手間は大きく軽減されるでしょう。

被害者請求によって申請を行いたいものの、準備や窓口の手間を面倒に感じている方は、弁護士への依頼がお勧めです。

加害者側に対して弁護士基準による請求が可能

後遺障害等級の認定を受けた後は、加害者に対して、認定された等級に応じた後遺障害慰謝料と逸失利益を請求する必要があります。

加害者が任意保険に加入している場合、示談交渉の相手は任意保険会社です。

加害者側の任意保険会社は、被害者に生じた客観的な損害額よりも、低い金額の保険金を提示してくる可能性が高い点に注意しなければなりません。

任意保険会社が提示してくる保険金額は、各社が独自に定めた「任意保険基準」により計算されたものです。

これに対して、被害者に生じた客観的な損害額を計算できるのは、「弁護士基準(または裁判所基準)」と呼ばれる基準になります。

被害者が適正な損害賠償を受けるためには、「弁護士基準(裁判所基準)」に基づき、後遺障害慰謝料と逸失利益を請求することが非常に重要です。

弁護士に示談交渉を依頼することで、任意保険会社の主張に屈することなく、弁護士基準(裁判所基準)により客観的な損害額を賠償するよう求めることができます。

まとめ

後遺障害等級は、後遺障害慰謝料と逸失利益の金額に大きな影響を及ぼします。

そのため、適正な後遺障害等級の認定を受けることがきわめて重要です。

弁護士に依頼することで、後遺症の内容・実態に即した、適正な後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高まります。

また、等級認定後の加害者に対する損害賠償請求も、弁護士に依頼すれば適正額の請求を行うことが可能です。

交通事故の後遺症にお悩みの方は、お早めに弁護士までご相談ください。

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この記事の調査・編集者
みぞ
2017年にライターとしてアシロに入社し、主に交通事故とIT分野の執筆に携わる。2019年によりIT媒体の専任ディレクターになり、コンテンツの執筆・管理などを行っている。