当て逃げされても泣き寝入りしない!対処法と補償や注意について解説

当て逃げされても泣き寝入りしない!対処法と補償や注意について解説
目次
  1. 当て逃げとは
    1. 当て逃げの定義・罰則
    2. 当て逃げとひき逃げの違い
    3. 当て逃げの犯人が見つかる確率
  2. 当て逃げされた被害者が取るべき対応
    1. 1.損害が小さくても警察へ通報する
    2. 2.できるだけ多くの証拠を確保する
    3. 3.自分の加入している保険会社へ連絡する
    4. 4.病院を受診して診断書を受け取る
  3. 当て逃げでよくあるケース
    1. 1.駐車場での接触事故
    2. 2.走行中に相手の車と接触して逃げられる
    3. 3.あとから当て逃げされていたことに気づく
  4. 当て逃げされた被害者が加害者に問える責任
    1. 1.刑事責任 | 懲役刑・罰金刑など
    2. 2.行政責任 | 免許取り消し・免許停止など
    3. 3.民事責任 | 損害賠償請求
  5. 当て逃げされて加害者が見つかった場合の対処法
    1. 相手方の保険会社と示談交渉をする
    2. 弁護士に相談する
  6. 当て逃げされて加害者が見つからない場合の対処法
    1. 自動車保険の車両保険が利用できないか確認・検討する
    2. けがをさせられた場合は政府保障事業を利用する
  7. 当て逃げされて泣き寝入りしないためのポイント
    1. 1.なるべくすみやかに対応を開始する
    2. 2.人身事故の示談交渉をする際は弁護士に依頼する
    3. 3.軽傷でもけがをした場合は人身事故扱いにする
  8. 当て逃げされた場合に関するよくある質問
    1. すぐに当て逃げに気付かなかった場合、警察に届け出るべきですか?
    2. 事故後にけがに気付いた場合、人身事故に切り替えるべきですか?
    3. 加害者が「事故前からあった傷だ」と主張して傷の存在を認めてくれず、どうすればよいでしょうか?
    4. 加害者に修理費の支払いを拒否されていて、どうすればよいでしょうか?
  9. さいごに

車の接触によって物損が生じたものの、加害者がそのまま逃げてしまった場合、どのように対処すればよいか悩んでしまうでしょう。

本記事では、そのような当て逃げの被害に遭った際の対処法について解説します。

当て逃げされた際の注意点やよくある質問についても解説しているので、本記事を参考に当て逃げ事件の解決を目指してください。

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久保田美月弁護士
久保田 美月弁護士(旭合同法律事務所)
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当て逃げとは

そもそも「当て逃げ」とは、どのようなものなのでしょうか。

ここでは、当て逃げの定義や罰則、ひき逃げとの違いなどについて解説します。

当て逃げの定義・罰則

一般に当て逃げとは、車やバイクの運転中に加害者が物損事故を起こし、そのまま立ち去ってしまうことを指します。

当て逃げで主な問題となるのは、逃げてしまったことではなく、事故を起こしてしまった際の警察への報告義務を怠ってしまったことにあります。

該当する違反行為は、道路交通法第72条第1項に定められた「危険防止措置義務違反」と「報告義務違反」です。

危険防止措置義務違反であれば1年以下の懲役または10万円以下の罰金(道路交通法117条の5第1項1号)、報告義務違反であれば3ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられる可能性があります(道路交通法119条第1項10号)。

当て逃げとひき逃げの違い

当て逃げと近いものに「ひき逃げ」があります。

当て逃げと同様、ひき逃げも法律用語ではありません。

当て逃げは物損事故で問題になるのに対して、ひき逃げは「人身事故を起こしたにもかかわらず、負傷者の救護義務や危険防止措置義務を怠ったまま事故現場から立ち去ること」をいいます。

ひき逃げ(救護義務違反)の罰則は当て逃げよりも重く、5年以下の懲役または50万円以下の罰金を科せられます(道路交通法第117条第1項)。

また、被害者の死傷が運転手の運転によるものである場合は10年以下の懲役または100万円以下の罰金と、非常に重い罰則を科せられることになります(道路交通法第117条第2項)。

当て逃げの犯人が見つかる確率

当て逃げの犯人が見つかる確率は明確に試算されているわけではありませんが、そこまで高くはないといわれています。

ひき逃げの検挙率は90%を超えているといわれていますが、物損事故に留まる当て逃げは、警察による積極的な捜査がおこなわれず、犯人逮捕につながる確率が高いとはいえません

当て逃げされた被害者が取るべき対応

当て逃げの犯人が見つかる確率は低いとはいえ、泣き寝入りする前にできることはあります。

以下の4つのポイントを参考に、行動してみてください。

1.損害が小さくても警察へ通報する

当て逃げの被害に遭ってしまったら、たとえ損害が小さくても必ず警察に通報しましょう。

警察に通報することで、事故の状況の調査や加害者特定の捜査がおこなわれます。

また、十分な証拠があれば逮捕につながることも期待できるでしょう。

警察に通報すべきもうひとつの理由として、事故証明書を発行してもらえるという点があります。

事故証明書は、加害者への損害賠償請求や、自身の保険金請求に必要となるため、必ず発行してもらう必要があります。

2.できるだけ多くの証拠を確保する

当て逃げの加害者を逮捕するためには、多くの証拠が必要となります。

そのため、有力な証拠は全て警察に提出し、捜査を進めてもらいましょう、

当て逃げ事件の証拠として、以下のようなものが挙げられます。

  • 加害者の自動車の情報(車種・色・ナンバーなど)
  • ドライブレコーダーの情報
  • 事故現場近くの防犯カメラの情報
  • 目撃者の情報 など

事故現場近くの防犯カメラの情報が欲しい場合、映像の保管期限が迫っていることがあるため、早急に動く必要があります。

また、事故が発生した際に目撃者がいるのであれば、氏名と連絡先を聞いておくことでのちに証言してもらえる可能性があります。

3.自分の加入している保険会社へ連絡する

落ち着いたタイミングで、自身が加入している保険会社へ事故が発生した旨を連絡します。

保険会社へ連絡する際、発生した事故の内容や発生日時などを伝える必要があります。

4.病院を受診して診断書を受け取る

ひき逃げによってけがをした場合や身体に異変を感じる場合は、すぐに病院を受診しましょう。

事故直後は大きなけがではないと思っていても、のちのち後遺症が残ってしまうケースがあります。

また、けがを負った場合、当て逃げではなくひき逃げとして扱われるようになり、加害者の罰則は当て逃げの場合よりも重いものになります

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当て逃げでよくあるケース

当て逃げでよく見られるケースには、以下の3つがあります。

1.駐車場での接触事故

当て逃げのよくあるケースに、駐車場での接触事故が挙げられます。

具体的には、駐車場に停める際や駐車場から出す際に車をぶつけてしまったり、停車中にドアを開けた際にぶつけてしまったりといったケースが想定されます。

駐車場での当て逃げが多く見られる理由には、駐車場が無人であることが多いことから「どうせバレないだろう」と、そのまま逃げてしまうことが考えられます。

2.走行中に相手の車と接触して逃げられる

次によくあるのが、車の走行中に相手の車と接触したものの、逃亡されてしまったケースです。

傷の程度から「問題ない」と判断し、そのまま無視してしまう場合があるほか、実は飲酒運転をしており、その発覚を恐れて逃げてしまうケースも見られます。

3.あとから当て逃げされていたことに気づく

なかには、接触時には当て逃げされたことに気づかず、しばらくしてから車体の傷を見つけたりして当て逃げに気づくというケースもあります。

このようなケースでも、ほかの交通事故と同様に警察への届け出などは必要ですが、気付くのが遅れてしまうと有力な証拠が残っておらず、犯人を特定できないおそれもあります。

当て逃げされた被害者が加害者に問える責任

当て逃げをされた加害者に対しては、以下の3つの責任を問える可能性があります。

1.刑事責任 | 懲役刑・罰金刑など

道路交通法において、「交通事故があったとき、その当事者は直ちに車両等の運転を停止し負傷者を救護・道路における危険を防止等必要な措置をとることと、警察に報告すること」が義務付けられています。

当て逃げをしてしまった場合、危険防止措置義務と報告義務に違反しており、危険防止措置義務違反であれば1年以下の懲役または10万円以下の罰金、報告義務違反であれば3ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

【参考元】道路交通法|e-Gov法令検索

2.行政責任 | 免許取り消し・免許停止など

当て逃げを起こした場合、運転免許制度上の処分として、安全運転義務違反で2点、危険防止措置義務違反として5点の計7点が加算されます。

この点数を科された場合、過去に免許停止の処分などを受けていなくても、30日の免許停止処分を受けることになります。

なお、ただの物損事故の場合は違反点数の加算はありません

3.民事責任 | 損害賠償請求

当て逃げ事件では、被害者に対して民事上の損害賠償責任が発生します。

示談金額は、基本的に加害者・被害者間の示談交渉で決められます。

なお、当て逃げの加害者が損害保険に加入していた場合は、保険会社が代理で示談交渉をおこないます。

当て逃げされて加害者が見つかった場合の対処法

当て逃げされた事故で加害者が判明した際には、以下のポイントを参考に行動してください。

相手方の保険会社と示談交渉をする

加害者が保険に加入している場合、加害者の加入している保険の対物賠償責任保険が適用されます。

そのため、基本的には加害者側の保険会社と示談をおこなうことになります。

当て逃げされてから示談成立するまでの流れ

当て逃げの加害者と示談する場合、基本的には以下のような流れで進行します。

  1. 警察に通報する
  2. 交通事故の証拠を集める
  3. 自分が加入する保険会社に連絡する
  4. 加害者側の保険会社と示談交渉をする
  5. ADRや裁判などで解決を図る(示談交渉が不成立の場合)
  6. 加害者側から賠償金が支払われる

当て逃げ事故で請求できる項目

当て逃げ事故を起こされた場合、以下のような項目を請求できる可能性があります。

  • 車両の修理費用もしくは買い替えのための費用
  • 代車にかかった費用
  • 積み荷などの損害賠償
  • レッカー代 など

弁護士に相談する

加害者側との示談交渉に不安を感じる場合は、弁護士に相談をしましょう。

交通事故トラブルが得意な弁護士であれば、今後どのような対応をするべきか的確にアドバイスしてくれるほか、相手方からの提示額が適切かどうかなども判断してくれます。

また、代理人として示談交渉の代行を依頼することもでき、法律の知識や交渉ノウハウを活かして、依頼者が適切な額の賠償金を受け取れるように尽力してくれます。

さらに、交渉が成立せずに裁判に移行した場合も対応してくれるなど、弁護士に依頼することで事故対応にかかる手間を大幅に軽減できるというメリットがあります。

当サイト「ベンナビ交通事故」では交通事故トラブルが得意な全国の弁護士を掲載しており、初回相談無料のところも多くあるので、まずは探してみましょう。

弁護士費用特約を利用すれば費用負担が軽くなる

弁護士への依頼を検討する場合、弁護士費用がネックとなる方も多いでしょう。

しかし、加入している保険の弁護士費用特約を利用できる場合は、自己負担0円で依頼できることもあります。

本人が加入していなくても、家族・親族が加入していれば利用できる場合もあるため、周囲の契約状況も確認しておくことをおすすめします。

また、法律事務所の中には分割払い・後払いに対応しているところもあります。

「すぐには弁護士費用を準備できない」という方も、初回無料相談などを活用して一度話を聞いてみることをおすすめします。

当て逃げされて加害者が見つからない場合の対処法

当て逃げ事件は、ひき逃げ事件に比べて検挙に至らない確率が高いといえます。

以下では、当て逃げ事件で加害者が判明しないときに検討すべきことを紹介します。

自動車保険の車両保険が利用できないか確認・検討する

当て逃げの犯人が見つからず損害賠償金を得られないからといって、車を修理しないというわけにはいきません。

犯人が見つからない場合は、自身が加入している車両保険の補填が利用できないか検討しましょう。

ただし、プランによっては当て逃げが補填の対象外となっている場合や、車両保険を利用することで保険料が上がって損をしてしまうこともあるため注意が必要です。

けがをさせられた場合は政府保障事業を利用する

事故によってけがをしており、人身事故に発展した場合、政府の保障事業を利用できます。

政府の保障事業とは、被害者が受けた損害を国が加害者に代わって立て替える制度です。

当て逃げおよび物損事故の場合は利用できないため注意してください。

【参考元】損害賠償を受けるには?|国土交通省

当て逃げされて泣き寝入りしないためのポイント

当て逃げ事件の場合、証拠があったとしても加害者が判明しないケースもあります。

以下では、泣き寝入りしないために確認しておきたい注意点を3つ解説します。

1.なるべくすみやかに対応を開始する

当て逃げをされた場合、なるべくすみやかに対応を開始する必要があります。

その理由は以下の2つです。

1つ目の理由は、時間が経つほど加害者の特定が困難になるためです。

事故当時の記憶は日を追うごとに薄れていきますし、目撃者も見つかりにくくなります。

また、防犯カメラにも映像の保存期間があるため、時間が経つと記録が失われてしまいます。

2つ目の理由は、損害賠償請求には消滅時効があるためです。

物損事故における損害賠償請求の消滅時効は、「被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知ったときから3年」と定められています。

また、損害および加害者を把握できていなくても、事故の発生から20年で時効を迎えます。

2.人身事故の示談交渉をする際は弁護士に依頼する

当て逃げにあった際に示談交渉をおこなうなら、弁護士に依頼をしましょう。

特に「事故後にけがが見つかり、物損事故ではなく人身事故となった」という場合は、慰謝料の請求ができるようになります。

そのため、弁護士の力を借りて適切に請求することで多くの損害賠償金を獲得できる可能性があります。

3.軽傷でもけがをした場合は人身事故扱いにする

「物損事故として警察に連絡したのち、新たにけがが見つかった」という場合は、警察に改めて連絡する必要があります。

人身事故の扱いとなると、より細かな捜査をおこなってもらえる可能性があり、加害者特定の確率も上がるといえます。

当て逃げされた場合に関するよくある質問

最後に、当て逃げされた場合によくある質問とその回答を紹介します。

すぐに当て逃げに気付かなかった場合、警察に届け出るべきですか?

たとえ時間が経ってしまっていても、当て逃げされたら警察に必ず届け出る必要があります。

なかには、当て逃げに気づくのが遅くなってしまい「今から通報しても犯人が見つからないだろうから通報は不要だろう」と考える方もいるかもしれません。

しかし、警察に届け出ないと事故証明書が発行されず、保険などが利用できません

また、事故を警察に届け出ることは道路交通法によって義務付けられています

事故後にけがに気付いた場合、人身事故に切り替えるべきですか?

当て逃げとして警察に届け出たものの、のちにけがに気づいた場合は、警察に届け出ることによって、ひき逃げおよび人身事故として扱ってもらうことが可能です。

人身事故として扱われることによって、警察による詳細な捜査が期待できるほか、損害賠償に慰謝料が加わり、より賠償金が高額になることが期待できます。

一方で、事故から10日ほど経過してしまうと、人身事故への切り替えが難しくなってきます

したがって、人身事故へ切り替えをおこなう場合には、迅速に警察へ届け出る必要があります。

加害者が「事故前からあった傷だ」と主張して傷の存在を認めてくれず、どうすればよいでしょうか?

加害者が「事故前からあった傷だ」などと主張してきた場合は、以下のような証拠を提示し、事故によって新たについた傷であることを主張する必要があります。

  • 事故直後の写真や動画
  • 事故前の最後に撮った車の写真や動画
  • 事故の瞬間を映したドライブレコーダーや防犯カメラの映像

また、加害者側が提示してくる賠償金は、加害者側の主張を加味した金額になっている可能性があります。

鵜呑みにせずこちらの主張もしっかりと伝えることが大切です。

加害者に修理費の支払いを拒否されていて、どうすればよいでしょうか?

当て逃げの加害者が修理費の支払いを拒否してくる場合、弁護士を通して示談交渉をおこなうのがおすすめです。

また、それでも示談交渉に応じない場合は、民事訴訟などに移行して解決を図ることになります。

弁護士という法律問題の専門家からのアプローチや、「裁判」などのワードが出てくることによって相手側が支払いに応じる可能性は十分あるため、諦めずに交渉をおこないましょう。

さいごに

当て逃げ事件は犯人の特定が難しい事件です。

そのため、犯人が見つからず泣き寝入りになってしまう可能性もあります。

当て逃げ事件で泣き寝入りしないためには、十分な証拠の提出が重要です。

弁護士であれば、事故後の対応に関するアドバイスや、示談交渉や裁判のサポートなどをしてくれて、事故被害者にとって心強い味方になってくれます

初回相談無料の法律事務所も多くあるので、まずは「ベンナビ交通事故」で相談先を探してみることをおすすめします。

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アシロ編集部
編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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