交通事故後の対応
自損事故で保険金はいくらもらえる?保険の種類ごとに詳しく解説
2024.10.16
交通事故を起こしたときには、法律上果たさなくてはならない義務や、のちのちの示談交渉や裁判などを有利に進めるためにやっておくべきことが数多くあります。
しかし、交通事故は人生で何度も巻き込まれるものではないため、いざ当事者になってみると「何をすればよいかわからない」「保険会社の提案をそのまま受け入れてよいのか判断できない」など、さまざまな疑問を抱えてしまうものです。
本記事では、交通事故の加害者・被害者双方のために、以下3点についてわかりやすく解説します。
まずは、交通事故を起こしたときに初動でやるべきことを解説します。
心を落ち着けて、ひとつずつ確実に対応しましょう。
交通事故の現場にけが人がいる場合には、最優先で救護してください。
特に、自動車の運転者や同乗者には「救護措置義務」があります。
負傷者を救護しなければ、道路交通法違反の容疑で刑事罰を受けてしまいます。
人を負傷させた運転者の場合 | 10年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
---|---|
人を負傷させていない運転手の場合 | 5年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
他人の運転する車の同乗者等の場合 | 1年以下の懲役または10万円以下の罰金 |
けが人を安全な場所に移したあと、必要であれば119番で救急車を手配してください。
負傷者の状況次第では、救急隊員が到着するまでの間、指示にしたがって応急処置をおこないましょう。
負傷者対応が済んだあとに、事故車を安全な場所に移動してください。
自動車の損傷が激しく自走が難しい状況なら、ハザードランプや発煙筒・三角表示板を使い、道路を通行する車両に危険を知らせましょう。
これらの危険防止措置義務に違反すると、道路交通法違反により刑事罰が科される可能性があります。
人身事故における事故車両の運転手 | 5年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
---|---|
人身事故における加害車両の運転手 | 10年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
物損事故 | 1年以下の懲役または10万円以下の罰金 |
交通事故が発生したときは、自動車などの運転者には警察への「報告義務」があるため、被害状況の大小を問わず、かならず警察に通報しなければいけません。
報告義務に違反して110番通報しなかったり、捜査員が到着する前に現場から離れたりしてしまうと、報告義務違反を理由に「3ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金」が科されます。
また、保険対応などの交通事故の事後処理をするには「交通事故証明書」が必要ですが、警察に通報しなければ発行されません。
結果として、保険金が支払われない可能性もあるので、すみやかに通報することが大切です。
交通事故当時の状況や過失割合でのちのち争いが生じそうなときには、証拠を記録しておくことも忘れないようにしてください。
事故当時は相手方が反省をして「自分が悪い」と言っていたとしても、後日保険会社から連絡があったときにはすっかり主張内容が変わっているというケースも少なくありません。
示談交渉で不利にならないようにするためにも、事故現場の証拠保全は重要です。
例えば、交通事故の目撃者がいるなら、事故当時の状況をあとから説明してもらう必要が生じたときのために、連絡先を交換しておくのがおすすめです。
また、相手方の車両に生じたキズだけではなく、「キズが生じていない箇所」も写真に記録しておきましょう。
相手方の車両にドライブレコーダーが搭載されているかも確認してください。
交通事故が起きた場合、加害者・被害者問わず感情的になりがちですが、今後の手続きをスムーズにすすめるため、冷静になってお互いの連絡先を交換してください。
警察到着前に連絡先交換をしなかったとしても、捜査員から「連絡先は交換しましたか?」などの問いかけをされるのが一般的です。
相手と連絡先を交換する際は、以下を必ず確認し記録しておきましょう。
相手と名刺交換をしたり、相手方の保険証書や車両ナンバーをスマートフォンで撮影させてもらったりするのもひとつの手です。
救護義務・危険防止措置義務・報告義務を果たしたあとは、加入している任意保険会社に連絡をしてください。
交通事故発生時の注意点やその後の流れ、確認事項などについて丁寧に案内してもらえます。
通常、保険会社は24時間体制で窓口を開設しているため、早朝深夜帯の交通事故でもその場で連絡することが可能です。
保険内容次第では、レッカーや代車の手配もしてくれるので、電話連絡の際に確認してください。
なお、自身が被害者の場合で責任を問われることがないと思われるケースでも、その後過失割合が争点になったり、加害者側から十分な賠償を受けられなかったりするリスクがあります。
そのため、自身が被害者の場合でも契約している保険会社に連絡することを強くおすすめします。
次に、交通事故現場で警察に通報したあとの流れについて解説します。
実況見分では、交通事故現場の状況が確認されます。
交通事故当事者の立会いのもと、事故当時の様子の説明を求められ、現場の様子が記録されて「実況見分調書」が作成されます。
実況見分では、以下がチェックされます。
なお、実況見分の立会いは一般的に任意捜査の一環としておこなわれます。
一方、交通事故当事者が飲酒を疑われている場合など事件性があるときは、裁判官の令状に基づく「現場検証」が強制的に実施されます。
事情聴取では、交通事故現場に到着した捜査員から事故当時の状況などについて尋ねられます。
嘘をつくと立場が悪くなっていくだけなので、警察官からの質問に正直に答えることが必要です。
場合によっては、自分の説明が相手の説明と矛盾することもありますが、正確に答えている自信があるのであれば安易に主張を曲げてはいけません。
聞き取り捜査で話した内容が、示談交渉の際に大きな影響を及ぼす可能性もあります。
必要であればドライブレコーダーの映像を提出するなど、自分の証言が正しいと裏付けることを心がけましょう。
交通事故の状況次第ですが、一般的な聞き取り捜査で確認されるのは以下の項目です。
なお、軽微な交通事故なら現場で簡単に事情聴取を受けるだけですみますが、深刻な交通事故の場合には供述調書が作成されることもあります。
供述調書には署名・押印を求められるので、内容を精査したうえで、納得できない内容が記載されている場合には修正を求めましょう。
交通事故は警察に対して、人身事故または物損事故として届け出ることになります。
人身事故と物損事故のどちらで処理するかは最終的に警察が判断しますが、少しでもけがをしていれば、人身事故として届け出るようにしてください。
物損事故になると、通院や休業などに対する十分な補償を受けられなくなる可能性があります。
相手から物損事故にしてほしいと言われても、応じる必要はありません。
けがをしているのに物損事故として届け出てしまった場合は、およそ10日以内であれば切り替えられることがあるのですみやかに警察へ問い合わせてください。
次に、けがを治療し、事故車両を修理する際の流れを解説します。
交通事故に巻き込まれた場合は、外傷がなくても病院で診察を受けるようにしてください。
事故後しばらくしてから、痛みが生じてくるケースも少なくありません。
事故から診察までの期間が長くなると、事故とけがとの因果関係が薄れてしまい、十分な補償を受けられないおそれがあります。
けがの状態にもよりますが、基本的には整形外科を受診するのがよいでしょう。
治療費の支払いに関しては、保険会社に支払ってもらうケースと、自身で一旦支払っておくケースの2種類があります。
加害者が任意保険に加入している場合は、原則として保険会社から病院に対して直接治療費が支払われます。
これを「任意一括対応」と呼びます。
保険会社に通院する病院の情報を伝え、任意一括対応に関する同意書にサインすれば、あとは保険会社と病院で処理を進めてくれるはずです。
なお、任意一括対応に対応してもらえない場合、治療費の受け取りは基本的に示談成立後になります。
保険会社が任意一括対応に応じてくれない場合は、一旦、治療費を自分で支払うことになります。
あとで加害者側に請求することになるので、領収書などを保管しておくようにしましょう。
なお、交通事故のけがで通院する際にも、健康保険が利用できます。
自身が加入している健康保険組合や共済などに「第三者行為による傷病届」を提出したうえで、病院にも事情を伝えれば健康保険が適用されます。
また、業務中・通勤途中の事故でけがした場合は、労災保険を利用できないかどうかを確認してください。
交通事故でけがを負った場合は、完治または症状固定になるまで治療を続けるようにしましょう。
保険会社は自社の負担を少しでも抑えるために、治療途中にも関わらず、治療費の打ち切りを打診してくることがあります。
しかし、治療の必要性を判断するのはあくまでも医師なので、保険会社の打診を安易に受け入れてはいけません。
医師から治療の継続を指示されているのであれば、保険会社にその旨を伝えるようにしてください。
強引に治療費を打ち切られた場合も、治療は継続するべきです。
示談交渉のなかで治療費を請求できるように、領収書などを保管しておきましょう。
けがが完治せず、後遺症が残った場合は後遺障害等級認定の申請をおこなってください。
後遺障害等級認定とは、交通事故による後遺障害を程度に応じて1級~14級に分類したものです。
加害者の自賠責保険会社に対して申請し、等級認定を受けることができれば、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求できるようになります。
なお、後遺障害等級認定の申請方法は、事前認定と被害者請求の2種類があります。
概要 | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|
事前認定 | 任意保険会社に申請手続きを任せる方法 | 後遺障害診断書を提出するだけで済む | 保険会社が等級認定に向けて尽力してくれるとは限らない |
被害者請求 | 自分で書類作成・収集などの手続きをおこなう方法 | 等級認定に役立つ書類を自由に添付できる | 手間がかかる |
適切な等級認定を受けたいのであれば、被害者請求での手続きが望ましいといえます。
しかし、被害者請求では医学や法律の知識が必要になるので、まずは弁護士に相談することから始めてください。
交通事故で車が故障・破産した場合は、修理に出しましょう。
事故の状況次第では、修理費用を相手方に請求できることがあるため、領収書などは保管しておくようにしてください。
交通事故をめぐる民事の賠償責任については、保険会社を介して解決を目指すことになります。
では、具体的な手続きの流れを見ていきましょう。
交通事故の損害額が確定したら、示談交渉を始めます。
基本的には、当事者間で過失割合や損害賠償額を細かく決めていくことになります。
示談交渉の内容に合意したあと、和解契約を締結して、契約内容にしたがってそれぞれ賠償責任を負担することになります。
なお、加害者側が任意保険に加入している場合は、任意保険会社の担当者が示談交渉の代理人となるケースが一般的です。
示談交渉で意見が折り合わない場合は、ADRや民事調停を利用することも検討しなければなりません。
ADRや民事調停は、いずれも第三者の仲介のもとで話し合いを進める方法のことです。
ADRでは、弁護士などの専門家が当事者双方の言い分を聞きながら、合意を目指します。
裁判に比べて迅速な解決が期待できる一方で、複雑な事案には不向きとされています。
民事調停は、裁判官と専門知識を有する調停委員が間に入り、和解を目指す方法です。
裁判よりも費用を大幅に抑えられるメリットはありますが、必ずしも交通事故に詳しい人物が調停委員に選ばれる保証はないので注意してください。
示談交渉や裁判外での話し合いで解決できない場合には、損害賠償請求訴訟も選択肢に入ってきます。
裁判では、過去の判例に基づいて損害賠償額が決められるので、保険会社が提示してきた金額よりも高くなる傾向があります。
また、判決後に相手方が支払いに応じない場合には、強制執行に移れる点もメリットといえるでしょう。
ただし、裁判を起こすと解決までの時間が長引いてしまいます。
裁判所とのやり取りや主張をまとめた書面の作成などにも対応しなければならないため、弁護士のサポートが必要不可欠です。
交通事故を起こしたときには、警察への通報から損害賠償の支払いに至るまで、さまざまな手続きをしなければいけません。
交通事故処理の手続きをする際は、特に以下3点には注意が必要です。
交通事故を起こしたときには、「人身事故・物損事故のどちらで届け出をするか」が重要です。
例えば、けがをしていたのに物損事故として届け出をしてしまうと、後日保険会社に治療費の支払いを求めた場合に、「物損事故だから、治療費は保険料で支払えない」と拒否されてしまう可能性があります。
また、物損事故では警察の実況見分がおこなわれないので、過失割合や損害賠償で争う際に十分な証拠を提示できず、不利な状況に陥るケースもあります。
交通事故でけが人がいる場合や、少しでもけがをした可能性があり病院で受診したいと考えている場合は、「人身事故」として届け出をしておくことをおすすめします。
相手方から「物損事故扱いにしてほしい」と言われても、簡単に応じてはいけません。
交通事故後の治療が長引いていると、保険会社から症状固定について問い合わせがあったり、治療費の支払い打ち切りを打診されたりすることがあります。
症状固定を認めると、その時点で治療費が確定してしまうので、簡単に応じてはいけません。
保険会社に一度打ち切られた治療費の支払いを、再開してもらうのも非常に困難です。
症状固定とするかどうかは、あくまでも医師が判断します。
症状固定について保険会社からしつこく打診された場合は、医師に相談しましょう。
医師と相談した結果、治療の継続が必要と判断された場合は、医師が作成した意見書を保険会社へ提出して、治療の継続が必要な旨を主張しましょう。
保険会社から症状固定や治療費の支払い打ち切りをしつこく打診された場合、自分で交渉するのが難しい場合は、交通事故の対応を得意とする弁護士に相談してください。
弁護士は専門知識と交通事故対応の経験をもとに、保険会社との交渉を代行してくれます。
交通事故の示談交渉は、事故の加害者・被害者間で直接話し合いをするのではなく、「被害者と加害者側の保険会社」もしくは「双方の保険会社同士」でおこなうのが一般的です。
当事者間では冷静な話し合いが難しく、また、過失割合などの法的な争点について具体的な交渉を期待できないからです。
ただし、保険会社は支払う保険金をできるだけおさえようとして、相手方にとって不利な示談条件を提示してくるケースがあります。
相手方の保険会社から提示された示談条件に不満がある場合には、弁護士などの専門家のアドバイスを求めるのがおすすめです。
交通事故の示談交渉は弁護士に依頼することを強くおすすめします。
交通事故の案件を得意とする弁護士に相談することで、以下4点のメリットを得られるからです。
加入している自動車保険に弁護士費用特約が付帯していれば、費用負担なしで相談・依頼できる場合があるので、一度確認してみましょう。
弁護士に依頼すれば、損害賠償額を増額できる可能性があります。
交通事故の慰謝料や休業損害などを算定する際には、主に3つの算定基準が用いられます。
自賠責基準 | 最低限の補償を目的とした基準。最も低額になる |
---|---|
任意保険基準 | 各任意保険会社が独自に定めている基準。自賠責基準と同額かやや高い程度 |
弁護士基準 | 過去の判例に基づく基準・最も高額になる |
同じ交通事故でも、適用する算定基準によって損害賠償額に大きな違いが生じます。
交通事故の被害者になったときには、弁護士に対応を依頼し、弁護士基準による賠償額を算出・請求してもらうことをおすすめします。
弁護士に依頼すれば、適切な過失割合を判断してもらうことが可能です。
多くの保険会社は、事故の状況をあらかじめ用意されたテンプレートに当てはめて過失割合を判定します。
このとき、交通事故の個別事情が過失割合を考慮する際に見落とされてしまうことがあるのです。
弁護士は依頼を受けた交通事故の個別事情を精緻に分析したうえで、依頼人にとって少しでも有利な過失割合になるよう、相手方と示談交渉を進めてくれるのです。
交通事故を起こすと、保険会社との連絡や書類のやり取りなどに相当手間がかかります。
保険会社から提示された条件に不満があったとしても、自分の希望を主張するのは簡単ではありません。
弁護士に依頼をすれば、保険会社への対応を一任できるので、精神的・肉体的な負担を軽減できるうえに、納得できる示談条件を勝ちとれる可能性もはるかに高くなるのです。
後遺障害認定の対応を任せられるのも、弁護士に依頼するメリットです。
交通事故で負ったけがの症状がいつまでも残る場合には、症状固定となり、後遺障害等級認定を申請することになります。
交通事故対応を得意とする弁護士であれば、より有利な判定結果を導くために必要な資料や検査、診断書の書き方などを把握しています。
また、判定結果に納得がいかない場合には、異議申立てをサポートしてもらうことも可能です。
後遺障害等級認定の申請手続きには、高度な専門知識を求められるケースも多いので、弁護士のサポートは必要不可欠といえます。
交通事故を起こした際は、ほとんどのケースで保険会社と交渉をする必要がありますが、慣れない事故処理でさまざまな不安が生じるのは当然です。
また、保険会社が主張する賠償の条件や内容が、必ずしも事故の当事者にとって適切とは限りません。
保険会社の提示した賠償の条件や内容をそのまま受け入れると、事故当事者が損をしてしまう可能性もあります。
少しでも有利な条件での賠償を求めるなら、交通事故の対応を得意とする弁護士へ依頼することを強くおすすめします。
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弁護士へ対応を依頼するか検討している場合は、ぜひ活用ください。