交通事故後の対応
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2024.10.09
突然の交通事故で仕事を休むことになると、休業損害証明書という書類が必要になることがあります。
休業損害証明書といわれても、あまり聞きなれない書類であり、どうやって入手したらいいのかわからないということも多いのではないでしょうか。
休業損害証明書は、休業損害を請求するために必要な書類です。
休業損害とは、交通事故が原因で仕事を休んで収入が減ってしまったことに対して支払われる補償のお金です。
休業損害は、生活のためにとても大切なお金です。
休業損害証明書をしっかりと入手して、休業損害を請求していくことが重要です。
本記事では、休業損害証明書とは何か、休業損害証明書の書き方などについて解説しています。
本記事を読めば、休業損害証明書の概要や書き方などの疑問点を解消することができます。
「休業損害証明書」とは、働いて給与を得ている方が交通事故によって仕事を休み、それによって収入が得られずに損害が生じていることを証明する書類のことです。
通常は、保険会社から送られてきた所定の用紙を勤務先に渡して必要事項を記入してもらい、保険会社に返送します。
休業損害証明書は、多くの場合、加害者側の保険会社から所定の用紙が被害者側に送られてきます。
休業損害証明書を紛失してしまった場合には、保険会社のWEBサイトからあらためて書類のひな形をダウンロードして入手しなおせることが多いです。
休業損害証明書の用紙が届いたら、勤務先の担当部署に渡して記入するように依頼します。
休業損害証明書は勤務先に記入・作成してもらう必要がある書類です。
休業損害証明書の提出期限は、特に定められていません。
ただし交通事故に遭った場合の損害賠償請求権には時効があります。
人身事故の場合には、原則として事故の日の翌日から5年が時効期間です。
この期間を過ぎても何も請求しないままでいると、損害賠償金を請求できなくなってしまいます。
このため、この5年という時効期間がひとつの締切だと考えることもできます。
休業損害証明書の記載項目と書き方について説明します。
休業損害証明書は、保険会社によってある程度書式や記載項目などにばらつきがあります。
もっとも、基本的にはどの保険会社の休業損害証明書であってもここで説明したようなことを記載することになります。
交通事故で仕事を休むことになった方の職種や役職、氏名、採用日などを記載します。
交通事故で仕事を休んだ期間(遅刻や早退をした日も含みます)とその内訳について記載します。
時間有給休暇、遅刻、早退がある場合には、その詳細を記載します。
また、同じ日に複数の短縮勤務をおこなった場合には、回数を分けて記入します。
休んだ日に給与の支給を受けたのかどうかを記載します。
交通事故による欠勤のために給与に変動があった場合には、実際の支給・減給額をどのように算出するのか計算式を記載します。
交通事故によって会社を休むより前の直近3ヵ月間の月例給与や締日、所定勤務時間などについて記載します。
月例給与とは、毎月支給される報酬のことで、いわゆる毎月の賃金のことです。
たとえば、毎月25日締めで、5月10日が事故日であれば、記載する期間は1月26日~4月25日の3ヵ月間となります。
付加給とは、時間外手当(残業代)や通勤手当などのことです。
パート・アルバイトの場合には、所定労働時間や時間給についても記載します。
所定労働時間とは、労働契約によって働くものとして定められた労働時間のことです。
時間給は、いわゆる時給のことです。
社会保険から「休業補償給付」や「傷病手当金」などのほかの給付を受けたことがあるかどうかを記載します。
休業損害と、休業補償給付・傷病手当金は、重複して受給することができません。
このため、このような重複した受給がないようにするために、これらの受給があったかどうかの状況を記載することとされています。
前述のように、休業補償給付や傷病手当金と休業損害とは、それぞれ重複して受給することはできません。
休業補償給付とは、労災保険に加入している方が受給できるものであり、勤務中や通勤中などといった仕事に関係する場面でけがなどをした結果仕事ができなくなったときに支給されるものです。
休業補償給付は、休業中の収入の減少を補うものであり、休業損害と同じ役割を果たしているため、休業損害と重ねてもらうことはできません。
また、傷病手当金とは、健康保険に加入している方がもらうことのできるお金で、業務外のけがで療養しており、療養のために仕事に就くことができないなど、一定の条件を満たした場合にもらえるお金です。
傷病手当金は、業務とは関係がない場面でのけがなどでの休業によって収入が減ったことを補うためのものであり、やはり休業損害と同じ役割を果たしているため、休業損害と重ねてもらうことができないこととされています。
記入日や、会社名、会社の所在地など、会社の情報を記入します。
会社の名前や所在地などはゴム印でもかまいません。
また、会社の法人としての印鑑を押してもらう必要があります。
押印に漏れがないかを確認しましょう。
休業損害証明書には、書類を添付して提出しなければならないことがあります。
休業損害証明書に添付する必要のある書類と提出先について説明します。
休業損害証明書を提出する際には、事故に遭った年の前年の「源泉徴収票」を添付します。
「源泉徴収票」とは、その年の収入や所得などを証明する書類であり、勤務先の会社が発行します。
手元に源泉徴収票がない場合には、勤務先の会社に発行を依頼するようにしましょう。
源泉徴収票を用意することができない場合には、代わりに「賃金台帳の写し」「雇用契約書」「所得証明書」などを提出することで源泉徴収票に代えることができます。
賃金台帳の写しは、賃金の支払い履歴を記録した台帳のことで、会社が保有している書類です。
また、雇用契約書は雇用されたときに会社から交付されていることが一般的です。
源泉徴収票が提出できない場合に代わりにどのような書類を提出すればいいのかは、休業損害証明書の提出先の保険会社に相談してみるとよいでしょう。
休業損害証明書と前年度の源泉徴収票などの添付書類を用意したら、あわせて加害者側の保険会社に提出します。
加害者が加入している任意保険の保険会社が提出先です。
ご自身の勤務先や役所などに提出するものではありません。
休業損害をどのように計算していくらもらえるのか、いつもらえるのかは、気になるのではないでしょうか。
休業損害の計算方法と支給時期について、説明します。
休業損害としてもらえる金額は、交通事故が原因で実際に減った分の収入です。
このことから、基本的には、休業損害は「1日あたりの基礎収入×休業した日数」という計算式でもとめることができます。
この「1日あたりの基礎収入」の金額は、給与所得者の場合と自営業者の場合とで計算式が少し異なるので、それぞれ分けて説明します。
給与所得者とは、サラリーマンやアルバイト・パートなど、勤務先に雇用されて働き、その対価として勤務先から給与の支払いを受けている人のことをいいます。
給与所得者の場合、直近3ヵ月分の給与額に基づいて1日あたりの基礎収入の金額を求めます。
給与所得者の休業損害の計算式は、「直近3ヵ月分の給与の合計額÷90日(または稼働日数)×休業日数」です。
自営業者は、誰かから毎月の給与をもらっているわけではないため、その前年の事業所得の金額を基に休業損害を計算します。
自営業者の休業損害の計算式は、「交通事故に遭った前の年の所得金額÷365日×休業日数」です。
これは、加害者側の保険会社が休業損害の日額を「事故前3ヵ月間の収入÷実稼働日数」ではなく「事故前3ヵ月間の収入÷90日間」として計算していることが多いことによります。
後者の計算式で計算すると、支払われる休業損害の金額が実際の減収額より少なくなることが多いです。
休業損害の金額が実際の減収額より少なくなる場合には、足りない分の金額は示談交渉の際に請求することとなります。
示談交渉の中で少なく支払われた分との差額を請求し、相手方の保険会社に支払ってもらいます。
まずは、休業損害が振り込まれたら、支払われている金額が正しいか計算してみましょう。
そのうえで、足りない分の休業損害があれば、示談の中で請求していくようにしましょう。
示談の中での請求となるため、保険会社が必ずしも請求したとおりに支払ってくれないこともあります。
そのような場合には、弁護士を通じて請求することでより支払ってもらえる可能性が高まるため、弁護士に依頼することも検討してみてください。
休業損害は、仕事を休んだことにより収入が減ることが確定した時点で請求することができます。
請求できるのが具体的にどの時点になるかは、給与所得者と自営業者とで異なります。
それぞれに分けて説明します。
会社員などの給与所得者の場合、休業損害を請求できるのは休んでいる間の分の会社の給料が確定してからということになります。
休業が長期間にわたる場合には、1ヵ月単位で会社に休業損害証明書を作成してもらいましょう。
そのうえで、1ヵ月単位で保険会社に休業損害を請求することが多いです。
これは、会社員などの給与所得者の場合には、1ヵ月単位で給与が確定するからです。
一方で、最後の示談交渉の段階でまとめて請求することも可能です。
個人事業主などの自営業者の場合には、確定申告書などを保険会社に提出し、1日単価を確定してから休業損害が保険会社から支払われます。
自営業者の場合、そもそも減収があったかどうかということや、1日単価の額がいくらになるのかということで保険会社との間で争いになることが少なくありません。
このようなことで保険会社との間で見解に食い違いがあると、休業損害の受け取りが遅れることがあります。
保険会社と休業損害をめぐってうまく交渉を進められない場合には、できるだけ早めに弁護士に相談して、弁護士に間に入ってもらって休業損害を請求していくことがおすすめです。
休業損害証明書は頻繁に目にする書類ではないため、わからないことも多いでしょう。
休業損害証明書についてよくある質問と回答を紹介します。
休業損害証明書は自分で記入するものではなく、会社に記入してもらいます。
もし自分で記入をしても、保険会社から勤務先に対して記載内容について問い合わせがなされれば、勤務先の会社が作成したものではないことが判明してしまいます。
自分で記入をおこなったことがわかってしまうと、それが示談交渉で不利な事情として働く可能性もあります。
自分で休業損害証明書を記載することはしないようにしましょう。
休業損害証明書は勤務先の会社に書いてもらうものですが、記入漏れや誤りがないようにご自身でも十分に注意して確認しておくようにしましょう。
もし記入漏れや誤りがあれば、あとから書き直しが必要となったり、間違った情報に基づいて休業損害が計算されたりして、不利な結果となってしまうこともあります。
休業損害証明書の記載内容に誤りがあることが判明したら、勤務先の会社に訂正してもらいましょう。
またその際、勤務先の会社に訂正してもらう場合には、必ず訂正印を押してもらうようにしましょう。
訂正印がなければ、ご自身が勝手に内容を書き換えたと思われてしまうリスクもあります。
会社が以下のような理由であなたに対してあまり協力してくれず、休業損害証明書を書いてもらえないということがあります。
会社が休業損害証明書を書いてくれない場合、まず会社に丁寧に説明をするようにしましょう。
休業損害証明書を会社が作成したからといって会社に不利益がないことや休業損害証明書の必要性を詳しく説明することも有効です。
会社が誤解をしている場合には、これらの事情を説明すれば誤解が解けて協力して書いてくれることもあります。
休業損害証明書の書き方が分からないから書いてくれないケースでは、休業損害証明書の書き方や記載例を会社に共有することで、書き方を説明するという方法をとるとよいでしょう。
どうしても会社が休業損害証明書を書いてくれない場合には、代わりの資料で休業損害を請求できることもあります。
給与明細、源泉徴収票、賃金台帳の写し、タイムカードなど勤怠を証明できる資料などによって、休業損害を請求できる可能性があります。
このケースでは、どのような資料が代わりになるのかを弁護士に教えてもらい、その資料を集めるようにしましょう。
休業損害は、交通事故で働けない間の収入の減少を補うためにとても大切なお金です。
しかし、休業損害の請求は加害者側がすんなりと受け入れてくれないことも多く、もめることもよくあります。
仮に加害者側に拒否されても、諦めるのは早いです。
交通事故を多く取り扱っている弁護士であれば、どのように交渉すれば休業損害を上手に請求できるのかよく知っており、あなたが休業損害を請求する助けになってくれます。
休業損害の請求で困ったら、交通事故を多く取り扱っている弁護士に相談してみましょう。
あなたの休業損害の請求のために、手助けしてくれます。