遺産相続を弁護士に依頼した場合の流れと費用|弁護士の選び方についても解説

遺産相続を弁護士に依頼した場合の流れと費用|弁護士の選び方についても解説

遺産相続はトラブルに発展するケースも多いため、法的な知識を持つ弁護士に依頼した方がスムーズに進みやすいです。

しかし、いざ弁護士に遺産相続を依頼する場合、何をどこまでしてもらえるのかわからない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、弁護士に遺産相続を依頼する際の流れについて解説するので、安心・納得した状態で、弁護士への依頼を検討してください。

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この記事は、株式会社アシロの「法律相談ナビ編集部」が執筆、社内弁護士が監修しました。

遺産相続を対応できるのは主に弁護士と司法書士

遺産相続の士業による対応は、弁護士または司法書士に依頼するのが一般的です。

ただし、弁護士と司法書士では、遺産相続で発生する業務において対応できる内容と対応できない業務があります。

弁護士と司法書士で対応できる業務と対応できない業務を比べると、以下のとおりです。

対応業務弁護士司法書士
相続人の調査
相続財産の調査
遺産分割協議の調整不可
遺産分割調停・審判の代理不可
遺産分割協議書の作成場合によって異なる
遺留分減殺請求

(遺留分侵害額請求)

場合によって異なる
相続登記
相続放棄の代理不可
遺言書の作成サポート
遺言書執行者就任
相続税申告不可

上記のように、弁護士の方が対応できる業務が多いです。

それぞれの違いについて、より具体的に解説します。

司法書士が対応できる遺産相続業務

司法書士が遺産相続で対応できる業務は、以下の5つです。

  • 相続人の調査
  • 相続財産の調査
  • 相続登記
  • 遺言書の作成サポート
  • 遺言執行責任者就任

「遺産分割協議」「遺産分割調停・審判の代理」「相続放棄の代理」「相続税申告」の4つは、原則、司法書士では対応できません。

「相続放棄の代理」については、代理提出はできませんが、書類の作成アドバイスまでは可能です。

また、「遺産分割協議書の作成」「遺留分減殺請求」については、状況によって対応できるかどうか異なります。

遺産分割協議書の作成については、登記に関するものであれば司法書士でも対応が可能です。ただし、内容は相続人自身が決定します。

遺留分減殺請求については、請求額が140万円以下の場合であれば、司法書士でも対応が可能です。

弁護士が対応できる業務と独占業務

弁護士は、遺産相続に関するすべての業務に対応できます。

ただし「相続性申告」においては一般的に税理士がおこなう業務であり、弁護士がおこなう場合は国税局長に通知しなければいけません。

そのため、相続税申告は、弁護士よりも税理士への依頼が一般的です。

不動産の名義変更についても、弁護士がおこなうことに法的な問題はありませんが、一般的には司法書士に依頼するケースがほとんどです。

また、遺産相続において弁護士しか対応できない独占業務があります。

  • 遺産分割協議の調整
  • 遺産分割調停

依頼者の代理となったり争いごとの交渉は、弁護士の独占業務になります。

とくに相続人同士の紛争が発生した場合においては、司法書士は相談を含め一切の業務を取り扱うことができません。

そのため、紛争に発展する可能性がある場合は弁護士への依頼が最良の選択と言えるでしょう。

遺産相続は弁護士と司法書士どっちに依頼するべき?

弁護士と司法書士では、弁護士の方が遺産相続において対応できる業務は多いです。

しかし、対応できる業務が多いからと言って一概に弁護士の方が良いわけではありません。

相続登記などの、遺産相続の基本的な手続きだけが必要なのであれば、司法書士への依頼も検討しましょう。

ただし、司法書士では対応できない相続人同士の紛争が起きる可能性がある場合は、弁護士への依頼を検討した方が良いです。

以下では、実際に弁護士に依頼した場合の流れについて解説します。

弁護士に遺産相続を依頼した場合の流れ

弁護士に遺産相続を依頼した場合の、基本的な流れについて解説します。

実際の流れについては「遺言書の内容」や「相続財産」「相続放棄するかどうか」などによっても異なります。

相続人の調査

被相続人が亡くなったら、まずは相続人を特定します。

法律上、相続人となれるのは一定の親族のみなので、被相続人の戸籍をたどって相続人を確定していきます。

このとき、遺言書がある場合は遺言書の内容に従って相続人を確定させます。

遺言書がある場合の流れは、以下のとおりです。

  1. 遺言書の検認
  2. 遺言執行

ただし、遺言書の内容が相続人の権利である遺留分を奪うような内容である場合は、遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)がおこなわれる可能性があります。
>相続人調査を弁護士に依頼するメリットについて詳しく知る

相続財産の調査

相続人の特定が完了したら、相続財産の調査をおこないます。

相続財産とは、被相続人が相続開始時(相続人が亡くなった日)に所有していたプラスの財産だけではなく、マイナスの財産を合わせたすべての財産です。

主なプラスの相続財産として、以下のものが挙げられます。

  • 不動産・不動産上の権利…宅地・店舗・借地権 など
  • 現金・有価証券…現金・預貯金・小切手 など
  • 動産…自動車・家財・宝石 など
  • その他…電話加入権・著作権 など

反対に、主なマイナスの財産は以下のものが挙げられます。

  • 負債…借金・住宅ローン など
  • 税金…未払いの所得税、住民税 など
  • その他…未払いの家賃・未払いの医療費 など

これらの調査は、不動産であれば登記簿謄本、預貯金は通帳などを関係機関へ書類を請求したうえで確定していきます。

被相続人に負債がある場合は相続人に負債が相続されますが、相続放棄することも可能です。

遺産分割協議|相続人同士で話し合う

相続時さんの調査が完了したら、遺産分割協議をおこないます。

遺産分割協議とは、相続人全員で遺産をどのように分割するかを決める話し合いの場です。

遺産分割協議をおこなう際は、原則として相続人全員が参加していなければいけません。

弁護士が必要な場ではありませんが、弁護士は依頼者の代理として参加できるので、自身の主張ができなかったり、不利な条件で遺産分割協議が進んでしまったりするリスクを回避できます。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議をおこなう際、弁護士は遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書とは、遺産分割協議で合意した内容をまとめた書類です。

相続人自身で遺産分割行書を作成することも可能ですが、不備がある場合は法務局や金融機関で受け付けてもらえません。

そのため、弁護士に依頼した方が、スムーズに進みます。

財産の名義変更

遺産分割協議の内容がまとまり、合意を得られたら、不動産や預貯金などの財産の名義変更をおこないます。

このとき、必要になるものは、以下のとおりです。

【預貯金の名義変更】

  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明

【不動産の名義変更】

  • 不動産登記事項証明書
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 不動産相続する人の住民票
  • 被相続人の除票
  • 固定資産評価証明書

これらの準備は、弁護士がすべておこないます。

ただし、不動産登記については、弁護士から司法書士に依頼するケースもあります。

相続税の申告

財産の名義変更が完了したら、相続開始から10ヵ月以内に相続税の申告をおこないます。

相続税の申告書は、被相続人が亡くなった時の住所地を管轄する税務署に提出します。

申告期限までに申告をしなかった場合や申告漏れがあった場合は加算税がかかってしまうので、もし自身でおこなう場合は注意しなければいけません。

ただし、相続税は基本的に3,600万円以上の相続財産がある場合に発生します。

3,600万円未満の場合は、相続税は発生しませんので、支払う必要はありません。

また、相続税の申告は、一般的に税理士の対応業務です。

しかし、国税局長に通知をおこなえば弁護士でも対応できます。

ほとんどの場合、弁護士と税理士で提携しているので、弁護士に依頼すれば一貫しておこなってくれる場合がほとんどです。

弁護士に遺産相続を依頼する場合の主な費用

弁護士に遺産相続を依頼した場合、当然費用がかかります。

主にかかる費用は、以下の5つです。

  • 相談料
  • 着手金
  • 報酬金
  • 手数料
  • 日当・実費

それぞれがどの位の金額になるのか、以下で解説します。
>相続問題の弁護士費用について詳しく知る

相談料

相談料は、弁護士に相談する際にかかる費用です。

あくまで相談のみにかかる費用であるため、実務はおこないません。

相談料は法律事務所によって異なりますが、目安としては30分あたり5,000円程度です。

昨今では、初回相談30分無料などとしている法律事務所もあります。

着手金

着手金は、文字通り着手した際に支払う初期費用です。

たとえば、遺産分割協議の代理交渉など、具体的なアクションを依頼した際にかかります。

遺産相続のどの部分を依頼するかによっても費用目安は異なりますが、相場は20万円~30万円程度です。

基本的に前払いの一括ですが、支払方法は相談にのってくれる法律事務所もあります。

報酬金

報酬金は、遺産相続問題が解決されたときに支払う費用です。

費用は固定ではなく、経済的利益によって異なります。

経済的利益とは、弁護士に依頼したことで得られた金額に応じた計算となるのが一般的です。

報酬金の割合としては、以下を参考にしてください。

経済的利益報酬金
300万円以下16%
300万円~3,000万円10%+18万円
3,000万円~3億円6%+138万円
3億円超え4%+738万円

上記の表は、日本弁護士連合会がかつて定めていた弁護士費用の目安です。

現在廃止されている基準ですが、当時の報酬金設定のままにしている法律事務所も多くあります。

参考:(旧)日本弁護士連合会報酬等基準

手数料

手数料は、書類作成や裁判所への申し立てなどの業務に対して発生する費用です。

遺産相続においては、遺言作成の手数料・遺言執行の手数料・相続放棄の申し立て手数料・遺留分減殺請求の内容証明郵便作成手数料、などがあります。

それぞれの費用目安は、以下のとおりです。

  • 遺言書の作成…10万円~
  • 遺言の執行…30万円~
  • 相続放棄…10万円~
  • 遺留分減殺請求の内容証明郵便作成…3万円~

具体的な金額は、法律事務所によって異なります。

日当・実費

日当や実費は、依頼に対してかかった諸経費です。

  • 日当…遠方へ出張した際に発生する費用
  • 実費…交通費・郵便料金・印紙代 など

日当については、着手金のなかにあらかじめ日当を含めている法律事務所もあるので、事前に確認しておきましょう。

弁護士に遺産相続を依頼した際の費用は誰が払う?

弁護士に遺産相続を依頼した場合、費用を支払いのは基本的に依頼した方です。

しかし、依頼内容によっては、相続人全員で支払うケースもあります。

どのようなケースで誰が弁護士費用を支払うのか、以下で解説します。

弁護士に依頼した方が払うケース

先述したように、遺産相続を弁護士に依頼した場合は、基本的に依頼者が費用を支払います。

しかし「依頼者」というのは、相続のどの部分を依頼するかによって異なるものです。

例として、3つのケースの「依頼者」を以下に記載します。

  • 遺産分割協議…遺産分割協議の代理を依頼した方
  • 遺留分減殺請求…申し立て人
  • 相続放棄…申し立て人
  • 遺言書の作成…遺言者(被相続人)

上記のように、どのケースで誰が何を依頼するかによって「依頼者」は変わります。

相続人全員で払うケース

遺言執行を弁護士に依頼した場合は、相続財産から費用を支払わなければいけません。

つまり、相続人全員が負担する形です。

これは、民法1021条によって定められています。

相続人は、相続財産から遺言執行費用を支払った残りを分配するのが一般的です。

参考:民法 | e-Gov法令検索(遺言の執行に関する費用の負担)第千二十一条)

遺産相続に強い弁護士の選び方

遺産相続を依頼する際は、その弁護士が遺産相続に長けているかどうかを確認しておきましょう。

弁護士と一重に言っても得意としている分野はさまざまです。

弁護士である限り、遺産相続に対応していないと断れるケースはほとんどありませんが、得意としていないケースもあります。

そこで、どのような観点で遺産相続に強い弁護士を選ぶかについて、以下で解説します。

遺産相続を専門にしている

まずは、依頼を検討している弁護士の専門分野を確認しておきましょう。

弁護士が携わる事件は、大きく分けて民事事件と刑事事件があります。

遺産相続については民事事件になるので、民事事件に特化している弁護士を選びましょう。

しかし、民事事件も多岐にわたります。

以下は、民事事件の一例です。

  • 交通事故の損害賠償請求
  • 離婚の慰謝料請求
  • 債務整理
  • 相続

上記のようにさまざまな民事事件があるので、遺産相続に特化している弁護士を選んでください。

ほとんどの法律事務所のホームページでは、その弁護士の専門分野が記載されているので、事前に確認しておきましょう。

遺産相続に関する実績が豊富

遺産相続に特化しているだけではなく、実績が豊富かどうかも確認しておきましょう。

ほとんどの法律事務所のホームページでは、過去の事例が掲載されています。

過去の事例でどのような遺産相続の問題を解決したかなどを確認したうえで、弁護士に依頼しましょう。

遺産相続を依頼した場合の費用が明確

費用について不安がある場合は、費用の目安を明確にしてくれる弁護士を選びましょう。

事前に費用についてある程度わかりやすく弁護士は、依頼者の不安に寄り添ってくれる弁護士と言えます。

ホームページに掲載されていない場合は、実際に電話して相談してみてください。

ただし、安いだけで選んではいけません。

弁護士においては、安いからと言って知識や実績が豊富な弁護士とは言えないからです。

実際にどの位の費用がかかるのかはすべてが終わらなければ確定しませんが、正式に依頼する前でもある程度の費用を明らかにしてくれる弁護士をおすすめします。

メリットだけではなくデメリットも助言してくれる

本当に依頼者のことを考えてくれる弁護士は、依頼者にとってデメリットになる部分も助言してくれます。

遺産相続に限らず、法律に関する内容に「絶対」はほとんどありません。

時には、依頼者が不利な状況になるケースもあります。

しかし弁護士のなかには、依頼を受理したいがために、依頼者にとってメリットになる情報しか伝えないケースもあるのです。

そのため、デメリットを伝えつつ、その対策まで考えてくれる弁護士こそ、良い弁護士と言えるでしょう。

対応スピードが速い

遺産相続は、対応スピードが重要です。

相続放棄や限定承認などは、相続開始から3ヶ月以内に行わなければいけません。

そのため、対応スピードが遅い弁護士では、ぎりぎりになって慌ただしく動かなければいけなくなるケースがあります。

また、質問や疑問などに対しても対応が遅いと、依頼者の不安になってしまうでしょう。

遺産相続を依頼した場合、弁護士と長く関係を持っていくので、満足できる対応をしてくれる弁護士を選んでください。

親身になって相談にのってくれる

遺産相続に限りませんが、弁護士を選ぶ上では相性も大事です。

とくに遺産相続問題については、親族間の感情による不安も生じます。

そのときに、機械的に処理するだけの弁護士では、安心して依頼できません。

安心して遺産相続を進めるために、依頼者の意向を汲み取った上で、親身になって相談を聞いてくれる弁護士を選びましょう。

まとめ|負担が大きい遺産相続は弁護士に依頼しよう!

遺産相続は、司法書士に依頼するケースと弁護士に依頼するケースで分かれます。

どちらに依頼するかは状況によって異なりますが、「遺産分割協議の調整」「遺産分割調停」などの負担の大きい遺産相続は、弁護士への依頼がおすすめです。

弁護士へ相談すれば、依頼者の代理として協議に参加してもらうこともできます。

遺産相続について基本的な手続きだけではなく、トラブルの回避や大きな負担のあるような内容の場合は、ぜひ信頼できる弁護士に依頼してください。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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