孫に遺留分はある?認められるケースと遺留分侵害額請求の手順をわかりやすく解説

孫に遺留分はある?認められるケースと遺留分侵害額請求の手順をわかりやすく解説
目次
  1. 被相続人の孫に遺留分は認められない!そもそも孫は法定相続人ではない
  2. 孫に相続権が発生して遺留分が認められる例外的な4つのケース
    1. 1.相続開始前に被相続人の子どもが亡くなっている場合
    2. 2.被相続人の子どもが相続欠格となった場合
    3. 3.被相続人の子どもが相続廃除をされた場合
    4. 4.孫と被相続人が養子縁組をした場合
  3. 相続人となった孫に認められる遺留分の割合|代襲相続と養子縁組のケース
    1. 代襲相続によって孫が相続人になったケース
    2. 養子縁組によって孫が相続人になったケース
  4. 相続人となった孫が遺留分を侵害されたときにできる3つの対処法
    1. 1.侵害者に対して直接請求する
    2. 2.遺留分侵害額請求調停の申し立てをする
    3. 3.調停が不成立の場合は遺留分侵害額請求訴訟で争う
  5. 相続人となった孫が遺留分侵害額請求をする際の3つの注意点
    1. 1.遺留分侵害額請求権には1年間の消滅時効がある
    2. 2.被代襲者が生前に遺留分放棄をしていた場合は請求できない
    3. 3.代襲相続と養子縁組の2つの遺留分が認められるケースがある
  6. 孫と遺留分に関するよくある質問
    1. Q.そもそも遺留分はどのようなときに請求できるか?
    2. Q.孫は自分の親(被相続人の子ども)の遺留分侵害額請求権を相続することができるか?
  7. さいごに|遺留分を侵害された場合は弁護士に相談を!

遺留分とは、法律で保障された相続人の最低限の相続分を指します。

家族間で遺留分について話し合いをする際に、孫にも認められるかどうか知りたい方は多いでしょう。

結論からいうと、遺留分はあくまでも被相続人の子どもや配偶者が対象であり、原則として孫は対象外です。

しかし、特定の条件下では孫にも遺留分が認められるケースがあります。

本記事では、孫が相続人として遺留分を請求できる条件や具体的な対処法について解説します。

また、遺留分が侵害された場合に孫が取るべき対処法や、遺留分侵害額請求をおこなう際の注意点も紹介します。

本記事を参考に、相続問題の解決を目指しましょう。

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被相続人の孫に遺留分は認められない!そもそも孫は法定相続人ではない

冒頭でも解説したように、被相続人の孫には原則として遺留分は認められません

遺留分とは、法律により一定の相続人に保障される相続分のことを指します。

これは、遺言によって相続人の権利がまったく無視されることを防ぐために、兄弟姉妹を除く法定相続人に対し設けられた制度です。

遺留分が認められる範囲として、民法では以下のように定めています。

第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
引用元:民法 | e-Gov法令検索

孫はそもそも法定相続人の範囲には含まれないため、遺留分は認められないのです。

孫に相続権が発生して遺留分が認められる例外的な4つのケース

原則として孫に遺留分が認められませんが、例外的に認められるケースもあります。

代襲相続がおこなわれるケースでは、遺留分が認められるのです

(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。
ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
引用元:民法 | e-Gov法令検索

本章では、代襲相続による遺留分の発生や、養子縁組をしたケースについて詳しく解説します。

1.相続開始前に被相続人の子どもが亡くなっている場合

最初に考えられるケースは、被相続人の子どもが相続開始前に亡くなっている場合です。

この場合、代襲相続によって孫が相続権をもつことになります。

代襲相続とは、本来相続人であった者が相続開始前に亡くなった場合、その者の子どもが代わりに相続する制度を指します。

この制度によって、孫は被相続人の子どもに代わって相続権を取得し、結果的に遺留分も認められることとなります

【関連記事】代襲相続人とは?相続割合や条件・権利などを徹底解説

2.被相続人の子どもが相続欠格となった場合

被相続人の子どもが相続欠格となった場合にも、孫の遺留分が認められます

相続欠格とは、違法行為をおこなった相続人より相続権をはく奪する制度のことをいいます。

たとえば、被相続人を故意に殺害した場合や、遺言書を偽造した場合などが該当します。

このような行為によって相続欠格となった場合、その子ども、すなわち被相続人の孫が代襲相続人として相続権をもつことになります

これにより、結果的に遺留分が認められることとなるのです。

【関連記事】相続欠格とは|相続権を失う5つの事由や相続廃除との違いを解説!

3.被相続人の子どもが相続廃除をされた場合

被相続人の子どもが相続廃除された場合、孫の遺留分が認められます。

相続廃除とは、特定の相続人がもっている相続権をはく奪する制度のことです。

相続廃除は民法で要件が定められており、相続人が被相続人に対して虐待をしたり、重大な侮辱を加えたりした場合等が該当します(民法892条)。

相続廃除が認められると、その子どもは相続権を完全に失います。

しかし、廃除された相続人の子ども、つまり孫は代襲相続人として相続権をもつことになります

つまり、孫は相続権を取得し、遺留分も認められることとなります。

4.孫と被相続人が養子縁組をした場合

被相続人と孫が養子縁組をした場合にも、遺留分が認められます

養子縁組とは、法律上の親子関係となる手続きのことです。

(嫡出子の身分の取得)
第八百九条 養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。
引用元:民法 | e-Gov法令検索

養子縁組が成立すると、養子は法定相続人となり、実子と同じ相続権を持つことになります。

したがって、孫が被相続人の養子となることで、法定相続人としての地位を取得し、相続権および遺留分が認められることとなります。

相続人となった孫に認められる遺留分の割合|代襲相続と養子縁組のケース

孫が相続人となる場合、その遺留分の割合はどのように計算されるのでしょうか。

以下は、それぞれの相続人に認められる遺留分の割合です。

【それぞれの相続人に認められる遺留分の割合】
ケース配偶者の割合子ども・孫の遺留分
代襲相続の場合配偶者あり1/4孫が1人の場合:1/4
孫が2人の場合: 1/8
※ほかに被相続人の子どもはなし
配偶者なし孫が1人の場合:1/2
孫が2人の場合:1/4
※ほかに被相続人の子どもはなし
養子縁組の場合配偶者あり1/4孫と子ども1人の場合:1/8
孫と子ども2人の場合:1/12
配偶者なし孫と子ども1人の場合:1/4
孫と子ども2人の場合:1/6

本章では、代襲相続と養子縁組の2つのケースについて詳しく説明します。

さらに、被相続人の配偶者がいる場合といない場合に分けて、それぞれの遺留分の割合について解説します。

代襲相続によって孫が相続人になったケース

代襲相続が発生した場合、孫は本来の相続人として遺留分の権利を有します。

ここでは、代襲相続によって孫が相続人になった場合の遺留分がどうなるかを計算します。

被相続人の配偶者がいる場合

被相続人の配偶者がいる場合、代襲相続によって孫が相続人となると、遺留分の割合は以下のように計算されます。

  • 配偶者の遺留分:全財産の1/4
  • 孫の遺留分:全財産の1/4(残りの1/2を被相続人の子ども(孫の親)に割り当て、その子どもである孫が代襲相続するため)

具体的には、被相続人の配偶者が財産の1/2(法定相続分の半分)を取得し、残りの1/4(法定相続分の半分)を被相続人の子どもと同じように孫が相続することになります

被相続人の配偶者がいない場合

被相続人の配偶者がいない場合、孫の遺留分の割合は以下のようになります。

  • 孫の遺留分:全財産の1/2(孫が被相続人の直系卑属として、全財産の1/2が遺留分)

この場合、孫が唯一の直系卑属であるため、全財産の1/2を遺留分として取得する権利があります。

養子縁組によって孫が相続人になったケース

本章では、養子縁組で孫が相続人になったケースを見てみましょう。

被相続人の配偶者がいる場合

被相続人の配偶者がいる場合、養子となった孫の遺留分は次のように計算されます。

  • 配偶者の遺留分:全財産の1/4
  • 養子(孫)の遺留分:1/4を実子と養子(孫)が取得(人数により異なる)

この場合、配偶者が全財産の1/2を遺留分として取得し、残りの1/2を子どもと孫(養子)が相続します。

孫と子ども1人の場合は1/8、孫と子ども2人の場合は1/12となります

被相続人の配偶者がいない場合

被相続人の配偶者がいない場合、養子となった孫の遺留分は以下のようになります。

  • 養子(孫)の遺留分:全財産の1/2を実子と養子(孫)が取得(人数により異なる)

この場合、孫(養子)と実子で全財産の1/2を相続します

孫と子ども1人の場合は1/4、孫と子ども2人の場合は1/6です。

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相続人となった孫が遺留分を侵害されたときにできる3つの対処法

相続人となった孫が遺留分を侵害された場合、孫はその権利を守るために適切な対処法を取ることが重要です。

ここでは、遺留分が侵害された場合に取るべき3つの対処法について詳しく説明します。

1.侵害者に対して直接請求する

遺留分が侵害された場合、最初におこなうべき対処法は、侵害者に対して直接請求することです。

侵害者と直接話し合いをして解決できない場合は、証拠を残すために書面でおこなうことが望ましいでしょう。

これを、遺留分侵害額請求といいます。

具体的には、内容証明郵便などを利用して請求書を送付すると効果的です。

遺留分侵害額請求には1年の時効があるため、その前に請求した客観的な証拠を残す必要があり、内容証明郵便をすることで、請求した事実を明確に残すことができます。

2.遺留分侵害額請求調停の申し立てをする

直接請求で解決しなかった場合は、家庭裁判所に遺留分侵害額請求調停の申し立てをおこないます。

調停は、裁判所の仲介を通じて、当事者間の合意を目指す手続きです。

調停では、裁判所の調停委員が中立の立場で話し合いを進め、双方の意見を聞いたうえで解決策を提案します。

この手続きで双方が納得できる解決策が見つかれば、調停成立となります。

3.調停が不成立の場合は遺留分侵害額請求訴訟で争う

調停でも解決できなかった場合は、遺留分侵害額請求訴訟を提起することができます

訴訟は、家庭裁判所でおこなう正式な裁判手続きで、裁判官が遺留分侵害の有無やその額を判断します。

訴訟を提起する際には、弁護士に依頼することが一般的です。

裁判では、双方の主張を基に証拠を審査し、最終的な判決が下されます。

裁判で下された決定には、必ず従わなければなりません。

相続人となった孫が遺留分侵害額請求をする際の3つの注意点

遺留分侵害額請求にはいくつかの重要な注意点があります。

以下では、遺留分侵害額請求をおこなう際の3つの重要な注意点について詳しく説明します。

1.遺留分侵害額請求権には1年間の消滅時効がある

遺留分侵害額請求権には消滅時効があります

  • 遺留分侵害額請求権の消滅時効:相続が開始したこと、遺留分が侵害されていることを知ってから1年(民法1048条前段)
  • 遺留分侵害額請求権の除斥期間:相続開始から10年(民法1048条後段)

【参考元】民法 | e-Gov法令検索

相続が開始したことや遺留分が侵害されていることを知ってから1年を過ぎると、遺留分侵害額請求権は行使できなくなります。

また、遺留分侵害を知った日からではなく、相続開始から10年が経過すると、遺留分侵害額請求権は消滅します。

そのため、相続が開始されたら速やかに遺言の内容等を確認し、遺留分が侵害されていないかを確認することが重要です。

もし侵害が発覚した場合は、1年以内に請求手続きを開始する必要があります

2.被代襲者が生前に遺留分放棄をしていた場合は請求できない

代襲相続によって孫が相続人となった場合でも、被代襲者(孫の親)が生前に遺留分を放棄していた場合、孫は遺留分侵害額請求をおこなうことができません

遺留分放棄は、相続人が自らの遺留分を放棄する意思表示をおこなうものです。

ただし、家庭裁判所の許可等を必要とする点で、注意が必要です。

遺留分放棄が認められると、その相続人は遺留分を主張する権利を完全に失います。

被代襲者が遺留分を放棄していた場合、その子どもである孫も遺留分を請求する権利を持ちません。

3.代襲相続と養子縁組の2つの遺留分が認められるケースがある

代襲相続と養子縁組、2つの遺留分が認められるケースもあります

つまり、孫が代襲相続人でありながら養子でもあるというケースです。

この場合は、代襲相続人としての遺留分と、養子としての遺留分が二重で認められます。

たとえば、被相続人の配偶者と代襲相続権をもった養子である孫のみに遺留分が認められるケースで考えてみましょう。

孫は、代襲相続人としての1/8と、養子としての1/8を受け取れます

つまり、1/4を相続することが可能となるのです。

孫と遺留分に関するよくある質問

最後に、孫と遺留分に関するよくある質問に対して詳しく解説します。

Q.そもそも遺留分はどのようなときに請求できるか?

遺留分は、法定相続人が遺言等により、その権利を侵害された場合に請求できます

よくあるケースでは、被相続人が遺言により特定の相続人や第三者に偏って取得させるケースです。

この場合、遺留分を侵害された相続人は、その侵害額を取り戻すために遺留分侵害額請求をおこなうことができます。

遺留分侵害額請求の対象となる財産は、以下のとおりです。

  • 生前贈与:被相続人が生きている間に、自分の財産を特定の方に譲渡すること。
  • 死因贈与:被相続人が自分の死後に効力を発生させることを条件としておこなう贈与契約。被相続人と受贈者の合意が必要。
  • 遺贈:遺言書に基づき、被相続人の死後に特定の財産を特定の方に譲ること。死因贈与と異なり、受贈者の合意は不要。

Q.孫は自分の親(被相続人の子ども)の遺留分侵害額請求権を相続することができるか?

孫は、自分の親(被相続人の子ども)の遺留分侵害額請求権を相続することができます

以下の状況では、孫が親の遺留分侵害額請求権を引き継ぐことが可能です。

たとえば相続開始後、親が遺留分請求をおこなう前に亡くなった場合も、孫がその請求権を引き継ぐことができます。

この場合、孫は親の権利を代わって行使することになります

また、親が遺留分請求をおこなったあとに亡くなった場合も、その権利は孫に引き継がれます。

孫は親がおこなった請求の手続きを続行することができるのです。

さいごに|遺留分を侵害された場合は弁護士に相談を!

以上、本記事では孫の遺留分について詳しく解説してきました。

孫には、基本的には遺留分が認められません。

しかし、特定の状況下では遺留分が認められるケースがあります。

遺留分侵害額請求には1年間の消滅時効があるため、迅速な対応が求められます。

相続や遺留分に関する問題は非常に複雑で、ほかの相続人とのトラブルになるケースも多いものです。

遺留分を侵害された場合は、弁護士へ相談しましょう。

弁護士は、確実に権利を守る手助けをしてくれます

相続問題に直面した際は、一人で悩まずに弁護士の力を借りて、スムーズな解決を図りましょう。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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