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2023.07.14
親族が亡くなったとき、民法で定められた遺産をもらう権利がある人のことを法定相続人といいます。
相続人には民法によって定められた優先順位があります。ただ、どの範囲の親族まで対象になるのか、どのような割合で分配されるかは複雑で悩んでいる方もいるでしょう。
この記事では、法定相続人の範囲や相続時の順位、順位に応じた割合などを、図を交えながらわかりやすく解説します。
また、法定相続人の順位について、離婚や再婚などよくあるパターンごとに詳細な説明もしているので、あわせて参考にしてください。
法定相続人の範囲や相続時の順位がわからずに悩んでいませんか。
結論からいうと、法定相続人の範囲や順位は家族構成によって異なります。そのため、自身の状況について一度弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットを得ることができます。
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法定相続人とは、民法で定められた被相続人の財産を相続することが可能な人のことを指します。
基本的には法定相続人内で遺産分割協議をおこないますが、遺言書に記載がある場合は、法定相続人以外の人が遺産分割協議に加わることもあります。
法定相続人は被相続人の配偶者と被相続人の一定の範囲の血族です。
法定相続人となる範囲や、遺産分割の割合はややこしいため、以下にてわかりやすく解説します。
法定相続人の範囲と順位は画像のようになります。以下ではそれぞれについて詳細に解説します。
まず、被相続人の配偶者はどのような場合でも法定相続人になります。
ただし、ここでいう配偶者は、法律婚をおこなっている正式な婚姻関係にある人に限られます。事実婚のパートナーや内縁の家族の場合は法定相続人にはなりません。
なお、配偶者が亡くなった時点で別居関係にあったり、離婚調停中だったりする場合でも、法律婚状態である限りは法定相続人になります。
被相続人と一定の血族関係にある人も法定相続人となりますが、常に相続人となる配偶者の場合とは異なり、優先順位が定められています。
法定相続人となる血族の第一順位は被相続人の子どもです。
配偶者と子どもがいる場合は配偶者と子どもが、配偶者がおらず子どもがいる場合は子どものみが法定相続人となります。
被相続人の子どもがすでに亡くなっている場合はその孫が、孫も亡くなっている場合はひ孫がといった形で、下の世代の人が第一順位の法定相続人となることもあります。
子どもや孫のように、被相続人よりあとの世代の直系血族を直系卑属と呼び、亡くなった人の代わりに相続をおこなうことを「代襲相続」と呼びます。
【子や孫が法定相続人となるケース】
ケース | 配偶者 | 子(子が死亡している場合は孫) |
配偶者・子どもともに存命 | 〇 | 〇 |
配偶者がすでに亡くなっている | × | 〇 |
法定相続人となる血族の第二順位は被相続人の父母などの直系尊属です。被相続人に子どもや孫などの第一順位がおらず、父母がいる場合、父母が法定相続人になります。
なお、被相続人に配偶者と父母がいる場合は配偶者と父母が、配偶者がおらず父母がいる場合は父母のみが法定相続人となります。
また、父母がすでに亡くなっている場合は祖父母が、祖父母が亡くなっているときは曽祖父母と、法定相続人は上へ上へと繋がっていきます。
親や祖父母など被相続人より前の世代の直系血族を直系尊属と呼びます。
【父母や祖父母が相続人となるケース】
ケース | 配偶者 | 父母(父母が死亡している場合は祖父母) |
第一順位がおらず、配偶者・父母ともに存命 | 〇 | 〇 |
第一順位がおらず、配偶者が既に亡くなっている | × | 〇 |
法定相続人となる血族の第三順位は、被相続人の兄弟姉妹です。
被相続人に子どもや孫などの第一順位がおらず、父母や祖父母などの第二順位もすでに亡くなっている場合、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人になります。
なお、被相続人に配偶者と兄弟姉妹がいる場合は配偶者と兄弟姉妹が、配偶者がおらず兄弟姉妹のみの場合は兄弟姉妹だけが法定相続人となります。
既に兄弟姉妹が亡くなっている場合は、兄弟姉妹の子どもである甥や姪が法定相続人になります。甥や姪が亡くなっている場合は次の世代に続きません。兄弟姉妹の代襲相続は一代限りですので注意が必要です。
【兄弟姉妹や甥姪が相続人となるケース】
ケース | 配偶者 | 兄弟姉妹(兄弟姉妹が死亡している場合は甥姪) |
第一順位・第二順位がおらず、配偶者・兄弟姉妹が存命 | 〇 | 〇 |
第一順位・第二順位がおらず、配偶者が既に亡くなっている | × | 〇 |
民法が定める法定相続人の相続割合(法定相続分)は、相続人の法定相続順位とその人数によって異なります。以下ではさまざまなパターンごとに法定相続人の相続割合を解説します。
法定相続人 | 配偶者の法定相続割合 |
配偶者のみ | 遺産の全て |
配偶者と第一順位(子、孫など) | 遺産の2分の1 |
配偶者と第二順位(父母、祖父母など) | 遺産の3分の2 |
配偶者と第三順位(兄弟姉妹、甥姪) | 遺産の4分の3 |
配偶者のみが法定相続人となる場合、法定相続割合は100%になります。
法定相続人 | 第一順位(子、孫など)の法定相続割合 |
第一順位(子、孫など)のみ | 遺産の全て |
第一順位(子、孫など)と配偶者 | 遺産の2分の1 |
配偶者と第一順位が法定相続人となるパターンでは、配偶者の相続割合は2分の1、第一順位の相続割合は残りの2分の1となります。
第一順位の相続割合は第一順位の全員で2分の1となるので、たとえば、配偶者と子ども2人がいる場合は、子ども2人はそれぞれ全体の4分の1の相続割合となります。
また、配偶者が既に亡くなっているケースなど第一順位のみが相続人になる場合は、第一順位の法定相続割合は100%になります。
法定相続人 | 第二順位(父母、祖父母など)の法定相続割合 |
第二順位(父母、祖父母など)のみ | 遺産の全て |
第二順位(父母、祖父母など)と配偶者 | 遺産の3分の1 |
次に、配偶者と第二順位が法定相続人の場合、配偶者の相続割合は3分の2、第二順位の相続割合は残りの3分の1となります。
第二順位の場合も全員で3分の1の相続割合となるので、たとえば、配偶者がいて父母のどちらも法定相続人になる場合は、父母はそれぞれ全体の6分の1の相続割合となります。
また、被相続人の配偶者がおらず第二順位のみが相続人になる場合、第二順位の法定相続割合は100%になります。
法定相続人 | 第三順位(兄弟姉妹、甥姪)の法定相続割合 |
第三順位(兄弟姉妹、甥姪)のみ | 遺産の全て |
第三順位(兄弟姉妹、甥姪)と配偶者 | 遺産の4分の1 |
最後に、配偶者と第三順位が法定相続人になるパターンです。この場合、配偶者の相続割合は4分の3、第三順位は残りの4分の1となります。
第三順位が複数人いる場合も4分の1を分け合う形の相続割合となります。また、配偶者がおらず第三順位のみが相続人になる場合は、第三順位の法定相続割合は100%になります。
法定相続人の順位や範囲については、さまざまな注意点があります。以下で解説します。
相続放棄をした人は、「初めから相続人とならなかった」とみなされ、相続人として扱われません。
相続を放棄した場合には代襲相続が発生せず、次の順位の人が相続人になります。
たとえば、被相続人に父親と子どもと孫がいる場合、法定相続人となる血族の第一順位は子どもなので、子どもが相続人となり、第二順位の父親は相続人とならないのが原則です。ここで、子どもが相続放棄をした場合、子どもは相続人として取り扱われず、代襲相続も発生しないため、孫ではなく第二順位の父親が相続人となります。
内縁の妻との間の子は認知されている場合、法定相続人の1人にカウントされます。認知によって法律上の親子関係が認められるからです。順位は婚姻関係にある夫婦の子ども(嫡出子)の場合と同じく第一順位です。
たとえば、被相続人に、配偶者・配偶者との間の子・内縁の妻・認知した内縁の妻との間の子がいる場合、相続割合は、配偶者が2分の1、配偶者との間の子が4分の1、内縁の妻との間の子が4分の1となります。配偶者との間の子と内縁の妻との間の子に相続分の違いはありません。なお、内縁の妻は相続人になりません。
養子も実子と同じように法定相続人となります。養子縁組によって、養子と養親の間に法律上の親子関係が生じるからです。
ただし、養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」があり、それぞれの制度の違いから法定相続人となる範囲が異なります。
一般的な養子縁組である普通養子縁組の場合、実の親との親子関係が残ります。
そのため、実の親・養親のどちらが亡くなったときも第一順位の法定相続人となりますし、養子が亡くなった際には実の親・養親ともに第二順位の法定相続人となります。
子どもの福祉を目的とした特別養子縁組の場合、実の親との法律上の親子関係は断ち切られます。そのため、養親が亡くなったときのみ第一順位の法定相続人となり、養子が亡くなったときは養親のみが第二順位の法定相続人となります。
相続欠格は、被相続人の殺害や遺言書の偽造などの不正行為を働いた人の相続資格をはく奪する制度です。
相続欠格とされた人は相続人になれず、遺言書によって財産を受け取ることもできなくなります。
相続人の廃除は、被相続人の意思に基づいて、家庭裁判所が相続資格をはく奪する制度です。
相続人の廃除が認められるためには、被相続人に対して虐待や重大な侮辱をしたこと、または著しい非行があったことが必要となります。
相続欠格・相続人の廃除のいずれの場合も、代襲相続が認められています。
法定相続人の範囲と順位について、よくある質問をまとめて解説します。ぜひ参考にしてください。
配偶者は常に相続人となりますが、すでに離婚が成立している場合、配偶者ではないため相続人にはなりません。
しかし、子どもについては、親権の有無に関わらず、親子関係は継続するため、第一順位の相続人になります。
再婚した場合、再婚相手は配偶者として常に相続人となります。
また、再婚相手との間に子どもがいる場合、その子どもは第一順位の相続人となります。
ここまでは一般的なケースと変わりませんが、離婚した元配偶者との間に子どもがいる場合は、やや難しいケースとなります。
たとえば、被相続人に離婚した元配偶者・元配偶者との間の子ども・再婚相手(現配偶者)・再婚相手との間の子どもがいる場合を考えてみましょう。
再婚相手は配偶者として相続人になり、2分の1の相続割合となります。
被相続人の子どもは2人いるため、元配偶者との間の子どもも、再婚相手との間の子どもも4分の1の相続割合となります。
なお、元配偶者は相続人になりません。
法定相続人が亡くなっている場合は代襲相続が発生することがあります。
たとえば、被相続人に子どもと孫がおり、子どもがすでに亡くなっているケースでは、代襲相続が発生し、孫が代わりに相続することになります。
子どもについての代襲相続は、下の世代がいる限り続いていくので、孫も亡くなっている場合はひ孫が相続人となります。
同様に、第三順位である兄弟姉妹が亡くなっている場合も、代襲相続が発生し、その子どもである甥や姪が相続人となります。
しかし、甥や姪が亡くなっている場合にさらに下の世代に代襲相続が発生することはありません。
前提として、遺産分割協議は相続人全員でおこなう必要があります。
そのため、相続人の中に行方不明者がいる場合はさまざまな対応をおこなわなくてはなりません。
まずは行方不明者との連絡を試みたり、住所を確認したりします。住所を特定するためには、相続人の住民票や戸籍の附票を確認するのがよいでしょう。
住所の特定や連絡を試みたものの連絡が取れない場合は、不在者財産管理人の選任をします。
不在者財産管理人とは行方不明者の代理人のことで、行方不明者と連絡が取れ、財産を管理できるようになった場合には選任が取り消されます。
不在者財産管理人には、利害関係のない被相続人の親族や弁護士や司法書士などの専門家が選任されます。
代表相続人とは、相続人を代表してさまざまな手続をおこなう人のことを指します。
必ずしも決めておく必要はありませんが、役所や金融機関での手続の際に役立つ場合があります。
また、代表相続人となるのに特別な資格などは不要です。
法定相続人には範囲と順位があり、配偶者は常に法定相続人になります。また、法定相続人となる血族の第一順位は子ども、第二順位は直系尊属(父母など)、第三順位は兄弟姉妹となっています。
法定相続人が既に亡くなっている場合は代襲相続が発生する可能性がありますし、離婚・再婚・養子縁組といったさまざまな事由によって、法定相続人は変わります。
法定相続人を正しく把握したうえで遺産分割協議をおこなわないと、相続手続がやり直しになったり、親族間で揉めたりといったトラブルに発展することも考えられます。
法定相続人に関する問題で不安がある方は、弁護士に相談して、相続人の調査を依頼することも検討しましょう。
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