遺言書
遺言書の効力は絶対か?効力が及ぶ内容と認められるためのポイント
2023.07.06
遺言書は「故人の最後の意思」として尊重されるので、ルールどおりに作成すれば法律文書として扱われます。
しかし、家族の人生を左右する可能性が高いため、以下のような疑問や悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
遺言書は作成がゴールではないので、保管方法や開封後のことも考えておかなければなりません。
文面には問題がなくても、訂正方法を誤ったために無効となるケースもあるため、作成上のルールをきちんと理解しておきましょう。
ここでは、遺言書の基礎知識や、作成するメリット・デメリットをわかりやすく解説しています。
遺言書の作成を検討しているが、作成する必要性やどのような手続きをするのかわからずに悩んでいませんか。
結論からいうと、法的に有効な遺言書の作成には専門知識が必要になるため、一度弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットを得ることができます。
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遺言書とは、遺産の承継者を指定して相続争いを防止する役割を持つものです。
遺言書がなければ相続人同士の話し合いで(遺産分割協議)遺産の分け方を決めますが、お互いの利害が関係するため、争いに発展するケースも少なくありません。
しかし、法的に有効な遺言書には強制力があり、希望どおりの遺産配分ではなくても従わなければならないため、遺産分割は短期間で決着します。
相続発生後のトラブルが想定されるようであれば、必ず遺言書を作成しておきましょう。
遺言書には以下の3種類があり、何を優先したいかで選び方が変わります。自筆証書遺言は無効になるリスクが高く、難易度も高めですが、自分1人でじっくり遺言を考えたい方には向いているでしょう。
法的に有効な遺言書を作成したい方は公正証書遺言、遺言書の偽造や変造を防ぎたい方は秘密証書遺言が向いています。
自筆証書遺言は1人で作成するので、何度書き直してもコストはかかりません。まず大まかな原案を考え、少しずつ完成形に近づけるとよいでしょう。
ただし、ルールに従った書き方になっていても、遺産の配分によっては相続争いを引き起こす可能性があるので注意してください。
また、一定額を超える財産には相続税もかかりますが、優遇税制で課税額が低くなる財産もあれば、節税効果が全くない財産もあるため、各相続人の税負担も考慮しなければなりません。
自筆証書遺言は遺留分の侵害も発生しやすいので、作成する際には弁護士などの専門家にも相談しておきましょう。
>自筆証書遺言の書き方について詳しく知る
公正証書遺言とは、公証役場の公証人に作成を依頼する遺言方式です。
公証人は法務大臣に任命された法律の専門家(元判事、元検事、弁護士など)であり、法的効力のある遺言書を作成してくれます。
遺言書作成の必要書類を提出し、何度か打ち合わせを行ったあとに公正証書遺言の作成となりますが、公証役場に出向けない(入院中など)事情があれば出張も依頼できます。
公正証書遺言の作成当日には証人2名が必要となるため、あらかじめ信頼できる人に依頼しておきましょう。
承認を引き受けてくれる人がいないときは、公証役場に証人の準備を依頼できます。
なお、公正証書遺言を作成するときは公証人へ支払う費用と、証人への謝礼(1人1万円程度が相場)が必要になるため、少なくとも6万円程度は必要です。
遺言書の原案も自分で考えなければならないので、不安がある方は弁護士のアドバイスを受けておくとよいでしょう。
秘密証書遺言は自分で作成しますが、公証役場の公証人が封紙に署名するため、開封されていた場合は無効となります。
つまり、未開封の状態のみ有効となるため、偽造や変造される恐れがありません。
あまり利用されることない遺言書ですが、自分に不利な内容だったときに偽造するような相続人がいれば、秘密証書遺言がよいかもしれません。
遺言書には以下のメリット・デメリットがあるので、どちらも理解した上で作成してください。
有効な遺言書を作成しても発見されなければ意味がないため、保管方法にも配慮しておく必要があります。
メリット | デメリット |
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被相続人(亡くなった方)が遺言書を残していた場合、原則として遺言どおりに遺産分割しなくてはなりません。
遺産の承継者が強制的に決まるため、相続人同士で争う理由がなくなります。
また、遺言書では相続人以外の人にも財産を渡せるので、子供の配偶者や孫、友人・知人を受遺者(遺言によって財産を受け取る人)に指定しても構いません。
あらかじめ遺産の承継者が決まっているため、相続手続きもスムーズになるでしょう。
相続人が遺言書に従わない可能性があるときは、弁護士や司法書士を遺言執行者に指定することもできます。
遺言執行者は相続人の中心となって各種手続きを進めてくれるので、遺言者が意図したとおりの遺産相続を実現できるでしょう。
遺言書は書き方や訂正方法に厳格なルールがあるため、1人で作成すると無効になりやすいので注意してください。
また、家族に発見されなければ無意味になってしまいますが、保管場所を伝えると死亡前に開封されたり、改ざんされたりするリスクがあるので悩ましいところです。
公正証書遺言や秘密証書遺言は2万~10万円程度の費用が発生するので、法的効力を担保したい方や、遺言内容を秘密にしたい方はある程度の出費が必要です。
自分で遺言書を作成すればコストはかかりませんが、遺留分(※)を侵害するケースもあるので注意してください。
※遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に保障される最低限の遺産取得割合です。
>遺言書作成の依頼費用について詳しく知る
以下のケースに該当する方であれば、遺言書を作成したほうがよいでしょう。
相続人がいない方の財産は最終的に国庫帰属しますが、最短でも1年近くかかる複雑な手続きが発生するので、遺言書で友人に財産を渡す、または寄付を検討してください。
また、同居して面倒をみてくれた子供には自宅、お金に困っている子供には預金を渡すなど、遺言書を残せば思い描いた遺産分割を実現できます。
相続人同士の仲が悪いと遺産分割がまとまりにくく、せっかくの財産も有効活用されないため、遺言書で承継者を指定しておくべきでしょう。
遺言書では相続人以外の人にも財産を渡せるので、内縁関係にある人や、友人・知人も受遺者に指定できます。
遺言書を作成する場合、誰が・誰に・何を渡すか明確にしておく必要があります。
また、遺言書は相続手続きに使うため、身内だけがわかるような書き方は無効になるので注意してください。
訂正方法も特殊なので、以下の基礎知識は必ず理解しておきましょう。
遺言書は財産承継者の指定だけと思われがちですが、以下のような項目も指定できます。
認知していない子供(非嫡出子)に相続権はありませんが、遺言書で認知すると第1順位の法定相続人になるため、嫡出子と同じ割合で相続財産を取得できます。
また、高額な生前贈与などを特別受益といい、相続財産に加算(持ち戻しといいます)するケースもありますが、不要とする旨を遺言書で意思表示することも可能です。
遺言執行者は相続人の中心となって相続手続きを進めてくれるので、遺言書どおりの遺産分割を実現できるでしょう。
遺言書の用紙サイズは決まっておらず、縦書き・横書きも自由に選択できます。一般的にはA4サイズの用紙を使うケースが多く、遺言書専用の用紙と封筒のセットも販売されています。
筆記用具にも制限はありませんが、改ざんリスクがあるため、鉛筆や消せるボールペンは使わないようにしましょう。
自筆証書遺言の作成予定がある方は、以下のサンプルを参考にしてください。
自筆証書遺言は本人自書が原則となっていますが、2019年1月13日以降は財産目録のみパソコン作成やコピー添付が認められています。
財産の種類が多く、増加・減少などの変動がある方はパソコン作成をおすすめします。
遺言書は預金解約や相続登記などの手続きに使用するため、第三者がみてもわかるように書く必要があります。
以下はありがちな失敗例なので参考にしてください。
相続人を記入するときは、氏名と被相続人との続柄が必要です。財産も第三者が特定できるように記入してください。
また、法定相続人以外に「相続させる」と書くと、ほかの相続人から「遺贈と書かれていないので無効」と主張される可能性があります。
「譲る」「託す」も使わないようにしましょう。
作成日は和暦・西暦のどちらでも構いませんが、「吉日」は無効になってしまうので、カレンダーの日付どおりに記入してください。
一般的なビジネス文書の場合、訂正箇所には二重線を引いてその上から訂正印を押印しますが、遺言書の場合は訂正箇所の傍らに押印し、もとの文字が見えるようにします。
また、訂正内容を余白部にも追記するので、定期預金を普通預金に訂正した場合、余白部には「定期を普通に訂正した アシロ太郎(遺言者の氏名)」と書き添えます。
加筆が必要な部分には吹き出しを使い、「●●を相続させる」を「●●(と△△)を相続させる」のように記入し、余白部に「と△△の文字を追記した アシロ太郎(遺言者の氏名)」と書き添えてください。訂正印は署名の傍らに押印したものと同一の印鑑を使用します。
なお、遺言書に使用する印鑑は認印でも構いませんが、実印を押印しておけば、遺言者本人が作成し、遺言者によって訂正・加筆されたことが明らかになります。
民法では遺言書の共同作成(共同遺言)を禁じているので、夫婦共同の遺言書を作成すると無効になるので注意してください。
遺言書は自由意志で作成され、自由に変更・撤回できる必要があります。
共同遺言を作成すると、どちらか一方の反対があれば自由に変更・撤回できなくなることから、無効とされているのです。
財産の記載漏れに備えたい方は、本文の最後に以下の一文(記載例)を書き添えてください。
財産の種類が多い方にはおすすめします。
付言事項とは、遺言書の最後に書き添えるメッセージ的な文章です。付言事項に法的な効力はありませんが、公平な遺産配分にできなかった場合など、家族に伝えたいメッセージがあるときに活用できます。
【付言事項の記入例】
遺言者の妻アシロ花代は、要介護となった遺言者を長年にわたり支えてくれました。花代には感謝の気持ちとともに自宅家屋とその敷地を相続してもらい、残りの人生を穏やかに過ごしてもらいたいと願っています。
長男一郎には苦労をかけますが、今後は年老いた母親を支えてやってください。母と子が仲良く暮らし、いつまでも健やかでいることを父は天国から見守っています。
令和〇年〇月〇日
住所 東京都新宿区西新宿●-●●-●
遺言者 アシロ太郎 印
遺言書が複数あった場合、最新の日付で作成されたものが有効になります。
自筆証書遺言は何度も書き直すことがあるので、同じ日に異なる内容の遺言書を2通以上作成した場合、どちらも残っていると家族が混乱します。
不要な遺言書は必ず処分しておきましょう。
自筆証書遺言を作成した場合、相続発生後は家庭裁判所の検認が必要です。
検認前に開封すると5万円以下の過料(罰金)になる可能性があるので、家族にも検認が必要なことを伝えてください。
遺言書を封入した封筒にも「家庭裁判所の検認前の開封は厳禁」など、注意文を書いておくとよいでしょう。
検認が完了すると検認済証明書が発行されるので、遺言書に添付して相続手続きに使用します。
遺言書には以下の保管方法があるので、相続発生後の扱いや費用などから選ぶとよいでしょう。
保管場所 | メリット | デメリット |
自宅で保管 |
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法務局で保管 |
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信託銀行で保管 (公正証書遺言のみ) |
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専門家が保管 |
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自宅で遺言書を保管する場合、コストもかからず管理も楽ですが、以下のような注意点もあります。
遺言書の改ざんや廃棄は相続の欠格事由になり、相続権をはく奪されます。
家族に発見されなかったときは遺産分割協議をおこなうことになるので、トラブル発生のリスクが高くなるでしょう。
法務局の自筆証書遺言保管制度を利用すると、遺言書原本は死後50年、画像データは150年保管されます。
家庭裁判所の検認も不要となり、遺言者の死亡後はあらかじめ指定した人(1名のみ)に遺言書の存在が通知されます。
遺言書の改ざんや偽造は防止できますが、法務局が遺言者の死亡を知ることができなければ死亡後通知は送付されません。
また、死亡時通知人が転居した場合、郵便物の転送期間を過ぎると通知が届かないため、住所・氏名に変更があったときは届出が必要です。
死亡時通知人を選ぶときは、引っ越しの予定がなく、氏名が変わる(結婚・離婚)可能性が低い人にするとよいでしょう。
信託銀行では遺言書の作成や保管、遺言執行の総合サポートを提供しています。
遺言者の死亡後は家族に遺言書の存在を通知してくれますが、公正証書遺言しか受け付けておらず、保管だけの依頼は受け付けてもらえない可能性があります。
高額な手数料もかかるので、保管コストをかけたくない方には向いていないでしょう。
弁護士や司法書士などの専門家にも遺言書の保管を依頼できます。
遺言書の作成や遺言執行も依頼できますが、専門家が遺言者の死亡を確認できない場合があり、遺言書保管に対応していない事務所もあります。
なお、法律事務所によっては定期的に遺言者へ連絡を取り、健在かどうかを確認しているので、保管後のサポート体制を確認しておくとよいでしょう。
自分で遺言書を作成すると、以下のようなトラブルが起きやすくなります。全て家族に影響してしまうので、遺言書の作成予定がある方は必ず参考にしてください。
不公平な遺産配分はトラブルの原因になりやすいので、できるだけ取得額に差がでないようにする必要があります。
主な財産が不動産しかない場合、生命保険金の受け取りで調整するなど、何らかの工夫も必要になるでしょう。
遺言執行者の指定がなかった場合、相続手続きが停滞するリスクがあります。
遺言執行者は預金解約や財産調査(登記事項証明書の取得など)などに対応してくれるので、多忙な相続人がいるときは弁護士などの専門家に依頼しておきましょう。
自分で遺言書を作成すると無効になるリスクがあり、自宅保管すると偽造・改ざんなどの疑いも生じてきます。
弁護士に作成・保管を依頼する、または公正証書遺言や自筆証書遺言保管制度で偽造を防止するなど、争いを起こさない対策も必要です。
遺言書には争いを回避する機能があるので、発見されなければ意味がありません。
また、遺言書に有効期限はないため、遺産分割が終了したあとに発見されると、原則として遺言書に従わなければなりません。
相続人全員の同意があればすでに決まった遺産分割を優先できますが、遺言書に従ったほうが有利な相続人がいると、遺産分割を白紙に戻さなくてはならないでしょう。
遺言者が認知症を発症していると、遺言書作成時の判断能力を疑われてしまい、無効にされる可能性があります。
ただし、認知症のレベルによっては法律行為が可能なので、弁護士に相談することをおすすめします。
遺言書に財産の記載漏れがあると、遺産分割協議で承継者を決めなければなりません。
高額な財産が発覚すると取り合いになり、誰も欲しがらない財産は押し付け合いになりやすいので、財産の記載漏れは高確率でトラブルになるでしょう。
財産の種類が多くて把握しきれない方は、早めに弁護士へ相談してください。
不動産や預貯金、株式などが全て同価値というケースはほとんどないため、慎重に遺産配分しても遺留分を侵害するケースがあります。
遺留分の侵害は当事者間で解決できる可能性が低いので、遺言書の作成は弁護士のアドバイスを受けておくべきでしょう。
専門家にサポートを依頼した場合、遺言者の意向を尊重しつつ、争いが起きない遺言内容も提案してくれるので、遺言者本人が納得できます。
遺言執行を依頼すれば意図したとおりの遺産相続を実現できるので、以下のメリットも参考にしてください。
相続の専門家は争いが起きにくい遺言内容を提案してくれるので、遺言書の作成に悩んだときは相談してみましょう。
専門家は遺言者とは異なる視点で問題把握するため、意外な解決方法が見つかる場合があります。
たとえば、「財産の価値が違うので公平に配分できない」という悩みでも、税負担まで考えるとほぼ同額だった、というケースもあるので、専門家に相談するメリットは十分あります。
また、非嫡出子(隠し子など)や養子、前妻・前夫の子供がいる状況でも、各自の権利を尊重しながら、トラブルを最小限に抑える遺言書を提案してくれます。
専門家に依頼すると遺留分の侵害も防止できるので、家族同士が争うことなく、円満に遺産分割が完了します。
専門家に依頼すると法的に有効な遺言書を作成してくれるので、遺言者が意図した遺産分割を実現しやすくなります。
自分で作成すると不動産などの書き方や訂正方法を間違えやすく、遺留分の侵害も発生しやすいので注意してください。
遺言書の効力を確実にしたい方は相続の専門家に依頼してみましょう。
弁護士や司法書士には遺言書の保管も依頼できます。作成段階から関わってもらうと窓口が一つになり、遺言書を変更したいときもスムーズに対応してくれます。
遺言書を確実に実現したい方や、相続争いを防止したい方は専門家に遺言執行者を依頼してみましょう。
遺言執行者には親族も指定できますが、遺産相続全般の専門知識が必要となり、ほかの相続人と対立関係になる可能性もあるので、弁護士などの専門家が適任でしょう。
遺言書は家族に残せる最後のメッセージですが、法的効力があるかないかで結果は大きく変わります。
有効な遺言書を作成できれば相続争いが起きにくく、意図したとおりの遺産相続になりますが、無効な遺言書や、遺留分の侵害がある遺言書はトラブルを招くでしょう。
家族に発見されなければ作成した意味がないので、保管方法にも配慮しなければなりませんが、弁護士のサポートがあれば全て解決するでしょう。
納得できる遺言書を作成できれば肩の荷が下りるので、困ったときは弁護士に相談してください。
遺言書の作成を検討しているが、作成する必要性やどのような手続きをするのかわからずに悩んでいませんか。
結論からいうと、法的に有効な遺言書の作成には専門知識が必要になるため、一度弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットを得ることができます。
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