相続手続き
兄弟のみの相続はどうやってする?手続き方法や相続分を解説
2023.07.24
初めての相続手続きは、何から始めればよいかわからないものです。
遺産分割などの相続手続きは、知識を身につけて正しい手順でおこなえば、相続人自身で問題なくおこなえます。
しかし、親族という身近な間柄でおこなうために、トラブルになりやすくもあります。当事者同士での解決が難しいと感じたら、できるだけ早めに裁判所や弁護士など第三者の力を借りるほうがよいでしょう。
本記事では、遺産分割手続きの進め方や、相続人同士でもめた場合の対処法、遺産分割後の流れなど、相続手続きをスムーズに進めるために知っておきたい知識を紹介します。
分割すべき遺産があれば、相続人全員で遺産分割協議のうえ分割方法を決めます。
遺産分割をおこなう際の流れについて紹介します。
遺産の分割方法は、相続人全員で協議をして決めます。
遺産分割協議は必ず相続人全員でおこないましょう。
一人でも欠けていれば、その協議で決まった内容は無効となってしまうからです。
協議の方法は、必ずしも全員が顔を合わせる必要はなく、電話や手紙、メールなどの方法でおこなってもかまいません。
協議内容について全員の合意が得られればよいので、進めやすい方法を選択しましょう。
遺産の分割方法について相続人全員の合意を得られれば、協議で決まった内容を遺産分割協議書にまとめます。
遺産分割協議書の書き方には法的な決まりはなく、どのような書き方をしても問題はありません。
ただし、以下の項目は必ず記載するようにしましょう。
また、協議書の末尾には、協議が成立した日付の記載と、相続人全員の署名、押印が必要です。
複数頁にわたる場合は、契印や割印も必要ですので、もれのないよう注意しましょう。
さらに、相続人全員の印鑑証明書を添付する必要もあります。
遺産分割協議書の内容に不足や誤記があれば、相続手続きを進められないこともありますので、正確な記載を心掛けましょう。
いつまで経っても相続人同士での話し合いがまとまらず、遺産分割協議が進行しなければ、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てましょう。
遺産分割調停とは、裁判所に仲介してもらって、当事者同士でもう一度話し合いをする手続きです。
裁判官の他に調停委員という専門家が同席し、双方の希望や言い分を聞いてくれます。
調停委員には弁護士が選任されることが多く、中立的な立場から法律に照らした解決方法を提案してくれるでしょう。
第三者が間に入るため、当事者も冷静に話ができ、解決に至りやすくなります。
遺産分割調停の申し立てには以下の費用がかかります。
申し立ては、下記の書類をそろえ、管轄の家庭裁判所に提出すればおこなえます。
【申し立て必要書類】
(相続人の中にすでに亡くなった方がいる場合)
(相続人に直系尊属が含まれる場合で、直系尊属に死亡者がいる場合)
(相続人が配偶者のみ、または被相続人の兄弟姉妹とその代襲者である場合)
参考サイト:裁判所ホームページ|遺産分割調停の申立書
提出する管轄の裁判所は、裁判所のホームページより調べられます。
参考サイト:裁判所ホームページ|裁判所の管轄区域
調停をおこなっても、当事者同士の話がまとまらなければ、自動的に審判事件へ移行します。
審判手続きとは、当事者の主張やその根拠を聞いたうえで、裁判所が遺産分割の仕方を決める手続きです。
裁判所の審判内容に不服がある場合は、2週間以内に即時抗告をおこなえば、高等裁判所に審理のやり直しを請求できます。
遺産分割協議や調停手続きなどを経て、遺産の分割方法が決まったら、相続手続きをして各相続人の手に渡るようにします。
また、遺産総額によっては相続税の申告が必要になる場合もありますので、忘れずおこなうようにしましょう。
各財産の一般的な手続き方法は以下で紹介するとおりです。
金融機関へ下記書類を提出し、手続きをします。
【必要書類】
「相続手続依頼書」は金融機関から取得できます。金融機関によって名称や書式が異なりますので、被相続人の口座がある金融機関に問い合わせのうえ、取得しましょう。
不動産は、特定の相続人が取得するにしても、売却のうえ換価分割するにしても、名義変更をしなければなりません。
名義変更は以下の必要書類をそろえたうえで、法務局へ申請します。
【必要書類】
登記は申請後1~2週間で完了します。完了後に法務局から連絡があり、登記の完了を証明する書類を交付してもらえます。
株式の名義変更は金融機関へ必要書類を提出すれば手続きできます。
相続人名義で新たに口座を開設し、被相続人名義の株式を移管のうえ進めることになるでしょう。
株式の相続手続きで主に必要な書類は以下のとおりです。
【必要書類】
また、未受領の配当金がある場合は、配当金の受け取り手続きも忘れずおこないましょう。
未受領の配当金があるかどうかは被相続人宛ての配当金領収証がないか探してみるか、証券会社に問い合わせてみればわかります。
自動車の名義変更は運輸支局でおこないます。必要書類は下記のとおりです。
【必要書類】
手続きにはこれらの他、申請書・手数料納付書・自動車税、自動車取得税申告書の提出が必要ですが、これらの書類は運輸支局で取得し記入します。
手数料納付書には名義変更手数料として500円分の印紙を貼付して提出します。
印紙は、ほとんどの場合、運輸支局内で購入できるので、用意しておかなくても問題ありません。
遺産総額が基礎控除額を超える場合は、相続税を申告しなくてはいけません。
下記の計算式で基礎控除額を算出し、確認しましょう。
相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
相続税の申告は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内におこなう必要があります。
必要な場合は、申告および納付手続きを忘れないようにしましょう。
いざ相続手続きを進めてみると、思ってもみなかった問題に気付くかもしれません。
そのような場面で適切な判断を下し、手続きをスムーズに進めるためにもあらかじめ知っておくべきことがあります。
遺産を分割する方法には、次に紹介する3つの方法があります。その違いを知り、相続財産や分割内容に応じて選択するとよいでしょう。
遺産を現物で分割、相続する方法です。
たとえば、相続人Aが不動産を相続する代わりに、相続人Bは預金口座の残高を相続する、というように財産ごとに所有者を決めます。
シンプルな方法ですが、完全な公平性の実現は難しい方法ともいえるでしょう。
実際の運用では、次に紹介する代償分割も併用して、生じた不公平の解消を試みるケースも多くあります。
特定の相続人がある財産を現物で取得する代わりに、その相当額を他の相続人に支払う方法です。
たとえば、相続人Aが1500万円相当の不動産を取得する代わりに、相続人Bと相続人Cにそれぞれ500万円ずつ支払い、公平な相続を目指します。
どうしても現物で取得したい遺産がある場合に適した方法といえるでしょう。
代償分は必ずしも現金で支払う必要はなく、何らかの財産で支払うこともできます。
相続人同士で合意すれば、分割払いや将来の支払いでも問題ありません。
遺産を売却して、現金にしたうえで分割する方法です。
換価によって完全に平等な分割を実現できる点はメリットといえるでしょう。
しかし、不動産の場合は譲渡取得税や処分費用がかかるなど、余計なコストが発生する点はデメリットといえます。
遺産分割は必ず相続人全員で遺産分割協議をしたうえでおこないます。
しかし、話し合いがスムーズにまとまるとは限りません。特に親族同士の協議では、近しい関係であるゆえにトラブルが起きやすく、一度トラブルが勃発すれば収拾がつかなくなることも多いでしょう。
当事者同士ではいつまでも話し合いがまとまりそうになければ、裁判所の力を借りましょう。
家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てれば、裁判所が仲介のうえ協議を進めてくれます。
第三者が間に入ることで、当事者は冷静に話ができ、速やかに解決に至るでしょう。
遺産分割をする前に、被相続人がどのような財産をどれくらい遺したのかを知るための財産調査をおこないます。
その結果、負債の方が多いケースもあるでしょう。
マイナス分を相続したくない場合は、相続放棄、限定承認という二つの手段があります。状況に合わせていずれかの方法を選択し、対処しましょう。
相続放棄とは、あらゆる財産の相続を放棄する方法です。
家庭裁判所に相続放棄の申述申し立てをおこなうことで実現できます。
相続人単独で申し立てられるので、他の相続人と関わりたくない場合にも有効な手段といえるでしょう。
なお、相続放棄の申述申し立てには期限があり、相続の開始を知ったときから3か月以内におこなわなくてはなりませんので注意しましょう。
限定承認とは、マイナスの財産をプラスの財産の範囲内で清算する方法です。
特に以下のような場合に有効な手段といえるでしょう。
限定承認も相続の開始を知ったときから3か月以内に、家庭裁判所へ申し立てなければなりません。
しかし、申し立てを相続人全員でおこなわなくてはならないうえ、申し立て後の手続きが煩雑であるため、実際に選択されるケースはまれです。
限定承認の選択を検討しているなら、それがベストな判断なのか一度弁護士に相談することをおすすめします。
限定承認をするなら手続きは弁護士に依頼するのが賢明でしょう。
相続発生後、最初から遺産分割を始めるわけではありません。先におこなうべき、事前準備についても知っておきましょう。
相続が発生したら、まずは被相続人が遺言書を遺しているかどうか確認しましょう。
遺言書があれば、その内容どおりに遺産分割を進めることになるため、遺産分割協議をする必要がなくなります。
相続手続きの手順や内容が、遺言の有無によって大きく変わるのです。
まずは被相続人が遺言書を保管していた可能性の高い場所を探してみましょう。
保管場所としてよく利用されるのは、金庫や仏壇、机の引き出しなどです。
自宅を探して見つからなくても、遺言書がないとも限りません。
自筆証書遺言保管制度を利用して、法務局で保管されている可能性もありますし、公正証書遺言を作成して公証役場で保管されているかもしれません。
念のためどちらも確認しておきましょう。
遺言書の調査と並行して、相続人の調査と特定も進めましょう。
あえて調査などしなくても、親族であれば相続人が誰かは明らかだと思うかもしれませんが、必ず調査してください。
遺産分割後に親族以外の相続人の存在が発覚すれば、先に遺産分割協議で決まった内容は無効となり、最初から協議をやり直さねばならなくなるからです。
相続人の調査は、被相続人の出生から死亡に至るまでの全ての戸籍謄本類を役所で取得しておこないます。
しかし慣れない方には難しく感じられることもあるでしょう。
特に、昔作成された改製原戸籍や除籍謄本は手書きされているものもあるため、判読が難しいかもしれません。
自分でおこなうのが難しければ、早めに弁護士に相談しましょう。
弁護士に依頼すれば、戸籍謄本などの取り寄せからおこなってもらえます。
自分でおこなうよりも、速やか、かつ正確に相続人を特定してもらえるでしょう。
どのような遺産がどれだけあるのかを正確に把握するために、相続財産の調査も大切です。
プラスの財産だけでなく、マイナスの財産についても調査しましょう。
財産調査は次の手順でおこないます。
まず、被相続人の遺した遺産にはどのようなものがあるのかを調べます。
遺品の中から預金通帳や不動産の権利証など、財産に関するものがないか探したり、預金通帳に記載された取引内容を確認したりすれば明らかになるものが多いでしょう。
また、被相続人宛てに届く郵便物をチェックしてみるのも有効です。
固定資産税の請求書が届けば不動産を所有していることがわかりますし、各種請求書でマイナスの財産が判明することもあります。
被相続人がどのような財産を所有していたのか、できる限りもれのないよう調査しましょう。
どのような財産があるかがわかったら、それぞれの評価額を算定します。
預金残高は通帳や残高証明書を確認すれば容易にわかりますが、不動産や株式などその他の財産がある場合は少々複雑です。
特に不動産は評価方法が複数あり、専門家でなければ評価額の算定が難しい財産といえます。
評価の難しい財産が含まれるなら、弁護士に依頼したほうがよいでしょう。
相続財産の調査が完了し、その内容が明らかになったら、相続方法を決定します。相続方法には以下の3つの方法があります。
単純承認 | プラスの財産もマイナスの財産も含めた全ての財産を相続する。 |
---|---|
相続放棄 | プラスの財産もマイナスの財産も含めた全ての財産の相続を放棄する。 |
限定承認 | プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を清算する。プラスの財産が残った場合、その分については相続可能。 |
すでに紹介したとおり、相続放棄や限定承認を選択するなら、相続の開始を知ったときから3か月以内に家庭裁判所へ申述の申し立てをしなければなりません。
一方、単純承認については、特に手続きは必要ありません。相続の開始を知ったときから3か月以内に何もしなければ、自動的に単純承認をしたことになります。
遺産の内容をよく鑑みたうえで、選択すべき相続方法を決定しましょう。
ほとんどの方にとって遺産分割は慣れないものです。進めるうちに疑問が出てくることもあるでしょう。
ここでは、よくある質問とその答えを紹介します。
ありません。
しかし、相続手続きの中には期限が定められたものもあるため、あまり長く放っておくのはおすすめしません。
たとえば、限定承認や相続放棄の申述申し立て期限は相続の開始を知ったときから3か月以内、相続税の申告期限は被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内です。
いずれの手続きも必要がなければ特に問題はありませんが、必要にもかかわらず間に合わなかった場合は大変です。
負債を相続することになったり、延滞税や加算税を支払わなければならなくなったりするなど、思わぬ損害を被る可能性もあるでしょう。
遺産分割をはじめとした相続手続きは相続発生後、できるだけ速やかに進めるのが賢明です。
次のようなケースでは必要ありません。
ただし、法定相続分どおりに遺産を分割する場合でも、できれば遺産分割協議書を作成しておく方がよいでしょう。
遺産分割協議書があった方が相続手続きをスムーズに進められるケースが多いためです。
特に金融機関の相続手続きでは、遺産分割協議書がなければ書類に相続人全員の署名、捺印を求められます。
1行分くらいなら問題はないかもしれませんが、複数行分となれば大変でしょう。遺産分割協議書があれば、代表相続人の署名・捺印だけで済み、手間が省けます。
存在しません。
遺産分割は原則として平等におこなわれるべきものと考えられています。
「長男だからこの家は自分が相続すべきだ」「自分が兄弟姉妹の中でも一番年上なのだから、相続分は多くなるはずだ」などといった理屈には法的根拠がありません。
分割しないといけません。
元配偶者の子も被相続人の子であり、相続順位第1位の相続人です。
原則として、現配偶者の子と同じ割合で遺産分割をおこなわなくてはなりません。
また、愛人の子であっても被相続人が認知していれば法定相続人です。
他の子たちと同じ割合で相続することになります。
内縁関係にあった人には、原則として相続権はありません。
ただし、遺言書に内縁者へ相続させる旨の記載があれば相続できる可能性があります。
遺言があれば、遺産分割は基本的に遺言書の内容に従います。
遺産とは故人が所有していた財産であり、その行方は持ち主である故人の遺志を尊重すべきと考えられているためです。
ただし、相続人全員と、遺言書で贈与先として指定されていた受遺者が同意すれば、その遺言内容を無効にできます。
また、相続人以外の方に遺贈された場合でも、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人であれば遺留分の支払いを請求できます。
遺産に借金などマイナスの財産が含まれていれば、その分も法定相続人が分割して相続するのが基本です。
どのように分割するのか、遺産分割協議で話し合いましょう。
相続放棄や限定承認など、負債を相続せずにすむ方法もありますので、あまりに借金が多い場合は利用を検討するとよいでしょう。
遺産分割の手続きは、きちんと準備をおこなったうえで進めることが大切です。
まずは遺言書の有無を確認し、相続人調査や財産調査を進めましょう。
遺言書があれば遺産分割協議や手続きは、原則として必要ありません。遺言書の内容どおりに相続します。
遺言書がなければ、相続方法を決定し、遺産分割をおこないましょう。
遺産分割協議を相続人全員でおこない、話がまとまらない場合は裁判所の調停手続きの利用をおおすめします。
遺産分割の内容が決まったら、そのとおりに相続手続きを進めましょう。
遺産分割をはじめとした相続手続きは、相続人自身でもおこなえますが、わからないことや行き詰まることもあるでしょう。
そのような場合は、速やかに弁護士にご相談ください。
相続手続きの中には、期限のある手続きもありますので、あまり長く放っておくのは得策とはいえません。
初回無料相談をおこなっている弁護士もいますので、ぜひ早めに相談しましょう。