土地・不動産相続
不動産相続の無料相談ができる窓口8選!上手に相談するコツも紹介!
2024.07.09
時効取得が成立すると、不動産など長年占有してきたものの所有権を取得できます。ただし要件が複雑なうえにいくつかの注意点があり、単に長く占有していればよいわけではありません。
本記事では、時効取得の要件や手続きの大まかな流れ、時効取得をする際の注意点について解説します。本記事を読むことで、時効取得の手続きをすすめるため、次にどうすべきかが理解できます。
相続した土地の時効取得をしたいけど、自分のケースは時効取得できるのかどうかわからず、悩んでいませんか。
結論からいうと、時効取得できるかどうか判断できないときは、弁護士に相談することをおすすめします。
時効取得の要件は複雑な問題が絡むため、法的観点からのアドバイスを得ることが、問題解決につながるでしょう。
弁護士の無料相談を利用することで以下のようなメリットを得ることができます。
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時効取得とは他人の物を一定期間所有した場合に、要件を満たすことで時効により自分の物にできる制度です。
民法では、時効取得について以下のように定められています。
(所有権の取得時効)
第百六十二条 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
時効取得は、もともとの所有者にとって酷な制度にも見えますが、他人の所有物を奪うことを認める制度ではありません。時効取得は、以下の事情から存在するといわれています。
たとえばAが長い間その土地を所有していた場合、周囲の方もAの所有権を信頼し、Aと取引をする可能性があります。
この場合、Aが所有者でないとしてこれまでの取引を覆すより、現在の状態を法的に保護した方がよいと考えられることが、時効取得が認められている理由のひとつです。
もとの所有者が長期間所有権を主張していない場合、権利を主張する意義を感じていない可能性が高いため、所有権を保護する必要性は低いと考えられます。
また、長期間にわたって権利を主張しなかった所有者が、ある日突然権利を主張し始めることは占有者にとって不意打ちとなることも、時効取得が認められている理由のひとつです。
占有者が所有権を取得しているとしても、時間の経過とともに契約書などを紛失してしまい、権利取得を証明できないケースも少なくありません。
時効取得は、所有権の立証が困難な人にとっての救済手段としても活用できます。
時効取得できる権利は多岐にわたり、具体的には以下の権利が挙げられます。
以下の権利は、時効取得が認められません。
そのほか、1回の行使で権利が消滅する債権・取消権・解除権なども時効取得の対象外です。
時効取得が認められるためには、以下の要件を全て満たす必要があります。
各要件のポイントを詳しく確認していきましょう。
1つ目の要件は、それが自分のものであるという所有の意思をもって占有を開始したことです。
所有の意思をもっておこなう占有のことを「自主占有」といいます。これに対して、所有の意思がない占有は「他主占有」といいます。
自主占有と他主占有のどちらに当たるかは、外形的・客観的に判断されます。
占有者が「自分のために所有している」という意思を持っていたからといって、自主占有とみなされるわけではないのです。
たとえば、売買・贈与・交換などによって占有を開始した場合は、一般的にその物を所有する意思があると考えられるので自主占有にあたります。
反対に、たとえばマンションの賃貸借によって占有を開始した場合は、他人から借りているに過ぎないので、所有の意思を持たない他主占有です。
いくら本人が所有しているつもりであっても、賃貸借関係にあることが契約上明らかなので自主占有にはあたりません。
賃貸借契約における賃借権のように、所有の意思が認められない占有権原は「他主占有権原」といいます。
また、占有に関する具体的な事情から、占有者が所有者として振舞っていないと認められる場合も他主占有となります。
たとえば、土地の占有者が固定資産税を支払っていない場合は、所有の意思が認められない方向に働きます。このような事情は「他主占有事情」と呼ばれています。
「所有の意思をもって占有を開始した」といえるかどうか判断できない場合は、弁護士に相談してアドバイスを求めることをおすすめします。
時効取得するための2つ目の要件は、平穏かつ公然と占有を開始したことです。
平穏とは暴力的な手段を用いていないこと、公然とは実際の権利者に占有の事実を隠していないことを指します。
たとえば、暴行や脅迫によって所有者から占有を奪った場合は時効取得の対象外です。
また、所有者からの問い合わせに対して、占有の事実を認めなかった場合は公然な占有といえません。
時効取得が認められるための3つ目の要件は、一定期間占有していることです。
途切れることなく、継続して占有していなければならない点にも注意してください。
なお、時効取得の成立に必要な占有期間は、状況によって異なります。
詳しくは後述しますが、善意無過失の場合は10年、悪意または過失がある場合は20年です。
次に、時効取得に必要な占有期間の考え方を解説します。
状況によって必要な占有期間は大きく異なるので、ポイントをしっかりと押さえておきましょう。
占有者が善意無過失の場合、時効取得の成立に必要な占有期間は10年です。
善意とは占有物が他人の物だと知らなかったこと、無過失とは他人の物だと知らなかったことに関して、注意義務違反がない状態を指します。
過失の有無は、占有取得時の状況を総合的に考慮し判断されます。たとえば、以下にあてはまる場合は、占有者の過失が認められ、10年間の占有による時効取得が成立しない可能性が高いです。
占有者に悪意または過失がある場合、時効取得の成立に必要な占有期間は20年です。
悪意とは占有物が他人の物だと知っていたこと、過失とは他人の知らなかったことに関して注意義務違反がある状態を指します。
占有の対象が農地の場合は、原則、有過失となる点に注意しておきましょう。
農地を占有するには農業委員会の許可を得る必要があり、その過程で他人の物であることは明らかになります。
そのため、他人の物であることを知らない場合は、法的手続きを怠っていることになり、過失があると判断されてしまうのです。
つまり、農地の所有権を現時点でもっていないにも関わらず占有している場合は、必然的に有過失となりますので、時効取得するためには、20年以上占有していなければなりません。
時効取得できる可能性があるケースとして、代表的な事例を3つ紹介します。
時効取得が可能か判断する際の参考にしてください。
境界線があいまいな土地を長期間使っていた場合は、境界部分の土地を時効取得できることがあります。
たとえば、隣地との境界線と思われる場所に塀を設置し、長い年月が経過しているケースです。
この場合、要件を満たせば塀の敷地について時効取得が成立し、土地の境界線を有利な形で画定できる可能性があります。
たとえば被相続人が所有していた土地の登記が前主のままになっている状態で、その土地を相続したケースです。
この場合、相続人は登記簿上の所有者に対して、被相続人が土地を所有していた事実(売買契約に基づく所有権の取得など)と相続による所有権の取得を証明して所有権移転登記を求めるのが原則ですが、被相続人による所有の事実を証明するのが難しいこともあります。
もし時効取得の要件を満たしていれば、被相続人の所有権を証明することなく、相続人が自らの所有権を主張して所有権移転登記を請求可能です。
無権原者(=所有者でない人)から買い取った土地を長い間占有していた場合も、時効取得できる可能性があります。
たとえば本来の所有者がAで、BはAから土地を借りていただけにも関わらず、Cに売却した例で考えてみましょう。
本来であればBには土地の所有権がないので、仮にCが買い取っても所有権を取得することはできません。
しかしCは売買によって土地を占有したわけですから、所有の意思をもって占有を開始しています。
そのため平穏・公然の要件を満たし、かつ10年または20年の時効期間が経過すれば、Cはその土地を時効取得できるのです。
不動産を時効取得するための大まかな流れを解説します。
まずは、所有者に対して取得時効の援用をおこないましょう。
援用とは、時効の完成による利益を享受する旨を所有者に伝えることです。
具体的な方法は決められていませんが、援用した事実を証拠として残すためにも、内容証明郵便で通知することをおすすめします。
相手方が時効の援用に対して反論してきた場合は、所有権移転登記請求訴訟などを提起することが考えられます。
この場合、裁判手続きを通じて取得時効の成否を争うことになります。
訴訟によって対象物の所有権が争われる場合は、裁判所に提出する書面(訴状・答弁書・準備書面など)によって時効を援用することも可能です。
最終的に不動産の時効取得が成立した場合は、速やかに所有権移転登記手続きを進めましょう。
時効完成後、売買等により不動産を譲り受けた第三者が所有権移転登記を先に得ると、所有権を失ってしまうので注意してください。
なお所有権移転登記手続きは、当事者双方の意思を確認するために、権利を失う者(前所有者)と得る者(現所有者)が共同でおこなうのが原則とされています。
ただし、訴訟において登記手続を命じる旨の判決が下された場合は、現所有者単独での手続きも可能です。
不動産の時効取得を検討しているなら、弁護士に相談するのがおすすめです。
時効取得の要件を満たしているかは、さまざまな問題が絡むため自分だけで判断するのが難しい場合が少なくありません。
弁護士に時効取得が可能か適切に判断してもらい、適切なアドバイスを受けるとよいでしょう。
また、弁護士に対応を依頼すれば、時効取得に必要な手続きを一任できます。相手方との交渉も裁判手続きも任せられるので安心です。
弁護士を探す際は、不動産に関するトラブルの解決実績が豊富かどうかを確認するようにしましょう。
十分な知識と経験のある弁護士であれば、個々の状況にあわせた最善な解決策を提案してくれるはずです。
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時効取得に関して知っておくべき注意点を解説します。
訴訟で時効取得の成否を争う場合、占有者は以下の事実を立証しなければなりません。
まず、占有期間10年での時効取得を主張する場合は、占有開始時における無過失を立証しなければなりません。
占有者が無過失を立証できない場合は、時効取得の成立に20年の占有期間が必要となるので注意してください。
また、占有開始の事実と10年または20年経過時における占有の事実も、占有者が立証する責任を負います。この2点における占有が立証できれば、その間は占有が継続されていたものと推定されます。
なお、所有の意思・平穏・公然・善意の要件については法律上推定されるため、否認する側が立証責任を負います。したがって、時効取得を主張する側がこれらの要件を立証する必要はありません。
不動産を時効取得する際は、登録免許税や不動産取得税が課されます。
登録免許税は、不動産を登記する際にかかる税金のことです。
所有権移転登記をおこなう場合は、不動産の固定資産税評価額の2%に当たる登録免許税が課されます。
不動産取得税とは、有償・無償にかかわらず不動産を取得するだけで課せられる税金のことです。
不動産取得税の金額は、固定資産税評価額の4%(2024年3月31日までに時効取得した土地の場合は3%)となります。
不動産の価値によっては、時効取得することで大きな金銭的負担が生じる可能性もあるので注意しておきましょう。
不動産を時効取得すると、不動産の評価額に応じて所得税および住民税が課されます。
時効取得によって、経済的利益が生じたものとみなされるためです。
時効によって不動産を取得した年は、確定申告の手続きを忘れずにおこなうようにしましょう。
最後に、時効取得に関するよくある質問を紹介します。
同様の疑問を抱えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
占有の承継とは、物の占有状態を別の人物に引き継ぐことです。
たとえば不動産Xを所有者でないAが5年間占有し、そのあとAから不動産Xを譲り受けたBが5年占有したとします。この場合、Bだけの占有期間は5年間です。
一方でBはAの占有と自分の占有をあわせて、10年間の占有期間を主張することができます。これによりBは、占有期間10年の時効取得を主張できる可能性が生じるわけです。
民法では、以下のように定められています。
(占有の承継)
第百八十七条 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
2 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
ただし、占有期間を合算する場合は、前の占有者の瑕疵も引き継いでしまう点には注意が必要です。
自分自身は善意無過失であっても、前の占有者に悪意や過失があった場合は、時効取得の成立に必要な占有期間が10年から20年に伸びてしまいます。
そのため、前の占有者に瑕疵がある場合は、自身の占有期間のみを主張したほうが有利なケースもあることを覚えておきましょう。
相手方が登記を備えていた場合に、時効取得に基づく不動産の所有権移転登記手続きを請求できるどうかは、相手方の立場や登記を備えたタイミングによって異なります。
相手方が前の所有者だった場合は、登記を備えていたとしても、時効取得に基づく所有権移転登記手続きを請求可能です。
また、相手方が前の所有者から目的物を譲り受けて登記を備えた場合でも、登記を備えたのが時効取得前であれば、時効取得に基づく所有権移転登記手続きを請求できます。
一方、相手方が登記を備えたのが時効取得後である場合は、相手方が確定的に所有権を取得するため、所有権移転登記手続きを請求できません。
不法占拠の場合であっても、時効取得が成立する可能性はあります。
不法占拠かどうかにかかわらず、長期間にわたって占有してきたという事実は尊重されるべきと考えられるためです。
もちろん、時効取得を成立させるためには、上述した要件を全て満たしている必要があります。
不法占拠にあたって暴力的な行為に及んだり、所有者に占有していることを隠したりしている場合は、時効取得を主張することができません。
賃貸アパート・マンションを時効取得することはできません。
賃貸借契約はあくまでも、建物を借りるための契約です。
そのため、賃借人に所有の意思があるとは認められないので、建物の時効取得は成立しません。
ほかの相続人がいるケースにおいて、相続財産に含まれる不動産を占有した場合、時効取得は原則として成立しません。
被相続人が亡くなった時点で、不動産はほかの相続人との共有状態となります。
遺産分割協議によって所有者が決定しないまま、相続人の1人がその不動産を占有しても、原則として時効取得が認められません。
その相続人はほかの相続人がいることを通常知っており、自己の共有持分権に基づき占有しているに過ぎないためです。すなわち、所有の意思が認められないので、時効取得は成立しません。
ただし以下にあげる状況の場合、その相続人に所有の意思が認められ時効取得が成立する可能性があります。
時効取得が成立すると、土地や建物に設定されている抵当権は消滅します。
時効取得者は、対象物の完全な所有権を原始的に取得するためです。
不動産の時効取得とは、所有者以外が不動産を長期間にわたって占有した場合に、要件を満たすと占有者が所有権を取得できる制度です。
ただし不動産の時効取得は要件が難しく、専門家のアドバイスなしで判断するのが難しいケースも少なくありません。
要件を満たしていないにも関わらず時効取得を主張すると、トラブルに発展する可能性もあります。
時効取得の手続きをする際は、弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士は、時効取得の要件を満たしているかを正確に判断してくれます。弁護士に相談すれば、どのような証拠を集めればよいかなどのアドバイスを得ることも可能です。
なるべく早めに弁護士へ相談して、スムーズに手続きをすすめるようにしましょう。