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贈与契約書のひな型と作成ポイント|生前贈与でトラブルを防ぐために
2023.07.14
相続は相続人に対して法で定められた一定の基準以上の財産を残すことが求められます。
しかし、中には相続人からひどい侮辱を受けるなどの理由で、「この人には相続させたくない」という人もいるでしょう。
そこでここでは、特定の相続人の遺産を減らす方法や、残したい方へ最大限の遺産を送るための7つの方法を解説していきます。
遺産を相続させたくない相続人がいるものの、その方法がわからずに悩んでいませんか。
結論からいうと、相続させたくない人がいる場合は弁護士へ相談・依頼することをおすすめします。
弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットを得ることができます。
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相続には、民法で定められた「遺留分」と呼ばれる権利があり、被相続人との続柄によって相続できる一定割合が保証されています。
法によって保証されている権利のため、相続権を一方的に無かったことにはできず、簡単に相続権を奪うことはできません。
しかし、今、相続を考えて終活している方の中には、相続人からひどい暴言や侮辱を受けたり、あるいは一人の相続人がとくに介護や身の回りの世話をしてくれたりで、「相続させたくない」あるいは「優遇したい」といった気持ちが出てくることもあるでしょう。
これから以下で、特定の相続人に多く残す、もしくは特定の相続人の取り分を減らす方法について解説していきます。
どうしても相続をさせたくない相手がいるときの対処方法として、7つの相続活用方法を解説していきます。
相続における欠格者とは、何かしらの犯罪行為といった「欠格事由」に該当する行為をしたことで、相続権をはく奪された者のことを指します。
欠格事由として定められている内容は下記のとおりです。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
引用元:e-Gov|民法891条
たとえば遺言書の偽装や被相続人への脅迫等による遺言書の内容への圧力など、相続人に対する暴力や脅迫といった犯罪行為が立証されれば欠格事由として該当し、犯人から相続権をはく奪することができます。
上記に該当する行動に心当たりがある方は、即刻警察に連絡し、弁護士を雇って対応しましょう。
相続廃除とは、相続権を持っている人を相続から外すことができる手続きです。
下記の書類を準備し、被相続人の居住する場所を管轄する家庭裁判所で申請します。
法定相続人の中に、「絶対に相続させたくない」という人がいる場合は特に有効です。
相続権をはく奪するので、遺留分に気を遣う必要もなくなります。
ただし、相続廃除は誰でもできるわけではありません。
廃除が可能となる要件は下記のようなケースの場合です。
「著しい非行をした」という解釈は家庭裁判所により異なる場合もあります。
たとえば家出といった事由だけだと不十分になるかもしれませんが、素行が悪く迷惑をかけられたといった場合は可能かもしれません。
相続の欠格者との違いは、相続廃除は被相続人の意思で手続きができる点です。
どうしても相続をさせたくない相続人がいるなら、家庭裁判所で手続きを進めるのがおすすめです。
弁護士などの専門家に依頼すれば、手続きに必要な書類収集なども依頼できるので検討してみてください。
被相続人は、遺言書によって自身の死後、財産の処分を相続人や遺言執行者に任せることができます。
相続人が複数名いる場合、遺言によって相続させる財産の種類やその割合も指定することが可能です。
ただし、この方法には「遺留分」の問題が付きまといます。
遺留分とは法によって守られている相続人の権利です。
もし遺留分を侵害してしまうと、侵害された相続人から「遺留分侵害額の請求」という訴訟問題に発展する恐れがあります。
遺留分侵害額の請求がおこなわれると、せっかく作成した遺言書も効果がなくなり、残された相続人たちで遺産分割協議がおこなわれることとなります。
相続財産の分配はもちろんのこと、寄付や遺贈といった願いも叶えられなくなる可能性もあるので、遺留分については十分に注意しましょう。
>遺言と遺留分の関係性について詳しく知る
遺言書の中で対策できる方法としては、遺留分を持つ相続人に相続させる物品を指定することです。
遺留分侵害請求は遺産の割合を侵害したときにおこなわれます。
たとえば、3人の相続人にそれぞれ100万円ずつ遺留分があれば、100万円以上の遺産を相続させないと裁判になるのです。
そこで、預貯金や宝飾品といったものは別の人に残し、相続させたくない人には遺留分に相当するモノを残すのです。
壊れかけの時計や売却が難しい物件など、相続するにあたって支出のほうが多くなる資産は意外と多くあるものです。
処分に困っている物品があれば、こうした方法もあることを覚えておくとよいかもしれません。
相続では遺贈や死因贈与といった形で第三者に財産を残すことも可能です。
全ての財産を信頼できる第三者に託すことで、相続人が相続できる財産を0にすることができます。
遺贈は遺言書によって指定可能です。
公正証書遺言にしておくとより確実性が高くなるでしょう。
ただし、相続人であって、被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含みます。)および配偶者以外への遺贈は相続税が2割増しとなります。
現金化しにくいもの等があると、かえって迷惑になるので注意しましょう。
死因贈与とは、贈与者(あげる人)が亡くなったときに効力を発揮する贈与に関する契約のひとつです。
贈与者と受贈者(貰う人)が事前に合意契約を結び、贈与者が亡くなったときに遺産を分け与えることができます。
遺贈と死因贈与の違いは、契約の有無です。
遺贈はあくまで遺言なので契約はありませんが、死因贈与は契約なので、一定の拘束力を持っています。
たとえば、介護してもらうことを引き換えに、相続人の誰かに死因贈与を契約するといったことが可能です。
この場合、寄与分が働くのでのちのトラブルになった際でも、受贈者に有利な形で進められる可能性があります。
このように、生前の働きに期待をして死後の支払いを遺産で支払うというような相続を検討している方は死因贈与がおすすめです。
それ以外であれば遺贈でも問題ないでしょう。
ただし、遺贈・死因贈与ともに相続人の遺留分を侵害している場合は遺留分侵害額の請求をされる恐れもあります。
死因贈与で遺留分侵害をおこなった場合、契約と権利の間で裁判がおこなわれるので、残された側に多くの労力をかけるリスクがありますので、この方法も遺留分についてしっかりと注意しておきましょう。
生前贈与とは、生きているうちに遺産の一部を相続人に贈与していくことです。
生前贈与は相続とは別の独立した制度で、特定の相続人にのみ贈与できることのほか、様々な税制のメリットがあります。
たとえば、「暦年課税」という方式を用いれば、毎年合計110万円以内の贈与であれば相続税・贈与税がかかりません。
相続税は相続人にとっては大きな負担になりえるものです。
できるだけ圧縮したいものですので、自身の生活とうまく調整しながら生前贈与を活用するとよいでしょう。
相続させたい人には贈与をしているので、生前贈与によって自身が亡くなったとき財産を減らしておくことができれば、相続させたくない人にわたる財産を少なくすることが可能です。
なお、毎年同じように生前贈与を続けていると定期贈与とみなされるリスクがあります。
定期贈与とみなされると、期間と金額に合わせて贈与税が課されます。
また、生前贈与についても遺留分のリスクには注意が必要です。
生前贈与は、相続開始1年(法定相続人の場合10年)前に実施された総額について遺留分侵害額請求をすることが可能です。
「相続をさせたくない」という場合、生前贈与は税金対策プラスアルファ程度に考えておき、その他の方法も並行して採用しましょう。
NPOとは社会貢献活動を目的として創設される非営利団体の総称です。
生前にNPO法人を設立することで、税制上のメリットを受けられるほか、相続させたくない相続人への遺産を減らす効果が期待できます。
手順としては、まず生前にNPOを設立します。法人格を持たない任意団体でも構いません。
任意団体であれば特に手続きはなく、名乗ってしまえばそれで成立しますが、法人としたほうがスムーズな承継が可能です。
NPOを設立したら、財産の一部を出資してNPOの活動資金とします。
定期的な寄付と通じてNPOの財産として自身の遺産を減らしていくのです。
なお、法人格のNPOにできたら、寄付金は所得税控除といった税制上のメリットがあります。
もしまだ現役で働けている方であれば、法人格のNPOを創設するとよいでしょう。
終活を始める段階になったら、創設したNPOの代表を相続させたい人に継承します。
事業承継には「事業承継税制」による税金がかかりますが、相続財産とは別のカウントとなりますので、遺留分の請求といったリスクはありません。
法人格を得たNPOは活動実績を報告する義務がありますので、形式のみとなってしまうと税制上のメリットは認められなくなる可能性があります。
また、任意団体の場合は登記などをしていないので、生前贈与とみなされるといったリスクもあります。
最低限、定款や活動目的・事業計画書といった物は作成しておきましょう。
NPOと同様に、会社設立して継承させる方法もあります。
この方法であれば、土地や車といった比較的高価な物品も登記変更により会社のものとして運用することで相続させやすくなります。
会社の事業承継は、円滑に進めるために制定された「遺留分に関する民法の特例」を活用することで、これまでの方法で付きまとってきた遺留分のリスクを極限まで減らすことが可能です。
「遺留分に関する民法の特例」とは以下2つの手続きのことです。
いずれの場合も法定相続人の合意がいるので注意が必要です。
ただし、たとえば10年以上前に経営を引き継ぐなどができれば、遺留分のリスクは完全に0にできます。
これは遺留分の請求が、相続人であっても10年までしか遡れないためです。
個人事業主の形態であっても上記の制度は活用できますので、相続人に一定以上の実務能力があるなら検討に値する方法です。
「相続させたくない」という問題の最大の障壁は、法定相続人がもつ遺留分です。
遺留分は被相続人との続柄や法定相続人の人数によって異なります。
ここからは、続柄ごとに「相続させたくない相手」へなるべく相続させない方法について解説していきます。
近年では熟年離婚という言葉をよく耳にするようになりました。
厚労省によれば20年以上同居期間がある夫婦の19%、実に5組に1組が熟年離婚をしているそうです。
しかし、配偶者というのは相続において最も強力な権利を有しています。
関係が険悪になったとしても、「配偶者に相続させない」というのは困難が伴います。
現実的な方法としては、生前贈与によって配偶者以外の第三者に財産を移転することで、遺産を目減りさせる方法です。
ただし、この方法では生前贈与が特別受益になってしまうと、相続財産としてカウントする「持ち戻し」になってしまうこともあり得ます。
持ち戻しになってしまうと、せっかく目減りさせた遺産が元に戻ってしまうため、生前贈与の意味がなくなってしまいます。
対応としては、遺言によって「特別受益の持ち戻しの免除」を定める方法があります。
持ち戻しの免除とは、生前贈与などで与えた利益すべてを相続財産に加算しないことを宣言することです。
遺言書への記載方法は特に決まった形式はありません。
法的に有効となるか心配な方は、弁護士などの専門家に依頼して表現のアドバイスを貰ったり、公正証書遺言にして公証人に見てもらったりしてもらいましょう。
子どもの非行で迷惑ばかりかけられたり、ロクに介護などをしてもらえなかったりといった理由で、子どもに相続をさせたくないという方もいらっしゃるでしょう。
しかし、配偶者同様に子どもに相続をさせないということもかなり難しいものです。
子どもの遺留分は、配偶者の有無や子どもの人数によって変動します。
たとえば配偶者と子ども1人の場合、遺産の1/2が子どもの相続分です。
配偶者がいなければ100%が子どもに相続されます。
もし子どもが2名以上いる場合、配偶者がいれば1/2を子ども間で等分に分割します。
配偶者がいなければ総額を等分です。
子どもに相続させない方法は、子どもとの関係性や子どもの素行によります。
もし許しがたい侮辱を受けた場合や、勘当同然の関係性であれば、事前に相続廃除しておけば、一切の相続をしなくて済みます。
廃除ができなければ、配偶者と同様に遺産自体を目減りさせる方法がよいでしょう。
ただし配偶者と同様、どのような方法でも遺留分の問題は付きまとっていきます。
運用方法に注意し、もし一人では難しいと感じる場合、弁護士などの専門家を頼りましょう。
親と仲が険悪で、万が一自分が亡くなっても親にだけは相続させたくないといった方も少なくはないでしょう。
親に相続させない方法で一番確実なのは相続廃除です。
虐待を受けていたりネグレクトされたりといった事情であれば、欠格事由に相当する可能性もあります。
後は財産を目減りさせていく方法が望ましいです。
子どもや配偶者がいれば、個人事業やNPOを設立し共同経営者などのポジションを用意し、財産一切を経営資源としてそのまま引き継がせることも可能です。
親を含む直系尊属の相続順位は2位で、親も遺留分の請求は可能です。
親の遺留分は配偶者の有無によって変動します。
たとえば子どもはおらず配偶者のみの場合、配偶者は3分の1・親は6分の1となります。
親のみの場合、遺産全体の3分の1です。
親が2人とも生きているのであれば、1人当たり6分の1で、全体の3分の1となります。
もしトラブルになりそうな場合、事前に弁護士などの専門家に相談しておきましょう。
より適切な方法や廃除できる可能性などのアドバイスをしてくれます。
兄弟姉妹に相続させたくないという方は、「ご自身の財産を相続させたくない」という方と、「親の財産を相続させたくない」という方がいらっしゃるでしょう。
「親の財産を相続させたくない」場合、親と相談して相続廃除をしてもらう等を検討しましょう。
事情によりますが、もし非行が目立ったり、家出をしたりといったことであれば、廃除が認められる可能性があります。
また、完全に0にしなくてよいので自分の相続分を多くしたいという方もいらっしゃるでしょう。
相続には「寄与分」という考え方があります。
寄与分とは介護に積極的に参加するなど、被相続人への特別な貢献が認められる場合に、その分だけ遺産を多く相続できるというものです。
「兄弟姉妹は介護に消極的だった」といったようなケースがあれば、遺産分割協議でしっかりとその旨を主張しましょう。
「ご自身の財産を相続させたくない」という場合、配偶者・子ども・両親などの相続人がいれば、基本的に対策は不要です。
なぜなら、相続順位は3位なので、配偶者・子ども・両親に相続させることができれば、兄弟姉妹へ残す遺産は0で問題ありません。
もっとも、配偶者・子どもがおらず、両親も既に他界している場合には、兄弟・姉妹に相続が発生しますので、第三者への遺言書を作成するなど対策が必要です。
なお、被相続人の兄弟姉妹は、遺留分が認められていませんので遺留分を心配する必要はありません。
これまで説明してきたとおり、相続させたくないという問題には遺留分がかならず問題となります。
ここからは、遺留分という制度について基礎知識を解説していきます。
遺留分は法定相続分の2分の1又は3分の1までを請求することが認められています。
そして、遺留分が認められる親族は下記のとおりです。
上記のとおり、兄弟姉妹・甥姪は遺留分が認められていません。
法定相続分とは民法によって定められた遺産相続の割合です。
具体的には以下のように定められています。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
引用元:e-Gov|民法900条
遺留分は、上記の法定相続分を2分の1又は3分の1にした金額までを認められています。
たとえば、子ども1人・配偶者のみが相続人の場合、配偶者・子ともに4分の1が遺留分となります。
「相続をさせたくない」という思いは、親族間で確執があるような場合、どうしても頭の片隅に出てきてしまうでしょう。
特に相続廃除が認められず、しかし納得がいかないようなケースはあると思います。
そうしたときは、相続に強い弁護士に相談しましょう。
これまでにご紹介してきた方法を組み合わせたりすることで、可能な限り想いを実現する方法を模索してくれるはずです。