遺産分割とは、相続人全員の共有財産となった遺産を話し合いによって分割する手続きのことです。
遺産分割にはその手続きにおいて、さまざまな種類や方法がありますが、正しい手順を理解していれば、相続人自身でスムーズにおこなうことができます。
本記事では、遺産分割とはどのような手続きなのかを解説するとともに、遺産分割の具体的な方法や手続きの流れ、よくあるトラブルとその対処法を紹介します。
遺産分割とは
遺産分割とは、相続人全員の共有財産となった遺産を分割する手続きです。
遺言書がある場合、原則としてその内容のとおりに遺産が分けられます。
しかし、遺言書がない場合や遺言書に遺産の配分が指定されていない場合、遺産は相続人全員の共有状態となります。
この遺産の共有状態を解消し、それぞれの相続人が単独で、この遺産を取得できるようにするのが遺産分割の手続きになります。
遺産分割と相続の違い
遺産分割と相続は似たような言葉ですが、意味が全く異なります。
相続とは、亡くなった方の遺産を相続人が引き継ぐことを指します。
一方で、遺産分割とは相続人全員で話し合い、共有状態の遺産をどのように分けるのかを決める手続きを指します。
遺産分割が完了することで、各相続人は遺産を取得します。
したがって、相続が遺産を引き継ぐことを指すのに対して、遺産分割は引き継いだ遺産をどのように分けるのか決める手続きである点に違いがあるのです。
遺産分割における手続きの種類
遺産分割には、以下の3つの手続きがあります。
- 遺産分割協議
- 遺産分割調停
- 遺産分割審判
遺産分割協議とは、遺言書がない場合に、相続人全員で遺産の分け方について話し合う手続きです。
相続人同士で協議をおこなって、誰がどのように財産を相続するのかを話し合います。
遺産分割協議で話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。
遺産分割調停では、調停員が話し合いを仲介し、遺産の分け方を模索します。
また、遺産分割調停でも合意が得られない場合には、自動的に遺産分割審判に移行します。
遺産分割審判では、裁判官が各相続人の主張や遺産の内容を考慮して、遺産の分割方法を決定します。
調停や審判のような裁判所を通じた遺産分割の手続きは、手間がかかります。
そのため、遺産分割の手続きをおこなう際には、弁護士に依頼して手続きの負担を軽減しましょう。
遺産分割における4つの分割方法
遺産分割には、主に4つの方法があります。
それぞれの違いを知り、相続財産に応じて適切な方法を選択するとよいでしょう。
それぞれの分割方法の詳細は、以下のとおりです。
現物分割
遺産を現物で分割、相続する方法です。
たとえば、相続人Aが不動産を相続する代わりに、相続人Bは預金口座の残高を相続する、というように財産ごとに所有者を決めます。
シンプルな方法ですが、完全な公平性の実現は難しい方法ともいえるでしょう。
実際の運用では、次に紹介する代償分割も併用して、生じた不公平の解消を試みるケースも多くあります。
代償分割
特定の相続人がある財産を現物で取得する代わりに、その相当額をほかの相続人に支払う方法です。
たとえば、相続人Aが1500万円相当の不動産を取得する代わりに、相続人Bと相続人Cにそれぞれ500万円ずつ支払い、公平な相続を目指します。
どうしても現物で取得したい遺産がある場合に適した方法といえるでしょう。
代償分は必ずしも現金で支払う必要はなく、何らかの財産で支払うこともできます。
また、相続人同士で合意すれば、分割払いや将来の支払いでも問題ありません。
換価分割
遺産を売却して、現金にしたうえで分割する方法です。
換価によって完全に平等な分割を実現できる点は、メリットといえるでしょう。
しかし、不動産の場合は譲渡取得税や処分費用がかかるなど、余計なコストが発生する点は、デメリットといえます。
共有分割
共有分割は、複数の相続人で遺産を相続する方法です。
複数の相続人が不動産や有価証券などの遺産の取得を希望した場合に、選択されることがあります。
共有分割によって相続した財産は、複数の相続人たちによる共有状態となります。
共有状態になると、売却や賃貸などで遺産を取り扱う際に、相続人全員の同意が必要になります。そのため、手続きが複雑になりがちです。
相続人同士のトラブルも発生しやすくなるため、注意が必要でしょう。
遺産分割手続きの流れ
分割すべき遺産があれば、相続人全員で遺産分割協議をおこなったうえで、分割方法を決めます。
ここでは、遺産分割をおこなう際の流れについて紹介します。
1.遺言書の有無を確認する
相続が発生したら、まずは被相続人が遺言書を遺しているかどうか確認します。
遺言書があれば、その内容どおりに遺産分割を進めることになるため、遺産分割協議をする必要がなくなります。
まずは、被相続人が遺言書を保管していた可能性の高い場所を探してみましょう。
保管場所としてよく利用されるのは、金庫や仏壇、机の引き出しなどです。
自宅を探して見つからなくても、遺言書がないとは限りません。
なぜなら、自筆証書遺言保管制度を利用して、法務局で保管されている可能性や、公正証書遺言を作成して公証役場で保管されている可能性もあるからです。
念のためどちらも確認しておきましょう。
2.相続財産を確認する
次に、どのような遺産がどれくらいあるのかを正確に把握するために、相続財産の調査をおこないます。
プラスの財産だけでなく、マイナスの財産についても調査しましょう。
財産調査は、次の手順でおこないます。
- 遺産にはどのようなものがあるか把握する
- 各財産の評価額を算定する
まず、被相続人の遺した遺産にはどのようなものがあるのかを調べます。
遺品の中から預金通帳や不動産の権利証など、財産に関するものがないか探しましょう。
預金通帳に記載された取引内容を確認することで明らかになることもあります。
また、被相続人宛てに届く郵便物をチェックしてみるのも有効です。
固定資産税の請求書が届けば、不動産を所有していることがわかります。
各種請求書でマイナスの財産が判明することもあります。
被相続人がどのような財産を所有していたのか、できる限りもれのないよう調査しましょう。
どのような財産があるかがわかったら、それぞれの評価額を算定します。
預金残高は通帳や残高証明書を確認すれば容易にわかりますが、不動産や株式などその他の財産がある場合は少々複雑です。
特に不動産は評価方法が複数あり、専門家でなければ評価額の算定が難しい財産といえます。
評価の難しい財産が含まれるなら、弁護士に依頼したほうがよいでしょう。
3.相続人を確定する
遺言書の調査と並行して、相続人の調査と特定も進めましょう。
あえて調査などしなくても、親族であれば相続人が誰かは明らかだと思うかもしれませんが、必ず調査してください。
遺産分割後に親族以外の相続人の存在が発覚すれば、先に遺産分割協議で決まった内容は無効となり、最初から協議をやり直さねばならないからです。
相続人の調査は、被相続人の出生から死亡に至るまでの全ての戸籍謄本類を役所で取得しておこないます。
しかし、慣れない方には難しく感じられることもあるでしょう。
特に、作成された改製原戸籍や除籍謄本は手書きで記されているものもあるため、判読が難しいかもしれません。
自分でおこなうのが難しければ、早めに弁護士に相談しましょう。
弁護士に依頼すれば、戸籍謄本などの取り寄せからおこなってもらえます。
自分でおこなうよりも、速やか、かつ正確に相続人を特定してもらえるでしょう。
4.遺産分割協議をおこなう
遺産の分割方法は、相続人全員で協議をして決めます。
遺産分割協議は必ず相続人全員でおこないましょう。
一人でも欠けていれば、その協議で決まった内容は無効となってしまうからです。
協議の方法は、必ずしも全員が顔を合わせる必要はなく、電話や手紙、メールなどの方法でおこなってもかまいません。
協議内容について全員の合意が得られればよいので、進めやすい方法を選択しましょう。
5.話し合った内容を遺産分割協議書にまとめる
遺産の分割方法について相続人全員の合意を得られれば、協議で決まった内容を遺産分割協議書にまとめます。
遺産分割協議書の書き方には法的な決まりはなく、どのような書き方をしても問題はありません。
ただし、以下の項目は必ず記載するようにしましょう。
- 被相続人の名前、逝去日、最後の住所地、本籍地
- 相続財産の内容
- どの財産を、誰が、どのように相続するのか
また、協議書の末尾には、協議が成立した日付の記載と、相続人全員の署名、押印が必要です。
複数頁にわたる場合は、契印や割印も必要ですので、もれのないよう注意しましょう。
さらに、相続人全員の印鑑証明書を添付する必要もあります。
遺産分割協議書の内容に不足や誤記があれば、相続手続きを進められないこともありますので、正確な記載を心掛けましょう。
6.話し合いがまとまらない場合は遺産分割調停を申し立てる
いつまで経っても相続人同士での話し合いがまとまらず、遺産分割協議が進行しなければ、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てましょう。
遺産分割調停とは、裁判所に仲介してもらって、当事者同士でもう一度話し合いをする手続きです。
裁判官に加えて調停委員という専門家が同席し、双方の希望や言い分を聞いてくれます。
主な申立て費用と申立て書類は、以下のとおりです。
<申立て費用>
- 収入印紙(1,200円分)
- 連絡用郵便切手(値段と内訳は裁判所によるため要確認)
<申立て必要書類>
- 申立書
- 被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍謄本類一式
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票または戸籍附票
- 遺産に関する資料(不動産登記事項証明書や固定資産評価証明書、預金残高証明書など遺産の内容に応じて提出) など
【参考元】裁判所|遺産分割調停の申立書
なお、申立て先は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または相続人全員が合意した家庭裁判所となります。
第三者が間に入るため、当事者も冷静に話ができ、解決に至りやすくなるでしょう。
7.調停が不成立の場合は審判手続きに移行する
調停をおこなっても、当事者同士の話がまとまらなければ、自動的に審判手続きに移行します。
審判手続きとは、当事者の主張やその根拠を聞いたうえで、裁判所が遺産分割の仕方を決める手続きです。
裁判所の審判内容に不服がある場合は、2週間以内に即時抗告をおこなえば、高等裁判所に審理のやり直しを請求できます。
遺産分割手続きが完了したあとの流れ
遺産分割協議や調停手続きなどを経て、遺産の分割方法が決まったら、相続手続きをして各相続人の手に渡るようにします。
また、遺産総額によっては相続税の申告が必要になる場合もありますので、忘れずおこなうようにしましょう。
1.各財産の相続手続きをおこなう
各財産の一般的な手続き方法は、以下のとおりです。
預貯金
金融機関へ下記の書類を提出し、手続きをおこないます。
【必要書類】
- 相続手続依頼書
- 被相続人の戸籍謄本または除籍謄本
- 遺産分割協議書
- 相続人全員分の印鑑証明書
- 相続人全員分の戸籍謄本
「相続手続き依頼書」は金融機関から取得できます。
ただし、金融機関によって名称や書式が異なりますので、被相続人の口座がある金融機関に問い合わせましょう。
不動産
不動産は、特定の相続人が取得するにしても、売却のうえ換価分割するにしても、名義変更をしなければなりません。
名義変更は、以下の必要書類をそろえたうえで、法務局に申請します。
【必要書類】
- 登記申請書
- 被相続人の戸籍謄本または除籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 新しい名義人の住民票
- 遺産分割協議書(相続人全員の印鑑証明書添付)
- 固定資産評価証明書
登記は申請後1〜2週間で完了します。
完了後に法務局から連絡があり、登記の完了を証明する書類を交付してもらえます。
株式
株式の名義変更は、金融機関へ必要書類を提出すれば手続きが可能です。
相続人名義で新たに口座を開設し、被相続人名義の株式を移管したうえで進めることになるでしょう。
株式の相続手続きで主に必要な書類は、以下のとおりです。
【必要書類】
- 相続手続き依頼書(証券会社の所定の書式)
- 特別口座の口座振替申請書(証券会社の所定の書式)
- 遺産分割協議書
- 被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍謄本類一式
- 相続人全員分の戸籍謄本
- 相続人全員分の印鑑証明書
- 株券(現物の株券がある場合)
また、未受領の配当金がある場合は、配当金の受け取り手続きも忘れずにおこないましょう。
未受領の配当金があるかどうかは被相続人宛ての配当金領収証がないか探してみるか、証券会社に問い合わせてみればわかります。
自動車
自動車の名義変更は、運輸支局でおこないます。
必要書類は下記のとおりです。
【必要書類】
- 自動車検査証
- 被相続人の戸籍謄本または除籍謄本
- 相続人全員分の戸籍謄本
- 自動車を相続する方の印鑑証明書
- 自動車を相続する方の実印
- 遺産分割協議書車庫証明書(自動車の置き場所も変更する場合)
手続きにはこれらのほか、申請書・手数料納付書・自動車税、自動車取得税申告書の提出が必要です。
これらの書類は運輸支局で取得し記入します。
手数料納付書には名義変更手数料として500円分の印紙を貼付し、提出します。
なお、印紙は、ほとんどの場合、運輸支局内で購入できるので、用意しておかなくても問題ありません。
2.相続税の申告手続きをおこなう
遺産総額が基礎控除額を超える場合は、相続税を申告しなくてはいけません。
下記の計算式で基礎控除額を算出し、確認しましょう。
相続税の基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数) |
相続税の申告は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヵ月以内におこなう必要があります。
必要な場合は、申告および納付手続きを忘れないようにしましょう。
遺産分割の手続きでよくあるトラブルとその対処法
遺産分割の手続きでは、相続財産の内容や遺産分割の方法をめぐって、トラブルが発生することがあります。
ここでは、遺産分割の手続きでよくあるトラブルと具体的な対処法について紹介します。
相続財産にマイナスの財産が多くある
遺産分割を始める前に、被相続人が残した財産を全て把握するために、財産調査をおこないます。
その結果、負債がプラスの財産を上回るケースも少なくありません。
このようにマイナスの負債が多く、相続を避けたい場合には、以下のふたつの方法を検討します。
- 相続放棄
- 限定承認
相続放棄とは、相続する権利を放棄し、一切の財産を引き継がない方法です。
この方法は、家庭裁判所に申述の申立てをおこなうことで実現できます。
ただし、相続の開始を知ってから3ヵ月以内に申立てをする必要があります。
一方で、限定承認はプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を清算する方法です。
特に、どうしても相続したいプラスの財産がある場合に有効な手段といえます。
しかし、相続人全員で申立てをおこなわなければならないうえ、申し立てたあとの手続きが煩雑になることもあります。
状況に合わせていずれかの方法を選択し、マイナスの財産に対処しましょう。
遺産分割の終了後に遺言書が出てくる
遺産分割がすでに成立していたとしても、あとから遺言書が出てくることがあります。
この場合、遺言書が法的に有効であれば、原則として遺言の内容が優先されます。
そのため、遺言書に沿った内容で遺産を再分割しなければいけません。
ただし、すでに成立した遺産分割の内容に相続人全員が合意している場合、遺産分割の内容が遺言に優先されることがあります。
遺言書が見つかった場合には、その有効性を確認したうえで、相続人全員でもう一度協議をおこないましょう。
また、全員の合意を得られないのであれば、家庭裁判所での調停を申し立てるか、弁護士に相談することで対処しましょう。
遺産分割をやり直す必要がある
新たな遺産が見つかったり、遺産分割の協議において詐欺や錯誤などがあったりした場合は、遺産分割のやり直しが必要になります。
このような場合、遺産分割をやり直すことは法律上可能です。
なぜなら、遺産分割に時効はないからです。
このため、何年経過してからでも、遺産分割をやり直すことができます。
ただし、すでに成立している遺産分割は法的に有効であるため、やり直すためには相続人全員の同意が必要です。
同意が得られない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることで対処しましょう。
なお、詐欺や錯誤があった場合には、遺産分割の協議自体を無効にすることが可能です。
この場合も同様に、家庭裁判所で調停を申し立てることで対処します。
不動産の遺産分割で代償金が用意できない
不動産を代償分割する場合、代償金の支払いが問題になることがあります。
なぜなら、代償金は現金で支払うことが原則となっているからです。
不動産はその価値が高額であるほど、その代償金も多額になりがちです。
このため、現金が準備できない場合、代償分割をおこなうこと自体が難しくなります。
このような場合には、以下の方法で対処するのが有効です。
- 現物分割や換価分割を検討する
- 代償金の分割払いに合意する
- 不動産投資ローンを利用する
代償金の支払いが難しい場合には、ほかの分割方法を検討します。
たとえば、現物分割や換価分割で不動産を分割します。
また、遺産分割協議のなかでほかの相続人と合意できるのであれば、代償金を分割払いにする方法も考えられます。
さらに、取得した不動産を担保に入れて、投資ローンを利用するという選択肢もあります。
ただし、この場合にはローン金利や返済計画に注意する必要があるでしょう。
遺産分割の手続きに関するQ&A
ほとんどの方にとって遺産分割は慣れないものです。
手続きを進めていくうちに疑問が出てくることもあるでしょう。
ここでは、よくある質問とその回答を紹介します。
遺産分割の手続きに期限はありますか?
遺産分割の手続きに期限はありません。
しかし、相続手続きの中には期限が定められたものもあるため、あまり長く放っておくのはおすすめしません。
たとえば、限定承認や相続放棄を申述する申立て期限は、相続の開始を知ったときから3ヵ月以内、相続税の申告期限は被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヵ月以内と定められています。
いずれの手続きも必要がなければ特に問題はありませんが、必要にもかかわらず間に合わなかった場合は大変です。
負債を相続することになったり、延滞税や加算税を支払わなければならなくなったりするなど、思わぬ損害を被る可能性もあるでしょう。
遺産分割をはじめとした相続手続きは相続発生後、できるだけ速やかに進めるのが賢明です。
遺産分割協議書なしで相続できますか?
次のようなケースでは必要ありません。
- 遺言があった場合
- 遺産分割調停や審判など裁判所の手続きを利用した場合
- 法定相続分どおりに遺産分割をおこなう場合
ただし、法定相続分どおりに遺産を分割する場合でも、できれば遺産分割協議書を作成しておくほうがよいでしょう。
なぜなら、相続手続きをスムーズに進められるケースが多いためです。
特に金融機関の相続手続きでは、遺産分割協議書がなければ書類に相続人全員の署名、捺印を求められます。
遺産分割協議書があれば、代表相続人の署名・捺印だけで済み、手間が省けます。
遺産分割において兄弟間の優劣は存在しますか?
遺産分割について兄弟間の優劣は、存在しません。
なぜなら、遺産分割は原則として平等におこなわれるべきものと考えられているからです。
「長男だからこの家は自分が相続すべきだ」「自分が兄弟姉妹の中でも一番年上なのだから、相続分は多くなるはずだ」などといった理屈は、法的根拠がないため、通用しません。
元配偶者の子どもにも分割しないといけませんか?
分割しないといけません。
元配偶者の子どもは被相続人の子どもでもあるため、相続順位は第1位の相続人に当たります。
したがって、現在の配偶者の子どもと同じ割合で、遺産分割をおこなわなくてはなりません。
また、愛人の子どもであっても、被相続人が認知していれば法定相続人です。
ほかの子どもたちと同じ割合で、相続することになるでしょう。
離婚した元配偶者に相続権はありますか?
内縁関係にあった方には、原則として相続権はありません。
ただし、遺言書に内縁者へ相続させる旨の記載があれば、相続できる可能性があります。
遺言に相続人ではない他人に全財産を贈与するとあったのですが…
遺言があれば、遺産分割は基本的に遺言書の内容にしたがいます。
遺産とは故人が所有していた財産であり、その行方は持ち主である故人の遺志を尊重すべきと考えられているためです。
ただし、相続人全員と、遺言書で贈与先として指定されていた受遺者が同意すれば、その遺言内容を無効にできます。
また、相続人以外の方に遺贈された場合でも、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人であれば、遺留分の支払いを請求できます。
借金も分割しないといけませんか?
遺産に借金などマイナスの財産が含まれていれば、その分も法定相続人が分割して相続するのが基本です。
どのように分割するのか、遺産分割協議で話し合いましょう。
相続放棄や限定承認など、負債を相続せずにすむ方法もありますので、あまりに借金が多い場合は、利用を検討するとよいでしょう。
遺産が3,000万円あった場合の相続税はいくらですか?
遺産が3,000万円あった場合、相続税は0円です。
なぜなら、遺産3,000万円は相続税の基礎控除の範囲内に収まるからです。
相続税の基礎控除は、以下の計算式によって算出されます。
相続税の基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数) |
たとえば、法定相続人がひとりだけの場合、基礎控除額は次のようになります。
3,000万円 + 600万円 × 1人 = 3,600万円 |
遺産が3,000万円であれば、この基礎控除内に収まるため、相続税は課税されず、申告義務はないといえます。
ただし、配偶者の税額が軽減される特例や、宅地を相続する際の特例を適用する場合には、相続税が発生しなくても申告が必要であるため、注意しましょう。
まとめ
遺産分割の手続きは、きちんと準備をおこなったうえで進めることが大切です。
まずは遺言書の有無を確認し、相続人調査や財産調査を進めましょう。
遺言書があれば遺産分割協議や手続きは、原則として必要ありません。
遺言書の内容どおりに相続します。
遺言書がなければ、相続方法を決定し、遺産分割をおこないましょう。
遺産分割協議を相続人全員でおこない、話がまとまらない場合は裁判所に調停を申し立てます。
遺産分割の内容が決まったら、そのとおりに相続手続きを進めましょう。
遺産分割をはじめとした相続手続きは、相続人自身でもおこなえますが、わからないことや行き詰まることもあります。
そのような場合は、速やかに弁護士にご相談ください。
相続手続きの中には、期限のある手続きもありますので、あまり長く放っておくのは得策とはいえません。
初回無料相談をおこなっている弁護士もいますので、ぜひ早めに相談しましょう。

