労働審判
過労死ラインを超えるとどうなる?健康被害のリスクと過労死認定の見直し
2023.10.30
労働審判は、会社と従業員の間の労使紛争を解決するための手続きです。
訴訟よりも迅速な解決が期待できるため、和解交渉がまとまらない場合には、労働審判の申立てが有力な選択肢となります。
ただし、労働審判は短期間で審理が行われるため、訴訟よりもいっそう臨機応変な対応が求められます。
労働者の方が労働審判を申し立てる際には、弁護士に相談してアドバイスを求めましょう。
今回は、労働審判の申立てに関する弁護士のサポート内容や、弁護士の選び方・弁護士費用などを解説します。
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労働審判は、労使紛争を迅速に解決することを目的とした法的手続きです。
参考:労働審判手続|裁判所
労働審判手続きでは、裁判官1名と労働審判員2名で構成される「労働審判委員会」が労使双方の主張を公平に聴き取り、調停または労働審判による紛争解決を図ります。
労働審判員は民間の有識者から選任されるため、労働実務の実態を踏まえた合理的な紛争解決が期待できます。
また、労働審判は非公開で行われるため、労働者のプライバシーが守られるメリットもあります。
さらに、審理が原則3回以内の期日で終了するため、迅速な紛争解決を図れる点も大きなメリットです。
労働審判における審理の対象となるのは、労働関係に関する事項です(労働審判法1条)。
具体的には、以下のような事項が労働審判の対象となります。
など
労働審判手続きは、以下の流れで進行します。
地方裁判所に対して、主張内容を記載した申立書や、主張を裏付ける証拠書類などを提出します。
申立先は、労働者が申し立てる場合は会社の本店等を管轄する地方裁判所、会社が申し立てる場合は労働者の住所地等を管轄する地方裁判所です(労働審判法2条)。
労働審判の申立てを受けた相手方は、裁判所が指定する期限までに、主張内容を記載した答弁書と主張を裏付ける証拠書類を提出します。
裁判所で労働審判期日が開催され、申立人の主張に関する審理が行われます。
労働審判委員会は、申立てによりまたは職権で証拠調べを行うほか、職権で事実の調査をすることも可能です(労働審判法17条)。
労働審判期日は非公開で行われますが、労働審判委員会の判断により、相当と認める者の傍聴が許可される場合があります(労働審判法16条)。
労働審判期日は原則として3回以内で終結し(労働審判法25条2項)、調停または労働審判による解決へと移行します。
労働審判を行う前に、労働審判委員会が調停案を提示します。調停案に労使双方が同意すれば、調停が成立して労働審判手続きが終了します。
調停内容が記載された調停調書の記載は、裁判上の和解(および確定判決)と同一の効力を有します(労働審判法29条2項、民事調停法16条)。
したがって、調停調書に基づく義務は履行されなければならず、相手方が義務を怠った場合は強制執行の申立てが可能です(民事執行法22条7号)。
調停が成立しない場合は、労働審判委員会が労働審判を行います(労働審判法20条1項)。
労働審判には、金銭の支払いなど財産上の給付に加えて、労使紛争を解決するために相当と認める事項を定めることができます(労働審判法20条2項)。
労働審判の内容は、審判書によって労使双方に送達されるか、またはすべての当事者が出頭する労働審判期日において口頭で告知されます(労働審判法20条3項、4項、6項)
労働審判に不服がある当事者は、審判書の送達日または労働審判の告知日から2週間以内に、同じ裁判所に対して異議を申し立てることができます(労働審判法21条1項)。
適法な異議申立てがあった場合、労働審判は効力を失い、労働審判の申立ての時に訴訟の提起があったものとみなされます(労働審判法21条3項、22条1項)。
期間内において適法な異議申立てがなかった場合、労働審判が確定します。
確定した労働審判は裁判上の和解(および確定判決)と同一の効力を有するため(労働審判法21条4項)、当事者はその内容に従って義務を履行しなければなりません。
相手方が義務を怠った場合は、強制執行を申し立てることができます(民事執行法22条7号)。
労働審判の審理は原則として3回以内で終結するため、最初の期日までに万全の準備を整えることが非常に重要です。
裁判官と労働審判員に対して、ご自身の主張を説得的に伝えられるように準備を進めましょう。
弁護士に相談すれば、効果的な主張内容や証拠の集め方などについてアドバイスを受けられます。
また、労働審判に対して異議が申し立てられた場合には、自動的に訴訟へ移行します。
そのため、労働審判を申し立てる段階から、訴訟へ移行することも見据えて対応することが求められます。
具体的には、請求・主張の内容と手持ちの証拠を照らし合わせて、訴訟で必要となる厳密な立証ができるかどうかを十分検討しなければなりません。
専門的な検討と判断が必要となるため、弁護士への相談をおすすめします。
労働審判に関して、弁護士は主に以下のサポートを行っています。
専門的な対応が求められる労働審判の申立てに当たっては、弁護士のサポートを受けるのが安心です。
労働審判を申し立てる際には、主張内容を記載した申立書に加えて、主張を裏付ける証拠書類を提出する必要があります。
申立書に記載する主張は、法律上の要件を踏まえて組み立てる必要があるほか、裏付けとなる効果的な証拠を十分に揃えるのはたいへんです。
弁護士には、労働審判の申立書・証拠資料などの作成・準備を依頼できます。
労働者にとっては申立ての準備が省けるほか、法的な観点から適切な内容で申立てを行うことができる点が大きなメリットです。
弁護士を代理人として労働審判を申し立てた場合、裁判所で行われる労働審判期日の対応も弁護士に一任できます。
労働者本人も同席できますが、同席せずに弁護士だけを出席させることも可能です。
代理人弁護士に労働審判期日の対応を一任すれば、手続きについて戸惑うことがなくなります。
また、審理の状況を見ながら臨機応変に対応してもらえるため、結果的に有利な解決を得られる可能性が高まります。
労働審判の中では、労働審判委員会から調停が提案されることもあります。労使双方が調停に合意すれば、合意内容に従って紛争解決が図られます。
調停提案を受け入れるかどうかは、早期・確実に紛争を解決できるメリットを踏まえつつ、「労働審判や訴訟の判決ではどのような結論が見込まれるか」を踏まえて判断すべきです。
弁護士に相談すれば、労働審判や判決の見通しを踏まえた上で、調停提案につきどのように対応すべきかのアドバイスを受けられます。
労働審判に対して異議を申し立てた場合、または会社から異議が申し立てられた場合には、訴訟手続きに移行します。
訴訟では、労働者が行う請求の要件事実につき、証拠に基づく厳密な立証が求められます。
弁護士に労働審判を依頼した場合、訴訟の対応についても継続して依頼可能です。専門性の高い訴訟手続きにも、弁護士に依頼すればスムーズに対応してもらえます。
労働審判対応を弁護士に依頼すれば、労働者は以下のメリットを享受できます。
労働審判は短期間で審理が行われるため、最初の期日までの準備が非常に重要です。
労働者が行う請求の内容・法律上の要件・手持ちの証拠などを踏まえて、もっとも効果的な形で主張を伝えられるように準備しなければなりません。
労働問題に関する経験が豊富な弁護士に依頼すれば、労働審判の準備を迅速かつ適切に行ってもらえます。
充実した準備を整えることで、労働審判において有利な解決を得られる可能性が高まります。
労働審判の手続きや、労使紛争がどのような形で解決されるかについては、不慣れでよくわからず不安だという方が多いでしょう。
このような依頼者に対しては、手続きの流れや解決の見通しをわかりやすく説明し、不安を解消することが弁護士の役割です。
労働者本人が自分で調べながら対応するよりも、専門知識を有する弁護士に依頼して対応する方が、労働審判手続きに対する戸惑いがなくなります。
疑問点や心配事が生じれば、いつでも弁護士に相談できる点も大きなメリットです。
弁護士には労働審判だけでなく、先行する会社との和解交渉や、労働審判に異議が申し立てられた場合の訴訟への対応についても依頼できます。
和解交渉・労働審判・訴訟をワンストップで依頼できることは、労働者にとって大きな安心材料です。
信頼できる弁護士に依頼すれば、手続きが切り替わってもスムーズに対応してもらえます。
労働審判対応を依頼する弁護士を選ぶ際には、以下のポイントに着目するとよいでしょう。
会社とのトラブルについて労働審判を申し立てる際には、労働問題に関する経験が豊富な弁護士に依頼するのが安心です。
会社側の論理も、裁判官や労働審判員が注目するポイントも熟知しているので、労働審判の進行を見ながら適切に対応してもらえるでしょう。
労働問題に関する経験は、公式ホームページの充実度やポータルサイトの事務所紹介などから判断できる部分があります。
また、実際に弁護士の無料相談を利用して、悩んでいるポイントを質問した際に得られた回答も参考になります。
弁護士の役割には、法律トラブルを解決に導くことに加えて、依頼者の精神的不安を解消することもあります。
そのためには、弁護士は依頼者の良き相談役でなければなりません。
依頼者に対してどのような姿勢で接するかは、弁護士によってさまざまです。
依頼者の悩みを誠実に聴き、寄り添いながらわかりやすく説明や提案をしてくれる弁護士に依頼しましょう。
会社とのトラブルに巻き込まれてしまった労働者の方は、いつまでトラブルが続くのか、どのような形で解決に向かうのかなどを不安に感じることが多いです。
その場合は、弁護士から解決までの見通しをわかりやすく説明してもらうことで、不安がある程度解消されるでしょう。
弁護士にもさまざまなタイプがいて、依頼者に対してわかりやすい説明を尽くそうとするタイプもいれば、ほとんど説明せず自分の判断で対応を進めてしまうタイプもいます。
納得できる形で労使紛争を解決する観点からは、対応の見通しをついてわかりやすく説明してくれる弁護士に依頼するのがおすすめです。
労働審判について依頼する際の弁護士費用は、依頼先の弁護士によって異なります。同じ内容の対応を依頼する場合でも、弁護士によって費用が大きく異なることがあるので注意が必要です。
次の項目で紹介する弁護士費用の目安を参考にしつつ、複数の弁護士から見積もりを取得して、合理的な費用で依頼できる弁護士を選ぶのがよいでしょう。
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労働審判対応について、弁護士に正式に依頼する際には弁護士費用が発生します。弁護士費用の主な内訳は以下のとおりです。
各弁護士費用について、「日本弁護士連合会弁護士報酬基準」(現在は廃止)を参考にした目安額を紹介します(いずれも税込)。
実際の弁護士費用は、依頼先の弁護士へ個別にご確認ください。
着手金は、弁護士へ正式に依頼する際に支払います。原則として一括払いで、事件の結果にかかわらず返金されません。
ただし、経済的な事情によって一括払いが困難な場合は、弁護士に相談すれば分割払いが認められることもあります。
なお着手金については、経済的利益は請求額に応じて計算するのが一般的です。
<労働審判対応に関する着手金額の目安>
経済的利益の額が300万円以下の場合 | 経済的利益の額の8.8% |
300万円を超え3,000万円以下の場合 | 経済的利益の額の5.5%+9万9,000円 |
3,000万円を超え3億円以下の場合 | 経済的利益の額の3.3%+75万円9,000円 |
3億円を超える場合 | 経済的利益の額の2.2%+405万9,000円 |
※着手金の最低額は11万円
報酬金は、弁護士による事件処理の結果として、依頼者が得た経済的利益の額に応じて発生します。
報酬金の支払時期は、案件終了時(交渉・労働審判・訴訟等の結果が確定した時)です。
報酬金については、経済的利益は獲得額に応じて計算するのが一般的です。
<労働審判対応に関する報酬金額の目安>
経済的利益の額が300万円以下の場合 | 経済的利益の額の17.6% |
300万円を超え3,000万円以下の場合 | 経済的利益の額の11%+19万8,000円 |
3,000万円を超え3億円以下の場合 | 経済的利益の額の6.6%+151万円8,000円 |
3億円を超える場合 | 経済的利益の額の4.4%+811万8,000円 |
日当は、案件対応に関して弁護士が出張した際に発生します。労働審判対応に関して日当が発生するのは、労働審判期日へ弁護士が出席する場合などです。
<労働審判対応に関する日当額の目安>
半日(往復2時間超4時間以内) | 3万3,000円以上5万5,000円以下 |
一日(往復4時間超) | 5万5,000円以上11万円以下 |
労働審判対応に関して弁護士が費用を支出した場合は、実費相当額が依頼者負担となります。
<労働審判対応に関する実費の例>
など
会社とのトラブルについて労働審判を申し立てる際には、弁護士に依頼するのが安心です。
しかし、労働審判を依頼できる弁護士に心当たりがなく、どのように探せばよいかわからない方もいらっしゃるかと思います。
その場合は、「労働問題弁護士ナビ」を活用するのが便利です。労働問題弁護士ナビには、労働問題を得意とする弁護士が多数登録しています。
相談内容や地域に応じて弁護士を検索できるため、ご自身のニーズに合った弁護士を簡単に探せます。
無料相談を実施している弁護士も多数掲載されており、電話やメールを通じて弁護士に直接相談可能です。自宅に居ながらにして複数の弁護士を比較できるので、信頼できる弁護士に巡り合える可能性が高まります。
会社とのトラブルに悩んでいて、労働審判の申立てを検討している方は、「労働問題弁護士ナビ」の利用をご検討ください。
労働審判は、労使紛争を迅速かつ柔軟に解決することを目的とした手続きです。裁判官1名と労働審判員2名で構成される労働審判委員会が、調停または労働審判によって紛争解決を図ります。
労働者が労働審判を有利に進めるためには、会社に対する請求を基礎づける事実を、証拠に基づいて合理的かつ説得的に主張することが求められます。
そのためには、弁護士に依頼することがおすすめです。弁護士に依頼すれば、労働審判の手続きや見通しなどについてアドバイスを受けられます。
法律上の要件や手持ちの証拠を踏まえた上で、効果的に主張を展開することができます。
さらに先行する会社との和解交渉や、労働審判に異議が申し立てられた場合の訴訟への対応も含めて、ワンストップで弁護士に依頼することが可能です。
弁護士の得意分野・能力・性格・費用などは千差万別なので、複数の弁護士を比較して依頼先を選ぶのがよいでしょう。
「労働問題弁護士ナビ」を活用すれば、お住まいの近くで無料相談ができる弁護士を簡単に探すことができます。
会社とのトラブルに巻き込まれ、労働審判の申立てを検討している方は、お早めに弁護士へご相談ください。
労働審判について弁護士に相談する 電話相談可・初回面談無料・完全成功報酬 | |
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