ハラスメント
パワハラの相談先と相談の流れを解説
2024.09.05
会社で上司からセクハラを受けていたり、会社が問題視しないためにセクハラが横行していたりして、毎日つらい思いをしている方もいるでしょう。そのような場合は、慰謝料請求に踏み切るのも一つの方法です。
セクハラの慰謝料は、加害者だけでなく会社にも請求でき、その金額は、一般的な事例では数十万~100万円程度でしょう。ただし、被害者の受けた精神的苦痛の程度や、加害者の悪質性によってより高額になるケースもあります。
セクハラによる慰謝料の相場のほか、請求するにあたり知っておきたい基礎知識や、実際に請求する方法などについて解説します。
セクハラの場合、慰謝料の請求相手は、実際に性的な嫌がらせをした加害者本人だけではありません。使用者責任を問うことで、会社にも請求できます。
使用者責任とは、民法第715条で定められている不法行為で、会社が雇用している人が第三者に対して損害を与えた場合、会社が被害者への損害賠償責任を負うというものです。
加害者と会社は被害者の受けた損害に対して連帯して賠償する義務を負うため、加害者に支払能力がなくとも、会社は全額分の慰謝料を支払うべきこととなります。
実際にセクハラの慰謝料はどれくらい支払われるものなのでしょうか。また、より高額の慰謝料が支払われるにはどのようなケースがあるのでしょうか。
ここでは、セクハラを原因とする慰謝料額の目安と、金額の高低を決定する要素について紹介します。
被害者がセクハラによる精神的な苦痛を受けながら勤務を続けている場合、数十万~100万円程度の慰謝料を請求できるでしょう。
しかし、被害者がセクハラに遭ったために休職や退職に追い込まれたり、加害者の行為が強制わいせつ罪や強制性交罪などの犯罪に該当する場合は、数百万円以上となる可能性もあります。
実際にセクハラの慰謝料額を算定する際は、以下に挙げる要素を加味します。
セクハラ被害に遭った回数が多かったり、期間が長かったりすれば、被害者の受けた精神的苦痛はその分大きくなるとして慰謝料金額は増額となる傾向があります。
慰謝料額の高低はその被害内容にもよります。性的な発言をされたケースより、胸や臀部を触られた、肩を抱かれたなど、身体的な接触があるケースの方が、悪質性は高いとして高額の請求が認められるでしょう。
加害者が社内で影響力の大きい立場にあるほど、慰謝料は高額になる可能性があります。
特に、被害者がセクハラ行為に抵抗したり、拒否したりしたことを理由に解雇や降格、減給など不当な扱いをされた場合は、悪質性が高いと判断され、慰謝料は増額となるでしょう。
セクハラによる被害の大きさも慰謝料金額に影響します。セクハラに遭ったために休職や退職に追い込まれたり、うつ病やPTSDを発症したりした場合は、その被害は大きいとして、慰謝料は高額となります。
セクハラとはどのような行為をいうのか、何となく知ってはいても、正確に知っている方は案外少ないでしょう。
ここではセクハラの定義のほか、セクハラの種類についても解説します。慰謝料を正しく請求するためにも知っておきましょう。
セクハラとは「セクシュアルハラスメント」の略であり、ざっくりいえば、性的な言動により他者を不快にさせることをいいます。ここでいう性的な言動とは、以下のような内容です。
対象となるのは、男性から女性に対しての言動に限りません。女性から男性、同性間の場合も含まれます。さらに、場所や時間の範囲は勤務時間内や職場内に限りません。飲み会など勤務時間外、職場以外の場での言動も対象となり得ます。
セクハラにはその内容によって「対価型」と「環境型」の2種類があります。
セクハラを受けた被害者が拒否や抵抗をしたために、解雇や降格、減給などの不利益を被る場合のことです。実際に不利益を被らなくても、拒否や抵抗をすれば、何らかの影響があるとほのめかされ、受け容れざるをえなかった場合も該当します。
【対価型セクハラの具体例】
性的な言動によって労働者が不快感を覚える環境となり、労働者の能力の発揮に悪影響を及ぼしている状況をいいます。特定の人物による不快な言動というより、職場の雰囲気や環境が問題となることが多いため、慰謝料の請求が難しかったり、非常に低額な請求しかできなかったりするケースもあるでしょう。
また、セクハラに相当するかどうかは個人の感じ方によるところが大きいため、厚生労働省は、本人の主観だけでなく、平均的な感じ方を基準として客観的に判断することを適当としています。
【環境型セクハラの具体例】
セクハラを理由に慰謝料を請求したい場合は、以下のような流れで進めます。
慰謝料を支払ってもらうには、事実を立証できる証拠が必要です。訴訟になれば、相手方がセクハラの存在を争う限り、請求の原因となるセクハラの事実を証明しなければ請求は認められません。
たとえ裁判にならなくても証拠がなければ加害者が認めず支払ってもらえない可能性もあります。慰謝料を支払ってもらうためにも、まずは証拠を集めましょう。具体的には、以下のようなものが証拠として有効です。
もし証拠となるものが手元になかったり、入手が難しかったりするなら、弁護士に相談しましょう。
上記以外で証拠となるものを教えてもらえる場合もありますし、弁護士の権利を活用して新たに証拠を入手してもらえる場合もあります。
証拠が準備できたら、いよいよ加害者に対し慰謝料を請求します。内容証明郵便を利用して、請求する方法が一般的でしょう。
内容証明郵便とは、郵便局がいつ、誰が誰あてにどのような内容の郵便を送ったのかを証明してくれるサービスです。
内容証明を利用すれば、裁判に発展した際に証拠として使えますし、少々物々しい雰囲気があるため、こちらが本気で請求していることが伝わり、相手が応じる可能性が高いでしょう。
ただし、内容証明郵便には厳格なルールがあります。利用する際は、下記のページを参照しましょう。
参考:郵便局|内容証明
内容証明郵便を受け取った相手方から何らかの反応があれば、交渉を開始します。しかし、被害者の請求額に何の異論もなく、素直に応じるケースはまれで、多くの場合、減額を求めたり支払を拒んだりするでしょう。顧問弁護士が代理人として対応するかもしれません。
話し合いが上手く進まなかったり、相手が弁護士であるために太刀打ちできそうになかったりする場合は弁護士に依頼する方がよいでしょう。
弁護士であれば、準備していた証拠を活用しながら、正当な金額の慰謝料を支払ってもらえるよう交渉してくれます。
交渉で解決しなければ、裁判所を使って解決を図ります。少額訴訟や労働審判など、通常の訴訟よりも簡易的な手続きを利用するのが一般的です。
少額訴訟とは、訴額が60万円以下の事件が対象で、原則として1回の期日で済む手続きです。相手がセクハラをしたことを認めていて、事実に争いがない場合は利用するとよいでしょう。
手続自体が比較的簡単なため、自分で手続をすることもできます。
労働審判は、事業主と労働者とのトラブルについてのみ利用できる手続です。審判期日は原則として3回以内で終結するため、早期解決を図れます。
ただし、訴えられるのは会社などの雇用主だけであるため、雇用主以外の加害者個人については別に手続が必要です。
少額訴訟や労働審判では、和解にならない限り、裁判所が必ず判決か審判を下します。しかし、その内容に不服があれば異議申立てをして通常訴訟に移行することになるでしょう。
通常の訴訟手続は自分でおこなってもかまいませんが、提出する書類が多いうえ、複雑であるため弁護士に依頼することをおすすめします。
セクハラ被害に遭い、加害者に慰謝料を支払ってもらいたいなら、弁護士に相談や依頼をするのがよいでしょう。弁護士に相談・依頼すれば以下のようなメリットが期待できるからです。
加害者に慰謝料を支払ってもらうためには、セクハラの事実を立証できる証拠を準備しておくことが非常に大切です。
弁護士に相談すれば、どのようなものを集めればよいか、どうやって入手すればよいかなどのアドバイスをもらえます。
弁護士のアドバイスに従えば、効率的に有効な証拠を集められるはずです。加害者に言い逃れさせず、適切な金額の慰謝料を支払ってもらえるでしょう。
セクハラの慰謝料金額には、法律上の決まりはありません。当事者が自由に決められますが、そのために話がまとまらないこともあるでしょう。
弁護士に依頼すれば、過去の裁判例を参考に、確固たる根拠をもって金額を主張してもらえます。不当に減額させられることもないでしょう。
セクハラ被害を受けた方は、ただでさえ精神的苦痛を感じているものです。不安や恐怖のために、加害者と対峙するのがつらく、上手く交渉できないこともあるでしょう。また、会社が顧問弁護士に対応を依頼すれば、上手く言いくるめられ、慰謝料を減額させられる可能性もあります。
弁護士に依頼すれば、加害者や会社との交渉を全て任せられます。精神的な負担は大幅に軽減しますし、慰謝料を不当に減額させられたり、不当な条件で交渉を成立させられたりすることもないでしょう。
弁護士に依頼したいけれど、費用が気になるという方もいるでしょう。セクハラの慰謝料請求を弁護士に依頼する場合の費用の相場は以下のとおりです。
相談料は初回無料のところもあります。特に労働問題弁護士ナビでは、初回30分無料で相談を受けている事務所が多く掲載されていますので、セクハラによる慰謝料請求をお考えの方はぜひご利用ください。
慰謝料請求という法的措置を取るのは、いわば最終手段です。同じ職場で勤め続けたいなら、角が立たないようにするためにも、慰謝料を請求する前に、相手にセクハラをやめさせるのが望ましいところでしょう。セクハラをやめさせるための方法をご紹介します。
セクハラの加害者の中には、被害者が嫌がっていると思っていない人もいます。そのような人には明確な拒絶の意思を示すのが効果的な場合もあるでしょう。
少々勇気が必要かもしれませんが、思い切って伝えればセクハラが止むことも少なくありません。不安な場合は同僚など、社内の方に相談し、味方を作っておくとよいでしょう。
自分を応援してくれる方がいれば、勇気をふり絞りやすくなります。
被害者が加害者にセクハラをやめるようにいっても受け容れてくれない場合や、どうしても自分で伝えるのが難しい場合は、上司や人事部などの会社の相談窓口に伝えるとよいでしょう。
自分より上の立場の方や会社に注意されれば、加害者が態度を改める可能性があります。
ただし、証拠がなければ対処してもらえないケースもありますので、先に証拠を集めておくことが大切です。
また、社外にも労働問題に関する無料相談窓口は多く存在します。
社内の相談窓口できちんと対応してもらえない場合は、社外の相談窓口の利用も検討しましょう。
セクハラを理由に慰謝料請求をする場合、慰謝料額は数十万円から100万円程度であるケースが多いでしょう。ただし、その悪質性や被害者の状況によっては、より高額になる可能性もあります。自身のケースではいくらくらい請求できるのかを、より具体的に知りたい場合は、弁護士に相談してみるとよいでしょう。
また、慰謝料の請求には、セクハラの事実を立証する証拠が必要です。弁護士に相談しながら証拠を集めるのがよいでしょう。
加害者から確実に慰謝料の支払いを受けるためにも、セクハラによる慰謝料請求は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。