上司からパワハラ発言を浴びせられた!損害賠償請求できる?

上司からパワハラ発言を浴びせられた!損害賠償請求できる?

パワハラ防止法が2022年4月1日から全企業に適用されていますが、「上司からパワハラ発言を浴びせられた」というニュースは後をたちません。

社内に相談窓口を設置することが義務づけられましたが、中小企業では守られていないケースもあるため、状況の改善を求めたいときや損害賠償請求したいときは弁護士に相談することをおすすめします。

本記事では、パワハラ発言の種類や、パワハラ発言を浴びせられた時の対処法などをお伝えします。

職場でのパワハラに悩んでいるあなたへ

職場でパワハラを受けているけど、どうすればいいかわからず困っていませんか?

 

結論からいうと、パワハラは社内の相談窓口や労働局、弁護士に相談することが可能です。

もし、会社に対応を求めたり、相手方を法的に責任追及したい場合、弁護士に相談・依頼するのをおすすめします

 

弁護士に相談すると以下のようなメリットを得ることができます。

  • 法的観点から対処法をアドバイスしてもらえる
  • 依頼すれば、代理人として相手と交渉してもらえる
  • 依頼すれば、会社から裁判を起こされても代わりに対応してもらえる
  • 依頼すれば、裁判に関わる手続きを一任できる

ベンナビ労働問題では、職場でのパワハラ問題の解決を得意とする弁護士を多数掲載しています。
無料相談・電話相談など、さまざまな条件であなたのお近くの弁護士を探せるので、ぜひ利用してみてください。

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この記事を監修した弁護士
林 孝匡弁護士(PLeX法律事務所)
情報発信が専門の弁護士。専門は労働法。働く方に向けて【分かりやすく、時におもしろく】知恵をお届けしています。多くのWebメディアで情報をお届け中。

パワハラ発言とは

まずは裁判でパワハラ発言であると認められた具体例を紹介します。

  • それで〇〇が務まると思ってるのか
  • 明日から来なくていい
  • やる気がないなら会社を辞めろ
  • 俺の言うことを聞けないなら懲戒に値する
  • サービス残業の強要
  • まだ辞めないのか
  • 死ね(消えろ・存在が目障り)
  • うそつき
  • 給料ドロボー
  • 役立たず
  • 全てひらがなで業務指示して「できるかな?」
  • 腐ったミカン
  • お前の嫁、よくお前みたいなヤツと結婚したよな
  • 君は気持ちワルい男が好きなのか?
  • 営業成績が悪いって、みんな笑ってるぞ
  • ぶん殴りたい
  • 徹底的に追いつめるぞ など

パワハラ防止法でどのように定められているか

パワハラの3要件

​​パワハラ防止法は、以下の3つの要件を全て満たすものをパワハラと定義づけました。

  • 優越的な関係を背景とした言動
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えている
  • 労働者の就業環境が害されている

【参考】
e-Gov法令検索|第三十条の二(雇用管理上の措置等)
厚生労働省指針2(1)

先ほどみたパワハラ発言は、上記の3要件を全て満たしています。

裁判で特に争われる要件は「業務上必要かつ相当な範囲を超えているかどうか」です。

会社や上司は裁判になれば「この発言は必要かつ相当な業務指示・指導だった」と主張してくるでしょう。

パワハラの6つの類型

厚生労働省が公表した指針によれば、パワハラは大きく6つに分けられるとされています。

  1. 身体的な攻撃
  2. 精神的な攻撃
  3. 人間関係からの切り離し
  4. 過大な要求
  5. 過小な要求
  6. 個の侵害

パワハラ発言は主に「精神的な攻撃」に分類されます。

パワハラ発言を受けている方は、6つの類型のパワハラを全て受けている可能性があるので、どのような行為がパワハラになるかを押さえておくことが大切です。

身体的な攻撃

身体的な攻撃は、上司や会社の言い訳がほぼ通用しない行為です。

具体的には、殴る・蹴る・たたく・物を投げつける・胸ぐらをつかむなどの行為が該当します。

お酒を強要することも身体的な攻撃にあたる可能性があります。

身体的な攻撃に関する裁判例

  • 真冬に扇風機をあて続ける(日本ファンド事件:東京地裁平成22年7月27日)
  • 上司が部下に向かって「いい加減にせぇよ!ボケか!アホちゃうか」と言い、イスを蹴り、胸ぐらをつかんだケース(大阪地裁平成24年5月25日)

精神的な攻撃

精神的な攻撃とは、主に言葉での攻撃です。

人格を否定するなど、相手に精神的なダメージを与える行為です。

種類としてはおおまかに以下のように分けられます。

  • 人格を否定する
  • 脅迫する
  • 侮辱する
  • 名誉を傷つける

ほかの社員の前で罵倒したり、メールのCCにほかの社員をいれて罵倒したりすれば、名誉毀損になることもあります。

不特定多数の人の前で社会的評価が低下させられたと認定されれば名誉毀損という不法行為が成立します。

精神的な攻撃に関する裁判例

  • ほかの社員もCCに入れてメール送信。メールの内容は「意欲がない、やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います。会社にとっても損失そのものです」(三井住友海上火災保険事件:東京高裁平成17年4月20日)
  • 部下の不正(保険金手続き)を疑い「マネージャーが務まるのか」と叱責(富国生命事件:鳥取地裁米子支部平成21年10月21日)

人間関係からの切り離し

人間関係からの切り離しとは、意図的に孤立させる行為です。

仲間外れにしたり、仕事を遂行するために必要な情報を与えないなどの嫌がらせが典型例です。

人間関係からの切り離しに関する裁判例

  • 新人を原告に近づけない、挨拶しても無視、カウンセラーからテレフォンアポインターへの降格などの行為がパワハラと認定され、305万円(退職後の1年分の逸失利益225万円を含む)の支払いが命じられた事例(美研事件:東京地裁平成20年11月11日)。

過大な要求

過大な要求とは、達成することが不可能なレベルや量の仕事を与えることを言います。

仕事とはまったく関係のない雑用などを押しつけることも過大な要求にあたります。

過大な要求に関する裁判例

  • 5ヵ月間の労働時間が月平均約242時間にも及んでいた事件があります(東芝事件:最高裁平成26年3月24日)。この女性はうつ病となってしまい、裁判の結果、約5000万円の損害賠償請求が認められました。
  • 仕事中は座れず、休憩もとれず、土日出勤も多く、早朝から深夜まで働き詰めにされていた事件(国際信販事件:東京地裁平成14年7月9日)。

過小な要求

これは過大な要求と真逆の概念です。

合理的な理由がないのに、能力や経験とはかけ離れたレベルの低い仕事を命じることなどが過小な要求にあたります。

仕事を与えない嫌がらせもこれにあたります。

過少な要求に関する裁判例

  • 3ヵ月間、仕事を与えなかった事件があります。執務室への入室を禁止し、雑用といえる掃除を命じていました(中国新聞システム開発事件:広島高裁平成27年10月22日)

個の侵害

個の侵害とは、プライベートな領域に立ち入ることを指します。

具体例は以下のとおりです。

  • 勤務時間外や休みの日の過ごし方をしつこく聞く
  • 「彼氏はいるのか?」「彼女はいるのか?」と詮索してくる
  • 私物を無断で写真撮影する

個の侵害に関する裁判例

  • 午後11時ころに部下に電話して留守電に以下の内容のメッセージを残す。「私、本当に怒りました」「ぶっ殺すぞ」(ザ・ウィンザーホテルズインターナショナル事件:東京高裁平成25年2月27日)
  • 部下同士の恋愛に口を挟んだ事件。「あいつはドンファンだ。女性を泣かせるやつだから気をつけろ」と忠告(豊前市事件:福岡高裁平成25年7月30日)

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パワハラ発言を立証するための証拠

パワハラ発言があれば、以下のようなことをできる可能性があります。

  • 上司の異動を求める
  • 上司に懲戒処分を出してもらう
  • 上司に損害賠償請求する
  • 労災認定を受けられる
  • 退職理由を会社都合にしてもらえる

以上のように多くの手を打てる可能性がありますが、注意が必要なのは、パワハラ発言があったことを立証しなければならない、ということです。

パワハラ上司に対して何か行動を起こしたい時は、以下のような証拠を集めましょう。

録音

録音は、裁判になった際に非常に強い証明力を発揮します

なぜなら、パワハラ発言が収録されていれば上司は言い逃れできないからです。

録音がなければ、裁判で言った言わないの水掛論が繰り広げられますが、録音があればその不毛な争いをなくすことができます。

パワハラ上司と過ごしている方は、1日中、録音し続けることをおすすめします。

パワハラ発言の数が多ければ多いほど慰謝料の額も上がります。

言葉だけでなく暴行を受けている方も、録音は有効な手段です。

殴られた時や叩かれた時の音、書類を投げつけられた時の音などが収録されていれば、裁判官は暴行を推認してくれる可能性が高まるからです。

メールやチャット

上司から送信されてきたメールやチャットをスクリーンショットしておきましょう

実際に、裁判でもメモ書きやメールの内容がパワハラを立証する証拠として認められたケースがあります。

  • 東京高裁平成17年4月20日判決
    保険会社のサービスセンター所長が、未処理件数が多い課長代理に、本人以外の従業員数十名同時に送信する方法で、「意欲がない、やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います。当SCにとっても、会社にとっても損失そのものです。あなたの給料で業務職が何人雇えると思いますか。これ以上会社に迷惑をかけないでください。」と述べたことがパワハラと認定された事例。

裁判官が何を証拠として取り上げるかは未知数のため、さまざまな手を打っておきましょう。

それらを総合考慮してパワハラ認定してくれる可能性があるからです。

日記・メモ

日記やメモも証拠となるのですが、証明力は録音やメール・チャットに比べて弱いです。

パワハラ上司が「勝手に作り上げている」と反論してきた場合、裁判所としてはパワハラ認定することをためらうからです。

したがって、日記・メモは、ほかの証拠を押さえたうえでの補完的な証拠と考えてください

日記を書く時には、かなり具体的に書くことをおすすめします。

  1. いつ
  2. どこで
  3. 誰から
  4. どのような経緯で
  5. どんなパワハラ発言を受けたのか

上記のような内容を、なるべく時系列順など具体的に書くことをおすすめします。

裁判官が「具体的かつ迫真性に富んでいる」としてパワハラ発言の存在を認定してくれる可能性が高まるからです。

パワハラ発言かどうかは言葉だけでは判断できない

同じ発言でもパワハラになる場合とならない場合があります

たとえば「バカヤロウ!」でも、緊急事態にとっさに出てしまった「バカヤロウ!」だとパワハラ認定されない可能性がありますが、日常茶飯事で使っている「バカヤロウ」だとパワハラ認定の可能性が高まります。

パワハラ発言になるかどうかは、下記の事情などが総合的に考慮されます。

  • 発言の目的
  • 言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む言動がおこなわれた経緯や状況
  • 業種・業態
  • 業務の内容・性質
  • 当該言動の態様・頻度・継続性
  • 労働者の属性や心身の状況
  • 行為者との関係性

パワハラ発言された際の対処法

社内のパワハラ相談窓口に相談する

パワハラ発言されたときは、まず社内のパワハラ相談窓口に相談してみましょう。

もし、相談窓口がなかったり、相談しても十分な対応をしてくれない場合は、以下を検討しましょう。

労働局に相談する

会社の相談窓口がない、相談しても話が進まないなどの場合は、労働局に相談してみましょう。

労働局では、職場でのさまざまなトラブルの相談を受け付けており(相談無料・解決依頼も無料)、全国に設置されてます。

労働者が解決依頼を申し込むと、労働局が会社を呼び出してくれます。

しかし、会社に参加義務はないので労働局からの呼び出しを無視してくることもあります。

【参考】厚生労働省|都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧

パワハラ問題に強い弁護士に相談する

ご自身で対応すると手続きが煩雑なこともあるため、初めから弁護士に相談することもおすすめします。

ベンナビ労働問題には、パワハラ問題を含め労働問題に強い弁護士が多数掲載されているので、ご自身に合った弁護士を探してみてください。

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パワハラ発言は弁護士への相談がおすすめ

弁護士に相談することのメリットは以下のとおりです。

法的観点から対処法をアドバイスしてもらえる

「パワハラ発言にあたるのか?」「どれくらいの損害賠償請求をできる可能性があるか」などについて法的観点から具体的にアドバイスをしてもらえます

損害賠償請求以外にも、「上司の異動を求める」「上司に懲戒処分を出してもらう」などの通知書を作ってもらえるなど、ご依頼者の要望に応じた対処をしてくれます。

依頼者に代わって相手と交渉してもらえる

自分ひとりで「パワハラ発言だから損害賠償請求する」などと会社に申し立てたとしても、会社が聞き入れる可能性は低いでしょう。

なぜなら、パワハラ発言が横行しているような会社だと、労働者が法律的に正当な主張をしても会社が理解を示さないことが多いからです。

したがって、その交渉は非常にストレスのかかるものとなります。

この点、弁護士に依頼すれば、交渉をスムーズに進めてくれます

会社の対応が変わる

先述のとおり、自分ひとりで会社と対峙しても会社が態度を改める可能性は低いですが、弁護士から通知が来ると、会社が態度を一変させて話に応じてくることが多々あります。

裁判手続きになっても安心

ここが一番大きなメリットといえます。

万が一、裁判手続きになったとしても、弁護士に依頼していると安心です。

理由は以下のとおりです。

自分ひとりで裁判を遂行することは難しい

弁護士に依頼せずに、自分ひとりで「パワハラ発言だから損害賠償請求する」と主張して労働審判や訴訟を起こすことは可能ですが、遂行することは非常に難しいでしょう。

なぜなら、法律的な主張を組み立てることは困難ですし、その主張を組み立てることができなければ敗訴するおそれがあるからです。

裁判官は中立な立場のため、「この主張や証拠が足りない」などと手を差し伸べることはありません。

その結果、本来勝訴できたにもかかわらず、敗訴することもありえます。

弁護士に依頼すると安心

弁護士は、裁判手続きに精通しているため、法律的に必要な主張を過不足なく裁判所に提示してくれます。

会社が裁判を起こしてくることもある

たとえば、労働者が「パワハラ発言だから損害賠償請求する」と会社に申し入れをしたり、労働局に駆け込んだ場合、ブラック企業は、報復として労働者に対して裁判を起こしてくることがあります。

また、些細なミスにもかかわらず「損害賠償請求する」などと主張して提訴してくることがあります。

このような場合、労働者ひとりで対応していると、その対応は非常に困難かつ労力のかかるものとなりますが、弁護士はその手の会社の主張への対応に慣れているため、的確に反論することが可能です。

まとめ | パワハラ上司に損害賠償請求したいなら弁護士に相談しよう

パワハラ発言を受けた場合、何らかの行動をとりたければ弁護士に相談することをおすすめします。

損害賠償請求するのか、上司と接点を持たずに働きたいのか、依頼者の要望に沿って戦略をたててくれます

ベンナビ労働問題ではパワハラ問題に強い弁護士が多く掲載されていますので、ご自身に合った弁護士を探してみてください。

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参考:パワハラの相談窓口はどこ?おすすめの相談先5つと特徴を紹介 | しごとウェブ転職

この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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