残業代請求
変形労働時間制の会社で働くときに知っておきたいこと|残業の計算やトラブル事例など
2023.11.02
事業主は、労働基準法の定める法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)を超えて従業員を働かせる場合、残業代を支払わなければなりません。仮に残業代を支払わずに従業員を残業させている場合、いわゆる「サービス残業」となります。
そんなサービス残業で困っているけれど、中にはどこに相談したらいいのかわからない方もいるでしょう。この記事では、サービス残業で困っている方におすすめの相談窓口を5つ紹介します。
また、サービス残業の問題を解決したい場合は、弁護士に相談するのが特におすすめですので、弁護士に相談・依頼すべき理由、相談するときの準備や持ち物、弁護士事務所の選び方、依頼してから残業代を回収するまでの流れなどについても解説します。
サービス残業といった労働に関する悩みは、社内通報窓口、弁護士事務所、労働基準監督署、労働組合、労働条件相談ほっとラインなどに相談できます。それぞれのメリットとデメリットは以下のとおりです。また、ここではそれぞれの相談窓口の特徴について確認しましょう。
【サービス残業について相談できる専門窓口一覧】
メリット | デメリット | |
社内の通報窓口 |
|
|
弁護士事務所 |
|
|
労働基準監督署 |
|
|
労働組合 |
|
|
労働条件相談ほっとライン |
|
|
社内に通報窓口が設置されている場合、その窓口にサービス残業について通報するとよいでしょう。通報窓口は従業員の労働環境を改善することなどを目的とした相談先なので、普段のサービス残業が改善される可能性があるでしょう。
労働問題が得意な弁護士事務所では、サービス残業に関する相談・依頼に対応してくれることが多いです。弁護士に依頼した場合は、弁護士費用は発生しますが、未払いの残業代の回収や普段のサービス残業の改善なども期待できます。なお、相談だけでいい場合は、以下のような相談窓口を利用するという方法もあります。
労働基準監督署では、賃金未払い、サービス残業、不当解雇といった労働基準関連法令に違反する行為の相談・申告を受け付けています。労基署に対して会社の違法行為を申告した場合、職員が会社への調査を実施し、必要に応じて是正勧告などをしてくれます。
その結果、サービス残業の改善や残業代の支払いなどがおこなわれると期待できます。
会社に労働組合がある場合や自主的にユニオンに加入している場合は、労働組合やユニオンに相談することが可能です。労働組合やユニオンの場合、団体交渉や団体行動を通じて、サービス残業の改善や残業代の支払いを求めることができます。
会社は正当な理由がなければ団体交渉を拒めないため、交渉に応じてもらえる可能性は高いでしょう。
(不当労働行為)
第七条 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一 略
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
引用元:労働組合法 | e-Gov法令検索
労働条件相談ほっとラインとは、違法な時間外労働や賃金不払いといった労働問題の相談を受け付けている専門ダイヤルです。「0120-811-610」に電話をすると、専門の相談員が相談に乗ってくれたり、専門機関を紹介してくれたりします。
なお、ほかの相談機関と異なり、こちらの窓口が問題解決のために動いてくれるわけではありません。
サービス残業について相談できる窓口はいくつかありますが、中でも特におすすめなのが「弁護士」です。弁護士であれば、証拠の集め方に関するアドバイスをしてくれたり、未払い残業代の請求まで任せられたりするなど、メリットが多くあります。
ここでは、サービス残業の悩みを弁護士に相談・依頼がおすすめできる理由を解説します。
サービス残業とは、残業代が支払われない時間外労働を指します。ただ、サービス残業には「タイムカードを定時に打刻させた後、残業させる」といった典型的な例だけでなく、自宅に仕事を持ち帰らせている、始業時間前に出勤させている、名ばかりの管理職扱いになっているなども当てはまります。弁護士に相談すれば、何がサービス残業になるのか教えてくれるでしょう。
会社にサービス残業を改善させたり、残業代を請求したりするには、サービス残業の実態を証明できる証拠が必要になります。弁護士に相談すれば、そのような証拠の種類や集め方などについてアドバイスがもらえます。
また、弁護士に正式に依頼している場合は、サービス残業の証拠となる資料を開示するよう会社に求めてくれるでしょう。
弁護士には、未払いになっている残業代の請求についても依頼できます。弁護士は会社との直接交渉だけでなく、裁判手続に移行した場合も対応してくれることが多いです。
労働者だけで対応しようとしても相手にされなかったり、時間がかかったりしますが、弁護士に依頼すれば少ない負担で未払い残業代を回収できる可能性があります。
弁護士との相談は有料である場合も多いため、できる限り効率よく相談することが重要です。
そこで、弁護士にサービス残業を相談する前に準備しておいたほうがいいことについて解説します。
サービス残業に関係する資料を持っている場合は、弁護士との相談時に持参しましょう。資料を持参することで、より具体的なアドバイスがもらえます。
以下のような資料がある場合は持参することをおすすめします。なお、手元にない場合は無理に用意しなくも問題ありません。
弁護士と相談する前には、サービス残業に関する事実関係を整理しておくのが重要です。たとえば、月にどれくらいサービス残業をしているのか、いつごろから残業代が支払われていないのか、残業代がまったく支払われていないのか(それとも一部は支払われているのか)などについて事前に整理しておくと、相談がスムーズに進むでしょう。
弁護士に相談する前には、未払い残業代をある程度計算しておくことをおすすめします。
事前に残業代を計算しておくことで、受け取れる残業代より弁護士費用が上回るトラブル(費用倒れ)を避けることができます。大まかな未払いの残業代の目安が知りたいなら、「未払い残業代計算ツール」を利用するとよいでしょう。
弁護士に依頼する場合は、最終的にどのような解決を望んでいるのかを決めておきましょう。たとえば、会社を訴えたい場合と円満に解決したい場合では、弁護士が採るべき対応が変わってきます。
また、会社に残り続けたいのか、退職をするのかなどによっても変わるでしょう。事前に最終的な結果やゴールについて決めておくのがおすすめです。
サービス残業について弁護士に相談・依頼する場合、できる限り「労働問題や残業代トラブルが得意な弁護士」を選ぶことをおすすめします。
また、弁護士費用が明確であるか、相談したときに話しやすいかなども、弁護士を選ぶときのポイントになるでしょう。ここでは、弁護士を選ぶときのポイントについて解説します。
それぞれの弁護士にはある程度の専門分野があるため、サービス残業で困っている場合は労働問題や残業代請求が得意な弁護士に依頼しましょう。
弁護士の専門性や解決実績などは、Webサイトやポータルサイトなどで確認することができます。労働問題が得意な弁護士を探したい場合は「労働問題弁護士ナビ」を利用することをおすすめします。
弁護士事務所によって料金体系や内訳は異なるため、できる限り弁護士費用の内訳まで丁寧に説明してくれる事務所に依頼することをおすすめします。
また、弁護士費用について不明点や疑問点などがある場合は質問し、料金に納得がいく弁護士と契約しましょう。納得せずに契約すると、後から料金トラブルに発展してしまうかもしれません。
弁護士に相談したときに、話しやすいか、親身になってくれるかなども確認しておきましょう。弁護士との相性が悪い場合は、本音で話すことができず、納得がいかない結果になってしまう可能性もありえます。
弁護士事務所がおこなっている無料相談などを利用して、その弁護士に任せることができるかを判断してから選びましょう。
弁護士にサービス残業の問題解決を依頼した場合、基本的には弁護士がほとんどの手続をおこなってくれます。ここでは、弁護士に正式に依頼してから残業代を回収するまでの大まかな流れを確認しましょう。
残業代を請求する場合、まずは会社に対して「残業代の支払いを求める通知書」を内容証明郵便で送付します。残業代の請求権には「3年間」という時効がありますが、通知書を送付することで時効の成立を一時的にストップさせることができます。
その間に弁護士は、会社から開示された資料を確認したり、未払いの残業代を計算したりします。
(時効)
第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
引用元:労働基準法 | e-Gov法令検索第百四十三条
①〜② 略
③ 第百十五条の規定の適用については、当分の間、同条中「賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間」とあるのは、「退職手当の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から三年間」とする。
引用元:労働基準法 | e-Gov法令検索
サービス残業の証拠を確保し、残業代の計算を終えたら、事業主とサービス残業に関する交渉を開始します。具体的な手段は、文書でのやり取り、電話でのやり取り、対面でのやり取りなどさまざまとなっています。
会社との交渉で話し合いがまとまった場合は示談書・合意書を作成し、会社から残業代が支払われることになります。
会社との直接の交渉で折り合いがつかなかった場合は、労働審判や訴訟に移行する必要があります。労働審判の場合は、労働審判官(裁判官)と労働審判員が当事者双方の主張や証拠を確認し、中立・公平な立場から判断(審判)をおこなってくれます。
なお、労働審判に不服がある場合は異議申立てをおこない、裁判で決着をつけることになります。
【参考記事】
労働審判手続 | 裁判所
サービス残業について相談できる専門窓口には、社内通報窓口、労働基準監督署、労働組合、労働条件相談ほっとラインなどがありますが、特におすすめなのは「弁護士」です。
弁護士に相談・依頼した場合は、証拠集めなどのサポートをしてくれたり、依頼主の利益が最大になるよう会社と交渉してくれたりします。サービス残業で困っているなら、まずは「労働問題弁護士ナビ」で弁護士事務所を探して、弁護士に相談してみるとよいでしょう。