裁量労働制で起こりやすい問題点とは|残業代の支払いやトラブル対処法を知ろう

裁量労働制で起こりやすい問題点とは|残業代の支払いやトラブル対処法を知ろう
目次
  1. 裁量労働制とは?対象は専門業務と企画業務の2種類
    1. 裁量労働制とは|労働者の裁量による労働を認める制度のこと
    2. 裁量労働制の種類|対象となる2つの業務
  2. 裁量労働制で起こりやすい問題点|実際の働く人の口コミも!
    1. 長時間労働の温床となる可能性がある
    2. 割増賃金が支払われない可能性がある
    3. 労働者自身の自己管理能力が問われる
    4. 裁量労働制ができない業種に適用される場合がある
    5. 会社によっては出退勤時間を強制される場合がある
  3. 裁量労働制で働くメリット|ポジティブな口コミもある!
    1. 労働時間を自由に決められる
    2. プライベートを充実させられる
  4. 裁量労働制の問題点について相談できる窓口・専門家
    1. 弁護士|労働トラブル全般について相談することができる
    2. 労働基準監督署|違法な裁量労働制を通報することができる
    3. 労働組合|団体交渉を通じて会社に制度変更を求めてくれる
  5. 裁量労働制とよく似た制度との違い
    1. フレックスタイム制|労働者が始業・終業時刻を決定できる制度
    2. 固定残業代制|労働者の給与にあらかじめ一定の割増賃金を含めておく制度
    3. 高度プロフェッショナル制度|専門職の労働時間・休憩などの規定を適用除外にする制度
  6. さいごに|裁量労働制のトラブルはできる限り早く弁護士に相談しよう

私の会社は裁量労働制だけれど、長時間労働が続いている

裁量労働制で残業代が出ないけれど、そもそもこれって適法なの?

裁量労働制とは本来、労働者のクリエイティブな能力を発揮するために自由な働き方を認める制度なのですが、長時間労働などに悩まされている方が多いのが実情です。

本記事では、

  • 裁量労働制とは?
  • 裁量労働制を適法に運用するための条件とは?
  • 裁量労働制のメリット・デメリット
  • 相談するところ

などを解説します。

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この記事を監修した弁護士
林 孝匡弁護士(PLeX法律事務所)
情報発信が専門の弁護士。専門は労働法。働く方に向けて【分かりやすく、時におもしろく】知恵をお届けしています。多くのWebメディアで情報をお届け中。

裁量労働制とは?対象は専門業務と企画業務の2種類

裁量労働制とは|労働者の裁量による労働を認める制度のこと

裁量労働制とは、法律で定められた業務を遂行する労働者については、実際の労働時間数にかかわりなく協定で定める時間数労働したものと「みなす」制度のことを指します。

裁量労働制が導入されたきっかけは、一定の専門的・裁量的業務に従事する労働者が増加したことにあります。

とくに、クリエイティブな能力を発揮する労働者のいる職場で多く採用されています。

たとえば、みなし時間を7時間とした場合、実際には9時間働いたとしても、3時間働いたとしても、7時間働いたものとみなされます。

裁量労働制を導入するにあたっては、労使協定でみなし労働時間数を定めて労働基準監督署に届け出る必要があります。

裁量労働制の種類|対象となる2つの業務

裁量労働制には「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。

専門業務型|厚生労働省令で定められた19業務が対象

労働基準法では、専門業務型裁量労働制の対象となる業務について以下のとおり定められています。

一 業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この条において「対象業務」という。)
引用元:労働基準法|e-Gov法令検索

具体的には、以下の19職種について専門業務型裁量労働制の導入が認められています

  1. 新商品や新技術などの研究開発業務・人文科学や自然科学に関する研究業務
  2. 情報処理システムの分析、設計業務
  3. 記事取材、編集などの業務
  4. 新たなデザインの考案業務
  5. 放送番組、映画等のプロデューサー、ディレクター業務
  6. コピーライター業務
  7. システムコンサルタント業務
  8. インテリアコーディネーター業務
  9. ゲームソフトの創作業務
  10. 証券アナリスト業務
  11. 金融商品の開発業務
  12. 大学教授の業務
  13. 公認会計士業務
  14. 弁護士業務
  15. 建築士業務
  16. 不動産鑑定士業務
  17. 弁理士業務
  18. 税理士業務
  19. 中小企業診断士業務

以上の業務に加え、令和6年4月1日からM&A業務が追加される予定です。

過去には、上記の19種類の職種にあたるかどうかが争われた裁判例があります。

■ 裁判例1

広告代理店で起きた事件です。

会社は「新たなデザインの考案業務」にあたるとして専門業務型裁量労働制を適用できるため残業代は発生しないと主張したのですが、裁判所は労働者の自由度が低いなどを理由に専門業務型裁量労働制の適用を認めず、残業代約143万円の請求を認めました(インサイド・アウト事件:東京地裁 平成30年10月16日)。

■ 裁判例2

こちらは、プログラマーの事件です。

会社は「プログラミング業務には専門業務型裁量労働制を適用できるため残業代は発生しない」と主張したのですが、裁判所は、プログラミングは裁量性の高い業務ではないとの理由で専門業務型裁量労働制の適用を認めず、残業代約560万円の請求を認めました(エーディーディー事件:大阪高裁 平成24年7月27日)。

企画業務型|企画・立案・調査・分析に関する業務が対象

労働基準法では、企画業務型裁量労働制の対象となる業務について以下のとおり定められています。

一 事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であつて、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務
引用元:労働基準法|e-Gov法令検索

さらに、企画業務型裁量労働制を導入する条件として、上記業務に就く労働者が「対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者」である必要があります(労働基準法第38条の4第1項第2号)。

ある程度職務経験を有した労働者だけに認めることによって、企画業務型裁量労働制が悪用されることを防止しているのです。

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裁量労働制で起こりやすい問題点|実際の働く人の口コミも!

裁量労働性は、時間に縛られない、細かい指示を受けないなどのメリットがあるものの、実際には以下のような問題点があるのです。

口コミとともに見ていきましょう。

長時間労働の温床となる可能性がある

以上のように、時間で縛られない働き方であるがゆえに長時間労働を引き起こしてしまうおそれがあります。

割増賃金が支払われない可能性がある

裁量労働制では、たとえば、みなし時間を7時間とした場合、実際には9時間働いてとしても7時間働いたものとみなされるため、残業代が出ません

一部の企業では、残業代の発生を抑えるために裁量労働制を採用しているので注意が必要です。

労働者自身の自己管理能力が問われる

裁量労働時間制度は長時間労働を引き起こすおそれがあるので、労働者自身の自己管理能力が問われます

ワークライフバランスを保ちたいのであれば、みなし時間内に効率的に仕事を終わらせるという能力が求められます。

裁量労働制ができない業種に適用される場合がある

裁量労働制の仕組みを理解していない会社では、要件を満たしていないにもかかわらず、裁量労働制を採用しているところがあります

裁量労働制を採用すれば残業代の発生を抑えることができる、との理由で採用しているケースがあるのです。

会社によっては出退勤時間を強制される場合がある

こちらも、裁量労働制の仕組みを理解していない会社です。

裁量労働制とは、労働者のクリエイティブな能力を発揮するため、出勤や退勤の時間を設けない働き方なのですが、それを理解していない経営者が労働者の自由を制限してくることがあります。

裁量労働制で働くメリット|ポジティブな口コミもある!

他方で、裁量労働制で働くメリットもあります。

労働時間を自由に決められる

このポストをした方は、裁量労働性の本来の目的を享受できていることがうかがえます。

このように、時間に縛られずに、ご自身の体調やスケジュールに合わせて労働の密度を変え、クリエイティブな能力を発揮する、これが裁量労働制の大きな目的のひとつなのです。

プライベートを充実させられる

裁量労働制を採用すると、何時間働いても所定の労働時間分働いたとみなされます。

たとえば、みなし時間を7時間とした場合、実際には3時間働いたとしても7時間働いたものとみなされるため、できるだけ早く効率的に仕事を終わらせようとするモチベーションが高まるのです。

その結果、早く仕事を終えてプライベートが充実するという結果につながります。

裁量労働制の問題点について相談できる窓口・専門家

裁量労働制は労働者にとってメリットの多い制度なのですが、残念ながら悪用されているケースも少なくありません。

問題点を感じたときには、以下の機関に相談してみましょう。

弁護士|労働トラブル全般について相談することができる

裁量労働制のトラブルを含め、労働トラブル全般について相談できるのは弁護士です。

ベンナビ労働問題」には、労働問題を得意とする弁護士が多数登録しているので、ご自身に合った弁護士を探してみてください。

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労働基準監督署|違法な裁量労働制を通報することができる

労働基準監督署に申告するのも、ひとつの手段です。

裁量労働制の要件を満たしていないにもかかわらず採用している場合には労働基準法違反となり、労働基準監督署が会社に是正勧告などを出してくれることが期待できます

労働基準監督署とは、会社が法令を遵守しているかをチェックする機関で、全国に設置されています。

【参考元】 全国労働基準監督署の所在案内|厚生労働省

労働組合|団体交渉を通じて会社に制度変更を求めてくれる

会社に労働組合があれば、労働組合に相談することもおすすめです。

団体交渉を通じて、裁量労働制を適法に運用してくれるよう申し入れてくれるでしょう。

もし社内に労働組合がなくても、社外の労働組合(ユニオン)に相談することができます。

裁量労働制とよく似た制度との違い

ここでは、裁量労働制とよく似た制度を3つ紹介します。

フレックスタイム制|労働者が始業・終業時刻を決定できる制度

フレックスタイム制とは、始業・就業時刻を労働者の決定に委ねる制度です(労働基準法第32条の3)。

フレックスタイム制は裁量労働制とは異なり、みなし労働時間が適用されません

すなわち、働いた分だけ給料を支払ってもらえます。

固定残業代制|労働者の給与にあらかじめ一定の割増賃金を含めておく制度

固定残業代制とは、労働者の給与にあらかじめ一定の割増賃金を含めておく制度のことです。

一定の割増賃金にはそれに相当する時間も定められているため、その時間を超えれば残業代を請求することができます。

残業代を請求できない裁量労働時間制とは異なる制度です。

高度プロフェッショナル制度|専門職の労働時間・休憩などの規定を適用除外にする制度

高度プロフェッショナル制度とは、専門職の労働時間・休憩などの規定を適用除外にする制度です。

裁量労働時間制と目的や効果が共通しているところが多いものの、適用要件が異なるまったく別の制度です(労働基準法第41条の2)。

さいごに|裁量労働制のトラブルはできる限り早く弁護士に相談しよう

裁量労働制は、要件が非常に細かく定められており、適用に運用されているかどうかをご自身で判断することは難しいでしょう。

本記事内で紹介したネガティブな口コミにもあるとおり、長時間労働を強いられているなど疑問を感じる方は、弁護士に相談することをおすすめします。

ベンナビ労働問題では、裁量労働制をはじめ労働トラブルを得意とする弁護士を地域別などで簡単に検索できます

ぜひベンナビ労働問題を活用して、トラブル解決に向けての一歩を踏み出しましょう。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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