残業代請求
変形労働時間制の会社で働くときに知っておきたいこと|残業の計算やトラブル事例など
2023.11.02
賃金や残業代の未払いで困っている場合は、地域の労働基準監督署(労基署)に相談・申告するという対応が考えられます。
労基署では労働時間、賃金、解雇等の労働条件に関する相談を受け付けており、必要に応じて事業者に対して指導・是正勧告などをしてくれます。
しかし、必ずしも問題解決のために行動してくれるわけではない点には注意が必要でしょう。
この記事では、残業代の未払いで困っている方に向けて、労基署に相談するメリット、労基署に相談・申告する際の流れ、労基署に相談する際の注意点などについて解説しています。
また、労基署ではなく弁護士に相談・依頼するのも有効な方法なので、弁護士に依頼するメリットや弁護士費用の目安についても紹介します。
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労基署では「残業代未払い」といった法令違反に関する相談を受け付けています。
まずは、労基署の基本事項や労基署に相談するメリットについて確認しましょう。
労基署とは、労働基準法などに関連する各種届出の受付、労働条件に関する相談対応、事業主に対する監督指導などをおこなっている厚生労働省の第一線機関です。
たとえば、法令違反を伴う賃金・労働時間・解雇などに関する相談に対応してくれます。労基署は、全国に321署と4支署が設置されています。
労基署に相談する主なメリットは、以下のとおりです。
労基署では、無料で労働問題に関する相談・申告を受け付けています。
また、必要に応じて、労基署の職員が事業場の調査を実施し、違反行為があった場合には監督指導をおこなってくれます。
厚生労働省の「労働基準監督年報」によると、令和2年の監督実施件数は計14万5,633件となっています。
労基署に残業代未払いの相談・申告をする場合、以下のような手順でおこないましょう。
労基署に残業代未払いなどの労働問題を相談する場合、事業主の違法行為を証明できる証拠を用意しておくのがおすすめです。
残業代未払いを証明するためには、「残業したことを証明できる証拠」と「残業代が支払われていないことの証拠」の両方が必要になります。できる限り以下のような証拠や資料を用意してから相談しに行きましょう。
残業代未払いに関する証拠や資料を用意できたら、労基署に相談・申告しに行きましょう。
労働問題の解決を希望するなら、「相談」ではなく「申告」がおすすめです。
申告は、勤務先の所在地を管轄する労基署でおこなうのがよいでしょう。
労基署の管轄は、厚生労働省の「全国労働基準監督署の所在案内」を参考に探すことができます。
労基署の受付時間は、基本的には、平日の8:30~17:15です。
在職中の場合は、有給休暇などを取得したうえで相談しに行く必要があるでしょう。
残業代未払いに関する問題は、「労働条件相談ほっとライン(0120-811-610)」の電話相談を利用することもできます。
この電話相談では、専門の相談員が相談内容に応じて、法令・裁判例を踏まえた相談対応や関係機関の紹介などをしてくれます。受付時間は平日の17 :00~22:00と土日祝日の9:00~21:00です。
【参考記事】労働条件相談「ほっとライン」(Working Hotline)|厚生労働省
申告を受けた労基署の職員は、必要に応じて、事業主に対して調査を実施してくれます。
そのとき、残業代の未払いの事実が確認されれば、事業主に対して指導・是正勧告などがおこなわれます。
労基署から指導等を受けたことで、事業主が残業代を支払ってくれる可能性があります。
ただし、労基署の指導等には強制力がないため、支払われない場合もあります。
労基署に残業代の未払いについて相談・申告することはできますが、相談したからといって必ずしも労基署が対応してくれるわけではないこと、労基署の指導・是正勧告には強制力がないこと、労基署が残業代を回収してくれるわけではないことなどには注意する必要があります。
ここでは、労基署に相談する前に知っておくべき注意点を紹介します。
労基署には、ほかの相談者からもさまざまな相談が寄せられているため、自分が相談をしたからといって必ずしも労基署がすぐに対応してくれるわけではありません。
特に、匿名で相談している場合や証拠が不十分な場合などでは「後回しになってしまう可能性が高い」かもしれません。
なお、労基署に申告する場合は実名でおこなうこととされていますが、労基署に申告者が特定されないように配慮を求めることは可能です。
労基署の指導・是正勧告などは行政指導の一種であり、法的な強制力を伴いません。
そのため、労基署が指導・是正勧告をしたからといって、必ずしも事業主が残業代の支払いに応じるわけではありません。
もっとも、重大・悪質な違反行為を繰り返している場合などには刑事事件として立件されるリスクがあるので、事業主は指導・是正勧告に応じる可能性が高いといえます。
労基署は事業主に対して指導・是正勧告などをすることはできますが、未払いの残業代の回収まで対応してくれるわけではありません。
労基署からの指導等が入った事業主が自主的に残業代を支払う可能性はありますが、もし残業代の未払いが続くような場合は、労働者自身が事業主に対して未払いの残業代を支払うよう求める必要があります。
残業代が未払いで困っている場合、労基署に相談することもできますが、労働問題が得意な弁護士に相談・依頼するのもおすすめです。
ここでは、残業代未払いを弁護士に依頼するメリットや費用などを解説します。
残業代の未払い問題を弁護士に相談・依頼するメリットは、以下のとおりです。
未払い残業代を受け取るためには、残業をしたことと残業代が支払われていないことの証拠が重要になります。
労働問題が得意な弁護士に相談すれば、証拠そのものや証拠の集め方に関するアドバイスがもらえるでしょう。
たとえば、事業主が管理している証拠を確保するにはどうしたらいいか、などのアドバイスがもらえるでしょう。
労働者が自分で未払いの残業代を請求しても、事業主が支払いに応じない可能性があります。
その点、労働問題が得意な弁護士に依頼しておけば、証拠から正確に残業代を計算してくれたり、会社との残業代交渉を対応してくれたりします。
労働者が自分で対応するよりも、迅速に残業代の未払い問題を解決できる可能性が高まるでしょう。
事業主が残業代の支払いに応じない場合、訴訟などの裁判手続が必要になります。
裁判で勝利できれば債務名義となる「確定判決」が得られるため、それ以降も事業主が残業代の支払いを拒む場合には、差し押さえなどの強制執行が可能となります。
労働問題が得意な弁護士に依頼すれば、このような裁判手続にも対応してくれるでしょう。
弁護士に残業代請求を依頼した場合の費用の目安・内訳は、以下のとおりです。
なお、実際の弁護士費用は弁護士事務所によって異なるため、相談時に必ず「弁護士費用がいくらくらいになるのか」を確認しておきましょう。
内訳 | 金額 |
相談料 | 1時間あたり5,000~1万円程度 ※無料相談に応じている事務所もある |
着手金 | 10万~30万円程度 ※着手金無料にしている事務所もある |
成功報酬 | 経済的利益の16~20%程度 |
その他 | 実費:交通費、通信費、印刷代、コピー代など 裁判手数料:1万~3万円程度 |
合計 | 15万~35万円+経済的利益の16~20%程度 |
弁護士の探し方には法テラスや弁護士会に問い合わせてみる方法もありますが、おすすめは労働問題が得意な弁護士事務所が探せる「労働問題弁護士ナビ」を利用することです。
「お住まいの地域」と「相談したい内容」から事務所を探すことができ、近くの残業代請求に注力している弁護士を見つけることが可能です。
初回の相談料無料・着手金無料の事務所などもあるため、経済的に余裕がなくても弁護士に相談・依頼しやすいでしょう。
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最後に、労基署や残業代請求に関するよくある質問・疑問に回答します。
労基署での相談は秘密厳守でおこなわれ、匿名での相談も可能ですので、事業主に労基署へ相談したことが知られる心配はありません。
しかし、急に労基署の職員が事業場へ訪問してきたら、事業主が「従業員の誰かが労基署へ相談した」と疑う可能性は高いでしょう。
特に従業員が少ない場合、労基署へ相談したことが事実上知られてしまう可能性は否定できません。
未払いの残業代は、退職後でも請求できます。
ただし、消滅時効には注意しましょう。
労働基準法第115条の規定によると賃金請求権の時効は「5年間」となっていますが、同附則第143条3項の規定により当分の間は「3年間」になっています。
未払いの残業代を請求するなら、できる限り早く対応するほうがよいでしょう。
(時効)
第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
第百四十三条
③ 第百十五条の規定の適用については、当分の間、同条中「賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間」とあるのは、「退職手当の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から三年間」とする。
弁護士によっては、退職代行を引き受けてくれる場合もあります。
退職代行とは労働者本人に代わり、弁護士が退職手続をしてくれるサービスのことで、有給休暇の取得や未払い給料の交渉などもおこなってくれます。
弁護士ではない退職代行業者に依頼した場合は「非弁行為」に該当するリスクがあるため、退職代行は弁護士に依頼するほうがよいでしょう。
事業者から残業代が支払われない場合、労基署や弁護士事務所に相談してみるとよいでしょう。
労基署であれば無料で相談・申告ができ、必要に応じて事業者に対して行政指導をしてくれます。
しかし、必ずしも労基署が動いてくれるとは限らないため、より確実に残業代の未払い問題を解決したいなら弁護士に相談することをおすすめします。
特に「労働問題弁護士ナビ」に掲載されているような弁護士であれば、残業代請求にも積極的に対応してくれるでしょう。
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参考:残業代請求された場合の検討すべき点5つ|無視せずに適切な対応と反論を | 企業経営者のための法律相談サイト