労働審判とは?労働者側から見た利用のメリット・必要な準備などを解説

労働審判とは?労働者側から見た利用のメリット・必要な準備などを解説

この記事を監修した弁護士
阿部 由羅
阿部 由羅弁護士(ゆら総合法律事務所)
ゆら総合法律事務所の代表弁護士。不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。

労働審判は、訴訟よりも迅速・柔軟に労働問題を解決できる可能性のある法的手続きです。

労働者にとっても多いに利用価値がありますので、会社の態度が強硬な場合には、弁護士に相談して労働審判の利用をご検討ください。

この記事では、労働者が労働審判を利用するメリット・手続きの流れ・必要な事前準備などについて解説します。

労働審判でお悩みの方は弁護士へご相談ください!

労働審判では、相手の反論に対して論理的かつ客観的な証拠に基づいて回答することが望ましいため、裁判所も弁護士をつけることを推奨しています。

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労働審判とは?

労働審判とは、労務紛争を迅速に解決することを目的とした、裁判所で行われる法的手続きです。

参考:労働審判|裁判所

労使間紛争は、協議によって解決するのが望ましいといえます。

しかし、労使間の対立が激しい場合には、協議成立の見込みが立たないケースも存在します。

協議が成立しない場合、法的手続きに場を移して争うことになります。

しかし、訴訟は時間がかかり過ぎる傾向にあり、労使双方にとって負担が大きいです。

そこで、訴訟よりも迅速かつ柔軟に労使間紛争を解決する手続きとして、労働審判が用意されています。

労働審判の特徴は?

労働審判の特徴としては、迅速性・柔軟性・労働審判員の関与などが挙げられます。

審理は原則3回以内に完結|訴訟よりも期間が短く済む

労働審判の審理は、原則として3回以内の期日において終結しなければならないと定められています(労働審判法15条2項)。

期日は1か月おき程度の頻度で開催されるため、トータルの審理期間は、おおむね3か月以内です。

訴訟が半年、1年とかかるケースが多いことを考慮すると、労働審判は迅速に労使紛争を解決し得る手続きといえるでしょう。

事情に応じた柔軟な内容の審判が行われる

労働審判においては、当事者の権利関係を確認したうえで、労働紛争を解決するために相当と認める事項を定めることができます(労働審判法20条2項)。

たとえば分割払いを命じたり、支払いに一定の条件を付けたりするなど、より実態に即した解決を示すことができる点がメリットです。

また労働審判の過程では、調停により紛争を解決することも可能となっています。

可能な限り調停による合意解決を模索しつつ、最終的な労働審判でも柔軟な解決を提示できる点が、労働審判手続きの大きな特徴です。

裁判官とともに労働審判員が関与する

労働審判手続きには、裁判官とともに、2名の労働審判員が関与します(裁判官と労働審判員2名で構成される審判体を「労働審判委員会」といいます)。

訴訟が裁判官のみによって審理されることと比較すると、労働審判では、多様なバックグラウンドを持つ者が判断権者である点が特徴的です。

労働審判員には、雇用関係の実情・労使慣行などについて知識と経験を備えた人が、最高裁判所によって任命されます。

労働審判員の知見を活用することにより、労使間の細かい事情を汲み取ったうえで、適正妥当な解決を示すことが期待されます。

労働者から見た労働審判のメリット

労使間の協議がうまくまとまらない場合、労働者側がとり得る次の手段としては、労働審判は非常に有力です。

労働者側から見ると、労働審判を利用することには、主に以下のメリットがあります。

労働審判委員会による客観的な判断を求められる

労使双方の主張には多分に主観的な側面があるため、当事者間の交渉では折り合いが付かないケースも多いです。

この点労働審判では、労働審判委員会が客観的な立場から、当事者が提出する証拠に基づいて判断を行います。

特に労働者が、会社の違法行為に関する証拠を十分に確保できている場合には、労働審判により有利な解決を得られる可能性が高いでしょう。

会社の強硬な態度を崩せる可能性がある

労働審判に発展すると、最終的には労働審判委員会の判断により、会社にとって不利な結論が示される可能性があります。

使用者としては、そうなる前に受け入れ可能な落としどころを見つけて、労働者側との和解を目指すのが合理的でしょう。

交渉では独自の論理に基づく主張を行っていた使用者も、労働審判となれば、自身の主張が客観的な立場から合理的かどうか検証することを迫られます。

その結果として、会社の強硬な態度が崩れ、和解に至ることも十分考えられます。

労働審判の手数料は、訴訟の半額以下

労働審判の手数料は、訴訟よりも安く設定されています。

具体的には、訴額1000万円までは訴訟の半額、訴額が増えるとさらに少ない割合の手数料で済みます。

労使間の主張の乖離が著しい場合でなければ、労働審判によって解決できる可能性は高いです。

そのため、手数料を抑える観点からも、労働審判を申し立てるメリットは大きいといえるでしょう。

参考:手数料早見表|裁判所

訴訟よりも早期の解決が期待できる

前述のとおり、労働審判の審理は原則として3回以内の期日で完了するため、訴訟よりも早期に結論を得らえる点が大きなメリットです。

手続きが長引けば長引くほど、時間と労力の両面から、当事者には大きな負担がかかります。

労使間の主張の乖離が著しい場合、訴訟との二度手間になってしまうおそれがありますが、そうでなければ労働審判による早期解決を目指すとよいでしょう。

労働審判による解決の対象となる労使トラブルの例

労働審判では、さまざまな労使間のトラブルについて審理を求めることができます。

労働審判が申し立てられることの多い労使トラブルの代表例は、以下のとおりです。

残業代の未払い

労働時間を正しくカウントしない、労働基準法のルールを正しく適用しないなどの原因により、残業代の未払いが発生しているケースは往々にして存在します。

労働者は未払い残業代の全額の支払いを求める一方で、使用者はその全部または一部を認めず、紛争に発展することが多いです。

残業の証拠さえ揃っていれば、労働審判を通じて、労働者の主張どおりに残業代請求が認められる可能性が高いでしょう。

違法な長時間労働

未払い残業代とセットで問題になりやすいのが、違法な長時間労働です。

労働基準法32条では、労働時間の上限は原則として「1日8時間・1週間40時間」と定められています(法定労働時間)。

労使協定(36協定)を締結すれば、法定労働時間を超えて労働者を働かせることは可能です(労働基準法36条1項)。

しかしそれでも、36協定で定められた上限時間が適用されるほか、法律上も時間外労働には一定の制限が設けられています(同条3項~6項)。

法律上認められた労働時間を超えて、労働者が使用者に働かせている場合、違法な長時間労働の廃止を求める労働審判が申し立てられるケースがあります。

不当解雇

解雇が客観的・合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、その解雇は違法・無効となります(労働契約法16条)。

これは「解雇権濫用の法理」と呼ばれ、使用者による一方的な労働者の解雇を厳しく制限しています。

しかしながら、気に入らない労働者を安易に解雇する使用者が存在することも、残念ながら事実です。

もし不当解雇が行われた場合、解雇の無効・復職・解雇期間中の賃金支払いなどを求めるために、労働審判が申し立てることが有力な対処法です。

労災に関する損害賠償請求

業務中または通勤中に負傷し、病気に罹り、または死亡した場合は労働災害(労災)として取り扱われます。

労災による損害は労災保険給付によって補填されますが、精神的損害に相当する慰謝料が補償対象外であるなど、補償額が実損害に不足するケースも多いです。

不足額については、使用者責任(民法715条1項)や安全配慮義務違反(労働契約法5条)を根拠として、会社の責任を追及することが考えられます。

労働審判では、このような労災に関する会社の責任を根拠として、会社に損害賠償を請求することも可能です。

ハラスメントに関する損害賠償請求

セクハラやパワハラなど、職場におけるハラスメントについては、会社は労働者が被害に遭わないよう必要な措置を講ずる義務を負っています(労働契約法5条男女雇用機会均等法11条以下労働施策総合推進法30条の2以下)。

会社が適切な措置を講ずることを怠った場合には、労働審判を通じて損害賠償を請求することが可能です。

労働審判の手続きの流れ

労働審判に臨む際には、手続きの大まかな流れを事前に把握しておくと安心です。

申立てから手続きの終了までは、おおむね以下の流れで進行します。

労働審判の申立て

労働者が申立人となる場合、使用者の本店や事業所を管轄する地方裁判所に対して、労働審判の申立てを行います(労働審判法2条1項)。

労働審判の申立てに必要となる主な書類等は、以下のとおりです。

<必要書類等>

期日の指定・会社による答弁書などの提出

労働審判の申立てが受理されると、裁判所が労働審判期日を指定します。

第1回の労働審判期日までに、使用者側が答弁書などを提出し、労使双方の主張が出揃うことになります。

労働者側としては、使用者から提出された答弁書の内容を確認して、反論を検討しておきましょう。

労働審判期日における審理

労働審判期日は、非公開で行われます(労働審判法16条)。

裁判所からは裁判官と労働審判員2名が参加し、提出済の主張書面・証拠資料を確認・検討するとともに、必要に応じて追加で証拠調べを行います(同法17条1項)。

審理は原則として、3回以内の期日で終結し(同法15条2項)、その間に労働審判委員会が事件に関する心証を形成します。

調停案の提示

労働審判手続きでは、労働審判によって強制的に結論を示す前に、労使間での調停が試みられます。

労使双方は、労働審判がなされたと仮定した場合の見通しを踏まえて、調停案を受け入れることの是非を検討することになります。

調停成立or労働審判

労働審判委員会が提示する調停案に対して、労使双方が同意した場合には調停成立となり、合意内容に従って紛争が解決されます。

これに対して、調停が不成立となった場合には、労働審判委員会によって労働審判が行われます。

5-6. 労働審判に対する異議申立て
労働審判に関しては、審判書の送達または労働審判の告知を受けた日から2週間以内に、裁判所に対して異議申立てを行うことができます(労働審判法21条1項)。

適法な異議申立てが行われた場合、労働審判は効力を失うとともに(同条3項)、自動的に訴訟手続きへと移行します(同法22条1項)。

一方適法な異議申立てがなかった場合には、労働審判の内容が確定し、労使双方を拘束します。

労働審判に臨む際に必要な準備は?

労働審判のゴールは、労働審判委員会に対して、労働者側の主張を正当であると認めてもらうことです。

そのためには、実際の申立てを行う前に、十分な事前準備を行う必要があります。

さらに、労働者側にとってできる限り有利な結論を得るため、期日の進行を見ながら臨機応変に対応できる準備も整えておきましょう。

請求の正当性がわかる内容の申立書を作成する

労働審判の申立てをする際に提出する書類の中では、申立書がもっとも重要です。

申立書には、労働者側の主張内容を、法律上の要件に沿って記載する必要があります。

裁判官・労働審判員に対して、労働者側の主張が正当であることを説得的に伝えるため、申立書の作成は弁護士に依頼することをお勧めいたします。

主張する事実を裏付ける証拠を収集・提出する

労働審判における判断は、基本的に証拠によって認定された事実に基づいて行われます。

そのため労働者としては、主張する事実を立証するに足る証拠を収集し、裁判所に提出しなければなりません。

たとえば残業代請求であれば、タイムカードの記録など残業の事実を示す証拠や、給与明細など賃金水準に関する証拠などが必要です。

不当解雇であれば、解雇に関する使用者とのやり取りや、解雇理由証明書などが証拠となるでしょう。

典型的な証拠が手元にない場合は、立証に役立つ証拠の種類や収集方法を、ケースバイケースで検討しなければなりません。

その際には、法律上の要件事実に関する知識や、裁判官の判断傾向に関する実務感覚などが重要になります。

弁護士に依頼すれば、証拠収集の方針についても、状況に応じたアドバイスを受けられます。

予想される会社の反論に対する再反論を準備しておく

労働審判の申立書を裁判所に提出する時点で、使用者側から提示される反論の内容は、ある程度予想することができます。

予想される会社の反論に対しては、労働審判期日においてスムーズに再反論を行えるように準備しておくことが大切です。

争点となっている問題ごとに、使用者側からどのような反論が予想されるかについては、弁護士にアドバイスを求めるとよいでしょう。

妥協できる大まかなラインを決めておく

労働審判期日では、必ず労働審判委員会により調停が試みられます。

労働者としては、あくまでも労働審判に委ねることも一策ですが、状況に応じて調停を目指すという選択肢も持っておいた方がよいでしょう。

たとえば労働審判期日に臨んだ結果、思いの外、労働者にとって旗色が悪くなってしまうケースもあり得ます。

その場合、労働者にとって、あまりにも不利な労働審判が行われてしまうおそれがあるので要注意です。

労働審判で予期せぬ不本意な結論が出されるくらいなら、前もって調停で合意による解決を図ることも、有力な選択肢といえます。

また、労働者にとって有利に審理が進んでいる場合でも、調停を受け入れることのメリットはあります。

労働審判によって結論が出されても、使用者から異議申立てがあれば訴訟に発展し、手続きが長期化してしまいます。

労働審判の手続き内で調停に応じれば、こうした手続きの長期化を回避できるのです。

そのため早期解決という観点を視野にいれて、どの程度のラインまでであれば妥協して調停を受け入れられるかを、事前に検討しておきましょう。

妥協の相場観が分からない場合は、弁護士に相談するとアドバイスを受けられます。

まとめ

労働審判手続きを利用すると、労使間でこじれてしまった紛争を、迅速に解決できる可能性があります。

裁判官や労働審判員に対して、労働者側の主張を説得的に伝えるためには、申立書の作成・証拠の収集などを含めた事前準備をきちんと行うことが大切です。

弁護士に相談すれば、労働審判手続きに向けた準備を一括して任せられることに加えて、期日の進行についても臨機応変に対応することが可能になります。

労使間紛争を解決するため、労働審判手続きの利用をご検討中の方は、一度弁護士にご相談ください。

労働審判でお悩みの方は弁護士へご相談ください!

労働審判では、相手の反論に対して論理的かつ客観的な証拠に基づいて回答することが望ましいため、裁判所も弁護士をつけることを推奨しています。

弁護士なら、審判や訴訟だけではない解決策も豊富に持っています。

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この記事の調査・編集者
みぞ
2017年にライターとしてアシロに入社し、主に交通事故とIT分野の執筆に携わる。2019年によりIT媒体の専任ディレクターになり、コンテンツの執筆・管理などを行っている。