労働審判では、相手の反論に対して論理的かつ客観的な証拠に基づいて回答することが望ましいため、裁判所も弁護士をつけることを推奨しています。
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残業代の未払いや不当解雇など、企業側とトラブルがあった場合には労働局への相談や労働組合での団体交渉などさまざまな解決方法がありますが、その中の1つに「労働審判」が挙げられます。労働審判は雇用関係や労使慣行などの専門家が関与し、訴訟よりも迅速な解決が目指せるという特徴があり、年間でおよそ4,000件が申し立てられています(※)。
もっとも、労働審判は法律的な知識を必要とすることもあり、利用前には内容を十分理解しておくことが望ましいでしょう。そこでこの記事では、労働審判とは何か、といった基本的なことから、どういった流れで手続きをすすめるのか、どういった準備をする必要があるのかなどについて解説します。これから労働審判を検討している人は参考にしてください。
(※)参考:第91表 労働審判事件数―事件の種類及び新受,既済,未済―全地方裁判所
労働審判では、相手の反論に対して論理的かつ客観的な証拠に基づいて回答することが望ましいため、裁判所も弁護士をつけることを推奨しています。
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労働審判とは、労働者と企業との間で発生したトラブルについて、労働審判官1名と労働審判委員2名からなる労働審判委員会が間を取り持ちながら、審理によって解決を計る、裁判所を通じた手続きです。
原則として3回を期日とし、その期間内で事実関係や法的主張について労働審判委員会が双方から意見を聞き、トラブルの内容を整理します。話し合いで解決策がまとまれば調停が成立し、労働審判は終了です。まとまらない場合は労働審判委員会が労働審判という解決策を示します。調停も労働審判も訴訟と同じ効力を持ち、内容によっては強制執行を申し立てることも可能です。
審判の結果に納得できない場合には、異議申し立てをすることができ、通常の訴訟に移行することとなります。
労働審判には次のような特徴があります。
これは決定的に裁判と異なる点です。労働審判の審理は、原則として3回以内の期日において終結しなければならないと定められています(労働審判法15条2項)。期日は1か月おき程度の頻度で開催されるため、トータルの審理期間は、おおむね3か月以内です。
一方で、訴訟は通常であれば半年〜1年とかかるケースが多くみられます。訴訟は法定を何回開くかについて制限がありませんし、特に労使トラブルは事実関係についても法律上の主張立証も他の事件に比べて激しい争いになることも少なくないからです。
労働審判は迅速に労使紛争を解決し得る手続きといえるでしょう。
労働審判においては、当事者の権利関係を確認したうえで、労働紛争を解決するために相当と認める事項を定めることができます(労働審判法20条2項)。
訴訟で判決に至った場合には、原告の主張を認めるか認めないかの「黒か白か」の判断となります。一方の労働審判であれば、権利関係の有無や金銭支払いだけを決めるのではありません。
たとえば、金銭支払いであれば、分割払いを命じたり、支払いに一定の条件を付けたりするなど、より実態に即した解決を示すことができる点がメリットです。
また労働審判の過程では、調停により紛争を解決することも可能となっています。調停とは当事者同士の話し合いで互いが譲歩し解決を計ることです。
可能な限り調停による合意解決を模索しつつ、最終的な労働審判でも柔軟な解決を提示できる点が、労働審判手続きの大きな特徴です。
労働審判手続きには、裁判官とともに、2名の労働審判員が関与します。訴訟が裁判官のみによって審理されることと比較すると、労働審判では、多様なバックグラウンドを持つ者が判断権者である点が特徴的です。
労働審判員には、雇用関係の実情・労使慣行などについて知識と経験を備えた人が、最高裁判所によって任命されます。
労働審判員の知見を活用することにより、労使間の細かい事情を汲み取ったうえで、適正妥当な解決を示すことが期待できるのです。
労働審判では、主に口頭でやり取りが行われます。通常訴訟の場合であれば、準備書面などの書面であなたの意見を主張する必要がありますが、労働審判では第一回期日までに、労働者側の主張を書いた申立書やそれに対する会社側の反論を書いた答弁書といった書面のほか、事実関係を証明する証拠はすべて提出し終わります。
そして、労働審判期日には、労働審判委員会と直接口頭でやり取りをしなければなりません。その場でただちに発言をする必要があり、事前の準備や臨機応変さが求められます。
労働審判では、最終的にかならず解決策が提示されるという権利判定機能があるのも特徴の1つです。つまり、当事者者同士が同意した場合には「調停」によって、話し合いで合意できない場合には「労働審判」という労働審判委員会の判断によって解決策が示されます。
前述の通り労働審判の結果は公権的判断で訴訟と同じ効力を持ちますから、会社側としては参加しない場合に一定のリスクがあるのです。つまり、労働局がおこなう「あっせん手続き」とはことなり、会社側としても労働審判に参加して一定の妥協点まで応じたいというインセンティブが働くことになります。
すでに記事中で触れましたが、ここでは労働審判によってどういった結果が得られるのか確認しておきましょう。
労働審判における調停とは、前述の通り当事者同士でトラブルの解決策について合意を計る手続きのことです。労働審判の約70%程度は調停で終了します(※)。
労働審判手続きでは、調停で解決できるのであればこれを試みることと定めがあり、第1回目の期日終了時から調停を試みられることも少なくありません。
調停が成立すると、「労働審判手続期日調書」が作成され、調停条項が記載されます。解決金や支払期日などが記載されます。この調停は裁判上の和解と同じ効力があり、仮に期日までに金銭が支払われなかった場合は口座差し押さえなどの手続きも可能です。
(※)参考:弁護士白書
労働審判とは、調停に至らない場合に労働審判委員会によって行われる解決策の提示のことです。訴訟における判決のようなものといえばイメージしやすいかもしれません。
労働審判の審理の結果、当事者同士の権利関係やこれまでの経過を踏まえて、金銭の支払いや権利関係の確認について相当と定める条項を決定し、労働審判委員会から口頭で告知されます。
労働審判によって終了するのは、全体のうちのおよそ14~18%前後です(※)。
(※)参考:弁護士白書
労働審判に不服がある場合には異議申立てが可能です。2週間以内に行う必要があり、その後は訴訟手続きに移行します。異議申し立てがあった場合には、労働審判は効力を失います。一方、異議申し立てがなかった場合には労働審判は確定となります。
労働審判では、さまざまな労使間のトラブルについて審理を求めることができます。労働審判が申し立てられることの多い労使トラブルの代表例は、以下のとおりです。
労働時間を正しくカウントしない、労働基準法のルールを正しく適用しないなどの原因により、残業代の未払いが発生しているケースは往々にして存在します。
労働者は未払い残業代の全額の支払いを求める一方で、使用者はその全部または一部を認めず、紛争に発展することがあります。
残業の証拠さえ揃っていれば、労働審判を通じて、労働者の主張どおりに残業代請求が認められる可能性が高いでしょう。
未払い残業代とセットで問題になりやすいのが、違法な長時間労働です。労働基準法32条では、労働時間の上限は原則として「1日8時間・1週間40時間」と定められています(法定労働時間)。
たしかに、36協定を締結すれば、法定労働時間を超えて労働者を働かせることは可能です(労働基準法36条1項)。36協定とは、時間外や休日労働に関する労使協定のことで、労働基準法の上限を超えて社員を働かせるために必要なものです。締結後は所轄の労働基準監督署へ届け出なければなりません。
36協定では時間外労働をする業務の種類や、1日、1ヵ月、1年ごとの時間外労働の上限などを定めます。それでも、36協定で定められた上限時間が適用されるほか、法律上も時間外労働には一定の制限が設けられています(同条3項~6項)。
法律上認められた労働時間を超えて、労働者が使用者に働かせている場合、違法な長時間労働の廃止を求める労働審判が申し立てられるケースがあります。
解雇が客観的・合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、その解雇は違法・無効となります(労働契約法16条)。
これは「解雇権濫用の法理」と呼ばれ、使用者による一方的な労働者の解雇を厳しく制限しています。
しかしながら、気に入らない労働者を安易に解雇する使用者が存在することも、残念ながら事実です。
もし不当解雇が行われた場合、解雇の無効・復職・解雇期間中の賃金支払いなどを求めるために、労働審判を申し立てることが有力な対処法です。
業務中または通勤中に負傷し、病気に罹り、または死亡した場合は労働災害(労災)として取り扱われます。
労災による損害は労災保険給付によって補填されますが、精神的損害に相当する慰謝料が補償対象外であるなど、補償額が実損害に不足するケースも多いです。
不足額については、使用者責任(民法715条1項)や安全配慮義務違反(労働契約法5条)を根拠として、会社の責任を追及することが考えられます。
労働審判では、このような労災に関する会社の責任を根拠として、会社に損害賠償を請求することも可能です。
セクハラやパワハラなど、職場におけるハラスメントについては、会社は労働者が被害に遭わないよう必要な措置を講ずる義務を負っています(労働契約法5条、男女雇用機会均等法11条以下、労働施策総合推進法30条の2以下)。
会社が解決の場を用意する、ハラスメントを行った社員を懲戒処分するなどの適切な措置を講ずることを怠った場合には、労働審判を通じて損害賠償を請求することが可能です。
労使間の協議がうまくまとまらない場合、労働審判は非常に有効な手段です。それには次のようなメリットがあるからです。
労使双方の主張には多分に主観的な側面があるため、当事者間の交渉では折り合いが付かないケースも多いです。この点労働審判では、労働審判委員会が客観的な立場から、当事者が提出する証拠に基づいて判断を行います。
特に労働者が、会社の違法行為に関する証拠を十分に確保できている場合には、労働審判により有利な解決を得られる可能性が高いでしょう。
労働審判に発展すると、最終的には労働審判委員会の判断により、会社にとって不利な結論が示される可能性があります。使用者としては、そうなる前に受け入れ可能な落としどころを見つけて、労働者側との和解を目指すのが合理的でしょう。
交渉では独自の論理に基づく主張を行っていた使用者も、労働審判となれば、自身の主張が客観的な立場から合理的かどうか検証することを迫られます。その結果として、会社の強硬な態度が崩れ、和解に至ることも十分考えられます。
労働審判の手数料は、訴訟よりも安く設定されています。具体的には、訴額1000万円までは訴訟の半額、訴額が増えるとさらに少ない割合の手数料で済みます(※)。
労使間の主張の乖離が著しい場合でなければ、労働審判によって解決できる可能性は高いです。そのため、手数料を抑える観点からも、労働審判を申し立てるメリットは大きいといえるでしょう。
(※)参考:手数料早見表|裁判所
前述のとおり、労働審判の審理は原則として3回以内の期日で完了するため、訴訟よりも早期に結論を得らえる点が大きなメリットです。手続きが長引けば長引くほど、時間と労力の両面から、当事者には大きな負担がかかります。
労使間の主張の乖離が著しい場合、訴訟との二度手間になってしまうおそれがありますが、そうでなければ労働審判による早期解決を目指すとよいでしょう。
労働審判に臨む際には、手続きの大まかな流れを事前に把握しておくと安心です。申立てから手続きの終了までは、おおむね以下の流れで進行します。
労働者が申立人となる場合、使用者の本店や事業所を管轄する地方裁判所に対して、労働審判の申立てを行います(労働審判法2条1項)。申立てが適法なものであれば、裁判所は労働審判官1名と労働審判員2名を準備して労働審判委員会を組織します。
申し立てには次のような書類が必要ですので用意しておいてください。
労働審判の申立書は、原則として相手企業側の本店所在地を管轄する裁判所です。裁判所用の原本1通と、相手方1通と労働審判員用の2通の合計写し3通を送付しなければなりません。
申立書の作成は弁護士に代理人の依頼をすれば代わって作成してもらえます。もしご自身で作成したい場合には、記載内容は退職や金銭請求など、審理の内容によって少しずつ変わりますので、裁判所の雛形を参考にしてください。
申立時には、申立書のほか、あなたの主張を立証するような証拠についても提出しなければなりません。内容に応じて次のような証拠を集めておいてください。
さらに、証拠証明書といって、労働審査委員会へ提出する証拠をリスト化した書面も併せて提出する必要があります。裁判所の書式を参考に作成してください。
労働審判の申立てが受理されると、裁判所が労働審判期日を指定します。第1回目期日は、原則として申立てから40日以内です。そして、裁判所は呼出し状と会社分の申立書を会社に送付します。通常、会社側はこの時点で労働審判を起こされた事実を把握します。
第1回の労働審判期日までに、会社側は答弁書などを提出し、労使双方の主張が出揃うことになります。労働者側としては、使用者から提出された答弁書の内容を確認して、反論を検討しておきましょう。
労働審判期日は、非公開で行われます(労働審判法16条)。
裁判所からは裁判官と労働審判員2名が参加し、提出済の主張書面・証拠資料を確認・検討するとともに、必要に応じて追加で証拠調べを行います(同法17条1項)。
審理は原則として、3回以内の期日で終結し(同法15条2項)、その間に労働審判委員会が事件に関する心証を形成します。
第一回期日では、まず申立書や答弁書、証拠などから事実関係を把握します。事実整理のために、当事者が口頭で労働審判委員会から質問も行います。
質問の内容は申立ての事実について認められるかどうかといったことのほか、労働審判委員会が気になったことなどが自由に質問されるのが一般的です。
質問が終わった後は、一回目期日から調停が試みられます。そのために、労使の一方を退席させて、もう一方からどこまで譲歩できるかなど調停成立に向けたヒアリングを行います。次にもう一方からもヒアリングを行い、調停成立案がどういったものになるかの見込みを探ります。
労使双方は、労働審判がなされたと仮定した場合の見通しを踏まえて、調停案を受け入れることの是非を検討することになります。労働審判委員会が提示する調停案に対して、労使双方が同意した場合には調停成立となり、合意内容に従って紛争が解決されます。成立しなければ第二回期日に再度の審理が行われます。
第二回期日では第一回期日の内容に応じてさらにトラブルについて検討を行います。第二回目でも調停案が提示され、成立すれば終了しますが、成立しなければ第三回期日に続きます。
第三回期日でも検討ののちに、再度の調停案が提示されます。調停が成立しない場合には、次の労働審判が労働審査委員会により下されます。
調停が不成立となった場合には、労働審判委員会によって労働審判が行われます。労働審判は訴訟でいう判決のようなもので当事者ので、労働審判委員会から主文と理由、要旨などが口頭で伝えられることになります。
次に紹介する異議申立てがなかった場合には、労働審判の内容が確定し、労使双方を拘束します。
労働審判の内容に納得できない場合には、審判書の送達または労働審判の告知を受けた日から2週間以内に、裁判所に対して異議申立てを行うことができます(労働審判法21条1項)。
適法な異議申立てが行われた場合、労働審判は効力を失うとともに、自動的に訴訟手続きへと移行します。
一概には言い切れませんが、平均的には70日前後で終了しているようです。ケースによって状況は変わりますので、かならず平均的な期間で終わるとは言い切れませんが、おおよそ2~3カ月程度だとイメージしておいてください。
なお、労働審判は原則として3回の審理期間が設けられていますが、1回目で終了することも珍しくありません。一般的に30%は1回目で終わるとされており、1カ月程度で終了することもあるようです。一方、3回目の審理まで行ったとしても、長くても6カ月程度しかかからないとされています。
もっとも、労働審判に異議申し立てがあった場合には訴訟手続きに移行します。通常の訴訟は審理に1年程度かかりますので、労働審判がいかに迅速にトラブルを解決できるか理解できるでしょう。
労働審判のみの費用は一般的に3万5,000円以下に収まることが多いでしょう。具体的に必要になる項目としては次のものが挙げられます。
項目 | 内容 | 目安 |
印紙代 | 申立ての手数料 | ~2万5,000円程度 |
予納郵券代 | 裁判所から相手方に郵便物を送付するのに必要となる費用 | 3,000円程度 |
印刷代 | 申立書などの書面を印刷するのに必要な費用 | 2,000円程度 |
郵送費 | 裁判所・相手方に書面を郵送するのに必要な費用 | 1,000円程度 |
交通費 | 裁判所までいくときの交通費 | 3,000円程度 |
合計 | - | ~3万5000円程度 |
最も大きなウェイトを占めているのは印紙代ですが、この金額は労働審判で要求する金額に応じて変わります。とはいえ、通常の訴訟の半額で済みますし、たとえば残業代請求などで1,000万円ほどの高額な請求をする場合でも印紙代は2万5,000円です。ちなみに、請求する金額ごとの印紙代の金額は次の通りです。
求める金額 | 印紙代 | 求める金額 | 印紙代 |
10万円まで | 500円 | 160万円まで | 6,500円 |
20万円まで | 1,000円 | 200万円まで | 7,500円 |
30万円まで | 1,500円 | 300万円まで | 1万円 |
40万円まで | 2,000円 | 400万円まで | 1万2,500円 |
50万円まで | 2,500円 | 500万円まで | 1万5,000円 |
60万円まで | 3,000円 | 600万円まで | 1万7,000円 |
70万円まで | 3,500円 | 700万円まで | 1万9,000円 |
080万円まで | 4,000円 | 800万円まで | 2万1,000円 |
90万円まで | 4,500円 | 900万円まで | 2万3,000円 |
100万円まで | 5,000円 | 1,000万円まで | 2万5,000円 |
なお、労働審判を弁護士に依頼した場合には、別途、弁護士費用がかかります。弁護士費用については、「弁護士に依頼した場合の費用」で解説していますので参考にしてください。
労働審判のゴールは、労働審判委員会に対して、労働者側の主張を正当であると認めてもらうことです。
そのためには、実際の申立てを行う前に、十分な事前準備を行う必要があります。
さらに、労働者側にとってできる限り有利な結論を得るため、期日の進行を見ながら臨機応変に対応できる準備も整えておきましょう。
労働審判の申立てをする際に提出する書類の中では、申立書がもっとも重要です。申立書には、労働者側の主張内容を、法律上の要件に沿って記載する必要があるからです。
裁判官・労働審判員に対して、労働者側の主張が正当であることを説得的に伝えるため、申立書の作成は弁護士に依頼することをおすすめします。
労働審判では、第一回期日までに提出された書面や証拠で労働審判委員会が心証、つまりどのような結論を出すかについて大まかに決定がされます。弁護士に依頼すれば、法律的に有効な申立書が作成できるので、あなたの主張の正当性が伝わりやすく、より有利に労働審判を進められるようになるのです。
労働審判における判断は、基本的に証拠によって認定された事実に基づいて行われます。
そのため労働者としては、主張する事実を立証するに足る証拠を収集し、裁判所に提出しなければなりません。
たとえば残業代請求であれば、タイムカードの記録など残業の事実を示す証拠や、給与明細など賃金水準に関する証拠などが必要です。
不当解雇であれば、解雇に関する使用者とのやり取りや、解雇理由証明書などが証拠となるでしょう。
典型的な証拠が手元にない場合は、立証に役立つ証拠の種類や収集方法を、ケースバイケースで検討しなければなりません。
その際には、法律上の要件事実に関する知識や、裁判官の判断傾向に関する実務感覚などが重要になります。
弁護士に依頼すれば、証拠収集の方針についても、状況に応じたアドバイスを受けられます。あなた自身で労働審判に臨んでしまうと、適切な証拠が用意できず、本来であれば解雇されなかったのに解雇される、手に入れられるはずの損害賠償金が支払われないといったことにもなりかねません。有効な証拠を集めるためにも、弁護士への依頼はとても重要なのです。
労働審判の申立書を裁判所に提出する時点で、使用者側から提示される反論の内容は、ある程度予想することができるでしょう。予想される会社の反論に対しては、労働審判期日においてスムーズに再反論を行えるように準備しておくことが大切です。
とはいえ、会社からの反論に対する再反論について、あなた自身で有効に準備できるとも限らないのが実情です。再反論の準備についても、個別の事情に合わせて法律上の要件などを考慮する必要があるからです。
争点となっている問題ごとに、使用者側からどのような反論が予想され、それについてどのように再反論すべきかについても、あわせて弁護士にアドバイスを求めるとよいでしょう。
労働審判期日では、必ず労働審判委員会により調停が試みられます。
労働者としては、あくまでも労働審判に委ねることも一策ですが、状況に応じて調停を目指すという選択肢も持っておいた方がよいでしょう。
たとえば労働審判期日に臨んだ結果、思いの外、労働者にとって旗色が悪くなってしまうケースもあり得ます。
その場合、労働者にとって、あまりにも不利な結果になるおそれがあるので要注意しましょう。
労働審判で予期せぬ不本意な結論が出されるくらいなら、前もって調停で合意による解決を図ることも、有力な選択肢といえます。
また、労働者にとって有利に審理が進んでいる場合でも、調停を受け入れることのメリットはあります。
労働審判によって結論が出されても、使用者から異議申立てがあれば訴訟に発展し、手続きが長期化してしまいます。
労働審判の手続き内で調停に応じれば、こうした手続きの長期化を回避できるのです。
そのため早期解決という観点を視野にいれて、どの程度のラインまでであれば妥協して調停を受け入れられるかを、事前に検討しておきましょう。
労働審判を有利に進めるためには、弁護士に依頼して代理人になってもらうことをおすすめします。労働審判の煩雑な申立てについて代行してもらえますし、労働審判を有利に進められるからです。ここでは、労働審判を弁護士に依頼した場合のメリットや、どの程度の費用が発生するかについて解説します。
弁護士に依頼するメリットは、上記の通り大きく分けると2つあります。1つは手続きの代行、もう1つが審理を有利に進められることです。
この記事でもお伝えした通り、労働審判を始めるには証拠の収集のほか、申立書や証拠証明書を作成しなければなりません。これらの作成や収集は、労働トラブルの法的知識が必要になることもありますし、さらに、作業が煩雑なことも少なくありません。
とくに、期日が3回で終わる労働審判では、しっかりとした内容の申立書作成と有効な証拠の収集がとても重要です。
弁護士に依頼すれば煩雑な手続きを任せられますので、あなたが法的に有効な書類を作成することに頭を悩ませる必要はありません。また、労働審判には回数制限があることからも、1回の期日に対する負担は大きいもので、失敗ができなことも指摘できます。
さらに、労働審判の審理は、お伝えした通り口頭で進めなければなりません。申立ての段階からしっかりと準備し、あなたに有利になるよう的確に主張・立証を行うには、弁護士のサポートが必要不可欠なのです。
あなた自身で審理に挑んでしまった場合には、適切な返答ができず、不利益を被ることになりかねません。
面倒さを回避するためにも、労働審判で有利な結果を手に入れるためにも、弁護士にぜひ相談することを強くおすすめします。
弁護士に依頼する時には、委任契約書以外にも「委任状」に記載をする必要があります。初めて弁護士に依頼する人の中には「どうして委任契約以外に委任状も作成するの?」と不思議に思われる人もいるかもしれません。
委任状は、弁護士と「委任関係があること」を証明するために必要な書類で、これは労働審判に限らず、相手方との示談交渉や訴訟手続きを代行してもらう際には必ず必要になる書類です。
とくに、労働審判では労働審判法4条に依って弁護士しか代理人になることが認められていませんし、労働審判規則37条が準用する非訟事件手続規則16条1項から、委任状を提出する必要があります。
委任状は適さない人や頼まれもしていない人が代理人になるといったリスクを防ぐとても重要な書類なのです。
委任状の内容には特に決まった形式はありません。主に次のような記載があることが通常です。
委任状の雛形としては次のようなものが代表的です。
委任状 令和〇年〇月〇日 (住所) 東京都新宿区新宿 〇―〇―〇 (氏名) 山田 太郎 ㊞ 私は、次の弁護士を代理人と定め、下記の事件に関する各事項を委任します。
弁護士 鈴木 太郎 (第2東京弁護士会所属) 住 所 〒◯◯◯-◯◯◯◯ 東京都新宿区新宿◯―◯―◯ 〇〇〇ビル 10階 鈴木総合法律事務所 電 話 03-◯◯◯◯-◯◯◯◯ FAX 03-◯◯◯◯-◯◯◯◯ 記
第1 事件 当事者 申立人 山田太郎 相手方 株式会社〇〇○○ 裁 判 所 東京地方裁判所 事 件 未払割増賃金等請求労働審判事件
第2 委任事項 1 上記に関する一切の行為 2 和解、調停、請求の放棄・認諾、申立ての取下げ、参加による脱退 3 反訴・控訴・上告及び上告受理の申立て又はその取下げ 4 終局決定に対する抗告若しくは異議又は非訟事件手続法第77条第2項の申立 て 5 弁済の受領、供託並びにその取戻・還付・利息の請求、受領 6 前号の抗告、異議又は申立ての取下げ 7 労働審判の訴訟移行後の訴訟手続に関する一切の事項 8 労働審判の訴訟移行後の訴訟手続に関する以下の事項 (1) 和解、調停、請求の放棄・認諾、訴の取下げ、参加による脱退 (2) 反訴・控訴・上告及び上告受理の申立て又はその取下げ 9 復代理人の選任 以上 |
皆さんが気になるのは④の委任事項かと思われますが、どういった行為を弁護士に依頼するかについては、トラブルの内容に応じて個々に記載されるものです。もし、少しでもわからない点があれば、弁護士に直接聞くようにしてください。
弁護士に労働審判を依頼した場合には、当然費用がかかります。相場がどれくらいかについては、事務所によって費用体系が異なりますし、個々の状況に応じて発生する報酬額も異なり一概にはいいきれません。
もっとも、一般的には30万~40万円+成功報酬で、合計でおよそ80万~100万円程度が操舵になるでしょう。項目としては次のようなものが通常です。
項目 | 内容 |
相談料 | 相談のときに発生する費用 |
着手金 | 弁護士に法律実務を行ってもらうことに対する報酬 |
成功報酬 | 労働審判で獲得できた金銭の一部 |
実費 | 交通費などの実費 |
日当 | 労働審判への参加など事務所以外での仕事が発生した場合に支払う費用 |
労働審判手続きを利用すると、労使間で発生した紛争を、迅速に解決できる可能性があります。
裁判官や労働審判員に対して、労働者側の主張を説得的に伝えるためには、申立書の作成・証拠の収集などを含めた事前準備をきちんと行うことが大切です。
弁護士に相談すれば、労働審判手続きに向けた準備を一括して任せられることに加えて、期日の進行についても臨機応変に対応することが可能になります。
労使間紛争を解決するため、労働審判手続きの利用をご検討中の方は、一度弁護士にご相談ください。
労働審判では、相手の反論に対して論理的かつ客観的な証拠に基づいて回答することが望ましいため、裁判所も弁護士をつけることを推奨しています。
弁護士なら、審判や訴訟だけではない解決策も豊富に持っています。
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