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贈与契約書のひな型と作成ポイント|生前贈与でトラブルを防ぐために
2023.07.14
「ほかの相続人が勝手に相続遺産を使い込んでしまった」
「不当に使われてしまった相続遺産を取り戻したい」
遺産相続では相続人同志でトラブルになることが多く、不当な遺産の使い込みもその一例です。けれど、正しい知識がなければどう対処すればよいかわからないでしょう。
本記事では、相続財産を不正に使い込んだ相続人に対しておこなう「不当利得返還請求」とは何か解説しています。
そのうえで返還請求の方法や手順、成功させるポイント、弁護士に依頼するメリットまで解説しているのでぜひ参考にしてください。
本記事を参照することで、ほかの相続人が不当に遺産を使い込んだときの正しい対処法を把握できます。
不当に使い込まれてしまった遺産を取り戻したくても、方法や本当に取り戻せるのかがわからずに悩んでいませんか。
結論からいうと、使い込まれた遺産を取り戻せるかどうかはケースバイケースのため、一度弁護士へ相談・依頼することをおすすめします。
弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットを得ることができます。
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不当利得返還請求とは、不当に得た利益の返還を求める手続きのことです。
たとえば遺産相続で、ほかの相続人が不当に使い込んだ場合、不当利得返還請求をおこない遺産の返還を求めることができます。
まずは、返還請求ができる要件と時効について詳しく解説していきます。
不当利得返還請求の要件は、民法703条に定められています。
(不当利得の返還義務)
第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
わかりやすくいうと、以下の4つの要件を満たした場合に、不当利得返還請求が認められます。
たとえば遺産分割において、分割協議前の遺産を、相続人の1人が自身のために使用したケースを考えてみましょう。
遺言書がない限り、遺産は相続人全員で共有するのが基本です。
そのため、財産を勝手に使用するということは、ほかの相続人の分まで使い込んで、自身が得をしている状態になります。
この場合、上記4つの要件を全て満たすため、不当利得返還請求できる可能性は高いといえるでしょう。
不当利得返還請求権は財産の使い込みを知ったときから5年、実際に財産を使い込まれたときから10年が経過すると時効が成立し消滅します。
(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
時効が成立して不当利得請求権が消滅すると、使い込まれた財産を取り戻せなくなるので注意してください。
遺産相続において以下のケースに該当する場合、不当利得が疑われます。
被相続人の口座から高額なお金が頻繁に引き出されている場合、不当利得が疑われます。
親の生活費に使用するのであれば、それほど高額にはならないはずです。
また、引き出す回数も月に数回程度で十分でしょう。
もし10万円を超える程度の高額な引き出しが繰り返されているようであれば、不当利得を疑うべきといえます。
ただし、医療費や介護費用には、ある程度のお金が必要になるケースも少なくありません。
相手方との関係性を壊さないためにも、最初から不当利得と決めつけるのではなく、冷静に事実確認していくことが大切です。
被相続人の判断力が著しく下がっていたうえで、資産状況に大きな変化がみられる場合も、不当利得を疑ったほうがよいかもしれません。
たとえば、被相続人が重度の認知症を患っていると、預金の引き出しや保険の解約といった法律行為に制限がかかります。
それにも関わらず、資産状況に大きな変化がみられるときは、勝手に使い込まれている可能性があるのです。
被相続人の有価証券などが無断で処分された形跡がある場合も、不当利得が疑われます。
株や証券、ゴルフの会員権などは一定の価値を有するものです。
被相続人やほかの相続人に無断で処分するのは許されません。
そのほか、被相続人が骨董品・宝石・土地・自動車などを所有している場合も、相続問題に発展しやすいので注意してください。
相手が不当利得によって利益を得ている場合、どの程度まで回収できるのでしょうか。
本項では相続において、不当利得返還請求をおこなった際に、回収できる金額をみていきましょう。
不当利得返還請求の回収金に関しては、相手方に悪意があったかなかったかによって適用されるルールが異なります。
それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。
相手方に悪意がなかった場合、不当利得返還請求で回収できるのは「現存利益」の額が限度です。
「現存利益」とは、不当利得によって得た利益のなかで、現在でも利得者の手元に残っている分を指します。
たとえば、相手方が遺産の預貯金を自分の口座に移していたとしましょう。
このケースでは移された預金のうち、まだ処分されず口座に残っている分が現存利益となるのです。
その相続人が不当利得という認識がなく(悪意なく)財産を受け取っていた場合、たとえ遊びのために使用されていたとしても、残っている分だけしか回収することができません。
相手方が悪意で不当利得により利益を得ていた場合は、不当利得全額に利息と損害賠償金を加えた額を請求できます。
仮に不当利得で得た利益が全て使い込まれてしまっていた場合も、例外ではありません。利得者は請求された額を用意して返還する必要があるのです。
悪意の受益者の返還義務に関しては、民法で以下のとおり定められています。
(悪意の受益者の返還義務等)
第七百四条 悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
なお、悪意の受益者とは、不当利得であることを承知のうえで、財産を受け取った者のことを指します。
利息は法定利率年3%が適用され、損害賠償金は損害の実態に即した金額を算出することになります。
相続に関して不当利得返還請求ができるのは、請求者の法定相続分までです。
法定相続分の割合は、被相続人との関係に応じて以下のように定められています。
たとえば、相続遺産が1,000万円だった場合、配偶者が子どもに対して請求できるのは500万円までです。
余計なトラブルを避けるためにも、請求できる限度額は弁護士などとも相談しながら正確に把握しておきましょう。
次に、不当利得返還請求をおこなう際の方法と手順を紹介します。
まずは、不当利得の証拠を集めて、請求額を計算することから始めましょう。
証拠を持たずに請求しても、悪意のある相手方には素直に応じてもらえない可能性があります。
主な収集場所と、得られる証拠の種類は以下のとおりです。
場所 | 得られる証拠 |
亡くなった方の自宅 | ・預金通帳 ・定期預金の解約請求書 ・生命保険の解約請求書 ・不動産の売買契約書 ・株式の取引報告書 ・診断書や介護関係の領収証 ・贈与契約書 ・葬儀代の請求書や領収書 ・被相続人の日記やメモ ・パソコンやスマートフォンのメール |
金融機関 | 預金口座の取引履歴・普通預金や定期預金の解約請求書 |
保険会社 | 生命保険の解約書類 |
証券会社 | 証券口座の取引明細 |
公証役場 | 遺言書・贈与契約書 |
役場や介護施設 | 不動産の名寄帳(課税台帳)・介護記録 |
葬儀会社 | 葬儀費用一式の請求書や明細 |
ただし、法律の知識がなければ、証拠としての有用性を判断するのが難しいケースもあります。
ご自身で対応できそうにない場合は、早めに弁護士に相談し、アドバイスを受けるようにしましょう。
証拠集めと金額の算定が終わったら、内容証明郵便で不当利得返還請求をおこないましょう。
内容証明郵便とは、文書の内容や送付日、宛名、差出人などを郵便局が証明してくれるサービスです。
口頭だけで請求しても、相手に意思表示をおこなった証拠は残らないので注意してください。
また、文書の作成は弁護士に依頼し、弁護士名で送付することをおすすめします。
こちらに弁護士がついていると相手方が裁判になるのをおそれ、速やかに返還してくれることも少なくありません。
内容証明郵便を送付して相手から回答があった場合、返還に向けた協議を進めていくことになります。
話し合うべき内容は、返済金額や返済時期、返済方法などです。
ただし、当事者同士では冷静に話し合いを進められないケースも少なくありません。
親しい親族と金銭に関する話をすることに、精神的な負担を感じる方もいるでしょう。
そのため、相手方と協議する際は、弁護士を代理人に立てることをおすすめします。
弁護士に依頼すれば、相手と直接対峙せずに話し合いを進めることが可能です。
相手が返還に応じようとしない場合も、法的な観点にもとづいた巧みな交渉によって解決を目指してくれるでしょう。
交渉が成立した場合は、合意書の作成に移りましょう。
口約束だけで済ませてしまうと、お互いの認識にずれがあった場合や相手から裏切られた場合などに、問題が再燃してしまいます。
いつ、いくら、どのような方法で返還するのかを文書に明記し、保管しておくことが大切です。
合意書の内容どおりに財産が返還されたあとは、速やかに遺産分割協議をおこない、各自の相続分を決めておきましょう。
交渉が不成立になった場合は、訴訟の提起を検討しましょう。
相手が不当利得を認めないケースや、そもそも交渉に応じようとしないケースも少なくありません。
裁判では、不当利得が生じていることと、自分自身に返還請求権があることを立証する必要があります。
裁判を有利に進めるためにも、弁護士の助言を受けながら、できるだけ多くの証拠を集めることが重要です。
次に、不当利得返還請求を成功させるための4つのポイントを紹介します。
不当利得返還請求を成功させるためには、使い込みの調査を念入りにおこなうことが大切です。
たとえば被相続人の預金口座に不審な出金記録がある場合、誰が何のために出金したか正確に把握する必要があります。
被相続人の医療費などとして正当に使われたものか、不正な目的で使われたか用途や目的を確認しなくてはなりません。
このとき、はじめから不当利得と決めつけてしまうと、余計なトラブルにつながるおそれがあります。フラットな視点で、慎重に事実関係を確認していきましょう。
利得者に悪意があったことを裏付ける証拠を集めることも重要です。
たとえば財産を処分できない立場にあることを分かっていながら、使い込みをした事実を証明できれば、不当利得の全額を請求できます。
反対に悪意であったことを証明できない場合、返還できるのは現存利益のみとなってしまうのです。
この場合、すでに使い込まれていた分は、返還されないことを理解しておきましょう。
あらかじめ相手の反論を想定して対策を検討しておくことも、不当所得返還請求を成功させるためのポイントです。
財産の使い込みを相手に認めさせる際に、相手が主張してくる反論はある程度予測できます。
そのため、あらかじめ対策を検討しておけば、話し合いを有利に進められるでしょう。
【使い込みを疑われた人がよく使う反論の例】
たとえば、そもそも預金を引き出していないと反論してくるケースはよくあります。
この場合は、相手方が預金を管理しており、実際に預金を引き出していた事実を立証しなければなりません。
また、被相続人の生活費や治療費などとして使用したと相手が反論することもあるでしょう。
そのときは、被相続人の生活スタイルや治療内容に見合わない額が頻繁に引き出されている、といった再反論が考えられます。
被相続人から指示された、被相続人から贈与を受けたと反論されたときには、事実を証明する書類などの提出を求めましょう。
不当利得返還請求をおこなう際は、相続問題が得意な弁護士に相談して一緒に対策を検討するのが最良の方法です。
多くの場合、相続問題にはさまざまな法律が関与します。
法律の知識がない個人で対応しようとしても、トラブルの複雑化・長期化を招いてしまいかねません。
豊富な解決実績のある弁護士であれば、証拠集めや相手方への請求、裁判でのサポートなどを全て任せられます。
相手方と直接交渉することも避けられるので、精神的な負担も軽減できるでしょう。
次に、不当利得返還請求を弁護士に相談・依頼するメリットを紹介します。
弁護士に相談・依頼すれば、相続財産の回収が可能かどうかを判断してもらえます。
そもそも不当利得返還請求をおこなうためには、一定の要件を満たしていなければなりません。
相続財産の回収可否については、無料相談のなかである程度判断してもらえる可能性もあるので、まずは気軽に相談してみてください。
不当利得の証拠収集を任せられる点も、弁護士に相談・依頼するメリットのひとつです。
不当利得返還請求を成功させるためには、いかに有効な証拠を集められるかが非常に重要です。
しかし、調査対象が多岐にわたる場合や、時間に余裕がない場合は、十分な証拠を集められないケースもあるでしょう。
弁護士であれば弁護士会照会制度を利用し、職権で預金口座の取引履歴などを調査できます。
有価証券が処分されたり、保険を解約されたりしている場合でも、証券会社や保険会社への調査で足取りをたどることが可能です。
また、弁護士に相談すれば、証拠の集め方なども助言してもらえるでしょう。
なかには、被相続人の自宅にある書類など、当事者でなければ入手しにくい証拠もあるので、弁護士と共同で作業を進めることをおすすめします。
弁護士に相談・依頼すれば、相手方の悪意を証明できる可能性が高まります。
不当利得返還請求をおこなった際に、相手方から悪意がなかったと反論されるケースも少なくありません。
その場合でも、弁護士が味方についていれば、証拠に基づく論理的な再反論によって、相手側の主張を的確に否定できます。
また、弁護士は交渉のプロでもあります。
場合によっては、裁判で争う前に相手自身に悪意を認めさせるよう誘導できるかもしれません。
相手と和解できたあとの合意書や遺産分割協議書などを作成してくれる点も、弁護士に相談するメリットといえるでしょう。
合意書や遺産分割協議書の内容が不十分だった場合、トラブルが再燃してしまう可能性があります。
お互いの認識をすり合わせておくためにも、返還金額や期限、返還方法は正確に記載しておかなければなりません。
そのため、話し合いの場への同席から関係書類の作成まで弁護士に依頼することをおすすめします。
また、合意書は強制執行認諾文書(約款)付公正証書で作成しておくと安心です。
万が一、債務不履行があった場合に、訴訟を提起することなく強制執行できるようになります。
弁護士に依頼すれば、不当利得返還請求権の時効成立を阻止できる可能性があります。
不当利得返還請求権の時効成立期限は、権利を行使できることを知ってから5年、権利の発生日から10年です。
しかし、内容証明郵便によって時効の完成を6ヵ月間猶予したり、訴訟を提起することで時効期間をリセットしたりすることもできます。
相続問題を得意とする弁護士なら、そのとき状況にあわせて、最善の方法を提案してくれるでしょう。
時効が成立すると、どれだけ主張が正しくても不当に処分された遺産は取り戻せません。
期限が近づいている場合は、速やかに弁護士に相談することが大切です。
弁護士は、財産差し押さえなどの法的措置もサポートしてくれます。
不当利得に関わるトラブルについては、当事者間の話し合いでは解決に至らないケースも少なくありません。
場合によっては訴訟を起こしたり、最終的には財産を差し押さえたりすることもあるでしょう。
しかし、自分の力だけで訴訟や差し押さえの手続きを進めることは困難です。
相手と和解できずに法的措置を講じる際は、弁護士を頼るケースが一般的といえます。
不当利得返還請求をしなくても、相続財産を回収できるケースもあります。
たとえば財産を使い込んだ方を除く全ての相続人が同意した場合は、不当利得分を相続財産に加算して遺産分割することが可能です。
一例として、1,000万円の財産を配偶者と長男で相続するケースで考えてみましょう。
長男が200万円使い込んでいた場合、相続遺産を1,000万円+200万円=1,200万円として遺産分割をするわけです。
この場合、それぞれの取り分は配偶者が600万円、子どもが600万円から200万円を減額した400万円となります。
なお、上記のルールを適用できるのは、相続が発生したあとの使い込みに対してのみです。
被相続人が生存していたときの使い込みは、不当利得返還請求で回収する必要があります。
ここからは、不当利得返還請求に関連するよくある質問に回答していきます。
同様の疑問を感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。
相続で不当利得を予防するためには、財産管理を徹底することが重要です。
具体的には、通帳やカードは自分自身で保管しておく、他人に財産の管理を任せる信託契約は結ばないといった対策が考えられます。
場合によっては、生前贈与をおこなうのも選択肢のひとつといえるでしょう。
遺言書で相続の方法を明らかにしておくことも、不当利得の予防に効果的です。
遺言書は書き方を誤ると無効になる可能性もあるので、信用性の高い公正証書遺言を専門機関で作成してもらうのがよいでしょう。
不当利得返還請求をしている場合でも、相続税申告は必要です。
相続税申告は、被相続人の死亡を知った日から10ヵ月以内におこなわなくてはなりません。
申告期限を過ぎると、ペナルティが発生するので注意してください。
遺産分割が申告期限までに決まらない場合でも、以下のケースに該当するときは、法定相続分を暫定的に申告しましょう。
遺産隠しをおこなった場合、不当利得分全額に利息と損害賠償金を加算して返還するケースが一般的です。
ただし、以下のような行為に及んだときは、相続欠格事由に該当し、相続権が強制的に剥奪されます。
また、遺産隠しの内容によっては、脅迫罪や私用文書毀棄罪などの刑事罰に該当するおそれもあります。
相続財産を使い込まれたときは、不当利得返還請求によって回収できる可能性があります。
しかし、相続問題にはさまざまな法律が関係してきます。
知識のない個人で対応しようとしても、迅速に解決するのは難しいでしょう。
そのため、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
相続問題を得意とする弁護士であれば、個々の状況にあわせた適切な方法を提案してくれるはずです。
初回は無料で相談に応じてくれる法律事務所も数多く存在するので、まずは気軽に問い合せしてみましょう。