残業代請求
変形労働時間制の会社で働くときに知っておきたいこと|残業の計算やトラブル事例など
2023.11.02
サービス残業を強いられて悩んでいる方のなかには、解決方法が分からず困っている方もいるでしょう。
サービス残業は、労働基準法や社内規則なども関係するため、自分ひとりで解決するのが難しい問題です。
問題を速やかに解決するためにも、なるべく早めに専門家に相談しましょう。
そこで本記事では、サービス残業の相談窓口5選と相談前にやるべき準備、残業代の請求方法などを解説します。
サービス残業について相談ができる窓口には、次の5つがあります。
また、解決したい目的に合わせて相談先を選ぶことも重要です。
【目的別のサービス残業に関する相談先の選び方】
会社や職場の体質を改善させたい場合は、労働基準監督署へ相談しましょう。
労働基準監督署は国が設置している窓口であり、違法な残業についての相談も受け付けています。
また、該当企業に対して立ち入り調査や問題解決の指導をおこなうこともあるでしょう。
利用時間 | 平日:9時00分~17時30分(地域によって異なる) |
相談方法 | 対面相談、電話相談 |
URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/location.html |
サービス残業を是正するためのアドバイスがほしい場合や、ご自身がおこなっている残業が違法かどうかを確認したい場合は、労働条件相談ほっとラインに相談しましょう。
労働条件相談ほっとラインは、労働条件に関する相談全般を受け付けており、厚生労働省が外部の民間事業者に委託して運営する相談窓口です。
労働基準監督署が閉庁している平日夜間、土日・祝日にも、電話で気軽に相談することが可能です。
利用時間 | 平日:17時00分~22時00分 土日・祝日:9時00分~21時00分 |
相談方法 | 電話 |
URL | https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/lp/hotline/ |
社内の通報窓口でも、サービス残業の問題を相談できます。
企業内に設置されている内部通報窓口とは、社内の不祥事や不正行為の早期発見のために、従業員からの通報を受け付ける窓口のことです。
社内の通報窓口では、サービス残業問題のような労働環境に関する相談もできるでしょう。
個人で企業と交渉することが億劫な場合は、労働組合やユニオンを活用しましょう。
労働組合やユニオンは労働者の権利を守るために存在しています。
サービス残業の問題に関しても、解決策を提案したり、労働者の意見を代弁して企業に伝えたりします。
社内に労働組合がない場合は、個人でも所属できる最寄りの労働組合を調べてみましょう。
法律事務所でも、サービス残業についての相談ができます。
とくに未払い残業代を請求したい場合は、労働問題に詳しい弁護士が在籍する法律事務所に相談しましょう。
法的な観点からアドバイスをもらえますし、労働審判や訴訟が必要な場合にも対応を一任できます。
サービス残業について相談する際の事前準備は次のとおりです。
サービス残業の証拠は集めておきましょう。
具体的には残業の記録や時間外の業務内容がわかるタイムカード、勤務報告書などが該当します。
また、残業代が支払われていない証拠として、給与明細書や源泉徴収票などもあればよいでしょう。
企業とやり取りしたメールや書類なども取っておくことをおすすめします。
未払い残業代の額をあらかじめ計算しておくことも重要です。
ご自身が被った損失を具体的に把握することで、相談内容や求める結果も具体化しやすくなるでしょう。
また、法律事務所に依頼する際にも費用倒れを防ぐために、受け取れる残業代とかかる弁護士費用のバランスを考慮する必要があります。
相談の際には、事実関係を明確に伝えることが重要です。
サービス残業が始まった時期や頻度、それに関わる具体的な事象を整理しておきましょう。
できる限り時系列もあわせて整理しておくと、相談内容もわかりやすくなります。
自分が希望する解決策や結果を決めておきましょう。
たとえば、「未払いの残業代を支払ってほしい」「サービス残業を是正してほしい」など、求める結果を明確にしておくとよいでしょう。
また、企業に残りたいのか、退職したいのかによっても対応策が異なります。
求める結果を決めておくことで、最適な解決策を導きやすくなるでしょう。
サービス残業に伴う未払い残業代を請求する方法は、次のとおりです。
まずは、会社と直接交渉を試みる方法があります。
具体的な手段としては、対面での話し合いや文書での請求、電話やメールでの請求などがあるでしょう。
交渉がまとまった場合は示談書や合意書を作成し、残業代が支払われます。
個人で交渉する際に重要なことは、未払いの残業代がある証拠や請求の根拠をしっかりと整理しておくことです。
会社との交渉がまとまらない場合や、会社が未払いの事実を認めない場合は、労働審判を申立てる方法があります。
労働審判は、通常の裁判と比べても迅速に解決できるのがメリットです。
比較的短期間で結果が出るため、労働者にとっては有効な手段でしょう。
未払い残業代が60万円以下の場合は、少額訴訟がおすすめです。
手続きが比較的簡易で、裁判所から直接会社に対して支払いを命じることができます。
また、原則1回の期日で審理が終わるため、早期に解決できるメリットがあります。
【関連記事】少額訴訟の費用や流れ|相手に請求できる?相場は?わかりやすく解説
民事訴訟を提起することも手段のひとつです。
民事訴訟を提起するためには、訴状を作成して裁判所に提出します。
裁判所から訴状が受理されると、口頭弁論をおこなったうえで裁判所の判断を仰ぎます。
民事訴訟は時間と費用がかかるため、具体的な訴訟の進行や準備については弁護士に相談しましょう。
サービス残業の悩みを弁護士に相談するメリットは次のとおりです。
自分がサービス残業をしているかどうかの判断が難しい場合、弁護士に相談することで適切な判断を得られます。
サービス残業とは、残業代が支払われていない時間外労働のことをいいます。
ただし、サービス残業といっても「退勤後に自宅で仕事をしている」「始業時間前に仕事をしている」「管理職扱いになっていて残業代が換算されない」など、さまざまなケースがあります。
弁護士に相談すれば、具体的にどのような事例がサービス残業に該当し、残業代を請求できるのかを判断してくれるでしょう。
サービス残業を会社に認めさせるために必要な証拠を集める方法についても、弁護士からアドバイスを受けることができます。
必要な証拠の種類や具体的な証拠の集め方など、法律のプロならではの視点から、的確なアドバイスを得られるでしょう。
未払い残業代の計算は複雑で難しいですが、弁護士に任せることで正確に計算をおこなってもらえます。
残業代に関する資料を集めても、正確な残業代を把握できない場合もあるでしょう。弁護士に依頼すれば資料を渡すだけで、正確な残業代を算出できます。
未払い残業代の請求手続きは煩雑で時間がかかりますが、弁護士に任せることでスムーズに進行させられるでしょう。
弁護士は会社との交渉だけでなく、労働審判や裁判手続にも対応してくれます。
交渉や訴訟など必要な手続きは全て弁護士が代理してくれるので、確実かつスピーディーに請求ができるでしょう。
サービス残業について相談・依頼する弁護士の選び方は、次のとおりです。
サービス残業や未払い残業代の問題に関して、豊富な実績と経験を持つ弁護士を選びましょう。
それぞれの弁護士には得意分野があるため、サービス残業について相談したい場合は、労働問題や残業代請求が得意な弁護士への依頼がおすすめです。
弁護士の得意分野や実績などは、Webサイトで確認できます。
もし労働問題が得意な弁護士を探したい場合は、ベンナビ労働問題を利用しましょう。
相談を親身になって聞いてくれるかどうかも重要です。
サービス残業の問題は精神的な負担も大きいでしょう。
そのため、法的な観点だけでなく精神的なサポートも提供してくれる弁護士を選ぶことがおすすめです。
初回相談やカウンセリングなどで、弁護士が自分の話を理解しようと努めているかどうかもチェックしましょう。
また、弁護士に相談・依頼する際は、弁護士費用が明確でわかりやすいことも大切です。
初回相談で相談料、着手金、報酬金、そのほかにかかる費用について具体的な説明を受けましょう。
不明確になっている弁護士費用があると、依頼をする際も不安になってしまいます。
経済的なリスクを事前に把握するため、弁護士費用が明確になっている事務所を選択しましょう。
残業代請求を弁護士に依頼した場合の費用相場は、次のとおりです。
【残業代請求を弁護士に依頼した場合の費用相場】
項目 | 費用目安 |
相談料 | ・1時間あたり5,000円~10,000円 ・相談料無料の事務所も多い |
着手金 | ・20万円〜30万円程度 ・着手金0円の場合もある |
報酬金 | ・経済的利益の20%程度 (※着手金0円の場合は報酬金が高く設定されていることが多い) |
その他 | ・1万円〜3万円程度 ・交通費や通信費、印紙代、コピー代 など |
残業代請求に関する弁護士費用の相場は「20万円~30万円程度の着手金+獲得額の20%程度の報酬」です。
各弁護士事務所によって費用は異なるため、弁護士に相談する際には費用がいくらかかるのかを確認しましょう。
サービス残業の相談に関するよくある質問は次のとおりです。
労働基準監督署には守秘義務があるので、通報しても通報者の名前を秘匿してもらうことが可能であり、会社にはバレません。
実名で通報すると会社にバレてしまうと考えて、匿名で告発をしようかと考えている方もいるかもしれません。
ただし、匿名の場合は緊急性が低いと判断されることもあります。
そのため、申告する際は実名を伝えたほうがよいでしょう。
退職後でも残業代を請求できます。
未払いの残業代があれば、退職後であっても請求可能です。
ただし、残業代はさかのぼって請求できる期間は、消滅時効によって限られています。
消滅時効については、労働基準法で次のように定められています。
(時効)
第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。③ 第百十五条の規定の適用については、当分の間、同条中「賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間」とあるのは、「退職手当の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から三年間」とする。
残業代をさかのぼって請求できるのは、残業代請求を行使できる時点から起算して3年間です。
そのため、未払い残業代請求したい際は、早めに弁護士に相談しましょう。
パートやアルバイトでも相談可能です。
労働基準法はパートやアルバイトで働く方にも適用されます。
パートやアルバイトでも、もし未払いの残業代がある場合は相談しましょう。
サービス残業自体は刑事事件ではないため、基本的には警察に相談できません。
ただし、パワハラや恐喝などが絡む場合は、刑事事件として扱われる可能性もあります。
刑事事件になるかどうかについても、一度弁護士に相談してもよいでしょう。
サービス残業について相談するなら、弁護士がおすすめです。
サービス残業問題は労働法が関係していたり証拠集めが必要だったりと、自分ひとりでは対応が難しいことも多いでしょう。
弁護士は労働事件の専門家であり、具体的な手続き経験も豊富です。
未払いの残業代の算出や会社への交渉、労働審判や訴訟などの手続きを一任できます。
サービス残業の問題を相談する際は労働事件の実績や経験が豊富であること、親身になって話を聞いてくれること、そして弁護士費用が明確でわかりやすいことを重視しましょう。
サービス残業に悩んでいる方は、ぜひ一度弁護士に相談してみてください。
解決への第一歩になるはずです。
参考:残業について~不動産業界の平均残業時間は○○時間~|不動産キャリア