遺産分割が未了になると、さまざまなデメリットが発生します。
しかし、話し合いがまとまらないケースもあるでしょう。
このような場合には、遺産分割が未了になることで生じるデメリットを軽減する手続きを取ることが必要です。
また、法律の専門家である弁護士に相談し、適切な対処法についてアドバイスをもらうことも有効です。
本記事では、遺産分割を未了のままにしたときに生じるデメリットと期限内に遺産分割が終わらない場合の対処法、遺産分割の未了を回避するための方法などを解説します。
遺産分割には、期限がなくいつでもおこなうことができます。
しかし一定の期間が過ぎてしまうと、相続税の控除が受けられなくなります。
そのため、期限内に終わらせていれば、支払わなくて済んだ税金を、支払わなければなりません。
また未了のまま新たな相続が開始され、さらに複雑になるという可能性も考えられます。
遺産分割が未了のまま悩んでいる方は、弁護士に依頼するのがおすすめです。
弁護士に依頼すると、遺産分割調停や審判などの専門的な手続きを活用して遺産分割をスムーズに進めてくれます。
また遺産分割には面倒な協議や手続きが多くありますが、弁護士に依頼すると手続きを代理でおこなってくれます。
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遺産分割とは
遺産分割とは、被相続人の遺産を相続人の間で協議して分割することです。
遺産分割をおこなう際、期限については明記されていません。
ただし、相続税申告が必要な場合には、相続が発生してから10カ月以内に相続税申告書を提出する必要があります。
遺産分割が終わらないと相続税申告書に記載する財産が分からず、相続税額が確定できないため、実質的には遺産分割に期限が生じます。
そのため、遺産分割はできるだけ早く終えておく必要があります。
【関連記事】遺産分割の期限はどれくらい?期限を超過した場合のリスク
遺産分割が未了である場合のデメリットとは
遺産分割が期限内にできない場合には、どのようなデメリットがあるのでしょうか。
ここでは、遺産分割が未了である場合に生じる具体的なデメリットについて解説します。
未分割遺産の管理・処分が制限される
遺産分割が未了である場合、未分割遺産は相続人全員の共有財産となります(民法第898条)。
そのため、遺産を管理したり処分したりするには、ほかの相続人の意向を確認しなければなりません。
民法では、共有財産の取り扱いについて、以下の3つの行為に区別されています。
- 保存行為:各相続人が単独で可能
- 管理行為:相続⼈の持分価格の過半数の同意が必要
- 変更行為:相続⼈全員の同意が必要
このうち、財産の状態を維持するための保存行為は、各相続人が単独でおこなえます。
しかし、財産を活用・運用するための管理行為は、相続人それぞれの持分価格に対して過半数の同意が必要です。
また、財産を処分したり形状を変更する変更行為は、相続人全員の同意が必要です(民法第251条)。
したがって、未分割遺産を管理したり処分したりするには、相続人全員の協力が必要となります。
意見が一致しない場合には、共有財産を有効に活用できなかったり、手続きが進まないなどの制限が生じることになるのです。
相続税の特例が受けられない
遺産分割が未了の場合でも、相続税の申告は必要です。
遺産分割が未了の状態で相続税を申告すると、財産の評価額や税金を少なくするための特例制度を受けられない可能性があります。
そのため、遺産分割が完了している場合と比べて、高い税金を支払わなければなりません。
遺産分割が未了のままだと受けられない相続税の特例には、以下のようなものがあります。
なお、後述する相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」の対応をすれば、特例の適用を受けられるものもありますので、遺産分割が未了のまま相続税申告をする場合には、各手続を確認しましょう。
配偶者控除が適用されない
配偶者控除は、配偶者が相続する財産が法定相続分または1億6,000万円までであれば相続税がかからない制度です。
相続財産が多額であっても、配偶者控除制度があれば相続税額はかなり抑えられます。
制度が適用されるためには、原則として、相続税申告書の提出期限を迎えるまでに、配偶者が相続財産を取得していなければなりません。
もし、配偶者控除制度が利用できなければ、配偶者が取得する財産に対しても課税されます。
そのため、相続税額がその分だけ多くなるのが大きなデメリットです。
遺産分割を早めにおこない、相続税を余分に支払うことがないよう注意しましょう。
小規模宅地等の特例を利用できない
小規模宅地等の特例とは居住用宅地や事業用宅地などで、一定の面積の範囲で不動産の評価額が条件に応じて5割〜8割削減される制度です。
居住用宅地などは8割削減されるため、相続財産に不動産がある場合には大きなメリットとなります。
小規模宅地等の特例を利用するためには、原則として、相続税申告書の提出期限を迎えるまでに該当の宅地の遺産分割を終えている必要があります。
小規模宅地等の特例が利用できない場合、不動産の評価額もそのままで計算されるため、多額の相続税がかかる点がデメリットです。
相続財産に不動産があるときは特に注意しましょう。
農地等の納税猶予が適用されない
被相続人が農地を所有して農業を営んでいた場合、その農地を取得して引き続き農業を営む相続人に対して、一定の条件下で相続税が猶予される制度が農地等の納税猶予です。
被相続人が農地を所有して農業を営んでおり、条件を満たせば相続税額が抑えられます。
しかし、農地等の納税猶予もまた、原則として、相続税申告書の提出期限を迎えるまでに遺産分割を終えていなければ利用できません。<?span>
利用できない場合は該当する農地も相続税の課税対象となります。
物納が認められない
相続税は金銭で納付することが原則ですが、相続税が多額になったために現金で納付することが難しい場合、不動産などを金銭の代わりに納付できる物納という制度が設けられています。
被相続人が所有していた財産については、遺産分割協議の合意ができるまでは相続人全員の共有財産となります。
そのため、物納しようと考えたときには、相続人全員の申請が必要であり、遺産分割ができないときは、結果的に物納も利用できないこととなります。
物納が認められなくなると相続税の支払いが困難になり、実生活に支障をきたす事態も考えられます。
非上場株式等の猶予制度が適用されない
被相続人の事業を受け継ぐ相続人が、非上場会社の株式を相続により取得して事業を続けていく場合に、一定の条件下で相続税の納付が猶予や免除される制度のことを、非上場株式等の猶予制度といいます。
中小企業の事業を承継していくなかで、自社株式については換金が難しいうえに、評価額によっては多額の相続税を現金で支払わなければいけない事態が起きることも考えられます。
そこで、事業承継を円滑に進めるために、この制度を利用できるのです。
しかし、遺産分割協議がまとまらない場合は制度が適用されず、多額の相続税を支払う必要が生じます。
相続税の取得費加算の特例
相続により取得した財産を、第三者に譲渡して対価を得ることがあります。
たとえば、不動産を相続して、第三者に売却する場合です。
この場合、土地を売った相続人には、相続税とは別に、譲渡所得税が発生します。
しかし、これでは二重に課税されることになります。
そこで、譲渡所得の計算上、相続時に負担した相続税のうち一定の金額を考慮することができ、結果として譲渡所得税の負担を減らせる制度があります。
これが、相続税の取得費加算の特例です。
この制度は、相続税の申告期限の翌日から3年以内に相続財産を譲渡した場合に適用されます。
ただし、相続財産を売却した年の所得税の納税義務の成立時(通常は、その年の12月31日)に相続税額が確定していなければなりません。
つまり、それまでに原則として遺産分割を終えて、相続税の申告も済ませておく必要があります。
数次相続により複雑になる
被相続人が亡くなったあと、遺産分割がされない間に相続人が亡くなり新たに相続が発生することを、数次相続といいます。
父母など、夫婦であれば年齢が近いため、数年遺産分割をおこなわず放置していると起きやすくなるものです。
数次相続によって世代が変わってしまった場合には、遺産分割はさらに難しい状態になります。
なぜなら、相続人の特定が難しくなっていくケースがあるからです。
家族だけであったものが、代が替わるにつれて相続人同士が疎遠になっていき、場合によっては多人数で遺産分割協議をまとめなければなりません。
時間や労力が余計にかかるほか、相続手続き自体も通常の遺産分割よりも煩雑化していくケースが考えられます。
遺産分割の方法が制限される
令和5年4月1日の民法改正により、相続開始から10年が経過した未分割財産については、遺産分割の方法が「法定相続分」または「指定相続分」に基づく分け方に制限されています(民法第904条の3)。
このため、遺産分割が未了のまま10年経過した場合、特別利益(生前贈与や遺贈による特別な利益)や、寄与分(被相続人に貢献した相続人に認められる相続分の増額)は、遺産分割をおこなう際に考慮されなくなります。
ただし、例外として、相続開始から10年が経過する前に、家庭裁判所に遺産分割を請求する場合や、相続人全員が同意する場合には、制限を受けません。
また、令和5年4月1日から5年間の猶予期間が設けられており、この期間内であれば引き続き、特別利益や寄与分を主張することが可能です。
遺産分割が期限に間に合わず未了となる場合の申告方法
期限内の遺産分割が未了になる場合、相続税については仮申告・仮納税で対応します。
そのうえで、遺産分割が確定してから改めて相続税の計算をやり直し、更正の請求や修正申告によって再度確定申告書の提出をおこなう、という流れになります。
また、不動産を相続した場合には、相続人申告登記をおこなうことで対応します。
遺産分割が期限に間に合わず未了となる場合の具体的な対応について、詳しく見ていきましょう。
「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出する
相続税の申告は、相続開始後10ヵ月以内に必ずおこなわなければなりません。
申告期限の時点で遺産分割が完了していなかった場合には、前述したようにさまざまな制度が利用できなくなるデメリットが生じます。
しかし、相続税申告書を提出するときに「申告期限後3年以内の分割見込書」を一緒に提出すれば、申告期限後3年以内に遺産分割されたタイミングで配偶者控除や小規模宅地等の特例の利用が可能になります。
ただし、特例を利用するためには、遺産分割が確定してから4ヵ月以内に税務署に対して更正の請求をおこなわなければなりません。
【参考記事】【相続税申告とは?】申告が不要なケースや手続きの流れを徹底解説!
「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出する
申告期限から3年が過ぎても遺産分割が確定しない場合は、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」の提出が必要です。
「やむを得ない事由」の例として、相続人の間で裁判になっている場合や未成年の相続人がいる場合などがあります。
「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」は、申告開始から3年が経過した日の翌日から2ヵ月以内に、所轄税務署に提出しなければなりません。
税務署長の承認を受けた場合には、判決の確定の日などやむを得ない事由がおさまった日の翌日から4ヵ月以内に遺産が分割されたタイミングで、特例の利用が可能になります。
なお、この場合も、分割がおこなわれた日の翌日から4ヵ月以内に税務署に更正の請求をおこなう必要があります。
「相続人申告登記」をおこなう
令和6年4月1日の法改正により、相続人が不動産を相続した場合、取得したことを知った日から3年以内に相続登記をおこなうことが法律で義務付けられています(不動産登記法第76条)。
この法改正は、令和6年4月1日以前に相続した不動産についても適用され、義務を怠ると最大で10万円以下の過料が課せられます(不動産登記法第164条)。
そのため、遺産分割が3年以内にまとまらず、未了になることが予想される場合は、相続人申告登記をおこなうことが大切です。
相続人申告登記は暫定的な対応ではありますが、相続登記の義務を履行したものとみなされます。
したがって、過料を逃れることができます。
ただし、あくまでも遺産分割が期限に間に合わない場合の暫定的な対応です。
遺産分割が完了したときには、改めて相続登記をおこなう必要があります。
遺産分割の未了を回避する3つの方法
遺産分割が未了になることを回避するためには、どうすればよいのでしょうか。
最後に、遺産分割の未了を回避する具体的な方法について見ていきましょう。
1.遺産分割協議をおこなって合意を得る
遺産分割協議とは、相続人同士が集まり、遺産をどのように分けるのか話し合うことを指します。
相続人全員が納得するかたちで遺産を分けるための協議をおこない、合意を目指します。
協議が順調に進めば、遺産分割をスムーズにおこなえるため、未了になることを回避できます。
2.家庭裁判所での遺産分割をおこなう
遺産分割協議で話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に対して遺産分割の調停や審判の申立てをおこないます。
家庭裁判所での調停や審判を通じて、遺産分割の解決を図ることが可能です。
調停には手数料等の一定程度の費用が発生するものの、裁判所が介入することで遺産分割を進めることができます。
また、調停が不成立になると審判に移行し、裁判所が最終的な遺産分割の方法を決定するため、遺産分割が未了にならずに済みます。
3.弁護士に相談・依頼する
遺産分割協議をまとめるときには、弁護士に相談・依頼する方法もあります。
弁護士が適切な交渉や遺産分割調停や審判などの専門的な手続きを活用する等して、自分でおこなうより遺産分割をスムーズに進めてくれます。
また、遺産分割には面倒な協議や手続きが多くありますが、弁護士はその面倒な手続きもおこなってくれます。
依頼者の代理人として交渉などもおこなってくれるため、有利な条件で交渉をまとめてもらえるケースもあるでしょう。
なお、弁護士への依頼は費用が高額になる印象を持っている方もいるかもしれませんが、初回の相談料が無料のところも多くあります。
親族間でなかなか遺産分割問題を解消できない場合には、一度相談してみるのもおすすめです。
まとめ
遺産分割が未了のままでは、相続財産の管理や処分に制限を受けたり、配偶者控除や納税猶予など相続税の特例が適用されません。
また、数次相続により遺産分割がさらに複雑になることも考えられます。
そのため、「申告期限後3年以内の分割見込書」や「相続人申告登記」などを上手く使いながら対処しつつ、遺産分割協議をできるだけ早く終わらせることが大切です。
そのほか、自分達だけで遺産分割協議を進めるのが難しくなった場合は、弁護士に相談するのもひとつの方法です。
初回の無料相談や電話相談を受け付けている法律事務所もありますので、まずは相談して、これからの方針を立ててみてください。

