遺言書
遺言書の効力は絶対か?効力が及ぶ内容と認められるためのポイント
2023.07.06
大切な家族が亡くなり、遺言書が見つかったという状況で、一人でその遺言書を開封してよいのか迷っている方もいるでしょう。
遺言書を見つけると、このような不安や疑問を抱えるのは当然のことです。
本記事では、遺言書を遺言書をすぐに開封すべきかどうか、また、開封してしまった後の対応ついて詳しく解説します。
この記事を通じて、遺言書の開封に関する不安や疑問を解消し、遺言書を適切に取り扱う一歩を踏み出していただければ幸いです。
ここでは、遺言書を見つけても開封してはいけない理由を解説します。
封印された遺言書を見つけた場合、勝手に開封してはいけません。
法律では、封印された遺言書は家庭裁判所において相続人の立会いの下で開封されなければならないと定められています。
この手続を「検認」といいます。
遺言書を家庭裁判所で開封する理由は、遺言書の偽造・変造を防止するためです。
もし遺言書が改ざんされたり、別のものとすり替えられたりしていた場合、亡くなった方の意思を実現できません。
遺言書の開封は公平で公正な手続でなければならないため、家庭裁判所で相続人全員の立会いのもとでおこなわれます。
遺言書を勝手に開封してはいけません。
遺言書は家庭裁判所において相続人の立会いの下で開封されなければならず、これに違反すると5万円以下の過料に処せられる可能性があります。
過料とは、行政上の秩序の維持のために、違反者に制裁として金銭的負担を課すものです。
遺言書を勝手に開封してはいけませんが、これに違反して開封したとしても、直ちに無効となることはありません。
遺言書の検認手続は、遺言書の存在と内容を相続人に知らせるとともに、遺言書の偽造等を防止するためにおこなわれます。
ここでは、検認手続の流れを解説しましょう。
遺言書の保管者または遺言書を発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、できる限り速やかに、遺言書を家庭裁判所に提出し、「検認」を請求しなければなりません。
管轄裁判所は、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所になります。
遺言書の検認の申立てには、申立書や戸籍謄本等の添付書類が必要です。
申立書の書式や添付書類については、裁判所のウェブサイトを確認するなどしてください。
また、申立てには費用がかかり、遺言書(封書の場合は封書)1通につき収入印紙800円分が必要となります。
また、連絡用の郵便切手も必要な場合があります。申立てをする家庭裁判所によって異なる場合があるため、事前に確認してください。
遺言書の検認について、申立て期限は特に設けられていません。
しかし、法律上、相続の開始を知った後や遺言書を発見した後、「遅滞なく」、検認を請求しなければならないとされています。
検認を怠っていると、過料に処せられる可能性があることに留意してください。
遺言書の検認の申立てをおこなった後、家庭裁判所から検認期日の通知が届きます。
通知は、検認手続の実施日や場所などの情報を提供するものです。
遺言書の検認の申立てがあると、家庭裁判所は日程を調整し、検認期日を設定します。
通常、申立後、数週間から1ヶ月程度で、家庭裁判所から通知が届きます。
家庭裁判所から通知された検認期日に出席する法律上の義務はありません。
ただし、申立人は、遺言書を裁判所に提出する必要があるため、検認期日に出席することになるでしょう。
検認期日では、出席した相続人等の立会いのもと、遺言書の開封と遺言書の方式に関する事実調査を裁判所がおこないます。
検認期日に出席することによって、遺言書の存在とその内容を確認することができます。
申立人が検認期日に出席する際には、遺言書自体や印鑑などを持参しなければなりません。
裁判所からの指示に従って、事前に準備しておきましょう。
なお、検認期日に出席するのが難しい場合でも弁護士を代理人に立てることが可能です。
検認手続の後、家庭裁判所は、検認期日に立ち会わなかった相続人や関係者に対し、検認を実施した旨の通知をします。
ただし、検認期日の通知を受けたのに欠席した人は、検認を実施した旨の通知の対象外とされています。
検認期日に立ち会わなかった場合に、遺言書の内容を知りたいときは、家庭裁判所に対し検認調書謄本の交付申請をする必要があります。
遺言書の検認手続が終わった後は、遺言の執行に必要な検認済証明書を取得しなければなりません。
検認済証明書は遺言書が検認済みであることを証明する書類です。
遺言の執行においては、遺言書に検認済証明書が付いていることが必要となります。
検認済証明書の申請には、遺言書1通につき150円分の収入印紙と申立人の印鑑が必要です。
申請は遺言書を検認した家庭裁判所にすることになります。
また、申請書の書式は各家庭裁判所で用意されているのが通常です。
ここでは、遺言の種類による検認手続の違いを解説します。
自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押して作成する方式の遺言のことです。
自筆証書遺言は原則として検認手続が必要となります。
ただし、遺言書保管制度を利用した場合には検認手続は不要となります。
秘密証書遺言とは、遺言者が内容を秘密にして遺言書を作成したうえで、公証人に遺言書として公証してもらう遺言のことです。
封筒に遺言者、公証人、証人の署名と捺印があれば、秘密証書遺言である可能性が高いでしょう。
秘密証書遺言は検認手続が必要となります。
ただし、実際には秘密証書遺言はあまり利用されていないといわれています。
公正証書遺言とは、遺言者が遺言の内容を公証人に伝えて、公証人がそれを文章にまとめることによって作成される遺言のことです。
「公正証書遺言」であれば検認手続は不要です。
公正証書遺言の原本は公証役場で保管されます。
そのため、公正証書遺言は偽造等の危険性が低く、検認手続は不要とされているのです。
また、公正証書遺言は法律の専門家である公証人が関与して作成されるため、方式の不備を避けることができるというメリットがあります。
「自筆証書遺言」であっても、法務局で保管されていれば検認手続は不要です。
自筆証書遺言は、原則として検認手続が必要ですが、遺言書保管制度を利用して法務局で遺言書を保管している場合は、検認手続が不要となります。
遺言書保管制度を利用すると、自筆証書遺言は法務局で長期間適正に管理・保管されます。
そのため、遺言書が偽造等される危険性が低く、検認手続は不要とされているのです。
また、遺言者が亡くなった後には、相続人や関係者が遺言書の存在や内容を知ることができるように、遺言書保管事実証明書の交付請求や遺言書の閲覧請求などをすることができます。
ただし、遺言書保管制度は遺言書の有効性を保証するものではないことに留意してください。
ここでは、遺言書の開封に関するFAQに回答します。
過料の対象となるのは、「封印のある遺言書」を家庭裁判所外において開封した場合です。
したがって、単に封入されているだけで、封に押印がない遺言書の開封は過料の対象とはなりません。
また、封印のある遺言書を誤って開封してしまった場合でも、実際に過料に処せられるケースは稀だと思われます。
ただし、法律上では5万円以下の過料に処するとされているのみならず、封印のある遺言書を開封することで遺言書の偽造等の疑いをかけられるおそれもあるため注意が必要です。
封印のある遺言書を誤って開封してしまった場合でも検認手続が必要です。
なお、開封したことによって遺言書の効力が失われることはありません。
誤って遺言書を開封してしまった場合には早めに専門家に相談し、具体的な手続や適切な対応方法を確認するとよいでしょう。
封印されていない遺言書についても検認手続が必要です。
自筆証書遺言は、単に封入されているだけで封に押印がない場合や、そもそも封入されていない場合があります。
このような場合でも、遺言書の偽造・変造を防止するために、家庭裁判所で検認手続をおこなわなければなりません。
遺言書が複数ある場合において、前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分について、前の遺言を撤回したものとみなされます。
したがって、前の遺言書と後の遺言書とが矛盾する場合には、後の遺言書(日付の新しい遺言書)が有効となります。
ただし、後の遺言書に不備があれば、前の遺言書が有効となる可能性があるため、すべての遺言書について検認を申し立てるべきです。
遺言書を偽造・変造した場合、相続人の欠格事由に該当し、相続権を失います。
したがって、遺言書の内容を書き換えた場合、その相続人は相続権を失う可能性があります。
また、そのような行為は、有印私文書偽造罪・変造罪という犯罪に該当するおそれもあります。
封印された遺言書を見つけた場合、勝手に開封しないよう注意が必要です。
遺言書は亡くなった方の意思が記された重要な文書であり、その内容を尊重することが求められます。
開封せずに検認手続をおこない、専門家の助言を受けることで、相続に関する問題やトラブルを未然に防げる場合があります。
遺言書を見つけたら慎重に取り扱い、開封しないようにしましょう。