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2023.07.14
遺産の相続をおこなう場合、相続の対象となる範囲は法律によってあらかじめ決められています。
しかし相続の対象となる場合でも、相続順位を歪めるような不当な行為をおこなうと、「相続欠格」として相続の権利を失うことがあります。
本記事では相続欠格となる5つの事由や、似ている制度としてあげられる「相続廃除」との違いを解説します。遺産相続の際の参考にしてください。
本来であれば相続の対象となる方が相続欠格事由に該当する場合、相続から排除されることを「相続欠格」といいます。
ここでいう相続欠格事由とは、相続の順位や範囲を変えてしまうような殺人や遺言書の偽造などが当てはまります。
相続欠格は被相続人の意思とは関係なくおこなわれるもので、たとえ遺言書に記載があったとしても相続欠格となった方は相続ができません。
ただし、相続欠格となった場合でも、代襲相続することは認められています。そのため、たとえばある相続人が相続欠格となったものの、
相続欠格者に子どもがいるケースではその子どもが相続人となります。
相続欠格事由には次の5つが民法891条によって定められていきます。それぞれ詳細に解説します。
1つ目は、被相続人や相続順位が自分以上の者を、殺害もしくは殺害しようとした場合です。
この事由に当てはまる例としては、被相続人に配偶者と子ども2人がおり、財産の総取りを企てた子どもの1人が配偶者やもう1人の子どもを殺害しようとしたケースなどが当てはまります。
また実際の殺害や殺害未遂以外にも、介護が必要な被相続人に食べ物を与えない遺棄罪のような間接的に死に追いやる方法も欠格事由としてみなされます。
2つ目は、被相続人が殺害されたことを知っていたのに、それを隠していたケースです。
殺害を庇うことで、自分に有利な形で相続できるようになるため、欠格事由として挙げられています。
ただし、判断能力がないとされる子どもや、殺害したのが自分の配偶者や直系血族であったときは除外されます。
3つ目は、被相続人が遺言の取り消しや変更を検討していたところを、詐欺や脅迫によって妨げたケースです。
遺言の全てが対象ではなく、相続に関する遺言に限られています。
4つ目は、遺言を騙して撤回させたり、無理矢理変更したりさせたケースです。
3つ目の事由と同様に、相続に関する遺言のみが欠格事由の対象となります。
5つ目は、相続に関する遺言書を偽造したり隠したりしたケースになります。
例外として、不当に利益を得る目的ではなく偽造した場合は欠格事由として判断されなかったこともあります。
相続欠格になると、相続権の全てを失います。遺言による相続欠格の撤回もおこなうことはできません。
しかし、相続欠格となった方の子どもは欠格者の代わりに相続人になることが可能です。これを代襲相続といいます。
また、一度相続欠格となったからといって、今後全ての相続において相続欠格者になるわけではありません。
たとえば、父親の相続では相続欠格となった場合でも、母親の相続にまでその相続欠格が引き継がれることはありません。
紹介した5つの事由のどれかに当てはまる場合、相続権はすぐに失われます。
役所や裁判所に証明書類を出したりなんらかの手続きをおこなったりということは必要ありません。
ただし、相続を理由として不動産登記名義を変更するとき、法務局に相続欠格者であることの証明書を提出する必要があります。
万が一相続欠格者が証明書を作成しない場合は、相続人の地位を持たないことの確認を求める訴訟を起こすことになります。
なお、相続を開始したあとに、相続欠格者が出た場合は相続をやり直すことができるので、「知らない間に相続欠格者に相続してしまった」ということはありません。
相続欠格に近い制度で「相続廃除」というものがあります。以下では相続欠格と相続廃除の違いや、相続廃除とはどういった制度なのか解説します。
相続廃除とは、相続権を持つ人を相続の対象から外すことができる制度です。
相続欠格と大きく違う点は、被相続人の意思のもと相続権を失わせることができるところにあります。
しかし、誰でも廃除できるわけではなく、虐待や侮辱、非行のような理由があり、妥当性が家庭裁判所に認められなければなりません。
「娘とは気が合うが息子とは気が合わないので相続させたくない」といったような感情的な事情や具体性に欠ける理由では、相続廃除は認められない可能性が高いでしょう。
相続欠格と相続廃除の違いとして、撤回の可否もあげられます。
相続欠格では、一度相続権を失うと撤回が難しい一方、相続廃除の場合は被相続人によって相続廃除を取り消すことが可能です。
具体的に、相続廃除を取り消す方法には以下2つの方法があります。
相続廃除が認められた場合、遺留分の相続も含め、相続に関する権利全てを失います。
しかし、相続廃除された場合でも、代襲相続は可能です。たとえば相続人が子どもいる場合は、相続人を相続廃除したとしても、相続人の子ども相続権を得ることになります。
相続廃除をおこなう際は以下のステップに沿って進める必要があります。
相続欠格と相続廃除は、どちらも相続の権利を失わせることができる制度です。
相続欠格は自分の意思では失わせることができないものの手続きや申請が不要な点、相続廃除は家庭裁判所による審判が必要になるものの理由があれば自分の意思で相続権を失わせられる点が特徴といえます。
当てはまる事由や条件を確認し、場合によっては活用を検討しましょう。