給料・賃金未払い
給与未払いの請求方法を解説!法的手続きの違いや弁護士に依頼するメリットも
2024.07.16
未払いとなっている給料は会社に支払いを請求できますが、勤務状況等に関する証拠がないと請求は困難です。
手元に証拠がないように見えても、思いがけないところに証拠が存在するかもしれません。
そのため、広い視野で証拠を収集することが大切です。
どうしても証拠がない場合には、弁護士に依頼して証拠開示請求・証拠保全の申立てなどをおこないましょう。
今回は未払い給料の請求方法や、給料未払いの証拠がない場合の対処法などを解説します。
未払いの給料を請求したいが、証拠がなくて困っていませんか?
結論からいうと、未払いとなっている給料は会社に支払いを請求できますが、勤務状況等に関する証拠がないと請求は困難です。
もし、自分では給料未払いの証拠を示せない場合、弁護士に相談・依頼するのをおすすめします。
弁護士に相談すると以下のようなメリットを得ることができます。
ベンナビ労働問題では、給与未払い問題の解決を得意とする弁護士を多数掲載しています。
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労働基準法24条では、賃金(給料)について「全額払いの原則」が定められています。
そのため基本給・残業代などを含めて、会社が従業員に支払うべき賃金の一部を支払わないことは、労働基準法違反に該当します。
第二十四条賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
引用元:労働基準法24条1項
全額払いの原則に違反して、給料の一部を支払わないことは犯罪に当たります(労働基準法120条1号)。
法定刑は「30万円以下の罰金」です。
また、事業主の代理人・使用人その他の従業者が上記の違反を犯した場合、事業主にも「30万円以下の罰金」が科されます(労働基準法121条1項)。
会社は従業員に対して、労働契約に基づく賃金の支払い義務を負っています。
もし会社が従業員に支払った給料に不足がある場合、不足分について、労働契約に基づく賃金請求権が残ることになります。
この場合、従業員は使用者に対して、未払い給料の支払いを請求できます。
会社に対して未払い給料の支払いを請求するには、請求権の存在を裏付ける証拠を確保することが重要です。
未払い給料の請求権を立証するには、以下の証拠が必要となります。
未払い給料の請求権は、会社との雇用関係に基づいて発生します。
よって、会社との間に雇用関係があることを示す証拠が必要です。
雇用関係を証明するための証拠としては、以下のものが挙げられます。
未払い給料の金額は、会社が本来支払うべき給料と、実際に支払われた給料の差額です。
したがって、それぞれの金額について計算根拠が必要となります。
会社が支払うべき給料については、基本給・各種手当などの毎月必ず支払われるものと、残業時間数によって変動する残業代の2つに分かれます。
そのうち、基本給・各種手当の金額については、以下の資料によって証明することが可能です。
一方、残業代については、以下の式によって計算されます。
残業代=1時間当たりの基礎賃金×割増賃金率×労働時間数
「基礎賃金」とは、計算期間において発生した賃金全額から、残業代と以下の手当を除いた金額を意味します。
基礎賃金額を証明するためには、結局のところ、基本給・各種手当の金額に関する証拠を活用することになります(以下再掲)。
残業代の金額を証明するには、1時間当たりの基礎賃金の計算根拠に加えて、残業時間数に関する証拠が必要です。
残業時間数の証拠としては、以下の例が挙げられます。
請求する未払い給料の金額を計算するため、実際に支払われた給料が記載された資料が必要になります。
※支払った給料の金額については、本来は従業員ではなく会社が立証責任を負いますが、実務上は従業員側から提出するケースが多いです。
実際に支払われた給料を知るためには、以下の資料などを参照しましょう。
給料の一部が未払いとなっていることを示す証拠は、従業員の手元に十分に存在するとは限りません。
もし手元の証拠が不足している場合には、以下の方法によって証拠の充実を図りましょう。
未払い給料の請求権を裏付ける証拠には、さまざまな種類・パターンが存在します。
特に残業時間数を示す証拠については、会社が保有しているものだけでなく、従業員が独自に収集・取得できるものも多いです。
思いがけないところに、未払い給料(残業代)請求に活用できる証拠が眠っているかもしれません。
一見して証拠が不足しているようでも、視野を広げて証拠収集をおこなうことで、未払い給料請求の活路を見出せる可能性があります。
どのような証拠があり得るか見当がつかない場合には、弁護士にアドバイスを求めましょう。
従業員がすでに退職している場合、会社が保有している証拠にアクセスできないために、未払い給料請求の証拠が不足するケースがあります。
たとえば勤怠管理システムの記録、会社システムへのログイン・ログアウト履歴、業務メールなどは、退職に伴ってアクセスできなくなる証拠の典型例です。
これらの証拠を利用したい場合には、会社に対して証拠開示を求めることが考えられます。
後述するように、残業代請求訴訟を通じた証拠保全手続も用意されているため、会社が穏便に解決したい場合には証拠開示に応じる可能性が高いです。
弁護士を通じて証拠開示を求めれば、会社が応じる可能性はさらに高まるでしょう。
会社が証拠開示に応じない場合には、残業代請求訴訟の中で証拠保全を申し立てることを検討しましょう。
「証拠保全」とは、裁判所が主導して民事訴訟における証拠を確保する手続きです。
会社のオフィスなど、証拠が存在すると思われる場所に裁判官が赴いて、証拠の確保をおこないます。
会社は証拠保全を拒否することも可能ですが、その場合は裁判所が会社について悪印象を持ち、結果的に従業員にとって有利な判決が言い渡される可能性が高まります。
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会社に対して未払い給料の支払いを促すには、労働基準監督署に申告をおこなって行政指導などを求めることが考えられます。
さらに、交渉・労働審判・訴訟の各手続きを通じて、会社に直接未払い給料の支払いを請求することも可能です。
労働基準監督署は、事業者による労働基準法違反を取り締まる監督機関です。
給料の未払いは労働基準法違反であるため、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署に申告をおこなえば、会社に対する行政指導や刑事処分をおこなってもらえる可能性があります。
ただし労働基準監督署は、会社に直接未払い給料の支払いを命ずるわけではないため、あくまでも間接的な解決方法にとどまります。
未払いとなっている給料を実際に回収するには、会社に対して直接請求をおこなわなければなりません。
もっとも手続きが簡単に済むのは、会社と直接交渉をおこない、未払い給料の支払いについて合意する方法です。
従業員としては、未払い給料請求権を立証できる証拠を示して、会社に任意の支払いを促すことになります。
会社との間で和解が成立すれば、早期に未払い給料を回収できます。
なお会社に対して強く支払いを求めたい場合や、消滅時効(後述)の完成を阻止したい場合には、内容証明郵便によって請求をおこなうことも考えられます。
内容証明郵便の作成・送付については、弁護士にご相談ください。
会社との間で、未払い給料の支払いに関する和解がまとまらない場合は、労働審判や訴訟といった法的手続きをとることが次なる手段です。
労働審判は、労使間紛争を迅速に解決することを目的とした法的手続きです。
原則として3回以内で審理が終結するため、迅速な解決が期待できます。
労働審判では、裁判官1名と労働審判員2名が公平に労使の主張を聴き取り、両者の間で調停を試みます。
調停が成立しなければ、労働審判によって結論が示されます。
ただし、労働審判に対して労使いずれかから異議が申し立てられた場合には、自動的に訴訟へ移行する点にご注意ください。
参考:労働審判手続|裁判所
訴訟では、従業員が未払い給料請求権の存在を主張・立証し、会社がそれに対する反論をおこないます。
裁判所は、労使の主張・立証を踏まえたうえで、最終的な結論を示す判決を言い渡します。
訴訟の判決が確定すれば、未払い給料の問題を終局的に解決することが可能です。
会社に対して未払い給料を請求する際には、以下のポイントについてそれぞれ注意が必要です。
未払い給料の請求権は、以下の期間が経過すると時効消滅してしまいます。
特に「退職してから請求しよう」と考えている場合、時効によって請求権の一部が消滅してしまうケースが非常に多いです。
未払い給料の請求を検討している場合には、早めに弁護士へのご相談をおすすめいたします。
会社が倒産してしまい、未払いの給料を支払ってもらうことができなくなった場合には、「未払賃金立替払制度」の利用をご検討ください。
未払賃金立替払制度を利用すると、未払い給料の8割を独立行政法人労働者健康安全機構から支払ってもらえます(ただし退職時の年齢に応じた上限あり)。
全国の労働基準監督署で申請を受け付けていますので、対象となる方は労働基準監督署の窓口へ相談することをおすすめいたします。
また、最近では労働問題に関する無料相談窓口が多く存在しています。電話相談はもちろん、24時間相談を受け付けているところもあるので、まずは相談してみるのもよいでしょう。
給料の支払いが遅れた場合、遅延期間に応じて、法定利率(年3%)による遅延損害金が発生します。
会社に未払い給料を請求する際には、遅延損害金も忘れずに請求しましょう。
ただし、和解による解決を図る場合には、遅延損害金の請求権を放棄するケースも多いです。
早期解決のメリットがあることも踏まえて、和解に応じるかどうかを総合的にご判断ください。
ご自身の手元に証拠が乏しい場合でも、未払い給料の請求を諦める必要はありません。
弁護士に相談すれば、幅広い証拠の検討や証拠開示請求・証拠保全の申立てなどを通じて、適正額の未払い給料を回収できるようにサポートしてくれます。
会社に未払い給料を請求したいものの、手元の証拠が少なく困っている方は、お早めに弁護士までご相談ください。
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