不当解雇
会社をクビになったら?解雇を争うときと受け入れるときの対応をそれぞれ紹介
2024.10.25
会社をクビになったら、どのように対応したらいいかがわからずに悩む人がほとんどのはずです。
突然会社からクビを言い渡された場合は、次の2つ対応をとる必要があります。
ただし、それぞれメリット・デメリットが異なるため、どちらの方針を選ぶかは慎重に判断しましょう。
本記事では、会社をクビになったときに考えられる方針を解説するとともに、クビになったときに頼るべき相談窓口を紹介します。
クビを言い渡されてどうしたらいいかわからず悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
会社をクビになったらとるべき選択肢は、大きく分けて下記の2つです。
それぞれのメリット・デメリットを解説します。
1つ目の方針は、解雇の無効について争うことです。
解雇について会社を争い不当解雇が証明されれば、元の職場に復帰できるでしょう。
また、下記のケースに当てはまる方は、解雇の無効について争ったほうがメリットがあります。
一方で、解雇が無効になり、復職したとしても下記のようなデメリットが考えられます。
もちろん、職場復帰したあとに不当な扱いを受けるのも労働基準法に違反する可能性があるため、労働者自身が非を感じる必要はありません。
しかし、どうしても周りからの目が気になってしまったり、以前よりも扱いが悪いと感じたりすることはあるでしょう。
上記のメリットとデメリットを理解したうえで、解雇の無効について争うか検討しましょう。
2つ目の方針は、解雇を受け入れることです。
仮に復職できたとしても、一度クビを言い渡された会社で再び働くのは抵抗を感じるかもしれません。
解雇を受け入れ、別の環境を探したほうが結果的に精神的な負荷がかからず、余計な費用が発生せずに住む可能性もあります。
解雇を受け入れた場合は以下のメリットがあります。
一方で、解雇を受け入れれば、職を失うことになるため、給与が支払われなくなったり、健康保険や厚生年金の被保険者資格を喪失したりするデメリットもあります。
また、解雇されたとの事実が今後の転職活動において障害となる可能性もゼロではありません。
解雇を受け入れる際にもメリット・デメリットがある点は頭に入れておきましょう。
会社をクビになったときに、解雇の無効について争う場合の対応手順は、以下のとおりです。
それぞれの手順について、以下で順番に解説します。
解雇の無効について争うために、まずは会社に解雇理由証明書を請求しましょう。
解雇理由証明書とは、従業員の解雇理由が具体的に記載してある証明書で、一般的に以下の内容が記載されています。
労働基準法により、雇用主は従業員から解雇理由証明書を請求された場合は、必ず発行しなければなりません。
労働基準法第二十二条第一項
労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
引用元:労働基準法|e-Gov法令検索
解雇の有効性について争うにあたり、まずは自分がどのような理由で解雇されたのかを知る必要があります。
解雇の無効について争う場合は、解雇理由証明書を請求しましょう。
解雇理由が不当解雇にあたる可能性がある場合は、不当解雇に関する客観的な証拠を集めます。
不当解雇の証明のために有効となり得る証拠は、以下のとおりです。
音声やメールがない場合は、手書きのメモや日記も有効です。
労働審判で争う際には、以上の証拠を基に話し合いを行い、最終的には労働審判委員会が判断を下します。
不当解雇に関する証拠が集めるとともに、解雇の撤回を求めて就労の意思表示をしましょう。
あわせて、不当解雇されたあとの賃金も請求します。
解雇後の賃金の請求に関しては、民法では以下のように定義されています。
民法第五百三十六条二項
債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
引用元:民法|e-Gov法令検索
解雇が無効であるケースにおいて、労働者が会社で働けないのは、会社の責めに帰すべき事由に該当します。
そのため、不当解雇されてから解雇が無効だとされる時点までの賃金も請求可能です。
ただし、働く意思を失ってしまった場合はそれ以降の賃金請求ができなくなるため注意が必要です。
就労意志の有無での争いを避けるためにも、解雇後であっても就労の意志がある旨を明確に示しておきましょう。
準備が整い次第、会社との話し合いを通して復職を目指します。
基本的には、解雇の撤回と解雇後の賃金の支払いを求める形になるでしょう。
万が一、話し合いでの折り合いがつかない場合は、労働審判や訴訟なども視野に入れます。
ただし、訴訟となると法律の専門知識が求められるため、個人での対応では限界があります。
訴訟による解決を目指す場合は、信頼できる弁護士に相談するのがおすすめです。
会社からクビを言い渡されたときに、解雇を受け入れる場合の対応手順は以下のとおりです。
それぞれの手順について、以下で順番に解説します。
会社をクビになり解雇を受け入れる場合であっても、会社に解雇理由証明書を請求しましょう。
解雇理由証明書を見れば、自分がどのような理由で解雇されるかを知れるためです。
解雇理由証明書は、解雇時に会社から交付される「解雇通知書(解雇予告通知書)」や「離職票」とは異なる書面です。
解雇を告げられたタイミングですぐに請求しておきましょう。
また、解雇理由証明書を受け取る際、記載事項に不備がないかも必ずチェックしてください。
会社側の行為が不法行為であると立証できれば、損害賠償請求が可能です。
不法行為とは、故意あるいは過失によって他人の権利や利益を侵害する行為を指します。
具体的には以下のような行為が当てはまります。
解雇理由や退職の原因に不法行為がある場合は、不当解雇である旨を主張・立証し、慰謝料の請求をおこないましょう。
解雇を受け入れる場合、解雇予告手当が適切に支払われているかを確認し、万が一支払われていない場合は請求するのを忘れないようにしましょう。
解雇予告手当とは、解雇予告せずに労働者を解雇する場合において、会社に支払われるお金のことです。
解雇予告手当の金額については以下のように定められています。
解雇を伝える日 | 解雇予告手当の支払額 |
解雇日当日に解雇を伝える場合 | 平均賃金の30日分を支払う |
解雇の1日前から29日前に解雇を伝える場合 | 予告期間が30日に足りなかった日数分の平均賃金を支払う |
解雇日の30日以上前に解雇を伝える場合 | 支払う必要がない |
解雇予告手当とあわせて、退職金を請求するのも忘れないようにしましょう。
退職金については就業規則で定められているため、確認してください。
次に、失業手当を受給するためにハローワークで雇用保険の手続きをしましょう。
再就職までの期間、生活の安定を図るためにも失業手当の受給は必要です。
離職理由が自己都合か会社都合かで、給付条件や給付が始まる時期、給付期間が異なります。
原則として、解雇は会社都合の退職にあたりますが、自己都合扱いになった場合の手当の額も押さえておきましょう。
それぞれの離職理由による失業保険の内容は、以下のとおりです。
自己都合退職 | 会社都合退職 | |
受給資格 | 離職以前2年間で被保険者期間が通算12ヵ月以上 | 離職以前1年間で被保険者期間が通算6ヵ月以上 |
最短支給開始日 | 7日+2ヵ月後以降 | 7日後以降 |
給付日数 | 90日~150日 | 90日~330日 |
解雇されると被保険者資格を喪失するので、役所で年金と健康保険の切り替え手続きをしましょう。
退職後に働かない期間がある場合は、国民年金に加入し、国民年金保険料を納める必要があります。
以下では会社を退職した際に、どの区分に入るべきかをケース別にまとめました。
ケース 区分 配偶者が適用事業所に勤務している場合(健康保険・厚生年金加入)で、配偶者の被扶養者となる場合 国民年金第3号被保険者 配偶者が適用事業所に勤務している場合(健康保険・厚生年金加入)で、配偶者の被扶養者とならない場合 国民年金第1号被保険者 配偶者がいない、または配偶者が適用事業所に勤務しない場合(自営業・主婦等) 国民年金第1号被保険者
解雇されると、退職日の翌日以降、健康保険の被保険者資格を喪失します。
万が一保険証を使用した場合は「無資格受診」となり、自己負担を除いた医療費の返還が必要になるため、注意が必要です。
所定の手続きが終われば、次の仕事先を探しましょう。
ハローワークや転職サイト、転職エージェントなどを活用すれば、自分の価値観や希望条件に合った企業に出会いやすくなります。
転職のイベントや自己分析ツールのような転職サポートがついているところもあるので、積極的に活用してみてください。
最後に会社を突然クビになったときのための相談窓口を3つ紹介します。
ひとりでの解決が難しいと感じた場合は、利用してみてください。
総合労働相談コーナーでは、次のようなあらゆる分野の労働問題を取り扱っています。
専門の相談員が無料で面談もしくは電話で対応しており、予約不要で利用できます。
また、相談者のプライバシー保護に配慮し、秘密厳守で対応してくれるので安心できるでしょう。
ただし、総合労働相談コーナーは、解決方法のアドバイスや案内、労働局・労働基準監督署への取り次ぎをするところです。
問題を直接解決する機関ではないため、注意しましょう。
労働組合とは、労働条件の維持や改善を目的として、労働者が主体となって活動する団体です。
労働組合法では、労働組合について以下のように定義されています。
労働組合法 第2条
この法律で「労働組合」とは、労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。
引用元:労働組合法|e-GOV法令検索
労働組合では、憲法28条で保障されている労働者の権利「団体交渉権」「争議権」により、会社を交渉のテーブルにつかせることができます。
労働者の代表という立場で、団体交渉を通じて会社側と不当解雇について対等な話し合いが可能です。
弁護士に相談すれば、会社との交渉や各種請求、裁判を全て代理で任せられます。
会社からいきなりクビを伝えられたときに、不当解雇であるかどうかを個人だけで判断するのは難しいでしょう。
弁護士なら、労働問題のプロの目線から適切に判断してくれ、ケースに応じた最善のアドバイスを教えてくれます。
特に、訴訟などを視野に入れている場合は、弁護士への相談を検討してみてください。
会社をクビになったら、まずは解雇の無効について争うか解雇を受け入れるか、どちらの方針にするかを決めましょう。
それぞれの方針により、メリットやデメリットが異なるため、慎重な判断が必要です。
万が一、解雇の無効を争う場合は、解雇理由証明書をはじめとした証拠集めとともに、話し合いでは決着しないケースに備え、労働審判や訴訟も視野に入れなければなりません。
ただし、いずれにせよクビを宣告されたら、不当解雇に当てはまるかどうかをチェックするようにしましょう。
個人での判断が難しい場合は、労働問題のプロである弁護士の力を借りることも検討してみてください。