その他労働問題
問題社員の正しい辞めさせ方は?不当解雇・違法な退職強要を避けるためのポイント
2024.09.09
適応障害と診断された場合、会社の休職制度を利用できる可能性があります。
しかし、どの程度の期間休めるのか、どのような手続きを踏めばよいのかなど、さまざまな不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、適応障害で休職する際の基礎知識を紹介します。
診断を受けてから復職するまでの流れや給料の有無などについても詳しく解説するので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
まずは、そもそも適応障害で休職することが可能かどうかを解説します。
自己都合による休職は、誰でも利用できる制度ではないので注意してください。
休職制度は、会社が独自に定めている長期休業に関する制度のことを指します。
法律で、自己都合による休職のルールが決められているわけではありません。
就業規則などで休職をどのように定めているかによって、適応障害による休職の可否は変わってきます。
適応障害の場合、会社に認められさえすれば休職制度を利用できます。
適応障害の改善には、ストレスをできるだけ軽減することが重要です。
ストレスの原因が職場環境にある場合などは、長期休職し、回復に専念することを認めてもらえるケースが一般的といえます。
なかには、精神的な不調で会社を休むことに抵抗を感じる方もいるでしょう。
しかし、無理して仕事をしようとすると症状が悪化し、むしろ迷惑をかけてしまうことにもなりかねません。
適応障害と診断された場合は、休職できるかどうかを早めに相談することが大切です。
復職までの期間は人それぞれですが、3~6ヵ月程度が一般的です。
ここからは、適応障害の診断から復職までの流れを細かく解説していきます。
適応障害を発症した場合は、まず病院で診断書を発行してもらいましょう。
多くの場合、休職制度を利用するためには、適応障害であることを示す診断書を職場に提出する必要があります。
適応障害であれば、心療内科や精神科などを受診するケースが一般的です。
診断書は当日中に発行してもらえる病院もありますが、病院によっては複数回通院しなければならないこともあります。
診断書は、労災認定を受けるときにも使用する重要な書類です。
休職を申請する際に利用するかどうかは別として、必ず発行してもらうようにしましょう。
診断書が手に入ったら、会社で規定されている休職制度の利用申請をおこないましょう。
会社によって申請方法は異なりますが、申請書に診断書を添付して提出するケースが一般的です。
場合によっては、産業医との面談を要求されることがあるかもしれません。
また、休職制度の詳細も申請時に再確認しておきましょう。
休職期間や給与体系などについて、ご自身の認識と異なる部分があると、あとからトラブルに発展する可能性も否定できません。
職場の上司などとも今後の流れを共有しながら、申請手続きを進めるようにしてください。
休職中は、適応障害の治療に専念することを最優先してください。
休職直後は仕事が気になって、精神的に休まらないこともあるでしょう。
しかし、会社が従業員に求めているのはできるだけ早く回復し、職場復帰することです。
仕事のことはできるだけ考えずに、ストレスを排除した生活を心がけましょう。
回復が遅れ、休職期間の期限を迎えた場合、会社の就業規則の内容によっては解雇されてしまう可能性もあります。
精神的な疾患なので明確な回復時期を見込むことは難しいですが、早期に職場復帰できるよう、療養に努めることが大切です。
適応障害の症状が見られなくなった場合は、医師や職場の上司などと相談し、復職を検討しましょう。
まずは、主治医から診断書をもらってください。
日常生活に支障がないことを証明してもらうことができれば、職場復帰もしやすくなります。
会社によっては、徐々に勤務時間・日数を増やしていくことを提案されるかもしれません。
無理をすると過度なストレスがかかり、再び適応障害を発症する可能性もあるので、できるだけ会社の指示には従うことをおすすめします。
明らかに不当な配置換えや嫌がらせがある場合などは弁護士に相談し、法的措置を検討しましょう。
適応障害で休職したい旨を会社に伝えるときのコツは以下の3つです。
では、それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
まず、会社へ相談する前に病院から診断書を入手しておくことが重要です。
適応障害であることを証明するものがなければ、会社側も事実かどうかを判断できず、適切な対応がとれません。
嘘をついて休職しようとする従業員も一定数存在するため、診断書の提出は義務付けられているケースがほとんどです。
相談をスムーズに進めるためにも、適応障害が判明した時点で、主治医に診断書の発行を依頼してください。
上司などに相談する際は、できるだけ直接会って事情を説明するようにしましょう。
細かなニュアンスを含めて状況を誤解なく伝えるためにも、対面で話し合うことが重要です。
職場に迷惑がかかることを考えると、顔を合わせたくない気持ちが出てくるかもしれません。
しかし、メールや電話で済ませてしまうと、その気持ちすら受け取ってもらえない可能性もあります。
ご自身の状況や思いを正確に上司へ伝えることが、人間関係を良好に保ちながらスムーズに手続きを進めるためのコツといえるでしょう。
医師から会社に、休職の必要性を説明してもらうのもひとつの方法です。
適応障害になると仕事にどんな支障が生じるのか、どのような治療が好ましいのかなど、医師から説明を受けることで、会社側も納得しやすくなるでしょう。
ご自身で症状などをうまく伝えられないときは、一度主治医に相談してみることをおすすめします。
ここからは、適応障害で休職中の方が安心して生活を送るためのポイントを解説します。
休職したからといって急に収入が途絶えたり、職場復帰できなくなったりするわけではなく、一定の支援を受けられることを覚えておきましょう。
まずは、社会保険による経済的サポートを受けるようにしましょう。
具体的には、傷病手当金や休業補償給付をもらえる可能性があるので、それぞれの支給要件などを詳しく解説していきます。
適応障害の原因が業務外にある場合は、健康保険から傷病手当金を受け取れる可能性があります。
支給要件は、以下のとおりです。
1日あたりの支給金額は、「支給開始日以前12ヵ月間の各月における標準月額を平均した額÷30日×2/3」です。
休職中に賃金を受け取る場合は、上記で算出した傷病手当に満たない部分が支給されます。
傷病手当金の支給期間は、最大1年6ヵ月間です。
途中で出勤し、給与の支払いがあった場合も1年6ヵ月に含まれるので注意してください。
適応障害が労働災害と認められた場合は、労災保険から休業補償給付を受け取れるかもしれません。
休業補償給付の支給要件は、以下のとおりです。
休業補償給付の金額は、次の計算式を用いて算出します。
給付基礎日額には、「医師による診断日直前の賃金締切日以前3ヵ月間に支払われた賃金総額÷その期間の日数」をあてはめてください。
さらに、休業補償給付の対象者には、休業特別支給金も支給されます。
つまり、休業補償給付の対象となった場合は「給付基礎日額×(休業日数−3日)×80%」を受け取れる計算です。
休業補償給付の支給決定は、申請してから約1ヵ月後が目安です。
期間の制限はなく、支給要件を満たしている補償が限り続くことも覚えておきましょう。
なお、休業補償給付は労働基準監督署から支給されるため、申請も労働基準監督署に対しておこなうことになります。
適応障害の通院治療を進める場合は、自立支援医療制度を活用するとよいでしょう。
本来3割の医療費自己負担が、原則1割に軽減されます。
診療費だけでなく、薬代や心理検査費なども軽減の対象です。
また、利用者の収入や世帯の所得などによって、自己負担上限額も定められています。
万が一、高額治療を長期間続けなければならない場合でも、自己負担を大幅に抑えることが可能です。
職場復帰に不安を抱えている方は、職場復帰支援プログラムの利用を検討してみてください。
職場復帰支援プログラムとは、休職中の従業員が円滑に職場復帰できるように、休職を始めてから通常業務に戻るまでの流れを定めたものです。
職場の管理監督者や産業医などが、個々の従業員にあわせた柔軟で具体的なプランを作成します。
プログラムを作成するかどうかは事業者に任せられているので、気になる方は一度確認してみるとよいでしょう。
職場復帰の方法を誤ると、再度心身に支障をきたしてしまう可能性も否定できません。
スムーズな職場復帰に向けて職場の協力を仰ぐためにも、職場復帰支援プログラムの積極的な利用をおすすめします。
休職中であっても、会社に対して最低限の連絡はおこなうようにしてください。
休職していても、会社と雇用関係にあることに変わりはありません。
会社からの連絡には丁寧に対応し、治療の進捗を含め、ご自身の状態も定期的に報告しましょう。
会社によっては、病状の報告が義務付けられることもあるかもしれません。
上司などと連絡を密に取り合っていれば、復職後の人間関係に関する不安も軽減できるはずです。
適応障害で休職したあとの選択肢としては、以下のようなものが挙げられます。
復職以外の道があることも知っておけば、精神的な負担も抑えられるので、ぜひ参考にしてみてください。
ひとつめの選択肢が職場復職です。
実際に長期休業を経て、これまでどおりの仕事に復帰している方も数多く存在します。
場合によっては、担当業務や部署を変えて、復職するケースも少なくありません。
休職期間の満了日が近づいてきたら、職場の担当者や主治医を交え、職場復帰に向けた話し合いを進めましょう。
復帰後は、定期的に面談を実施するケースが一般的です。
会社側もフォローアップに努めてくれるはずですが、無理はせず徐々に慣れていくことを心がけてください。
会社によっては、リハビリ出勤が認められる場合があります。
リハビリ出勤は、本格的な復職を前に試験的に出勤する制度であり、心身への急激な負担を回避できる点がメリットです。
どのようにリハビリ出勤を進めていくかは会社によって異なり、本人や担当者の話し合いによって柔軟な対応が取られるケースもあります。
リハビリ出勤を経て、問題なく復職できると判断された場合は正式に復職が認められます。
同じ職場での復職が難しいときは、配置換えがおこなわれることもあるでしょう。
休職した結果、退職・転職を希望するのも選択肢のひとつです。
職場復帰によって症状が悪化するといった危険性がある場合は、無理して今の会社に留まる必要はありません。
まずは、職場の上司に退職したい旨を伝えてください。
場合によっては、人事担当者を交えた面談の機会が設けられることもあるかもしれません。
ある程度話が進んだところで、会社の指示に従って退職届を作成・提出しましょう。
必ずしも退職届の提出を求められるわけではありませんが、書類として受理してもらっておくと、あとでトラブルが生じたときの証拠にもなります。
適応障害の休職に関する悩みごとは、医師・弁護士・社労士に相談するのが賢明です。
それぞれ相談できる内容が異なるので、適切に使い分けるようにしてください。
適応障害の症状・治療の相談は、主治医や産業医などに相談しましょう。
症状の早期回復には、専門的な知見に基づくサポートが欠かせません。
ご自身の考えだけで行動せず、休職中の適切な過ごし方や仕事との上手な付き合い方など、具体的なアドバイスを受けるようにしてください。
また、休職申請に必要となる診断書も医師でなければ発行できません。
正確に症状を判断してもらうためにも、医師に相談するときは隠しごとをせず、ありのままを話すようにしましょう。
休職にともない法律トラブルに巻き込まれた際は、迅速に弁護士へ相談しましょう。
たとえば、悪質な嫌がらせを受けたり、不当解雇されたりした場合は、法的処置によって解決できる可能性があります。
弁護士に相談すれば、会社との交渉を一任することも可能です。
適応障害に苦しんでいた方にとって、復帰直後に会社と争うことは大きな負担になります。
場合によっては、症状を悪化させてしまうことにもなりかねません。
弁護士に交渉や書類作成などを任せることができれば、相手方と顔をあわせることなく手続きを済ませることもできます。
ただし、弁護士にもそれぞれ得意とする分野がある点には注意が必要です。
そのため、できるだけ労働問題の解決が得意な弁護士を探すことが、迅速な問題解決に向けた近道といえます。
「ベンナビ労働問題」であれば、豊富な解決実績のある弁護士が多数登録されています。
地域や相談内容を細かく絞って検索することもできるので、ご自身にぴったりの弁護士が見つけられるでしょう。
労災保険や健康保険の申請に関することは、社労士に相談するのがおすすめです。
社労士は、労働・社会保険問題を専門に取り扱う国家資格者です。
傷病手当金や休業補償給付の手続きを代行してもらうことができます。
もし退職することになった場合も、健康保険・雇用保険・労災保険の加入や脱退手続きなどを依頼することが可能です。
なお、社労士に相談する際は、相談料を要するケースがあります。
初回は無料に設定されていることもあるので、料金体系は事前に確認しておきましょう。
次に、適応障害で休職する際に知っておくべき注意点を解説します。
生活に直結する内容ばかりなので、ポイントをしっかりと押さえておきましょう。
休職期間中でも、保険料や税金は支払う必要があります。
会社から給与を受け取っていないからといって、全ての支払い義務が免除されるわけではありません。
厚生年金保険料・健康保険料・住民税などは、引き続き負担を求められるので注意しておきましょう。
支払い方法は会社によって異なりますが、会社に対して毎月支払うケースが一般的です。
会社が一時的に立て替えてくれるケースもあるので、早めに相談しておくことをおすすめします。
従業員が希望しても、会社に認めてもらえなければ、休職制度を利用することはできません。
もし会社に休職や復職を断られた場合は、まず就業規則を確認しましょう。
ご自身が各種要件を満たしているかどうかの裏付けが必要です。
また、希望を拒否する理由もしっかりと確認してください。
要件を満たしているにもかかわらず拒否されている場合は、違法行為にあたるかもしれません。
会社側の言い分にどうしても納得できないときは、弁護士にも相談してみましょう。
休職期間満了日を迎えても復職できなかった場合は、普通解雇になることがあります。
適応障害による休職に関しては法律の定めがないため、会社が独自に設けている就業規則に基づきます。
そのため、会社によっては、復職が難しい場合に普通解雇扱いとされる可能性も否定できません。
また、就業規則の要件を満たした場合は、自然退職になるケースもあります。
双方の意思表示がなくとも労働契約が打ち切られ、退職となるため注意してください。
ここからは、適応障害の休職に関するよくある質問に回答します。
同様の疑問を抱えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
多くの場合、休職中に給料が支払われることはありません。
ただし、休職時の給与に関する取り決めは会社によって異なります。
満額とはいわないものの、一定割合を受け取れる可能性もあるので、就業規則などを確認しておくとよいでしょう。
休職期間の延長が認められるかどうかは、会社の規定によって異なります。
ただし、3ヵ月~36ヵ月(3年)程度であれば延長できるケースが一般的です。
休職期間の延長を申し出る際は、できるだけ医師の診断書を提出するようにしてください。
診断書は復職が難しいことを示す証明資料になるため、のちのちトラブルに発展した場合にも役立てられる可能性があります。
休職期間中に解雇を言い渡された場合、不当解雇として無効となる可能性は高いといえます。
そもそも休職は解雇の猶予措置でもあるため、休職期間中に解雇することは法的に認められない可能性が高いです。
適応障害を発症した場合は、治療のために休職するのもひとつの方法です。
無理に仕事を続けると症状が悪化し、結果的に会社に迷惑をかけてしまうことにもなりかねません。
ただし、休職に関する取り決めは、会社が独自に定めています。
休職を申し出る際は、会社との間でもめごとを起こさないで済むように、あらかじめ就業規則などを入念にチェックしておきましょう。
もし休職を拒否されたり、不当に解雇されたりした場合は、法的処置を講じる必要があります。
「ベンナビ労働問題」などを利用して、労働問題を得意とする弁護士を探しましょう。
豊富な知識と経験に基づき、迅速な問題解決に向けた最善の方法を提案してくれるはずです。