その他労働問題
問題社員の正しい辞めさせ方は?不当解雇・違法な退職強要を避けるためのポイント
2024.09.09
会社を退職する際に、会社都合退職と自己都合退職のどちらで扱われるかによって、その後の生活や就職活動への影響は大きく変わってきます。
しかし、会社都合退職とはどのようなケースが該当し、どのようなメリットがあるのか、正しく理解できていない方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、会社都合退職にしたいと考えている方に向けて、以下の内容を解説します。
少しでも有利に退職手続きを進めたいと考えている方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
会社都合退職とは、退職に至る責任や原因が会社側にある場合の退職のことです。
たとえば、会社の倒産やリストラによって、やむを得ず退職するケースなどが代表的な事例といえるでしょう。
また、自ら退職を選んだとしても、大幅な給与カットや嫌がらせがあった場合など、原因が会社にあるときは会社都合退職となる可能性があります。
反対に、責任や原因が労働者側にある場合の退職は個人都合退職となります。
具体的には、転職や出産、介護などを理由とした退職は個人都合退職として扱われるケースが一般的です。
ここでは、原則として会社都合退職になる16のケースを紹介します。
会社都合退職と個人都合退職では、退職後の待遇が大きく変わるので、自身のケースではどちらに該当するのか正しく判断できるようにしておくことが大切です。
破産や民事再生など、各種倒産手続きがおこなわれたことを理由に退職した場合や、業務停止命令など倒産がほぼ確実になったことを理由に退職した場合が該当します。
会社において、1ヵ月に30人以上の労働者が離職予定となったことを理由に退職した場合や、被保険者のうち3分1を超える者が離職したことを理由に退職した場合が該当します。
事業所の廃止もしくは、事業活動停止後に活動再開の見込みがないことを理由に退職した場合が該当します。
事業所の移転によって通勤時間が4時間以上かかるようになったケースなど、出社が困難となったことを理由に退職した場合が該当します。
自身に責任がないにもかかわらず、会社から解雇されたことを理由に退職した場合が該当します。
入社時に示された労働契約の内容と、実際の労働環境が大きくかけ離れていたことを理由に退職した場合が該当します。
賃金の3分の1以上が支払われない月が2回以上連続したことや、離職直前6か月の間に3回あったことなどを理由に退職した場合が該当します。
予期できないタイミングで、賃金が従来の85%以下になったことを理由に退職した場合が該当します。
長時間労働が慢性的におこなわれていたことや、行政機関から健康障害などが生じるおそれがある旨を指摘されたにもかかわらず、改善されなかったことを理由に退職した場合が該当します。
職種転換にあわせて賃金が低下したり、通勤が難しくなったりした場合や、必要な教育を受けられず専門知識を発揮する機会を失った場合など、使用者から十分な配慮がおこなれなかったことを理由とした離職が該当します。
期間の定めがある雇用契約の更新によって3年以上雇用されており、労働契約更新の希望があるにもかかわらず、契約更新されなかったことを理由に退職した場合が該当します。
雇用契約の際に更新または延長をおこなう旨が明示してあり、労働契約の更新を希望していたにもかかわらず、契約更新されなかったことを理由に退職した場合が該当します。
上司や同僚からの著しい冷遇・嫌がらせを繰り返し受けたことを理由に退職した場合が該当します。
社内の人員整理にともなう退職勧奨を受けて退職した場合や、希望退職者募集に応募して退職した場合が該当します。
経済情勢の変動やその他の理由により事業活動の継続が困難となり、会社が一時的に休業し、休業手当が3ヵ月以上連続して支払われたことを理由に退職した場合が該当します。
会社が法令違反の製品を製造または販売していたことを知り、3ヵ月以内に退職した場合が該当します。
会社都合退職と自己都合退職では、以下のような違いがあります。
ここでは、それぞれの違いについて説明します。
会社都合退職と自己都合退職では、失業保険の給付条件が異なります。
失業保険とは、会社を退職したあとに一定期間国から支給される給付金です。
会社都合退職と自己都合退職の両方で受給できますが、会社都合退職のほうが受給開始までの期間が短く、受給期間が長くなる傾向にあります。
つまり、会社都合退職のほうが失業者に対してより手厚い制度設計となっています。
概要 | 会社都合退職 | 自己都合退職 |
---|---|---|
待機期間 | 7日 | 7日 |
給付制限期間 | なし | 最短で2ヵ月 |
給付日数 | 90日〜330日 | 90日〜150日 |
会社都合退職の場合は、受給資格が認められれば7日間の待機期間終了後から手当の支給が始まります。
一方、自己都合退職の場合は7日間の待機期間に加えて、2ヵ月または3ヵ月の給付制限期間が適用されることもあり、その間は手当を受け取ることができません。
また、給付日数についても会社都合退職のほうが長いため、結果的に失業給付の総額が多くなります。
ただし、給付までの期間や給付日数は個々の状況によって異なるので、詳細はハローワークなどに確認するようにしてください。
退職金の額は、会社都合退職と自己都合退職とでは大きく異なります。
自己都合退職の場合、会社都合退職と比べて退職金が減額される制度を設けている会社も少なくありません。
ただし、退職金の支払い額は会社によって異なるため、就業規則を確認するのがおすすめです。
会社都合退職と自己都合退職では、退職理由の記載方法が異なることも覚えておきましょう。
会社都合退職の場合は、そのまま「会社都合により退職」と記載します。
ただし、応募者自身に何か問題があったのではないかと気にする採用担当者も多いので、会社の業績不振や倒産が退職の理由である場合には、その旨を補足しておくとよいでしょう。
一方、自己都合の場合は「一身上の都合により退職」などと記載するケースが一般的です。
いずれにしても就職活動をおこなう際は、前の会社を退職した経緯や理由などを聞かれる傾向にあるので、あらかじめ回答を用意してくことが大切です。
会社都合退職を自己都合退職にされそうな場合、以下のような対処法が考えられます。
会社都合退職といえる正当な理由がある場合には、泣き寝入りせずにしかるべき対応をとることが重要です。
自己都合退職にしてほしいと打診された場合には、はっきりと断るようにしましょう。
会社としては、会社都合退職になると助成金がもらえないといった不利益を受けるため、自己都合退職にしたがる傾向があります。
なかには「会社都合退職だと就職活動で不利になる」などと、脅してくるようなケースも少なくありません。
しかし、会社の要望を受け入れると自身が損することにもなりかねないので、会社都合退職といえる理由がある場合には必ず断るようにしてください。
会社都合退職にあたる場合は、会社から退職届の提出を促されても応じないようにしてください。
安易に退職届を提出してしまうと、自己都合退職として扱われてしまうおそれがあります。
結果的に、退職金や失業給付金を十分に受け取れなくなる可能性があるので注意しておきましょう。
会社都合退職を自己都合退職にされそうな場合は、労働問題が得意な弁護士に相談するのもひとつの方法です。
弁護士に相談すれば、自身のケースが会社都合退職と自己都合退職のどちらにあたるのかを正確に判断してもらえます。
また、会社と争う場合には、交渉や裁判手続きなどを一貫して任せることも可能です。
労働問題が得意な弁護士を探す際は、「ベンナビ労働問題」を活用してみてください。
ベンナビ労働問題は、労働問題の解決実績が豊富な弁護士が多数登録されているポータルサイトです。
地域や相談内容の絞り込み機能があるので、自身に合った弁護士を効率よく探せるでしょう。
自己都合退職となった場合に、失業保険の手続きで有利になるための対応策としては、以下のようなものが挙げられます。
では、それぞれの対応策について詳しく見ていきましょう。
意に反して自己都合退職とされたときは、会社都合退職に変更してもらえるよう手続きを進めることが重要です。
会社が離職票に記載している退職理由に誤りがある場合は、ハローワークに対して申し立てをおこなうことで、変更してもらえるケースもあります。
事実に即さず自己都合退職とされた際には、以下のような証拠を集めたうえで、ハローワークに相談してみるとよいでしょう。
【会社都合退職に変更する際に活用できる証拠例】
会社都合退職の要件に該当しなさそうな場合でも特定理由離職者として認定されるよう手続きするのもひとつの方法です。
特定理由離職者とは、病気やケガ、妊娠・出産、通勤困難などの理由で離職を余儀なくされた人のことを指します。
特定理由離職者に認定された場合は、2ヵ月または3ヵ月の給付制限期間が適用されません。
つまり、自己都合退職であっても、会社都合退職と同様に、7日間の待機期間を経過すれば失業保険の給付がスタートします。
特定理由離職者に該当する可能性がある方は、やむを得ない事情で離職したことがわかる書類などを用意して、ハローワークに相談してみてください。
最後に、会社都合に関するよくある質問に回答します。
会社都合退職の要件に該当する場合において、退職届や退職願を提出してしまうと、労働者が自ら退職を希望しているものとみなされ、自己都合退職にされてしまうおそれがあります。
会社側から退職届の提出を求められた際には、「退職勧奨にともなう退職」などと会社都合であることが明確にわかるようにしておきましょう。
使用者が会社都合退職ではなく、自己都合退職にさせたがる主な理由は助成金をもらえなくなるおそれがあるためです。
助成金は、企業の事業支援のために政府から支給されるお金のことです。
そして、雇用関係の助成金には、一定期間内に会社都合退職者を出していないことが条件になっているものがあります。
そのため、受給対象から外れないように、会社都合退職をなんとかして回避しようと画策する企業も少なくないのです。
労働者が退職届を提出した場合でも、会社都合退職にできる可能性はあります。
会社都合退職になるかどうかは、あくまでも退職に至った原因が会社側にあるかどうかによって決定されるものです。
そのため、労働者が自主的に退職するかのような行動をとっていたとしても、直ちに自主都合退職になるわけではありません。
すでに自己都合退職とされている場合は、速やかにハローワークへ相談することをおすすめします。
会社都合退職と自己都合退職のどちらに該当するかで、受け取れるお金や就職活動への影響などが大きく変わってきます。
基本的には、会社都合退職のほうが有利な立場にあると考えてよいでしょう。
そのため、会社側から自己都合退職にするような働きかけがあっても応じないことが大切です。
しかし、会社都合退職か自己都合退職かの線引きが難しいケースや、会社が強い圧力をかけてくるケースも少なくありません。
会社側と対立した場合には、できる限り早い段階で、労働問題が得意な弁護士に相談・依頼するようにしてください。
弁護士に相談・依頼すれば、会社都合退職にするためのアドバイスをもらうことができます。
また、会社との交渉や訴訟の手続きを一任できるため、精神的な負担も大幅に軽減できるはずです。
労働問題や退職トラブルなどが得意な弁護士を探す際は、「ベンナビ労働問題」の利用をおすすめします。
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