その他労働問題
問題社員の正しい辞めさせ方は?不当解雇・違法な退職強要を避けるためのポイント
2024.09.09
給料は労働契約の内容であるため、会社が労働者の給料を一方的に減額することは原則としてできません。
ただし、例外的に一方的な給料の減額が認められるケースもあります。
労働者としては、会社から給料の減額を打診されたら、即答せずにその妥当性を検討することが大切です。
弁護士に相談して、どのように対応すべきかを慎重に検討しましょう。
本記事では、給料の減額を拒否できるのかどうかについて、拒否できないケースや打診された場合の対処法などと併せて解説します。
本記事を参考にして、会社から給料減額を打診された際にどうすべきかを把握しましょう。
会社から一方的に給料を減額すると伝えられても、労働者は原則として給料の減額を拒否できます。
労働契約を変更するためには、原則として使用者と労働者の合意が必要です(労働契約法8条)。
したがって、労働者の同意を得ることができなければ、使用者の一方的な都合によって労働契約を変更することはできません。
給料も労働契約の内容であるので、その減額は労働契約の変更に当たります。
よって、給料を減額するためには労働者の同意が必要であり、労働者は給料の減額を拒否できるのが原則です。
ただし例外的に、以下の場合には会社による一方的な給料の減額が認められることがあります。
会社によっては、人事評価に基づいて個々の労働者の職務等級を決めているケースがあります。
この場合、職務等級によって給料が増減するのが一般的です。
合理的な職務等級制度に基づき、合理的な人事評価に従って職務等級が引き下げられた場合、それに応じた給料の減額は認められる可能性が高いでしょう。
労働条件の変更は使用者と労働者の合意によっておこなうのが原則ですが、就業規則の変更によって、使用者が一方的に労働条件を変更できることがあります。
就業規則の変更により、労働者の不利益に労働条件を変更するためには、以下の要件をいずれも満たさなければなりません(労働契約法10条)。
就業規則の変更による給料の減額については、減額幅や減額に至るまでの労使交渉の状況などを踏まえて、その有効性が判断されることになります。
会社は就業規則の規定に基づき、就業規則違反に当たる行為をした労働者に対して懲戒処分をおこなうことができます。
懲戒処分のうち、減給・出勤停止・降格の3つは、いずれも給料の減額を伴います。
これらの懲戒処分を適法におこなうことができる場合は、労働者の同意を得なくても給料を減額することが可能です。
ただし、懲戒処分によって給料を減額する場合は、懲戒権の濫用に当たらないことが必要となります。
また、減給の懲戒処分については、減額する給料の額に上限が設けられており、上限を超える減給処分は無効です。
就業規則上の根拠があるだけでは、懲戒処分を適法におこなうことができるとは限りません。
労働者の行為の態様・性質その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない懲戒処分は懲戒権の濫用として無効となります(労働契約法15条)。
減給・出勤停止・降格のように給料の減額を伴う懲戒処分も、労働者による就業規則違反の内容に比べて重すぎる場合は、懲戒権の濫用として無効の可能性が高いと考えられます。
減給の懲戒処分については、以下の2つの上限をいずれも超えてはならないとされています(労働基準法91条)。
これら2つの上限のうちいずれかを超える減給処分は、少なくとも超過部分が無効となります。
賞与の支給額については、会社に比較的広い裁量が認められています。
そのため、労働者の勤務成績などに応じて、会社は賞与を柔軟に増額・減額することが可能です。
ただし、単なる上司の好き嫌いなど、不合理な理由による賞与の減額は違法の可能性が高いと考えられます。
会社によっては、基本給とは別に、会社の業績や従業員のパフォーマンスなどに連動する業績給を設けていることがあります。
固定額である基本給とは異なり、業績給は増額および減額が予定されています。
そのため、明確な基準に従い合理的な範囲内でおこなわれる減給は、適法と認められることがあります。
会社から給料の減額を打診された場合は、落ち着いて以下の対応をおこないましょう。
会社から給料の減額の提案を受けても、労働者に同意する義務はありません。
しかし前述のとおり、会社が一方的に給料を減額できる場合もあります。
拒否しても給料が減額されてしまうのであれば、会社との関係性を悪化させないため、給料の減額に同意することも考えられるでしょう。
給料を減額する提案に同意するかどうかは、法的な検討をおこなったうえで総合的な観点から判断すべきです。
すぐに回答するのではなく、持ち帰って同意するか拒否するかを慎重に検討しましょう。
会社が一方的に給料を減額できる場合に当たるかどうかは、法的な観点から適切に検討しなければ判断できません。
労働基準法や労働契約法などの法令、労働契約の内容、労働の実態などを総合的に検討する必要があるため、一般の方には難しい部分が多いと思われます。
会社による減給の可否をご自身で判断するのが難しい場合は、弁護士に相談しましょう。
具体的な事情に応じて、給料の減額が認められるかどうかや、それを踏まえて会社の提案を受け入れるべきかどうかについてアドバイスを受けられます。
給料の減額を拒否する場合は、拒否したことを記録に残しておくべきです。
拒否の連絡を口頭で済ませてしまうと、後で会社から「給料の減額に同意した」と主張され、反論が難しくなってしまうおそれがあります。
会社に対して書面やメールを送信し、給料の減額を拒否する旨を記録が残る形で明確に伝えましょう。
会社から給料の減額を強く求められ、不本意な形で同意してしまったとしても、給料の減額は無効であると主張する余地はあります。
最高裁平成28年2月19日判決では、就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については、単に変更を受け入れる労働者の行為(=同意)の有無だけでなく、その同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも判断されるべきであると判示しました。
最高裁は、賃金・退職金の減額に対する労働者の同意が自由な意思に基づくかどうかは、以下の事情に照らして判断すべきとしています。
たとえば、
などには、労働者の自由な意思による同意がなかったものとして、給料の減額が無効となる可能性があります。
弁護士のサポートを受けながら、会社に対して給料減額の無効を主張しましょう。
労働者には、給料の減額に同意する義務はありません。
したがって、給料の減額を拒否したことだけを理由に、待遇の悪化を伴う配置転換や解雇など、会社が労働者を不利益に取り扱うことは違法です。
もし給料減額の拒否を理由に会社から不利益な取り扱いを受けたら、速やかに弁護士へ相談しましょう。
会社に対して反論する方法についてアドバイスを受けられるほか、必要に応じて会社とのやり取りを代行してもらえます。
会社による不当な取り扱いに対しては、泣き寝入りせず労働者としての権利をきちんと主張することが大切です。
会社との間で給料の減額に関するトラブルが発生したら、お早めに弁護士へご相談ください。
会社から給料の減額の提案を受けたとしても、労働者は原則として拒否できます。
ただし、会社が一方的に給料を減額できる場合もあるので注意が必要です。
会社からの給料減額の提案にどのように対応すべきかについては、弁護士に相談して、法的な観点からの検討をおこなったうえで判断しましょう。
そのほかにも会社との間でトラブルを抱えている場合には、弁護士に相談すればまとめてアドバイスを受けられます。
会社との間で労働条件に関するトラブルを抱えている方は、お早めに弁護士へご相談ください。