その他労働問題
問題社員の正しい辞めさせ方は?不当解雇・違法な退職強要を避けるためのポイント
2024.09.09
年次有給休暇(以下、有給休暇)は、一定の労働をしている人に対して当然に与えられます。
しかし、労働基準法第115条によると、有給休暇は「有給休暇の取得できる日から2年間で消滅する」とされています。
そのため、有給休暇を計画的に取得しないと、気付かないうちに時効が到来してしまい、損をしてしまう可能性があるでしょう。
本記事では、有給休暇が消滅するタイミングや、未消化の有給休暇がある場合のポイントなどについて解説します。
有給休暇の消滅時効や取得について困っている方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
有給休暇の消滅時効は労働基準法第115条に規定されており、「有給休暇を取得できるようになった日から2年間」となっています。
つまり、付与された日から起算して2年後の同日になると、その有給休暇は消滅してしまいます。
なお、会社側に有給休暇の期限を延長してもらうことはできないので注意しましょう。
(時効)
第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
ここでは、未消化の有給休暇がある場合のポイントについて説明します。
有給休暇は1年に一度付与されるものですが、1年分は翌年度に繰り越すことができます。
たとえば、有給休暇の取得条件を満たしており、6.5年以上勤めている人であれば、最大で20日間の有給休暇を翌年度に繰り越すことが可能です。
なお、当事者間で特段の意思表示がない場合、原則として「古い有給休暇から取得した」と解釈されます。
年休の繰越しすでに発生している未取得の年休の権利は、翌年度まで繰り越すことができる(昭22.12.15基発501号、前掲国際協力事業団(年休)事件)。
会社が労働者の有給休暇を買い取ることは、原則として認められていません。
有給休暇の目的は労働者が十分な休息を確保するということであり、会社による有給休暇の買い取りを認めてしまうとその目的が達成できなくなってしまうからです。
しかし、消滅時効を迎えた有給休暇を買い取ることは、労働者にとって不利にはならないため認められています。
なお、この場合であっても労働者側から買い取りを請求することはできないので注意しましょう。
未消化の年休を事後に使用者が買上げる義務はないが(創栄コンサルタント事件 大阪高判平14.11.26 労判849-157)、未取得分の年休日数に応じて手当てを支給するなど事後に年休を買上げることは違法ではない。
他方、年休は、現実に労働者が取得することを要するものであるという制度趣旨から、労働者が使用者に対して未取得日数分の年休に応じた金銭の支払いを請求することはできない(シーディーディー事件 山形地判平23.5.25 労判1034-47)。
2019年4月から、全ての企業に対して「年次有給休暇の時季指定義務」が導入されました。
これにより会社は、年10日以上の有給休暇が付与されている従業員(すでに有給休暇を5日以上取得している従業員は除く)に対して、時季を指定して5日以上の有給休暇を取得させる義務を負うようになりました。
このルールに違反すると、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
⑦ 使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。ただし、第一項から第三項までの規定による有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。
有給休暇は、労働者の健康を保つために欠かせない制度です。
しかし、有給休暇を取得できるようになってから2年間で消滅時効を迎えることになる点には注意が必要になります。
消滅時効を迎えた有給休暇は、会社によっては買い取ってくれる場合もありますが、労働者側から買い取りを請求できるわけではありません。
未消化の有給休暇がある場合、「いつ消滅してしまうのか」を確認し、できる限り計画的に有給休暇を取得しましょう。