給料・賃金未払い
給与未払いの請求方法を解説!法的手続きの違いや弁護士に依頼するメリットも
2024.07.16
労働契約や就業規則などで退職金の支給が定められている場合、会社はそのルールに従って、従業員に退職金を支払う義務を負います。
退職金が適切に支給されていない場合は、会社に対して未払い退職金を請求しましょう。
退職金の未払いについては、労働基準監督署または弁護士に相談できます。
それぞれサポート内容が異なるので、希望する解決内容に応じて相談先を使い分けましょう。
今回は退職金未払いの相談窓口や、各窓口のサポート内容、相談先の選び方などを解説します。
未払いの退職金を請求したいけど、どうすればいいかわからず困っていませんか?
結論からいうと、労働契約・就業規則等に定めがあれば、会社は対処する労働者に対して退職金を支払わなければなりません。
もし、未払いの退職金を会社に請求したい場合、弁護士に相談・依頼するのをおすすめします。
弁護士に相談すると以下のようなメリットを得ることができます。
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会社が退職する労働者に対して退職金を支払う義務を負うか否か、どの程度の金額を支払うべきかについては、労働契約・就業規則等の規定によって決まります。
労働基準法等の法令では、会社が退職金を支払うことは必須とされていません。
しかし、労働契約や就業規則で退職金の支給が定められていれば、その内容は契約に基づく会社の義務・労働者の権利を構成します。
したがって、労働契約・就業規則等に定めがあれば、会社は対処する労働者に対して退職金を支払わなければなりません。
会社が支払うべき退職金の金額も、労働契約・就業規則等の規定に従って決まります。
実際に支払われた退職金額が、労働契約・就業規則等に基づき計算される金額に不足する場合は違法です。
この場合、退職した労働者は会社に対して、不足分に相当する金銭の支払いを請求可能です。
仮に退職に関して労働者側に何らかの非があるとしても、退職金を減額・不支給とするためには、労働契約・就業規則等の定めに従う必要があります。
根拠規定がないにもかかわらず、会社が一方的に退職金を減額・不支給とすることは違法です。
会社が退職金を適切に支払わない場合、退職した労働者は以下の窓口に相談できます。
労働基準監督署は、労働基準法等の遵守状況について、所轄地域内の事業場を監督する行政官庁です。
退職金は賃金の一種であるため、その未払いは労働基準法違反に当たります。
したがって、退職金未払いは労働基準監督署の管轄事項であり、後述するようにさまざまなサポートを受けられます。
労働基準監督署への相談は、どのような内容でも無料です。
未払い退職金を会社に対して請求したい場合には、弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士は労働者の代理人として、未払い退職金を回収するための具体的な対応を行います。
後述するように、労働審判や訴訟などの専門的な手続きについても依頼できます。
組織力や資金力で勝る会社に対しても、弁護士に依頼することで、法的な論理で対等に戦えるようになります。
弁護士への相談料は有料が原則ですが、無料相談を受け付けている弁護士も多数存在します。
退職金の未払いについて具体的な解決を図りたい場合には、弁護士に相談するのがよいでしょう。
労働基準監督署は、退職金未払いについて以下の対応を行っています。
行政の力で会社全体の違法状態を正してほしい場合は、労働基準監督署に相談すべきです。
退職金は賃金の一種であるため、その支払いは労働基準監督署の管轄事項です。
したがって、労働基準法上の退職金のルールについてわからないことがあれば、労働基準監督署に質問すれば一般的な回答を得ることができます。
ただし、実際の労働契約・就業規則等に基づく退職金の支払義務の有無など、個別具体的な問題については明確な回答を得られない可能性があるのでご注意ください。
退職金が適切に支払われなかった労働者は、その事実を労働基準監督署に申告することができます(労働基準法104条1項)。
労働基準監督署に申告を行ったことを理由として、会社が労働者を不利益に取り扱うことは違法です(同条2項)。
労働基準監督署への申告は、後述する臨検等や行政指導・刑事処分のきっかけになる可能性があります。
労働者の申告等を踏まえて、労働基準法違反の退職金未払い等が発生している疑いを抱いた場合、労働基準監督署は事業場に対する臨検(立ち入り調査)を行います(労働基準法101条1項)。
臨検の際には、労働基準監督官が会社に対して帳簿・書類の提出を求め、さらに役員や担当者などに対する尋問を行います。
会社が労働基準法違反の事実を隠蔽していても、徹底した臨検が行われれば明るみに出る可能性が高いです。
臨検等による調査の結果、労働基準法違反の状態が発覚した場合には、労働基準監督官が事業場に対して勧告等の行政指導を行います。
さらに、悪質なケースや行政指導に従わないケースなどにおいては、役員・担当者や会社が刑事手続きの対象となる可能性もあります。
この場合、労働基準監督官が司法警察官の職務(逮捕・捜索等を含む)を行うものとされています(労働基準法102条)。
行政指導や刑事処分がなされた場合、会社に対する労働基準監督署の監視はさらに強化されるため、労働基準法違反の状態は是正される可能性が高いです。
弁護士は、退職金未払いについて主に以下のサポートを行っています。
労働者自身の会社に対する権利を実現したい場合には、弁護士への相談がおすすめです。
会社との交渉がまとまれば、早期に未払い退職金を回収できます。
しかし、労働者自身が会社と交渉しても、会社がすんなり未払い退職金の支払いに応じるケースは少ないのが実情です。
弁護士は労働者に代わって、会社との間で未払い退職金の支払い交渉を行います。
弁護士が法的な根拠に基づく主張を行うことで、会社に支払義務を認識させ、和解によって未払い退職金を回収できる可能性が高まります。
会社との交渉がまとまらない場合は、裁判所に労働審判を申し立てることが考えられます。
労働審判では、裁判官1名と労働審判員2名が労働者・会社の各主張を公平に聴き取り、労使紛争の解決を図ります。
労働審判を有利に進めるためには、法的に説得力のある主張を提示できるかどうかが大きなポイントです。
弁護士は、労働審判の準備や対応を労働者に代わって行います。
労働問題の経験が豊富な弁護士に依頼すれば、労働審判に向けた適切な準備と対応により、労働者にとって有利な解決を得られる可能性が高まります。
参考:労働審判手続|裁判所
労働審判に対して異議が申し立てられた場合には、自動的に訴訟手続きへ移行します。
また、労働審判を経ずに直接訴訟を提起することも可能です。
未払い退職金請求を訴訟で争う場合、退職金請求権の存在を証拠に基づいて立証しなければなりません。
訴訟手続きには専門的なルールが適用されるため、労働者自身で訴訟に対応するのは非常に大変です。
弁護士は労働者の代理人として、訴訟手続きにおける対応を全面的に代行します。
裁判所に提出する書類の作成・準備から、訴訟期日当日の対応まで、すべて弁護士に任せられるので安心です。
経験豊富な弁護士が適切な主張・立証を行うことにより、労働者に有利な判決・和解を得られる可能性が高まります。
退職金の未払いについては、基本的には弁護士に相談することをおすすめします。
労働基準監督署とは異なり、弁護士に相談すれば、会社に対する実際の未払い退職金請求をサポートしてもらえるからです。
会社との協議・労働審判・訴訟の対応を、労働者自身ですべて行うのは非常に大変です。
信頼できる弁護士にサポートを依頼することで、適正額の未払い退職金をスムーズに回収できる可能性が高まります。
その一方で、自分をないがしろにした会社を懲らしめたい、行政指導などを通じて会社の違法状態を是正してほしいと考える方がいらっしゃるかもしれません。
その場合は、弁護士と並行して労働基準監督署にも相談するのがよいでしょう。
労働基準法違反の事実を労働基準監督署に申告すれば、事業場への臨検や行政指導などが行われる可能性があります。
未払い退職金請求を弁護士に依頼する際には、主に以下の弁護士費用が発生します。
各弁護士費用について、「日本弁護士連合会弁護士報酬基準」(現在は廃止)を参考にした目安額を紹介します(いずれも税込)。
実際の金額や計算方法は依頼先によって異なるので、弁護士へ個別にご確認ください。
着手金は、弁護士に依頼する段階で最初に支払います。
事件の結果にかかわらず返金されないので、依頼前に金額などをよく確認しましょう。
着手金は一括払いが原則ですが、弁護士に相談すれば分割払いが認められることもあります。
なお、未払い退職金請求の着手金を計算する際には、請求額を経済的利益とするのが一般的です。
<未払い退職金請求に関する着手金額の目安>
経済的利益の額が300万円以下の場合 | 経済的利益の額の8.8% |
300万円を超え3,000万円以下の場合 | 経済的利益の額の5.5%+9万9,000円 |
3,000万円を超え3億円以下の場合 | 経済的利益の額の3.3%+75万円9,000円 |
3億円を超える場合 | 経済的利益の額の2.2%+405万9,000円 |
※着手金の最低額は11万円
報酬金は、弁護士による案件対応が終了し、未払い退職金を回収できた場合に支払います。
未払い退職金請求の報酬金を計算する際には、回収額を経済的利益とするのが一般的です。
<未払い退職金請求に関する報酬金額の目安>
経済的利益の額が300万円以下の場合 | 経済的利益の額の17.6% |
300万円を超え3,000万円以下の場合 | 経済的利益の額の11%+19万8,000円 |
3,000万円を超え3億円以下の場合 | 経済的利益の額の6.6%+151万円8,000円 |
3億円を超える場合 | 経済的利益の額の4.4%+811万8,000円 |
日当は、弁護士が出張した場合に発生します。
未払い退職金請求について日当が発生するのは、弁護士が会社との対面交渉に出席する場合や、労働審判・訴訟の期日に出席する場合などです。
<未払い退職金請求に関する日当額の目安>
半日(往復2時間超4時間以内) | 3万3,000円以上5万5,000円以下 |
一日(往復4時間超) | 5万5,000円以上11万円以下 |
未払い退職金請求の受任事務につき、弁護士が何らかの費用を負担した場合には、実費相当額を依頼者が負担します。
<未払い退職金請求に関する実費の例>
など
退職金の未払いに納得できない場合は、労働基準監督署または弁護士に相談しましょう。
特に、会社に対して未払い退職金を請求したい場合には、弁護士への相談がおすすめです。
労働問題の経験が豊富な弁護士に相談すれば、会社との協議・労働審判・訴訟の各手続きを通じて、適正額の未払い退職金をスムーズに回収できる可能性が高まります。
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十分な退職金をもらうための簡単な手順については、こちらの記事でも詳しく解説されています。あわせてご確認ください。参考:解雇で退職金なしは違法?十分な退職金をもらうための簡単な手順4つ|リーガレット