労働災害
労働災害を報告してくれなければ労災申請できない?労災申請の方法を解説
2023.08.30
業務や通勤などが原因で病気やけがなどをした場合、その労働者は労災給付を受け取ることができます。
しかし、労働基準監督署の調査の結果、労災保険が不支給になってしまう場合もあります。
そのような場合には審査請求、再審査請求、取消訴訟などの手続きをするなどの対応が必要になるでしょう。
この記事では、労災給付の不支給決定通知を受け取った方に向けて、以下4点について解説します。
労災給付を受け取るために、ぜひこの記事を役立ててください。
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労働災害(労災)とは、業務や通勤などが原因で労働者が病気・けが・死亡することを指します。
具体的な定義は労働安全衛生法第2条に規定されており、これによると「労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡すること」とされています。
厚生労働省の公表によると、2021年の労災による死亡者数は867人、休業4日以上の死傷者数は 14万9,918人となっています。
【参考記事】令和3年の労働災害発生状況を公表|厚生労働省
一 労働災害 労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいう。
労働災害は、労災の発生状況に応じて「通勤災害」と「業務災害」に分けられます。
労災保険は、就業中・通勤中に被災した場合に支給されるものなので、たとえば、業務災害を認定してもらうためには「業務遂行性」と「業務起因性」の要件を満たす必要があります。
つまり、労働者が事業主の支配管理下で作業をしており、その業務に起因して傷病が発生していれば、業務災害が認定されて労災給付を受け取ることができます。
労災給付の種類には、以下のようなものがあります。
このように、労災に伴う給付にはさまざまな種類があります。
それぞれの具体的な申請方法は多少異なりますが、基本的には、以下の流れになっています。
労災申請を受けた労働基準監督署が調査をおこなった結果、「不支給決定」となる場合もあります。
労災給付が不支給決定になる理由は「労災認定の基準を満たしていないから」であり、具体的には以下のようなケースに当てはまると不支給決定となります。
不支給決定になってしまうと、労災給付は一切受け取ることができません。
労災が認められない場合は、審査請求、再審査請求、取消訴訟をおこなうことが可能です。
また、事業者や加害者に対して、安全配慮義務違反または不法行為に基づく損害賠償請求をおこなうことも考えらます。
ここでは、労災が認められない場合の対処法について確認しましょう。
審査請求 | 労働基準監督署を管轄する都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官に原処分の取消しを求める審査を請求する |
再審査請求 | 労災保険・雇用保険に関する不服審査を担当する労働保険審査会に対して原処分の取消しを求めるの審査を依頼する |
取消訴訟 | 審査請求や再審査請求で認定されなかった場合に、裁判で労基署長の不支給決定を取り消すよう求める裁判 |
損害賠償請求 | 事業者や加害者に対して民事上の損害賠償請求をおこなう |
労働基準監督署から「不支給決定通知」が送られてきた場合、まずは審査請求をおこなうことになります。
審査請求の申請先や期限については、基本的に不支給決定通知に記載されています。
本件処分があったことを知った日の翌日から3ヵ月以内に申請する必要があるため、できる限り早く審査請求の手続きをおこなうようにしましょう。
審査請求でも不支給決定となった場合は、「再審査請求」か「原処分の取消訴訟」のいずれかをおこないます。
労災認定されなかった場合でも、事業主や加害者に対して損害賠償請求をすることは可能です。
たとえば、職場で従業員が、事業の執行について、暴行などをはたらき、被害者の労働者が、傷害を負った場合、事業者には民法第715条の「使用者責任」が生じるため、損害賠償請求ができる可能性があります。
また、暴行をはたらいた加害者本人に対して損害賠償を請求することも考えられるでしょう。
(使用者等の責任)
第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
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労災隠しとは、「事業者が労働者死傷病報告を故意に提出しない、虚偽の内容を申告しているなど、労災事故の発生を隠す行為」を指します。
労働安全衛生規則第97条によって、事業者には、「労働者死傷病報告の提出」が義務付けられており、仮に労災隠しをした場合は「50万円以下の罰金」が科されます。
万が一、事業者に労災隠しをされた場合は、労働者は最寄りの労働基準監督署に相談・申告したり、労働問題が得意な弁護士に相談したりするとよいでしょう。
(労働者死傷病報告)
第九十七条 事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第二十三号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
最近では、労働に関する社外の無料相談窓口も増えています。
24時間電話相談に対応している窓口もあるので、まずは相談してみるのがおすすめです。
労災申請は、労働者がひとりで対応することも可能ですが、労働問題・労災申請が得意な弁護士に相談・依頼するのもおすすめです。
弁護士に相談・依頼すれば、労災申請のサポートを受けられたり、代理人として事業者や加害者に損害賠償請求をしてくれたりします。
まずは「ベンナビ労働問題」で近くの労働問題・労災申請が得意な弁護士を探して、労災申請や審査請求に関する相談をしてみるとよいでしょう。
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