労災認定される・されない範囲を紹介|労災の種類や認めらない場合の対処法も解説

労災認定される・されない範囲を紹介|労災の種類や認めらない場合の対処法も解説

業務や通勤などが原因で病気やけがなどをした場合、その労働者は労災給付を受け取ることができます。

しかし、労働基準監督署の調査の結果、労災保険が不支給になってしまう場合もあります。

そのような場合には審査請求、再審査請求、取消訴訟などの手続きをするなどの対応が必要になるでしょう。

この記事では、労災給付の不支給決定通知を受け取った方に向けて、以下4点について解説します。

  • 労働災害の認定基準や申請方法といった基礎知識
  • 労災が認められない主なケース
  • 労災認定されなかった場合の対処法
  • 事業主に「労災隠し」をされた場合の対策

労災給付を受け取るために、ぜひこの記事を役立ててください。

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この記事を監修した弁護士
徳田 隆裕(金沢合同法律事務所)
徳田 隆裕弁護士(弁護士法人金沢合同法律事務所)
残業代請求、労働災害、不当解雇など労働トラブルはお任せください。依頼者様の味方として、共に戦います。

労働災害とは

労働災害(労災)とは、業務や通勤などが原因で労働者が病気・けが・死亡することを指します。

具体的な定義は労働安全衛生法第2条に規定されており、これによると「労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡すること」とされています。

厚生労働省の公表によると、2021年の労災による死亡者数は867人、休業4日以上の死傷者数は 14万9,918人となっています。

【参考記事】令和3年の労働災害発生状況を公表|厚生労働省

一 労働災害 労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいう。

労働安全衛生法 | e-Gov法令検索

労働災害の種類と認定基準

労働災害は、労災の発生状況に応じて「通勤災害」と「業務災害」に分けられます。

  • 通勤災害:労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害又は死亡のこと
  • 業務災害:労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡のこと

労災保険は、就業中・通勤中に被災した場合に支給されるものなので、たとえば、業務災害を認定してもらうためには「業務遂行性」と「業務起因性」の要件を満たす必要があります。

つまり、労働者が事業主の支配管理下で作業をしており、その業務に起因して傷病が発生していれば、業務災害が認定されて労災給付を受け取ることができます。

労災給付の種類と申請方法

労災給付の種類には、以下のようなものがあります。

  • 療養補償給付:傷病により療養を必要とする際に支給される
  • 休業補償給付:傷病により療養のための休業を必要とする際に支給される
  • 傷病補償年金:傷病の治療を受けたが、治癒せず傷病等級に該当する場合に支給される
  • 障害補償給付:傷病の治療を受けたが、治癒せず障害等級に該当する場合に支給される
  • 遺族補償給付:労災が原因で労働者が亡くなった場合に、その労働者の遺族に対して支給される
  • 葬祭料(葬祭給付):葬祭をおこなった人に対して支給される
  • 介護補償給付:一定の障害によって介護が必要になった場合に支給される

このように、労災に伴う給付にはさまざまな種類があります。

それぞれの具体的な申請方法は多少異なりますが、基本的には、以下の流れになっています。

  1. 事業者が労働基準監督署(労基署)に労働者死傷病報告を提出する
  2. 労災申請書を労基署に提出する
  3. 労基署が労災の事実について調査する
  4. 労災給付決定がおこなわれて保険金が支給される

労災認定されないケース

労災申請を受けた労働基準監督署が調査をおこなった結果、「不支給決定」となる場合もあります。

労災給付が不支給決定になる理由は「労災認定の基準を満たしていないから」であり、具体的には以下のようなケースに当てはまると不支給決定となります。

不支給決定になってしまうと、労災給付は一切受け取ることができません

  • 業務外の行為により被災している
  • 個人的な犯罪行為で被災している
  • 労働者自ら災害を発生させている
  • 合理的な経路・手段でない通勤で被災している
  • 労災保険の対象となる「労働者」に該当していない
  • 労災給付の申請期限(時効)を過ぎてしまっている など

労災認定されなかった場合の対処法

労災が認められない場合は、審査請求、再審査請求、取消訴訟をおこなうことが可能です。

また、事業者や加害者に対して、安全配慮義務違反または不法行為に基づく損害賠償請求をおこなうことも考えらます。

ここでは、労災が認められない場合の対処法について確認しましょう。

【労災認定されなかった場合の主な対処法】
審査請求労働基準監督署を管轄する都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官に原処分の取消しを求める審査を請求する
再審査請求労災保険・雇用保険に関する不服審査を担当する労働保険審査会に対して原処分の取消しを求めるの審査を依頼する
取消訴訟審査請求や再審査請求で認定されなかった場合に、裁判で労基署長の不支給決定を取り消すよう求める裁判
損害賠償請求事業者や加害者に対して民事上の損害賠償請求をおこなう

審査請求などをおこなう

労働基準監督署から「不支給決定通知」が送られてきた場合、まずは審査請求をおこなうことになります。

審査請求の申請先や期限については、基本的に不支給決定通知に記載されています。

本件処分があったことを知った日の翌日から3ヵ月以内に申請する必要があるため、できる限り早く審査請求の手続きをおこなうようにしましょう。

審査請求でも不支給決定となった場合は、「再審査請求」か「原処分の取消訴訟」のいずれかをおこないます。

事業者や加害者に損害賠償請求をする

労災認定されなかった場合でも、事業主や加害者に対して損害賠償請求をすることは可能です。

たとえば、職場で従業員が、事業の執行について、暴行などをはたらき、被害者の労働者が、傷害を負った場合、事業者には民法第715条の「使用者責任」が生じるため、損害賠償請求ができる可能性があります。

また、暴行をはたらいた加害者本人に対して損害賠償を請求することも考えられるでしょう。

(使用者等の責任)

第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

引用元:民法 | e-Gov法令検索

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労災隠しがおこなわれた場合

労災隠しとは、「事業者が労働者死傷病報告を故意に提出しない、虚偽の内容を申告しているなど、労災事故の発生を隠す行為」を指します。

労働安全衛生規則第97条によって、事業者には、「労働者死傷病報告の提出」が義務付けられており、仮に労災隠しをした場合は「50万円以下の罰金」が科されます。

万が一、事業者に労災隠しをされた場合は、労働者は最寄りの労働基準監督署に相談・申告したり、労働問題が得意な弁護士に相談したりするとよいでしょう。

(労働者死傷病報告)

第九十七条 事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第二十三号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

引用元:労働安全衛生規則 | e-Gov法令検索

最近では、労働に関する社外の無料相談窓口も増えています。

24時間電話相談に対応している窓口もあるので、まずは相談してみるのがおすすめです。

まとめ|労災が認められず困っている方は弁護士に相談を

労災申請は、労働者がひとりで対応することも可能ですが、労働問題・労災申請が得意な弁護士に相談・依頼するのもおすすめです。

弁護士に相談・依頼すれば、労災申請のサポートを受けられたり、代理人として事業者や加害者に損害賠償請求をしてくれたりします。

まずは「ベンナビ労働問題」で近くの労働問題・労災申請が得意な弁護士を探して、労災申請や審査請求に関する相談をしてみるとよいでしょう。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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