遺産分割が未了の場合のデメリットとは|相続税の申告方法や救済措置を解説

遺産分割が未了の場合のデメリットとは|相続税の申告方法や救済措置を解説

遺産分割が未了になったときには、さまざまなデメリットが発生します。

しかし、話し合いがなかなかまとまらないケースもあるでしょう。

遺産分割はできるだけ早く進めていく必要がありますが、難しい場合はデメリットを軽減する手続きを取る必要があります。

まずは法律の専門家である弁護士に相談し、適切な対処法についてアドバイスしてもらうことが有効です。

本記事では、遺産分割を未了のままにしたときのデメリットについて解説します。

期限内に遺産分割が終わらない場合の対処法も説明するので、遺産分割に役立ててください。

遺産分割は未了のままだと危険です

遺産分割自体には、期限がなくいつでもおこなうことができます。

しかし一定の期間が過ぎてしまうと、相続税の控除が受けられなくなるのです。

期限内に終わらせていれば、控除を受け払わなくて済んだ税金を、支払うのは嫌なことでしょう。

また未了のまま新たな相続が開始され、さらに複雑になるという可能性も考えられます。

遺産分割が未了のまま悩んでいる方は、弁護士に依頼するのがおすすめです。

 

弁護士に依頼すると、遺産分割調停や審判などの専門的な手続きを活用して遺産分割をスムーズに進めてくれます。

そのほかにも遺産分割には面倒な協議や手続きが多くありますが、弁護士は手続きの代理も可能です。

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この記事を監修した弁護士
桜総合法律事務所
雫田 直輝弁護士(桜総合法律事務所)
桜総合法律事務所は休日・夜間相談にも対応しております。冷静な考察で最高のサポートをさせて頂きます。

遺産分割とは

遺産分割とは、被相続人の遺産を相続人の間で協議して分割することです。

遺産分割をおこなう際、期限については明記されていません。

ただし、相続税申告が必要な場合には、相続が発生してから10カ月以内に相続税申告書を提出する必要があります。

遺産分割が終わらないと相続税申告書に記載する財産が分からず、相続税額が確定できないため、実質的には遺産分割に期限が生じます。

そのため、遺産分割はできるだけ早く終えておく必要があるのです。

>遺産分割の期限について詳しく知る

期限内に遺産分割ができない場合のデメリットとは

期限内に遺産分割ができないとき、どのようなデメリットがあるのでしょうか。

ここでデメリットについて解説します。

配偶者控除が適用されない

配偶者控除は、配偶者が相続する財産が法定相続分または1億6,000万円までであれば相続税がかからない制度です。

相続財産が多額であっても、配偶者控除制度があれば相続税額はかなり抑えられます。

制度が適用されるためには、相続税申告書の提出期限を迎えるまでに、配偶者が相続財産を取得していなければなりません。

もし配偶者控除制度が利用できなければ、配偶者が取得する財産に対しても課税されるため、相続税額がその分多くなる点は大きなデメリットとなります。

遺産分割を早めにおこない、相続税を余分に支払うことがないよう注意しましょう。

小規模宅地等の特例を利用できない

小規模宅地等の特例とは居住用宅地や事業用宅地などで、一定の面積の範囲で不動産の評価額が条件に応じて5割から8割削減される制度です。

居住用宅地などは8割削減されるため、相続財産に不動産がある場合には大きなメリットとなります。

小規模宅地等の特例を利用するためには、原則として、相続税申告書の提出期限を迎えるまでに該当の宅地の遺産分割を終えている必要があります。

小規模宅地等の特例が利用できない場合、不動産の評価額もそのままで計算されるため、多額の相続税がかかる点がデメリットです。

相続財産に不動産があるときは特に注意しましょう。

農地等の納税猶予が適用されない

被相続人が農地を所有して農業を営んでいた場合、その農地を取得して引き続き農業を営む相続人に対して、一定の条件下で相続税が猶予される制度が農地等の納税猶予です。

被相続人が農地を所有して農業を営んでいれば、条件を満たせば相続税額が抑えられます。

しかし、農地等の納税猶予もまた、原則として、相続税申告書の提出期限を迎えるまでに遺産分割を終えていなければ利用できません。

利用できない場合は該当する農地も相続税の課税対象となります。

物納が認められない

相続税は金銭で納付することが原則ですが、相続税が多額になったために現金で納付することが難しい場合には、不動産等を金銭の代わりに納付できる物納という制度が設けられています。

被相続人が所有していた財産については、遺産分割協議がまとまるまではすべての相続人の共有となります。

そのため、物納しようと考えたときには、相続人全員の申請が必要であり、遺産分割ができないときは、結果的に物納も利用できないこととなります。

物納が認められなくなると相続税の支払いが困難になり、実生活に支障をきたす事態も考えられます。

非上場株式等の猶予制度が適用されない

被相続人の事業を受け継ぐ相続人が、非上場会社の株式を相続により取得して事業を続けていく場合に、一定の条件下で相続税の納付が猶予や免除される制度のことを、非上場株式等の猶予制度といいます。

中小企業の事業を承継していくなかで、自社株式については換金が難しいうえに、評価額によっては多額の相続税を現金で支払わなければいけない事態が起きることも考えられます。

そこで、事業承継を円滑に進めるために、この制度を利用できるのです。

しかし、遺産分割協議がまとまらない場合は制度が適用されず、多額の相続税を支払う必要が生じます。

相続税の取得費加算の特例

相続により取得した財産を、第三者に譲渡して対価を得ることがあります。

例えば、不動産を相続して、第三者に売却する場合です。

この場合、土地を売った相続人には、相続税とは別に、譲渡所得税が発生します。

しかし、これでは二重に課税されることになります。

そこで、譲渡所得の計算上、相続時に負担した相続税のうち一定の金額を考慮することができ、結果として譲渡所得税の負担を減らせる制度があります。

これが、相続税の取得費加算の特例です。

この制度は、相続税の申告期限の翌日から3年以内に相続財産を譲渡した場合に適用されます。

ただし、相続財産を売却した年の所得税の納税義務の成立時(通常は、その年の12月31日)に相続税額が確定していなければなりません。

つまり、それまでに原則として遺産分割を終えて、相続税の申告も済ませておく必要があります。

数次相続となる

被相続人が亡くなったあと、遺産分割がされない間に相続人が亡くなり新たに相続が発生することを、数次相続といいます。

父母など、夫婦であれば年齢が近いため、数年遺産分割をおこなわず放置していると起きやすくなるものです。

数次相続によって世代が変わってしまった場合には、遺産分割はさらに難しい状態になります。

なぜなら、相続人の特定が難しくなっていくケースがあるからです。

家族だけであったものが、代が替わるにつれて相続人同士が疎遠になっていき、場合によっては多人数で遺産分割協議をまとめなければなりません。

時間や労力が余計にかかるほか、相続手続自体も通常の遺産分割よりも煩雑化していくケースも考えられます。

期限内の遺産相続が未了になる場合の相続税の申告方法とは

期限内の遺産分割が未了になった場合、まずは仮申告・仮納税をおこないます。

そのうえで、遺産分割が確定してから改めて相続税の計算をやり直し、更正の請求や修正申告といった方法で再度確定申告書の提出をおこなう流れです。

「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出する

相続税の申告は、相続開始後10カ月以内に必ずおこなわなければなりません。

申告期限の時点で遺産分割が完了していなかった場合には、前述したようにさまざまな制度が利用できなくなるデメリットが生じます。

しかし、相続税申告書を提出するときに「申告期限後3年以内の分割見込書」を一緒に提出すれば、申告期限後3年以内に遺産分割されたタイミングで配偶者控除や小規模宅地等の特例の利用が可能になります。

特例を利用するためには、遺産分割が確定してから4カ月以内に税務署に対して更正の請求をおこなわなければなりません。

参考:【相続税申告とは?完全ガイド】控除や要否などを分かりやすく解説 | 相続税専門の岡野相続税理士法人

「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出する

申告期限から3年が過ぎても遺産分割が確定しない場合は、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」の提出が必要です。

「やむを得ない事由」の例として、相続人の間で裁判になっている場合や未成年の相続人がいる場合などがあります。

「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」は、申告開始から3年が経過した日の翌日から2カ月以内に、所轄税務署に提出しなければなりません。

税務署長の承認を受けた場合には、判決の確定の日などやむを得ない事由がおさまった日の翌日から4カ月以内に遺産が分割されたタイミングで、特例の利用が可能になります。

なお、この場合も、分割がおこなわれた日の翌日から4か月以内に税務署に更正の請求をおこなう必要があります。

未了の遺産相続をまとめる方法とは

未了の遺産相続をまとめるとき、弁護士に相談する方法があります。

親族間でなかなか遺産分割問題を解消できない場合には、利用を検討してみましょう。

弁護士に相談すると、遺産分割調停や審判などの専門的な手続きを活用して遺産分割をスムーズに進めてくれます。

そのほかにも遺産分割には面倒な協議や手続きが多くありますが、弁護士はその面倒な手続きも代行してくれます。

また、弁護士は依頼者の代理人として交渉などもおこなってくれるため、有利な条件で交渉をまとめてもらえる可能性が高くなるでしょう。

弁護士への依頼は費用が高額になる印象を持っている方もいるかもしれません。

しかし、初回の相談料は無料であるところも多いので、この機会に一度相談してみるのもおすすめです。

まとめ

遺産分割が未了のままでは、配偶者控除や小規模宅地等の特例などが適用されません。

その結果、相続税の負担が大きくなってしまう可能性があります。

しかし、そこで諦める必要はありません。

「申告期限後3年以内の分割見込書」や「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」などをうまく使いながら相続税申告を一旦おこないつつ、遺産分割協議をできるだけ早く終わらせることが大切です。

自分達だけで遺産分割協議を進めるのが難しくなった場合は、弁護士に相談するのも1つの方法です。

遺産分割協議が未了のままになりそうなときや困ったときは、弁護士への相談を検討してみましょう。

無料相談や電話相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは相談してこれからの方針を立てても良いでしょう。

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この記事の調査・編集者
梶原美香
法律系SEOライターとして入社。何よりも読者第一であることを掲げ、読みやすく、理解しやすいコンテンツ制作を心がけている。離婚問題に注力している。
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