遺言書は「公正証書」で作成するのが安心|メリット・手続きなどを解説

遺言書は「公正証書」で作成するのが安心|メリット・手続きなどを解説

この記事を監修した弁護士
阿部 由羅
阿部 由羅弁護士(ゆら総合法律事務所)
ゆら総合法律事務所の代表弁護士。不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。

遺言書には3つの方式がありますが、その中でも特に「公正証書遺言」を選択するのがお勧めです。

公正証書遺言には、遺言無効を防いだり、遺言書の紛失・改ざんなどを防止したりできるメリットがあります。

公正証書遺言作成の手続きについては、弁護士にご相談ください。

この記事では、公正証書遺言を作成するメリット・手続きなどを中心に解説します。

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遺言書の3つの方式について

公正証書遺言のメリットなどを理解する前提として、まずは法律上の遺言の形式についての基礎知識を備えておきましょう。

民法上認められている遺言の基本的な形式には、以下の3つが存在します。

自筆証書遺言

「自筆証書遺言」は、遺言者が全文・日付・氏名を自書し、押印をする方法で作成します(民法968条1項)。

添付される相続財産目録を除いて、遺言者全文を自書しなければならない点が、自筆証書遺言の大きな特徴です。

民法上の遺言の方式さえ守っていれば、遺言者が一人で作成することも可能であり、3つの遺言方式の中でもっとも簡便といえます。

秘密証書遺言

「秘密証書遺言」は、遺言者が署名・押印した証書を封印し、さらに封書に遺言者・公証人・証人2人以上が署名・押印する方法で作成します(民法970条1項)。

遺言書自体の自書は必要なく、PCのワープロソフトなどで文章を作成することも可能です。

また、遺言書に封印が施されるため、遺言の内容を他の人に知られることがないメリットもあります。

ただし手続きが複雑な点や、形式不備による遺言無効のリスクが高い点などを理由として、実務上はあまり用いられていません。

公正証書遺言

「公正証書遺言」を作成する際には、遺言者が口授した遺言の内容を、公証人が筆記して文書化します。

その後、遺言者・証人2人以上が署名押印し、さらに公証人が署名押印を行えば、公正証書遺言の完成です。

公正証書遺言は、他の方式の遺言とは異なり、公証人が作成する公文書である点が大きな特徴です。

遺言を公正証書で作成すべき理由とは?

遺言書を公正証書の方式で作成することには、以下に挙げるメリットがあります。

いずれも実際の相続発生時において、トラブルなくスムーズに相続手続きを進める観点から、大きな効果を発揮するポイントです。

形式不備により遺言が無効となる事態を防げる

遺言書を作成する際にもっとも注意すべきなのが、民法で定められる形式に関する要件を欠いていると、遺言全体が無効になってしまう点です。

遺言が無効になってしまうと、遺言者の意思が相続に反映されず、さらに相続人間のトラブルを誘発することにもなりかねません。

公正証書遺言を作成する際には、公証人が事前に遺言書の形式面を精査し、民法で定められる遺言の要件を満たしているかどうかを確認します。

経験と知識を豊富に有する公証人のチェックが入ることで、遺言書が形式不備により無効となってしまうリスクは、事実上解消されます。

遺言書の紛失・改ざんなどのリスクを防げる

公正証書遺言の原本は、公証役場にて保管されます(遺言者に交付されるのは正本・謄本)。

公証役場に保管されている公正証書遺言の原本は、紛失・改ざんなどのリスクがほとんどありません。

遺言書の原本自体が手元にある自筆証書遺言や秘密証書遺言と比較すると、紛失・改ざんのリスクに対して強い点が、公正証書遺言の大きなメリットといえます。

遺言執行時に家庭裁判所の検認が不要

遺言書の保管者は原則として、相続の開始を知った後遅滞なく、家庭裁判所による遺言書の検認を請求しなければなりません(民法1004条1項)。

家庭裁判所による検認には手数料がかかりますし、工程が一つ増える分、手続きに要する期間も延びてしまいます。

しかし公正証書遺言の場合、遺言書の検認義務が免除されています(同条2項)。

そのため、実際に相続が発生した際、円滑に遺言執行の手続きを進められる点が大きなメリットです。

公正証書遺言を作成する際の手続きの流れ

公正証書遺言の作成に当たっては、公証役場での手続きが必要となります。

公正証書遺言を作成する際の大まかな手続きの流れは、以下のとおりです。

遺言書の内容を検討・確定する

まず、遺言者の側で遺言の内容を検討し、文書化しておきます。

形式について不備がなく、また遺言者のニーズを反映した内容がきちんと含まれるように、弁護士に相談しながら条文を作成するとよいでしょう。

公証役場との事前打ち合わせを行う

遺言書の内容が固まったら、公証役場に足を運ぶ前に、公証人との事前折衝が必要です。

遺言書の内容を記載した文書を公証役場に事前送付して、内容を精査してもらいましょう。

形式不備などがあれば、公証人より指摘が入りますので、適宜指示に従って修正を行ってください。

なお、弁護士に遺言書作成を依頼している場合には、弁護士が公証役場とのやり取りを代行してくれます。

公証役場に行く

公証人との事前折衝の結果、内容に問題がないことが確認されたら、実際に公証役場に足を運びましょう。

まずは事前に訪問希望日を公証役場に連絡し、訪問の予約をとってください。

弁護士に依頼している場合は、弁護士を通じて予約をとればOKです。

また、公証役場(または弁護士)から指示があるかと思いますが、公正証書遺言の作成には証人2人以上の立会いが必須となります。

そのため、公証役場を訪問する際には、必ず証人2人以上を伴ってください。

証人は、以下の欠格事由(民法974条)のいずれかに該当する人でなければ、誰でも可です。

<証人の欠格事由>

身近に証人になることを頼める人がいない場合には、弁護士に相談すると、証人を必要な人数確保してもらえます。

民法の方式に従って、公証人が公正証書を作成する

民法上、公正証書遺言を作成する手順は、以下のとおり定められています(民法969条)。

①証人2名以上の立会いが必要

前述の欠格事由に該当しない証人を、必ず2名以上同伴してください。

②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授する

遺言者が遺言の内容(趣旨)を口頭で公証人に伝える、と条文上は定められていますが、実際にはまず公証人が遺言書の内容を読み上げます。

そして遺言者は、公証人が読み上げた内容について、「そのとおりで合っている」という趣旨を口頭で伝えます。

これで「口授」が行われたという扱いになるのです。

なお、話すことができない人については例外として、通訳や自書による代用が認められています(民法969条の2第1項)。

③公証人が遺言者の口述を筆記する

遺言者による口授の内容を受けて、公証人は公正証書遺言を作成します。

事前折衝の結果完成した文書について、遺言者が間違いない旨を確認した場合には、その内容のとおり公正証書遺言が作成されます。

④筆記した内容を遺言者・証人に読み聞かせ、または閲覧させる

公証人は公正証書遺言を作成した後、、その内容を遺言者・証人に対して読み聞かせ、または閲覧させます。

なお、耳が聞こえない人については例外として、手話通訳により遺言者・証人に伝えることも認められています(民法969条の2第2項)。

⑤遺言者・証人が署名・押印する

公証人から読み聞かせを受け、または閲覧した公正証書遺言の内容に問題がなければ、遺言者および証人は署名・押印を行います。

なお遺言者が何らかの理由で署名できない場合は、公証人がその事由を付記して、遺言者の署名に代えることが認められます。

⑥公証人が署名・押印する

上記の手続きがすべて完了した後、公証人が民法所定の方式に従って作成したことを付記したうえで、証書に署名・押印をすれば完成です。

原本は公証役場で保管|遺言者には正本・謄本が交付される

公正証書遺言の原本は、公証役場で保管されることになります。

遺言者に対しては、原本と同一の内容である正本・謄本がそれぞれ交付されます。

仮に正本・謄本を紛失したとしても、原本は公証役場で保管されていますから、手数料を納付すれば再発行を申請することが可能です。

公正証書遺言の作成にかかる費用

公正証書遺言を作成する際にかかる費用は、主に公証役場に支払う手数料と、弁護士などに支払う専門家費用の2種類です。

公証役場に支払う手数料

公証役場に支払う手数料は、遺言の目的である財産の価額に応じて、以下のとおり定められています(公証人手数料令別表)。

遺言の目的の価額 手数料
100万円以下 5000円
100万円を超え200万円以下 7000円
200万円を超え500万円以下 11000円
500万円を超え1000万円以下 17000円
1000万円を超え3000万円以下 23000円
3000万円を超え5000万円以下 29000円
5000万円を超え1億円以下 43000円
1億円を超え3億円以下 43000円+超過額5000万円までごとに13000円
3億円を超え10億円以下 95000円+超過額5000万円までごとに11000円
10億円を超える場合 249000円+超過額5000万円までごとに8000円

弁護士などに支払う専門家費用

公正証書遺言の作成は、弁護士や司法書士などに依頼できます。

弁護士に依頼する場合、公正証書遺言作成の費用は、おおむね5万円~20万円程度です。

具体的な金額については、弁護士によって異なります。

また、公正証書遺言作成に立ち会う証人の確保を依頼する場合には、1人当たり1万円前後が追加で発生するケースが多いです。

公正証書遺言を作成する際の注意点

公正証書遺言は、公文書であるため信頼性が高く、多くのメリットがあります。

その一方で、作成の際には以下の点に注意しておきましょう。

公証人から内容面でのアドバイスは受けられない|弁護士に相談を

公証人は、遺言が形式不備により無効とならないようにチェックをしてくれますが、遺言書の内容に立ち入った指摘をしてくれるわけではありません。

たとえば、下記のような指摘は、公証人からは得られないのです。

遺言者の意思を適切に反映し、かつ紛争防止にも役立つ遺言書に仕上がっているかどうかは、遺言者自身で確認する必要があります。

もし遺言書の内容面で不安がある場合には、弁護士に案文の作成を依頼するとよいでしょう。

併せて遺言執行者も決めておくと、実際の相続手続きがスムーズ

公正証書遺言で定められた内容は、実際に相続が発生した段階で、実現に向けた手続きを行う必要があります。

たとえば、不動産の相続登記・預貯金の名義変更などが必要になるほか、不動産の売却などが発生するケースもあります。

このような煩雑な手続きについて、相続人自身で対応するのは大きな負担になるので、あらかじめ遺言執行者を指定しておくことがお勧めです。

公正証書遺言の作成を依頼した弁護士に、遺言執行者への就任をセットで依頼しておくと、実際に相続が発生した際にはスムーズに手続きを進められるでしょう。

自筆証書遺言書保管制度もお勧め|公正証書遺言との比較

公正証書遺言に多くのメリットがあることは前述のとおりですが、最近創設された「自筆証書遺言書保管制度」を利用することも、有力な選択肢です。

自筆証書遺言書保管制度にも、公正証書遺言と同様のメリットがある

自筆証書遺言書保管制度を利用すると、以下のように、公正証書遺言と同様のメリットを得ることができます。

①形式不備による遺言無効の防止

法務局の遺言書保管官が、民法上の形式要件を満たしているかどうかチェックを行うため、形式不備による遺言無効のリスクを防止できます。

②紛失、改ざんなどの防止

自筆証書遺言の原本が、法務局の遺言書保管書にて保管されるため、紛失・改ざん等を防ぐことができます。

③遺言執行時の検認が不要

遺言書保管所に保管されている自筆証書遺言については、公正証書遺言と同様に、遺言執行時の家庭裁判所による検認が不要です(遺言書保管法11条)。

費用は自筆証書遺言書保管制度の方が安価

自筆証書遺言書保管制度は、1件当たり3900円の手数料で利用できます。

前述のとおり、公正証書遺言の作成手数料は最低でも5000円であり、財産額が大きくなれば数万円・数十万円と膨らんでしまいます。

それに比べると、自筆証書遺言書保管制度は、かなり安価に利用できる点が大きなメリットです。

通知制度がある点も、自筆証書遺言書保管制度の方が勝る

公正証書遺言の場合、遺言者が亡くなったとしても、その旨を公証役場から相続人などに連絡してくれることはありません。

これに対して、遺言書保管所に保管されている自筆証書遺言については、関係者に対する通知制度が整備されています。

具体的には、戸籍担当部局と連携したうえで遺言者死亡の情報を把握し、死亡の事実をあらかじめ遺言者が指定した1名に対して通知してくれるのです。

さらに遺言書の閲覧等が行われた場合、すべての関係相続人に対して、遺言書の存在を知らせる通知が行われます。

通知制度の効果で、遺言書保管所に保管されている遺言書の存在を、親族に忘れ去られてしまうことがありません。

このような通知制度が整備されている点は、公正証書遺言と比較して勝っている点といえるでしょう。

法務局に足を運べない場合は、自筆証書遺言書保管制度を利用できない

自筆証書遺言書保管制度は、利用に当たって多くのメリットがある反面、遺言者自ら法務局に足を運ぶことが必須であるのが難点です。

公正証書遺言の場合、公証人に依頼すれば出張対応も可能です。

これに対して、自筆証書遺言書保管制度の場合、遺言書保管官が自宅などまで出張してくれることはありません。

よって、足が不自由な方・寝たきりの方・病院から出られない方などは、自筆証書遺言書保管制度を利用することが困難なのです。

このような方々は、公正証書遺言を作成することをお勧めいたします。

まとめ

公正証書遺言には、形式不備による無効のリスクを回避できる点・紛失や改ざんを防げる点・家庭裁判所による検認が不要となる点など、多くのメリットがあります。

作成時には公証役場との折衝・手続きが必要となりますが、弁護士依頼すれば、戸惑うことなくスムーズに作成を進められます。

また、最近では自筆証書遺言書保管制度が新設され、公正証書遺言と並んで使い勝手のよい制度になっています。

弁護士のアドバイスを受けながら、遺言者ご本人のご状況に合わせて、両者を適宜使い分けましょう。

遺言書の作成にご関心をお持ちの方は、ぜひお元気なうちに、お早めに弁護士へご相談ください。

遺言書について相談しようとお考えの方へ

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この記事の調査・編集者
みぞ
2017年にライターとしてアシロに入社し、主に交通事故とIT分野の執筆に携わる。2019年によりIT媒体の専任ディレクターになり、コンテンツの執筆・管理などを行っている。