不当解雇
会社をクビになったら?解雇を争うときと受け入れるときの対応をそれぞれ紹介
2024.10.25
会社から不当解雇された場合、解雇期間中の未払い賃金などを請求できます。
また、精神的な損害を補償する慰謝料についても、状況によっては会社に対して請求できる場合があります。
もし会社から不当解雇されてしまった場合には、法的な根拠に基づき、会社に対して正当な補償を求めましょう。
この記事では、不当解雇時に会社に対して行うことのできる請求の内容や、正当な補償を受けるために必要な準備などについて解説します。
突然の解雇は労働者にとって一番重い処遇です。本来会社は、労働者を簡単に解雇することはできません。
少しでも解雇に違和感を感じるのでしたら弁護士にご依頼ください。
不当に解雇されている場合、『解雇の撤回』や『慰謝料の請求』『解雇予告手当の請求』を行なうことができます。
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まずは、「不当解雇」の法律上の位置づけと、不当解雇に当たるパターンの代表例について解説します。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は違法・無効となります(解雇権濫用の法理:労働契約法第16条)。
このように、法的に正当な根拠がなく違法・無効とされる解雇を、一般に「不当解雇」と呼んでいます。
労働法令を正しく理解していなかったり、都合のよい解釈をしていたりする使用者も、実態として多数存在します。
このような使用者は、解雇に課されている法律上の高いハードルを軽視して、安易に労働者を解雇してしまいがちです。
労働者としては、不当解雇によって受ける生活上の影響は甚大であるため、使用者に対して不当解雇の無効などを訴えていくべきでしょう。
法律上の解雇のハードルは非常に高いため、不当解雇ではない解雇の方が珍しいのではないか、というのが実情です。
以下では不当解雇の代表例を挙げますが、他にも不当解雇に該当するパターンは多数考えられます。
<不当解雇の代表例>
会社から不当解雇された場合、ショックで精神的なダメージを受けてしまうというケースもあるかと思います。
精神的な損害に対する賠償は「慰謝料」と呼ばれますが、法律上、不当解雇に関する慰謝料の取り扱いはどうなっているのでしょうか。
一般的に、「解雇されたこと」そのものに関しては、慰謝料が発生することはないと解されています。
たとえば、東京地裁平成15年7月7日判決では、解雇に関する慰謝料について以下のとおり判示しています。
<東京地裁平成15年7月7日判決>
「一般に解雇された労働者が被る精神的苦痛は、解雇期間中の賃金が支払われることにより慰藉されるというべきである。本件においては、解雇が無効であるとしたうえで、労働契約上の地位確認及び本判決確定日までの賃金の支払いを命ずる以上、本件解雇による原告の精神的損害はてん補されると解される。これによってもなお償えない特段の精神的苦痛を生じた事実を認めるに足りる証拠はない」
「解雇された労働者が被る精神的苦痛は、解雇期間中の賃金が支払われることにより慰藉される」という考え方は、大多数の裁判例に共通しており、解雇自体について慰謝料が認められる可能性は低いのです。
ただし上記の裁判例では、解雇期間中の賃金が支払われても「なお償えない特段の精神的苦痛を生じた事実」が認められれば、慰謝料を認め得ることが示唆されています。
つまり単に労働者を解雇したにとどまらず、解雇に付随して労働者に精神的ダメージを与える悪質な行為がなされた場合には、会社に対する慰謝料請求が認められる可能性があるのです。
以下に挙げる裁判例は、解雇に関連する慰謝料が認められたケースの一例になります。
<札幌地裁平成15年5月14日判決>
虚偽の内容を含む懲戒解雇の経緯等を記載した貼り紙を、会社の入り口に誰でも見られる状態で掲載されたケースで、50万円の慰謝料が認められました。<名古屋地裁平成16年7月30日判決>
他の従業員により、継続的に暴行や暴言を受けていた労働者が解雇されたケースで、100万円の慰謝料が認められました。<東京地裁平成14年7月9日判決>
解雇が行われる前に、仕事を取り上げるなどの嫌がらせを受けてうつ病等を発症したケースで、150万円の慰謝料が認められました。
不当解雇に関連する行為について、裁判例で認定される慰謝料は、50万円~200万円程度の範囲内に収まるケースが多いようです。
会社側の行為の悪質性によっては、高額の慰謝料が認められることもありますが、基本的には後述する解雇無効・バックペイの支払いなどを主張する方が本筋といえるでしょう。
不当解雇を受けた場合、会社に対する金銭的な請求としては、慰謝料以外にもいくつかの法律構成が考えられます。
不当解雇を受けた場合、解雇無効を主張したうえで、解雇期間中の賃金(バックペイ)の支払いを求めるのが基本線となります。
不当解雇によって就労できなかったことは、全面的に会社の帰責性によるものなので、賃金全額を請求することができるのです(民法第536条2項)。
また解雇の無効を主張しない場合でも、不当解雇によって就労できなかった期間中の賃金を「逸失利益」として、不法行為に基づく損害賠償を請求できます(民法第709条)。
なお復職せずに再就職をした場合、バックペイや逸失利益の請求が認められるのは、原則として解雇から再就職までの期間に限られます。
不当解雇を争う場合、見落とされがちなのが「解雇予告手当」の請求です。
使用者は、労働者を解雇しようとする場合、原則として30日前に予告をすることが必要です(労働基準法第20条1項第1文)。
解雇予告を行わない場合や、30日分の平均賃金を「解雇予告手当」として支払う必要があります(同項第2文)。
バックペイや逸失利益に比べると、解雇予告手当は少額になることが多いですが、労働者の正当な権利として漏れなく請求しましょう。
不当解雇に関する紛争を、会社との和解によって解決する場合には、さまざまな名目の金銭を「解決金」という形でまとめて精算するのが一般的です。
解決金の金額相場は、復職が認められるかどうかによって異なります。
復職が認められる場合には、バックペイの全額をベースとして解決金が定められることが多いと考えられます。
これに対して復職が認められない場合には、バックペイの全額に加えて、一定の退職金相当額が上乗せされるケースが多いです。
具体的な解決金額は交渉次第、さらには労働審判・訴訟などの法的手続きの経過次第になります。
労働者としては、交渉や法的手続きの経過を見ながら、適正妥当な落としどころを探っていくことになるでしょう。
不当解雇に関して、会社の慰謝料・バックペイ・逸失利益などを請求する際には、交渉や法的手続きを見据えた十分な事前準備を行うことが大切です。
交渉・法的手続きのいずれにおいても、解雇の不当性を基礎づける証拠を集めることは非常に重要です。
不当解雇の動かぬ証拠があれば、会社は解雇の撤回や和解に応じる可能性が高いですし、裁判所に対しても労働者に有利な心証を与えることができます。
解雇の経緯については、会社とのやり取りに関する記録(メール・録音など)が証拠になりますので、できる限り多くの証拠を収集しておきましょう。
なお、不当解雇に関する訴訟では、解雇の正当性を立証する責任は会社側にあります。
そのため労働者側で豊富に証拠を準備できなかった場合でも、会社の主張に対する適切な反論を行うことができれば、不当解雇の主張が認められる可能性は十分にあるでしょう。
慰謝料請求に当たっては、解雇そのものの不当性を主張することに加えて、解雇に関連して行われた会社の不法行為を立証する必要があります。
たとえば、
といった行為があったことを立証できる証拠を集めておきましょう。
会社による不法行為が行われたことについては、訴訟における立証責任は労働者側にあります。
そのため、不当解雇そのものに関する主張以上に、労働者側の証拠収集が非常に重要な意味を持つことに留意しましょう。
労働審判・訴訟などの法的手続きでは、判断権者である労働審判委員会や裁判所に対して、労働者側の主張を効果的にアピールすることが重要です。
労働審判では申立書、訴訟では訴状が、それぞれ判断権者に対して第一印象を与える重要な書面になります。
そのため申立書・訴状を作成する際には、法律上の要件に沿って、労働者に有利な事実を整理して記載することが大切です。
申立書・訴状をきちんと作りこみ、万全の体制で労働審判や訴訟の手続きに臨むためには、弁護士への相談をおすすめいたします。
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不当解雇に関して会社に解雇の撤回を求めたり、慰謝料・バックペイ・逸失利益の支払いを請求したりする方法には、主に以下の3つが考えられます。
まずは、会社に対して直接連絡し、解雇の撤回や各種支払いに関する交渉を持ちかけるのが一般的です。
会社と直接交渉を行うメリットとしては、うまくいけば、もっとも迅速かつコストをかけずに不当解雇紛争を解決できる点が挙げられます。
法的手続きに発展した場合、紛争解決までには数か月~1年以上を要しますが、直接交渉であれば1~2ヵ月程度で済む場合もあります。
また、裁判所に提出する提出書類の準備なども不要なため、対応に要する時間的コストも少なく済む点もメリットです。
さらに裁判所に対して納付する手数料も発生せず、弁護士に交渉を依頼する場合でも、費用を安く抑えられる傾向にあります。
その反面、直接交渉のデメリットとしては、和解が成立しなければ時間の無駄に終わってしまう点が挙げられます。
直接交渉がまとまらなければ、結局労働審判や訴訟に発展してしまい、交渉の期間の分解決が後ろにずれ込みます。
そのため、交渉成立の余地がないと判断された段階で、早めに法的手続きへ移行するのがよいでしょう。
労働審判は、こじれてしまった労使紛争を迅速に解決するための法的手続きです。
【参考元】労働審判|裁判所
労働審判では、裁判官1名と労働審判員2名で構成される「労働審判委員会」が、労使双方の主張を基に審理を行います。
最終的には、労使双方の合意による「調停」、または労働審判委員会が結論を示す「労働審判」によって紛争の解決が図られます。
労働審判の主なメリットは、手続きの迅速性と柔軟性です。
労働審判の審理は、原則として3回以内の期日において終結します(労働審判法第15条2項)。
トータルの期間はおおむね3ヵ月程度であり、半年~1年程度はかかる訴訟に比べると、迅速性に優れた手続きと言えるでしょう。
また訴訟のように一刀両断的な解決を行うだけでなく、実情を踏まえて紛争解決に有益な事項を定めることも認められており(同法第20条2項)、柔軟性に富む側面もあります。
その反面、労働審判にも直接交渉と同様に、訴訟との二度手間になってしまうリスクが存在します。
適法な異議申立てが行われた場合、労働審判は効力を失い、自動的に訴訟手続きへ移行してしまうからです(同法第21条1項、3項、22条1項)。
したがって、労使間の主張があまりにもかけ離れているケースでは、当初から訴訟を提起することも検討すべきでしょう。
訴訟は、不当解雇に関する紛争を解決するための最終手段として位置づけられます。
訴訟では、労使双方が裁判所の公開法廷において主張・立証を戦わせ、裁判所が判決によって解決をおこないます。
裁判所の確定判決には既判力が認められているため、不当解雇に関する紛争を終局的に解決できる点が、訴訟に特有のメリットといえるでしょう。
その一方で、時間と費用がかかる点・手続きが煩雑な点などは、訴訟の大きなデメリットといえます。
労使間の紛争が複雑にこじれてしまった場合は、訴訟手続きを利用するのもやむを得ません。
しかし、話し合いによって解決する余地が残っている場合には、先に直接交渉や労働審判の可能性を検討しましょう。
不当解雇の無効主張や、慰謝料・バックペイ・逸失利益などの請求を行う際には、弁護士への相談をおすすめいたします。
どのような手段を用いて争う場合でも、法的要件に従って整理された主張を展開することは、共通して重要となるポイントです。
最終的に裁判所がどのように判断するかを見据えて、適切な交渉・主張戦略を立てるためには、弁護士の知識と経験を活用する価値が大いにあります。
会社との交渉や法的手続きへの対応についても、弁護士に一括して任せられるので、労働者本人の負担は大きく軽減されるでしょう。
不当解雇に遭ってしまい、会社に対抗したい場合には、お早めに弁護士へご相談ください。
不当解雇に関する金銭的な補償は、基本的には慰謝料ではなく、解雇期間中の賃金(バックペイ)や逸失利益の支払いという形で行われます。
ただしハラスメント・名誉毀損・暴力・いじめなど、解雇に付随して悪質な不法行為が行われた場合には、例外的に慰謝料が認められる可能性があります。
不当解雇に関して、労働者が会社に対して正当な補償を求めたい場合には、弁護士に相談することをおすすめいたします。
弁護士に相談することで、法的根拠に則った主張を展開できるとともに、交渉や法的手続きへの対応に費やす労力を大きく軽減できます。
会社から不当解雇されてしまった労働者の方は、一度弁護士にご相談ください。
突然の解雇は労働者にとって一番重い処遇です。本来会社は、労働者を簡単に解雇することはできません。
少しでも解雇に違和感を感じるのでしたら弁護士にご依頼ください。
不当に解雇されている場合、『解雇の撤回』や『慰謝料の請求』『解雇予告手当の請求』を行なうことができます。
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