遺言書
遺言書の効力は絶対か?効力が及ぶ内容と認められるためのポイント
2023.07.06
遺言書を作成する際、記載する内容は非常に重要なポイントです。
自分の願いを確実に実現し、スムーズな相続を実現するためには、適切な効力がある遺言書を作成する必要があります。
本記事では、効力のある遺言書とはどのようなものなのか、その内容や期間について詳しく解説します。
遺言書を作成しようと考えている方々の悩みや疑問に共感しながら、確実な効力のある遺言書を作成していただくための情報を提供するため、これから作成しようと思っている方はぜひ参考にしてみてください。
ここでは、遺言書の効力が及ぶ内容をそれぞれ解説します。
遺産の分配は、遺言書に記載することで具体的に指定できます。
法律で定められている法定相続分はあくまで基準であり、遺言書によって法定相続分を上回る割合での相続や、逆に下回る割合での相続を指定することが可能です。
遺産相続は、遺言書に記載された分配指示が優先されますので、法定相続分よりも遺言書の内容が重視されます。
遺言書では、法定相続人以外の人に対して、特別な贈与(遺贈)をおこなうことも可能です。
法定相続人以外への遺贈は、遺言書に明示的に指定することで実現します。
これにより、遺言者の意思を尊重し、法定相続分に関わらず遺産の配分をおこなえるでしょう。
生命保険金の受取人については、遺言書を活用できます。
ただし、遺言書による受取人の変更は、保険法が改正された平成22年4月以降に契約された場合に限られます。
遺言書で生命保険金の受取人を指定する場合は、以下のポイントに注意してください。
遺言書による生命保険金の受取人の変更は、遺言者が望む相続の意思を明確にする手段のひとつです。
適用する場合には、保険会社への通知や専門家の助言を適切におこないながら、遺言書の作成を進めましょう。
特別受益とは、遺言者が生前に贈与した利益のことを指します。
通常、特別受益は相続財産から差し引かれますが、遺言書で免除することも可能です。
例えば、遺言者が後継者に事業資金を贈与した場合などがあげられます。
この場合、特別受益を持ち戻し免除と指定すれば、相続財産から差し引かずに相続がおこなわれます。
ただし、特別受益の持ち戻し免除を遺言書に記載する際には、専門家のアドバイスを受けることが重要です。
具体的な遺産の状況や事情によって最適な選択肢が異なるため、専門家の助言を仰ぎながら遺言書を作成しましょう。
遺言書による特別受益の持ち戻し免除は、遺言者の意図を明確にし、公平な相続を実現するための重要な要素です。
内縁関係や結婚をしていない場合でも、その関係から生まれた子どもは法律上「非嫡出子」とされます。
しかし、父親によって認知されることで、非嫡出子であっても相続権を持つことができます。
相続人としては、非嫡出子の認知によって遺産の分配が減少することを懸念するかもしれませんが、遺言書を破棄したり隠匿することは相続資格の喪失につながるため、絶対におこなってはいけません。
未成年の子どもを持つ場合、遺言書で後見人の指定をすることが重要です。
後見人は、未成年者の親権者が亡くなった場合に、財産管理や監護・教育の責任を負う人物となります。
以下に、未成年の子どもの後見人指定に関するポイントをまとめました。
未成年の子どもの後見人の指定は遺言書に記載することで、未成年者の保護と利益確保を図る重要な手段となります。
遺言書作成時には、適切な後見人の選定や専門家の助言を活用し、未成年者の将来をしっかりと守ることを考えましょう。
遺言書には、相続人の廃除や廃除の取り消しを指定できます。
相続人の廃除とは、特定の相続人から相続地位を奪い、権利を無効にすることです。
遺言者がその相続人から虐待や重大な侮辱を受けるなど、相続させたくない事情がある場合に利用されます。
ただし、遺言書で廃除を実現させるためには、遺言執行者(遺言書に書かれた内容を実行するための権限を持つ人物)の選任が必要です。
遺言書を作成する際、遺言執行者の指定や指定の委託は重要な要素です。
遺言執行者は、遺言書の内容を実行するために必要な手続きをおこなう権限を持つ人物を指します。
具体的な手続きとしては、財産目録の作成や預貯金の解約、不動産名義の変更などがあります。
遺言執行者が指定されている場合、相続人であっても相続財産の処分を独自におこなうことはできません。
ただし、遺言内容によっては遺言執行者が常に必要とされるわけではないため、遺言執行者の指定は専門家のアドバイスを受けるべきです。
ここでは、遺言書の効力が及ばない内容を解説します。
民法によれば、遺言によっても侵害することのできない相続人の最低限の権利が保障されており、これが「遺留分」と呼ばれます。
遺留分は、遺言書によっても侵害することはできません。
例えば、特定の人に多くの財産を相続させるために「すべての財産を◯◯に譲る」といった記載をしても、遺言者の配偶者、子、父母には最低限の遺産を受け取る権利があります。
そのため、遺言書を作成する際には、遺留分を考慮に入れることが重要です。
遺言書に記載しても効力が及ばない内容として、結婚や離婚、養子縁組などの事項があります。
これらの変更は、遺言書によって制約されることはありません。
そのため、遺言書を作成した後に結婚や離婚、養子縁組がおこなわれた場合は、遺言書の内容に変更が生じることはありません。
遺言書には、葬儀の方法や家業継承などの付言事項を記載することがあります。
しかし、これらの事項はあくまで遺言書の指示としての性格を持ち、法的な拘束力はありません。
遺言書を作成する際には、法的な要件を満たすことが重要です。
以下のポイントに留意することで、無効と判断されない遺言書を作成できます。
【遺言の種類】
公正証書遺言は公証人が作成するため、要件違反で無効になるリスクは少ないです。
一方、自筆証書遺言は自分自身で全文を自筆する必要があります。
自筆証書遺言を作成する場合、以下の要件を守る必要があります。
遺言書作成には慎重さが求められます。
法的要件を満たすよう留意し、有効な遺言書を作成しましょう。
ここでは、遺言書が無効とされるケースを紹介しましょう。
遺言書は特定の方式に従って作成されることが必要です。
例えば、自筆証書遺言では、自分自身が全文を手書きすることが求められます。
一方、パソコンやワープロで作成した遺言書や、録音形式で残したものは無効とされます。
ただし、財産目録のみパソコンやワープロでの作成は可能です。
遺言書を作成する際には、適切な方式に従うことが重要です。
法的な要件を満たし、遺言書が有効とされるようにしましょう。
遺言書を作成するためには、遺言作成者が満15歳以上で意思能力が十分にあることが求められます。
民法では、未成年でも満15歳以上であれば遺言書を作成できます。
親や法廷代理人の同意は必要ありませんし、親であっても被相続人の遺言書を取り消すことはできません。
また、遺言書を作成する際には、遺言作成者の判断能力が十分であることが重要です。
十分な意思決定ができない状態で作成された遺言書は無効とされる可能性があります。
遺言書の作成時には遺言作成者の判断能力に注意し、適切な時期に作成することが大切です。
夫婦や兄弟など2人以上で作成される共同遺言書は、法律によって効力を持たないことが定められています。
共同遺言書は、被相続人の死後に効力が発生するため、効力発生の時期が特定できないためです。
また、共同遺言書では被相続人の意思がお互いに制約される恐れがあり、被相続人の1人が亡くなった場合に残された被相続人が遺言を撤回できるかが問題となります。
したがって、遺言書を作成する際には個別に作成することが重要です。
各自が独立して自身の意思を反映させることで、有効な遺言書を作成できます。
遺言書は、必ず本人の意思によって作成される必要があります。
そのため、以前被相続人が口頭で話していた内容を第三者が代わりに書いた代理遺言書は無効です。
また、被相続人を脅迫して自分の利益になるような内容を書かせる遺言書も当然ながら無効とされます。
遺言書は本人の真意を反映するものであり、他者による介入や不正な圧力によって作成されたものは法的な効力を持ちません。
遺言書を作成する際には、本人自身が自発的におこなうことが重要です。
他者による代理や脅迫などの要素が含まれていないことを確認し、真正な遺言書を作成しましょう。
ここでは、無効にならない遺言書を残すための方法を解説します。
自筆証書遺言では要式違反になりやすく、死後に検認が必要となり相続人に負担がかかります。
そのため、可能であれば公正証書遺言を利用することがおすすめです。
公正証書遺言は公証人が立ち会い、法的な手続きを経て作成されるため、要件を満たしている限り無効になるリスクがほとんどありません。
公正証書遺言を選ぶことで、遺言書の効力が確実に発揮され、遺される財産や意思が遺言者の意図どおりに守られます。
相続人にとっても手続きがスムーズになり、遺言書が無効になる心配が軽減されます。
遺言書を残す際には、公正証書遺言を検討してみましょう。
遺言書を自分1人で作成すると、不備が生じる可能性が高まります。
そこで、リスクを回避するためには司法書士や弁護士などの専門家に相談することが重要です。
専門家に相談することで、遺言書の作成や内容の適正性を確認してもらえます。
遺言書を残す際には、専門家のアドバイスを受けながら進めることをおすすめです。
専門家の知識と経験を頼りに、有効な遺言書を作成しましょう。
遺言の内容で、特定の相続人のみを指定することは可能です。
ただし、兄弟姉妹以外の相続人には、「遺留分」という遺産を最低限度の割合で取得できる権利が認められていますので、特定の相続人に全ての財産を相続させると、遺留分を侵害することになります。
この場合、遺留分を侵害された相続人から「遺留分侵害額請求」をされた場合には、遺産を分け与える必要がありますので、注意が必要です。
遺言書を勝手に開封すると罰金を取られる可能性があります。
民法の規定によれば、遺言書を発見した場合は裁判所に提出し検認の請求をしなければなりません。
裁判所に届け出ずに遺言書を開封すると、5万円以下の過料を科せられる可能性があります。
ただし、開封したことによって遺言書の効力自体が消えるわけではありません。
遺言書の効力は遺言者が亡くなった瞬間から発生し、その効力には期限はありません。
つまり、遺言書は亡くなるまで有効です。
遺言者が何十年も前に書いた古い遺言書でも、効力には何ら問題ありません。
ただし、遺言者が一度作成した遺言書を撤回した場合には、撤回された遺言書の効力は無くなります。
遺言書を撤回するには、遺言者自身が明示的に意思を表明する必要があります。
複数の遺言書が発見された場合、原則としては日付が最も新しい遺言書が効力を持ちます。
したがって、複数の遺言書がある場合には、各遺言書に記載された日付を確認してください。
ただし、日付のない遺言書があった場合はどうなるでしょうか。
遺言書に最近入手した財産が記載されているなど、推測できる要素があっても、遺言書には日付の記載が必要です。
日付がない場合、その遺言書は法的効力を持ちません。
遺言書を作成する際には、効力のある遺言書を残すために専門家に相談することが重要です。
遺言書の作成や更新、複数の遺言書の整理など、専門家の知識と経験が役立ちます。
弁護士や司法書士に相談して遺言書を作成しましょう。