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贈与契約書のひな型と作成ポイント|生前贈与でトラブルを防ぐために
2023.07.14
お子さんやご家族になるべく多くの遺産を残すため、生前贈与や節税対策を考えている方は多いのではないでしょうか。
ただし、生前贈与の方法として現金を手渡しすることを考えている方は注意が必要です。
現金手渡しによる生前贈与は銀行振込による記録が残らないため、節税につながるように感じられますが、税務署にバレる可能性があるほか、バレた際に大きなペナルティが発生する場合があります。
本記事では、生前贈与を現金手渡しでおこなう際の注意点や、節税につながる生前贈与のコツを紹介します。
本記事を参考にして、少しでも多くの財産を残せるよう検討してみてください。
生前贈与を正しくおこなうために、一度弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットを得ることができます。
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基本的に、現金手渡しによる生前贈与はおすすめしません。
おすすめしない理由を大きく3つに分けて、それぞれ解説していきます。
1つ目の理由は、税務署の調査によってバレる可能性が高いことです。
現金手渡しで生前贈与することで、振込やお金を移動した形跡が残らず、税務署にバレないと考える方もいるかもしれませんが、それは大きな勘違いです。
なぜなら、税務署の職員は調査権限を持っており、断片的に見つかった事実を総合的につなぎ合わせることで、生前贈与として判断されてしまう可能性が高いからです。
たとえば、生前贈与を現金手渡しでおこなうパターンとして、贈与する側が自分の口座からお金を下ろし、贈与される側に現金で手渡しをする。
その後、贈与された側が自分の口座に入金する流れが考えられます。
この場合、銀行口座に入出金の記録がそれぞれ残るため、税務署による詳細な調査がおこなわれてしまいます。
そのため、現金手渡しによる生前贈与は税務署にバレる可能性が高く、おすすめできません。
贈与税を抑えるための方法として、暦年贈与という制度を利用することが挙げられます。
暦年贈与とは、年間110万円までの贈与を非課税とする制度ですが、現金手渡しをした場合、暦年贈与と認められないケースがあります。
たとえば、最終的に合計1,000万円を贈与するつもりで、非課税の範囲内である100万円ずつ毎年贈与することをあらかじめ決めていた場合、「定期贈与」とみなされてしまいます。
定期贈与であるとみなされると、年間の贈与額が110万円以下であったとしても贈与税が発生するため、注意が必要です。
暦年贈与であると正しく判断されるためにも、銀行振込のような記録が残る形で贈与をおこなうのがよいでしょう。
本来は非課税になる生前贈与をおこなっていたとしても、現金手渡しでおこなったことで贈与の記録が残らず、使途不明金と判断され、課税される可能性があります。
生前贈与と正しく認識してもらうためにも、贈与は記録が残る形でおこなうのがよいでしょう。
生前贈与には、一定金額まで税金がかからない基礎控除が定められています。
贈与税の基礎控除は、1月1日から12月31日までの1年間で110万円です。
つまり、年間110万円以内なら非課税で贈与することが可能です。
贈与税に基礎控除があるように、相続税にも基礎控除がありますが、どちらも対象となる金額が限られているため、それぞれをうまく活用することが節税につながります。
相続税の基礎控除を活用することで、節税につなげることができます。
しかし、現金手渡しで生前贈与をおこなう場合、やり方によっては生前贈与と認めてもらえないことがあります。
以下では、現金手渡しで生前贈与する際の注意点を解説します。
まず大切なのは、贈与契約書を作成することです。
贈与契約書は贈与があった事実をのちに証明するための書類で、作成しておくことで税務署から確認があった際に提示することができます。
また、贈与契約書は毎年贈与をするたびに作成するようにしましょう。
贈与契約書を作成していない場合、贈与の証拠が残らないため、まとめて贈与したとみなされたり、定額贈与とみなされたりして、課税される恐れがあります。
贈与契約書の作成方法を紹介します。
贈与契約書は、特に法律上定められた形式はありません。
また、弁護士などの専門家に依頼せずに、個人で作成しても問題はないのです。
作成時は、以下7つのポイントを押さえておくとよいでしょう。
贈与契約書はパソコンで作成することもできますが、双方が納得して契約を交わしたことを記録するためにも、署名や押印については自筆するのがおすすめです。
なお、現金手渡しで贈与する場合には領収書を作成し、贈与する現金を口座へ全額入金するなどして記録を残しておきましょう。
こうすることで、万が一税務調査があった際にも、贈与に関する説明や証明がしやすくなるでしょう。
ただし、贈与するものが不動産や株式の場合は手続きがやや面倒になるため、税理士に依頼するのも一つの方法です。
贈与税には暦年贈与の基礎控除以外にも、さまざまな控除が存在します。
以下では、贈与税を抑えるために利用したい、さまざまな控除を紹介します。
生活費や教育費として贈与されたお金は、贈与税がかかりません。
生活費には日常生活でかかるお金のほか、治療費や養育費、子育て費などが含まれます。
また、教育費には学費や教材費、文房具代などが該当します。
しかし、非課税になるのは必要になるたびに生活費や教育費として正しく贈与されたもののみです。
生活費や教育費の名目で受け取っていても、実際には預金をしたり株式の購入をしていたりすると贈与税がかかるので注意が必要です。
贈与税にはさまざまな非課税が存在し、うまく利用することで節税につなげることができます。
以下では、非課税枠の例を紹介します。
住宅取得資金贈与の特例とは、住宅を購入するために贈与を受けた現金のうち、一定額までが非課税となる制度のことです。
非課税の限度額は、耐震、省エネまたはバリアフリーの住宅用家屋の場合は1,000万円、それ以外の住宅用家屋の場合500万円となっています。
注意点として、適応期限が2023年12月31日までと定められていることです。
期限は年々延長されてはいますが、延長されるたびに限度額も見直しされているので、気になる方は早めに利用を検討することをおすすめします。
教育資金の贈与の特例とは、子や孫に教育資金を贈与する際に、一定額まで非課税となる制度のことです。
非課税となる限度額は子・孫1人につき1,500万円まで、信託か預金によって贈与する必要があります。
贈与されたお金は、入学金や授業料、修学旅行費などの学校に関わるものはもちろん、学習塾や習い事などの費用に充てることも可能です。
しかし、学校以外への支払いは500万円までしか非課税にならないため、計画的に利用しなければなりません。
なお、令和5年度税制改正により適用期限が2026年3月31日まで延長となりました。
また、これまで贈与された金額を30歳までに使いきれなかった場合には、残額にかかる贈与税の税率は受贈者の年齢によって特例税率もしくは一般税率どちらかが判断されていましたが、改正後は一般税率へと統一されました。
そのほか、これまでは贈与者の相続が発生した時点で、子や孫が23歳未満の場合、もしくは在学中であれば課税の対象外でした。
しかし今回の改正により、贈与者の相続する財産が5億円以上となる場合には、これらの条件があったとしても課税の対象となります。
結婚・子育て資金の一括贈与の特例は、子や孫の結婚や出産、または育児の費用を贈与した際に、一定額まで非課税となる制度のことです。
非課税となる限度額は合計で1,000万円までで、結婚資金にあてられるのは300万円までと決まっています。
そのほか、受贈者は20歳以上50歳未満と定められています。
また、令和5年度税制改正により、 適用期限が2025年3月31日までに延長されたほか、贈与された資金が50歳までに使いきることができなかった際の残額にかかる贈与税の税率が、特例税率から一般税率へと変更されました。
生命保険には加入者が亡くなった際に受け取れる死亡保険金が設定されていますが、死亡保険金には非課税枠が設定されているため、契約方法によっては相続税の節税がおこなうことができます。
非課税枠を利用できる契約方法は、保険の契約者と被保険者を同一人物にし、保険金の受取人を相続人にする形があります。
この場合、「500万円×法定相続人の数」分が非課税となります。
また、保険料に相当するお金を子供に贈与したうえで、子供が保険の契約者および保険金の受取人になり、被保険者を父などにするパターンもあります。
子供が保険金を受け取る際に所得税がかかりますが、保険金のすべてにかかるのではなく「(死亡保険金-支払った保険料の合計-50万円)×1/2」のみに所得税がかかります。
一般的に、相続税より所得税で支払うほうが税金が少なくなるケースが多いですが、ケースバイケースなので専門家に相談するのもよいでしょう。
現金手渡しによる生前贈与がバレた場合、延滞税・無申告加算税・重加算税の3つを課せられる可能性があります。
延滞税は、納税が遅れたことによって課される税金で、納付期限の翌日から2ヵ月以内であれば7.3%、2ヵ月以降だと14.6%の加算となります。
無申告加算税は、期限までに申告しなかったことによって課される税金です。
税務署からの指摘後に申告をおこなう場合と、指摘前に申告をおこなう場合で税率が異なりますが、5〜20%の加算となります。
重加算税は、意図的に無申告や過小申告したことで課せられる税金です。
無申告の場合40%、過少申告の場合35%の加算となるほか、前歴があるとそれぞれさらに10%の加算となります。
現金手渡しによる生前贈与はバレる可能性が非常に高く、またバレた際のデメリットも大きいためおすすめしません。
相続税や贈与税を節税したいのであれば、暦年贈与を使ったり、さまざまな制度の非課税枠や特例を活用したりしましょう。
なお、生前贈与をはじめ相続に関する疑問や不安が少しでもある場合には、相続問題に注力している弁護士や税理士などの専門家への相談をおすすめします。