その他労働問題
問題社員の正しい辞めさせ方は?不当解雇・違法な退職強要を避けるためのポイント
2024.09.09
有期雇用が5年または10年を超えた場合、大学の職員または研究者が無期雇用を申し出たら無期雇用が実現するという制度があります(無期転換ルール)。
しかし、それを避けるために大学側が直前に「雇い止め」をするケースがあります。
本記事では雇い止めは有効なのか、雇い止めをされそうな時の対処法などをお伝えします。
いきなり雇い止めを通知されたけど、どう対処すればいいかわからず困っていませんか?
結論からいうと、雇い止めは労働基準監督署や労働局、弁護士に相談することが可能です。
もし、雇い止めを受け入れたくない場合、弁護士に相談・依頼するのをおすすめします。
弁護士に相談すると以下のようなメリットを得ることができます。
ベンナビ労働問題では、雇い止め・不当解雇を得意とする弁護士を多数掲載しています。
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大学に雇用されている職員の雇い止めとは、契約期間の通算が5年を超える前に契約を打ち切られることを指します。
「研究者」の場合は、10年を超える前に契約を打ち切られることを指します(研究者の場合は、以下のとおり特例として期間が5年から10年に伸びている)。
(労働契約法の特例)
第十五条の二 次の各号に掲げる者の当該各号の労働契約に係る労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第十八条第一項の規定の適用については、同項中「五年」とあるのは、「十年」とする。
一 研究者等であって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で期間の定めのある労働契約(以下この条において「有期労働契約」という。)を締結したもの
二 研究開発等に係る企画立案、資金の確保並びに知的財産権の取得及び活用その他の研究開発等に係る運営及び管理に係る業務(専門的な知識及び能力を必要とするものに限る。)に従事する者であって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約を締結したもの
三 試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者が試験研究機関等、研究開発法人又は大学等との協定その他の契約によりこれらと共同して行う研究開発等(次号において「共同研究開発等」という。)の業務に専ら従事する研究者等であって当該試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者との間で有期労働契約を締結したもの
四 共同研究開発等に係る企画立案、資金の確保並びに知的財産権の取得及び活用その他の共同研究開発等に係る運営及び管理に係る業務(専門的な知識及び能力を必要とするものに限る。)に専ら従事する者であって当該共同研究開発等を行う試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者との間で有期労働契約を締結したもの
引用元:科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律|e-Gov法令検索
研究者の場合に期間が10年に伸びている理由は、研究開発事業は5年で終了しないケースが多く、中途半端な時点でで研究者が研究を離れることがないようにする点にあります。
特別に研究者を保護する規定になっています。
職員または研究者の雇い止めが起こる理由は、契約期間の通算が5年または10年を超えてしまうと、職員または研究者が「無期転換の申し込み」をできるからです。
これは「無期転換ルール」と呼ばれています。
大学側はこれを何としてでも避けたいのです。
「無期転換ルール」とは、会社が労働者と期間限定の雇用契約を締結していても、契約期間が更新されて通算が5年を超えた場合は、労働者からの希望があれば、雇用契約を期限なしのものに強制的に転換されるというルールです。
このルールは、平成25年に改正された労働契約法によって導入されました。
(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)
第十八条 同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。
引用元:労働契約法|e-Gov法令検索
なお、研究者の場合は、上述したとおり10年に伸びています。
「無期転換ルール」の目的は、有期雇用の労働者の経済的地位を安定させる点にあります。
有期雇用労働者は、正社員と同じような働き方をするケースも多いにもかかわらず正社員に比べると低待遇になりやすい傾向にあるため、これを是正する点にあります。
この無期転換ルールがあるので、職員または研究者がこの申し込みをすると大学は研究者を無期雇用する必要があります。
皮肉なものですが、本来は有期雇用労働者を保護することを目的としているのですが、現実には使用者による雇い止めが増加しているのです。
大学側は無期転換を避けたいと考えています。
なぜなら、無期雇用にすると解雇するためのハードルが極めて高いため、人件費の高騰を引き起こしてしまうなどの懸念点があるからです。
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雇い止めと似た概念に「解雇」があります。
「雇い止め」と「解雇」は、どちらも労働者との契約が終了する点で同じですが、以下のとおり対象者・要件などに違いがあります。
雇い止めの対象者は、有期雇用の労働者です。
これに対して解雇の対象者は、無期雇用の労働者です(有期雇用であっても契約期間の満了前に終了させる場合は解雇にあたります)。
大学の職員や研究者の雇用トラブルで問題となっている多くのケースは、雇い止めに関するものです。
大学から「契約期間が満了したからもう雇いません」と通告されてしまうのです。
無期転換の申し込みの権利が発生する直前に、通告されるケースが増えています。
雇い止めは、基本的には「契約期間が満了したのでもう雇いません」という使用者側の意思が尊重されます。
有期雇用契約の更新は新しく契約を締結するということなので、更新するかどうかは使用者側の自由なのです。
しかし、これではあまりにも有期雇用の経済的地位が不安定になってしまうということで、雇い止めが禁止される法理が現れ、現在では労働契約法第19条で規定されています。
大まかにいえば、①契約の反復更新によって実質的に無期雇用と同視できるとき、または②契約更新されることにつき合理的な期待がある場合は、労働者からの雇用継続の申し込みがあれば、よほどのことがない限り、会社はその申し込みを承諾したものとみなされることになりました。
(有期労働契約の更新等)
第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。
引用元:労働契約法|e-Gov法令検索
以上のように、一定の条件を満たせば雇い止めをできなくなりましたが、契約を終了するハードルの高さは「解雇」のほうが上回ります。
現状は無期雇用の職員のほうが契約を終了させるのが難しいのです。
したがって、大学側は有期雇用している職員または研究者を無期雇用に転換させることを避ける傾向にあるのです。
解雇できる要件は、以下のとおりです。
【普通解雇の場合】
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
引用元:労働契約法|e-Gov法令検索
【懲戒解雇の場合】
(懲戒)
第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
引用元:労働契約法|e-Gov法令検索
どちらも「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」に解雇は無効となります。
会社がこの要件を立証するのは非常にハードルが高くなっています。
解雇以外に手段がなく、労働者の側に汲むべき事情がほとんどないケースに限って解雇が有効になることが多いです。
それほど無期雇用の社員の地位は守られているのです。
雇い止めされそうな空気は何となくつかめると思います。
契約期間の満了が近づいてきた場合に大学側が何らかのメッセージを労働者に伝えることが多いからです。
大学の雇い止めトラブルは大学に相談しても問題解決には繋がらないケースが多いので、以下の機関への相談も検討しましょう。
労働基準監督署とは、会社が法令を遵守しているかをチェックする機関で、全国都道府県に設置されています
労働基準監督署に相談することで、何かしらの労働基準法違反が発覚することもあるので選択肢のひとつとして持っておきましょう。
労働局では、全国各地に相談窓口を設置しており、職場で起きたトラブルの相談を受け付けています(相談無料・解決依頼も無料)。
【参考】厚生労働省|都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧
労働局からの呼び出しを大学側が無視することがあるので、初めから弁護士に相談することをおすすめします。
ベンナビ労働問題には、雇い止めトラブルを含め労働問題に強い弁護士が多数掲載されているので、ご自身に合った弁護士を探してみてください。
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弁護士に依頼した場合、以下のような手段をとってくれるでしょう。
労働審判は裁判と違い、スピーディーに解決できる可能性があります(原則として3回以内の期日で終わるため)。
ただ、両者の歩み寄りによる解決となることが多いため、裁判所が出した和解案(たとえば契約終了として金銭解決)に納得できない方がいることも多々あります。
審判結果に納得しない場合は、訴訟提起になるでしょう。
初めから訴訟を提起することもできますし、労働審判に納得できない場合に異議申し立てをして訴訟に移行させることもできます。
ご自身で対応したり、労働局に相談・申告することもひとつの方法ですが、さらに確実な対応を求めるのであれば弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士に相談することのメリットは以下のとおりです。
「違法な雇い止めなのか?」「労働契約法19条に該当するので無期雇用の申し込みができるのではないか?」などについて法的観点から具体的にアドバイスをしてもらえます。
ご自身で「違法な雇い止めだ」「労働契約法19条に該当するので無期雇用の申し込みができる」などと大学に申し立てたとしても、大学が聞き入れる可能性は低いでしょう。
大学には通常顧問弁護士がいるため、法律的な交渉では太刀打ちできないからです。
仮に職員または研究者が法律的に正当な主張をしたとしても大学側が理解を示さないことが多いため、その交渉は非常にストレスのかかるものとなります。
この点、弁護士に依頼すれば、法的主張をかみ合わせて交渉をスムーズに進めてくれます。
先述のとおり、ご自身で会社に異議を申し立てても大学側が態度を改める可能性は低いですが、弁護士から通知が来ると、大学側が態度を一変させて話に応じてくることが多々あります。
ご自身以外にも雇い止めされそうな職員または研究者がいれば、声をかけて仲間を募りましょう。
ここが一番大きなメリットといえます。
万が一、裁判手続きになったとしても、弁護士に依頼していると安心です。
理由は以下のとおりです。
弁護士に依頼せずにご自身で違法な雇い止めであることを主張して労働審判や訴訟を起こすことは可能ですが、遂行することは非常に難しいでしょう。
なぜなら、法律的な主張を組み立てることは困難ですし、その主張を組み立てることができなければ敗訴するおそれがあるからです。
裁判官は中立な立場のため、「この主張が足りない」などと手を差し伸べることはありませんので、適切な主張をするためにも弁護士に依頼するとよいでしょう。
その点、弁護士は、裁判手続きに精通しているため、法律的に必要な主張を過不足なく裁判所に提示してくれます。
たとえば、労働者が「違法な雇い止めだ」「労働契約法19条に該当するので無期雇用の申し込みができる」と大学に申し入れをしたり、労働基準監督署に駆け込んだ場合、報復として職員または研究者に対して裁判を起こしてくることがあります。
たとえば、些細なミスにもかかわらず「損害賠償請求する」などと主張して提訴してくることがあります。
このような場合、ご自身だけで対応していると、その対応は非常に困難かつ労力のかかるものとなりますが、弁護士はその手の大学の主張への対応に慣れているため的確に反論することが可能です。
雇い止めトラブルが起きた時にご自身で労働局に行くなどの対応をすることもできますが、大学側とスムーズに交渉するためには弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、万が一、裁判に発展したとしても安心です。
ベンナビ労働問題には雇い止め問題に強い弁護士が多数掲載されているので、ご自身に合った弁護士を探してみてください。
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